弁護士向けサービス

プロフェッショナル・サイコセラピー研究所(IPP)では、弁護士のための包括的メンタル・サポートを提供しています。

守秘義務は厳守致します。相談内容はもちろん、あなたがセラピーの依頼者であることも口外致しません。安心して、ご相談ください。

弁護士の方だけでなく、修習生、裁判官、検察官、裁判所書記官の方にもご利用いただけます。

あなたは、「弱音を吐けない」「『助けて』を言ってはいけない」「メンタルが弱い弁護士は劣等だ」と誤解していませんか?

あなたは、誰にも、同僚にも、先輩にも、師匠にも相談できず、1人で悩んでいませんか?

弁護士を辞めたい、死にたい、もう2度と裁判にかかわりたくない、と苦悩していませんか?

重い責任の伴う仕事に携わっているあなたの心の痛み、身体の悲鳴を私たちに聞かせてください。

私たちは、文系最難関の国家資格を持って、弱者、被害者、クライエントを支援している弁護士のあなたをサポートします。あなたの精神的安全感を担保し、クライエントのために、あなたの力を安心して発揮していただきたいと考えています。

目次

はじめに

なぜ、弁護士業務に、多大なストレスがかかり、メンタルや身体がやられてしまうのでしょうか?

最大の理由は、「法務」と法務にまつわり浮上する「心理」とのギャップ(齟齬)に関する〈情報〉や〈教育〉がなかったためです。

弁護士は、法務に関するプロフェッショナルです。しかし、その過程で、心理の専門家であるカウンセラーが経験するのよりも困難な心理的課題に、晒されることを学んでいないのではないでしょうか?

弁護士だけでなく、カウンセラー側も同じです。弁護士がどれだけ大変な心理状態に日々置かれているのか、知っているカウンセラーは、大変少ない。なぜなら、弁護士がカウンセラーを利用することは、稀だからです。弁護士のメンタル・ヘルスやメンタル・サポートについて学ぶことが、ほとんどないためでです。

私たちは、長年、弁護士の心理相談に寄り添ってきたセラピストです。
弁護士がたびたび巻き込まれる困難な精神的課題、ストレス、ダメージに何度も接してきました。

あなたは、「法務」と法務にまつわり浮上する「心理」とのギャップ(齟齬)に関する〈情報〉や〈教育〉に、ご関心がありますか?

ご一緒に学びませんか?

弁護士がクライエントとのやり取り(関係)の中で経験する精神的困難さ

以下の中で、ひとつでも思い当たる点があれば、メンタル・サポート、サイコセラピー、コーチング、コンサルティングをご利用ください。

(1)共感疲労

あなたは、「共感疲労」について聞いたことがありますか?

弁護士が、クライエントの心の傷つきや被害に、暗に明に共感しすぎて、あるいは感情移入しすぎて疲弊し、自分自身のメンタルや身体をやられること、病むことです。そこには、目に見えない、対価として評価されない「感情労働」が、(過剰に)伴っていたりします。

どうすれば「過剰な感情労働」を避けることができるでしょうか?

共感や感情移入を回避しすぎると、クライエントは弁護士を冷たいと感じ、クライエントー弁護士関係に問題を生じさせかねません。では、どうすれば、共感疲労にならずに、適切にクライエントに寄り添うことができるでしょうか? 共感疲労から回復して、健全なマインドで、クライエントにより良い支援を提供するためには、どうすればよいのでしょうか?

ヒントは「コンパッション」にあると、私たちは考えます(詳しくはセミナーでお伝えしています)。

(2)リーガル・トラウマ

あなたは「リーガル・トラウマ(法的外傷)」という言葉を、ご存知ですか?

それは、トラウマ(心的外傷)を受けたクライエントを援助する過程で、弁護士が負うトラウマです。弁護士は、トラウマに関する酷い話しを何度も聞かされたり、写真や動画などを通じて恐ろしい事実に繰り返し触れたりします。その過程で不可避のストレスを過剰に経験し、精神を破壊されてしまったりします。

心が燃え尽き、うつを患ったり、自死を考える弁護士もいます。

そうした場合、少しでも早く、私たちにご相談ください。
精神科医、心療内科医と連携し、あなたの精神、心、身体、ご家族をお守りします。

セラピーの世界では、被害を負ったクライエントが、悪気のないままに、(善意の)セラピストを加害者に仕立て上げる、ということが度々生じます。これは、セラピーではよく起きることで、単にマイナスに解しません。なぜなら、そこにこそクライエントの悩み、痛み、苦しみの中核・本質のある場合が、少なくないからです。

クライエントがセラピストを加害者として見ることを「転移(=投影)」といいます。クライエントとの関係の中で、セラピストが加害者に仕立て上げらえることは「投影同一化」です。

弁護士も、クライエントに加害者に見られたり、加害者に仕立て上げられたりすることは、少なくないのではないでしょうか?

このことで、心が折れたり、疲弊したり、弁護士を辞めたくなっていないでしょうか?

不当感、濡れ衣感に苦しむことは、ないでしょうか?

あるいは、心を守るために心を麻痺させ、過度に鈍感になっていないでしょうか?

そうであれば、早めにセラピーをご活用ください。
弁護士にこそ、心の専門家に「助けて!」を訴えていただきたい。

「転移」について、セラピーでご自身のことを取り扱う他、セミナーで学んでいただくことも可能です。

(3)理想化と幻滅

弁護士とクライエントとの間で起き得る〈心の次元〉の現象に、「理想化」と「幻滅」の間の揺れ動きがあります。

法律に疎いクライエントは、弁護士を全能の神のように思い込み、理想的な存在であると期待、当然視します。傷つき、被害を受け、弱っているクライエントが、そう思い込み、弁護士に頼ったとしても無理はありません。ただしこの時、クライエントは、弁護士を「何でもわかってくれる」「自分を助けてくれる」『救済者』や『神』のように見立てている点を、よく察知しておく必要があります。

弁護士は、全治全能の神のような救済者にならないように気をつけることが大事です。
特に、善意の優しい弁護士が、この点を踏まえておくことは大切です。

これを放置しておくと、クライエントは弁護士に、全面的に依存します。
ここに、弁護士とクライエントとからなる「病的共依存関係」が生まれかねません。

「理想化と幻滅」は、いわば「ゼロか百か」「完璧か最悪か」思考です。その思考があると、弁護士を完璧に信頼し持ち上げていたかに見えたクライエントが、あるとき急に価値切り下げし、ディスッて、弁護士を最低の存在(悪魔)であるかのようにみなし、苦しめはじめます。

その背景には、「全治全能の弁護士は、自分のためには何でもやってくれる、完璧にやってくれて当然だ」という自己愛的思い込み、期待、甘えがあるためです。自己愛的に弁護士をコントロールしたい、という欲求を秘めていたりするからです。

クライエントの「救済者」にならないようにしてください。
あなたは神ではありません。

クライエントを「無力」と勘違いしないでください。
クライエントは、赤ちゃんではありません。

あなたは、〈心の次元〉で起き得る「理想化ー幻滅」あるいは「神ー悪魔」のループに、どうすれば巻き込まれないでいられるか、を理解したいと思いますか?

(4)投影

クライエントから不可能/不当な要求をされることが、ありませんか?
上手くことが進まないと、心ない言葉を向けられたり、理不尽なプレッシャーをかけられませんか?

クライエントは弁護士に、弁護士以上の役割を求めます。

先ほど、クライエントは弁護士に、神のような全能的存在を期待する、と書きました。それだけでなく、傾聴し共感するカウンセラー、的確に指導してくれるメンターや教師、さらには親、医者、未来を見通す占い師、恋人であることを求めます。

それらは、先述した「転移(=投影)」によるものです。

こうしたタイプのクライエントは、あなたに度々連絡し、あなたはそのクライエントに必要以上に気を使わなければならないプレッシャーを感じます。クライエントは負担の多い難しい相手になっていく気がします。あなたがクライエントの期待に応じないと、クライエントは腹を立て、さらに無理難題を言うかもしれません。あなたは、そうしたクライエントの感情(爆発)を恐れ、「腫れ物」のように接します。

このクライエントの感情とどう接すればいいか、わからず困っていませんか?
自分とクライエントとの関係がどうなっているのか、心理学的見解を得たいと思いませんか?

(5)羨望

大変困難な心理的課題に「羨望(envy)」があります。

あなたは、「羨望」と「嫉妬(jelousy)」との違いをご存知ですか?

「嫉妬」は、たとえば自分の恋人を奪う相手が〈悪い〉ので、相手をマイナスに思うことです。一方、「羨望」は、相手が〈良質〉なので、相手をマイナスに思うことです。

心に「羨望」のテーマを抱えているクライエントは、あなたが〈良質な〉弁護活動をすると、あなたを非難し始めます。あなたとの契約を反故にするかもしれません。あなたは、味方に後ろから背中を刺されるかのような、不愉快で恐ろしい体験をすることでしょう。いい仕事をしているのですから。

嫉妬は、自分、恋人、相手の3人からなります。
羨望は、自分、相手の2人からなります。

「羨望」は、弁護士を混乱させ、不安、不当感を抱かせます。

なぜでしょうか?
また、その場合の対処法は何でしょうか?

羨望でお困りであれば、私たちにご相談ください。

(6)自己愛憤怒

人と人との関係で、最も恐ろしいことに「自己愛憤怒(narcissistic rage)」があります。それは、自己愛/自尊心/自負心が傷つけられた、と人が主観的に感じたときに生まれる憤怒です。プライド、尊厳、誇りが傷つけられたときに生まれる感情です。

「攻撃性(agression)」には、2種類あります。

1つ目は、スポーツで相手に勝つために発揮される攻撃性です。これには明確な目標があり、目的が達せられると、攻撃性は終わりを迎えます。健康な攻撃性です。

2つ目は、自分を傷つけた相手の自己愛/自尊心/自負心をギャフンといわせ、粉々に破壊するための精神病的攻撃性です。これは、極論すると自分の命を賭してでも、相手を粉砕してやる、という復讐心の入った非合理的感情です。

自己愛/自尊心/自負心の傷は、時に、命までかかわってくる取り扱いの大変困難なトラウマとなり得ます。

そこには「恥(shame)」がかかわっています。
それはルサンチマン(恨みつらみ)でまみれています。

この自己愛憤怒が、家族間のいざこざ、犯罪や訴訟の根にある場合が少なくありません。

自己愛憤怒を抱えたクライエントは、弁護士の何気ない一言、場合によっては(そしてよくあるのは)善意の一言に、傷つき、弁護士を自己愛憤怒の標的にすることがあります。弁護士への信頼を失くし、終わりのない攻撃性を向け始めます。特に難しいのは、自己愛憤怒やルサンチマンが、弁護士ークライエント間の水面で、言外に進行する場合です。

あなたは、クライエントの自己愛憤怒に苦しんでいませんか?
過去、取り扱いがわからず辟易したことがありませんか?

自己愛憤怒との取り組み方について、お伝えします。

もっと詳しく知りたい方は「隠れ自己愛」について学んでいただくこともおすすめです。

(7)自己愛構造体

次に、「自己愛構造体」についてご説明します。

それは、ピカピカ、金ピカ、金メッキをまとった私です。この私は、イケてること、有能/優秀であること、をインフラ(基本構造)だと思い込む心性です。自己愛構造体は、興奮、有頂天、躁転した気分を好みます。

自己愛構造体の心を持つクライエントは、弁護士を「高級ブランド」として雇います。ものごとを「勝ち負け」で考え、自分は「絶対に勝者」である、そのために高級ブランド弁護士を雇った、というモチベーションを抱いています。

このタイプのクライエントにとって、「完璧な勝利」以外はありえません。
「負け」だけでなく、相手方との「引き分け」「妥協」「折り合い」も、すべて「完敗」と妄想します。

あなたは、自己愛構造体の心のクライエント(依頼者)との交渉に困難さを感じ、辟易し、精神にダメージを受けたことがあるかもしれません。こうしたクライエントのやり取りや、支援について、ご一緒に考えませんか?

自己愛構造体」について、詳しくはセミナーで学んでいただけます。

(8)病態水準

弁護士の方は、DSM-5やICD-10について聞いたことがあるかと思います。精神科医やセラピストは、DSM-5やICD-10を使って、クライエントの精神状態を類推します。私たちは、その2つ以上に「病態水準」のパースペクティブを推奨します。なぜならそれは、病態に関する深層構造理解を促すからです。

かつて、心理学が考える病態水準には、「精神病」と「神経症」の2つがありました。そして、精神病と神経症との混在したものが「パーソナリティ障害」と考えられました。この3つが、心理学の領域とされてきました。そこに近年「ASD(自閉スペクトラム症)」が加わっています。

病態水準理解が、なぜ必要なのでしょうか?

それは、病態によって、物事への認識および行動に差異が生じるためです。たとえば、ある人が「部屋に誰かが入ってきて、汚している」と思ったとします。監視カメラには、誰も映りません。事実は、誰も入ってきていない。が、精神病水準の人は「間違いなく誰かが部屋を汚している」と主張します。妄想です。そう確信してやみません。

一方、神経症水準の人は、「そんなふうに考える自分はおかしい。しかし、どうしても部屋が汚されている気がして、完璧に掃除したくなってしまう」と述べます。

病態によって、認識や、それに伴う行動が変わるのです。

精神病水準の人は、自分の主観のおかしさに「病識」がありません。
一方、神経症水準の人は自分の主観の変さに「病識」があります。

精神分析医のウィルフレッド・ビオンは、誰の心の中にも、精神病水準と神経症水準(=健康な精神状態)とが混在する、と考えました。(注:精神分析では、神経症水準には「病識」が伴うので、それを健康な精神状態のメタファーとして、取り扱います)

法務領域におけるクライエントは、その人がふだん精神病的でなくても、たやすく精神病水準の様相を示します。なぜでしょうか?

この後述べますが、法務領域自体が、「精神の有事」にまみれているためです。

精神の「有事」は、精神の「戦時下」「危機状態」「修羅場」を意味します。弁護士は、たびたび精神の「正念場」で仕事をしなければなりません。

精神病水準には、いろいろな側面があります。最も危険なのは、自分が〈バラバラ〉になる、家族が〈失く〉なる、家業が〈崩壊する〉ことへの「言葉にならない不穏な恐怖」や「間違いなく誰かが部屋を汚している」といった〈迫害不安〉です。

こうした恐怖や不安に苛まれる人は、あなたのクライエントに、いないでしょうか?

その手の恐怖や不安は、一時的にせよ、クライエントが精神病水準に陥っていることを意味します。こうした状態は、プロのカウンセラーにとっても取り扱いが難しい。

にもかかわらず、弁護士はそうした情報や知識のないまま、精神病水準に晒されたクライエントにかかわっている。悪い意味でなじんでしまって、耐性が身に着いてしまっていたりする。それでは、弁護士のメンタルが徐々にやられて、破滅の危機に陥ったとしても不思議ではありません。

弁護士は、法務に携わるとき、法的業務あるいは法的現実だけでなく、心の現実にもさらされ、トレーニングを受けていない心的業務を強要されるのです。カウンセラーよりも困難な心的業務を。

精神状態がやられる前に、精神病水準についてトレーニングを受けているサイコセラピストのサポートをご活用ください。

私たちは、精神科医や心療内科医と連携し、あなたを包括的に支援します。

私たちは、精神病水準を抑制し、神経症水準あるいは健康な心とかかわるやり方を、あなたに身に着けていただきたい。精神病水準は、神経症水準や健康な心よりも、力を秘めており、弁護士—クライエント関係を振り回し、混乱させます。この点について知らないと、援助者側も(幾分)妄想的になったり、陰謀論を抱いたりしかねません。

IPPでは、「病態水準」に関するセミナー連続講座も行っています。

弁護士の活動は、たびたび「精神的有事」の中で行われます。それは心の状態および弁護士—クライエント関係を、精神的「極限状態」「危機状態」「修羅場」にしかねません。それは精神的「戦時下」であり「災害跡地」のようです。

「正念場」でもあります。

「正念」は「正しい今の心」と書きます。仏教で「正念」は「素面」を意味します。

精神的「有事」でクライエントの心は「素面」を失いがちです。「精神病水準」に陥り、その力に翻弄されやすい。精神的「有事」においてクライエントの精神状態は、早晩、一部が、あるいは一時的にせよ全面的に、「精神病状態」に化けることへの理解と心の準備が欠かせません。ふだん健康なクライエントであっても、「有事」には、たやすく精神状態に陥ります。

この精神病状態に、弁護士が暗に明に被爆しないことはありません。弁護士は、「精神病水準」と「神経症水準」との違いについて、基本を理解してください。ご自身の精神的健康をキープするために。クライエントに、良質な支援を提供するために。

(9)敵化

あなたは、「敵化(enermyfying)」について聞いたことがありますか?

精神病水準の思考は、「理想化ー幻滅」「神ー悪魔」「有能ー無能」「優秀ー劣等」「勝利ー敗北」といった極端な二項対立からなります。精神病水準の心理状態で、人は勝利するために、相手を徹底的に「敵化」します。その時のクライエントのマインドは、戦時下の状態に化けています。それは「極限状態」であり「極期」です。「敵化」は、心が精神病水準の外に出ない限り、終わりません。この状態に心があるとき、人は勝利の「快楽」と敗北の「屈辱」との〈両方〉に酔い、執着します。

クライエントを支援するために、弁護士は依頼者と交渉し、勝利と敗北との「間」や「グレーゾーン」を勧めたくなります。実利を得るために、現実的打開策を提案したくなります。

しかし、相手を「敵化」するクライエントに、それは伝わりにくい。精神病水準における勝利の快楽と敗北の屈辱とへの酔いや執着があるからです。そんなとき、あなたはむなしさ、絶望感、無力感に襲われるのではないでしょうか?

クライエントの心が精神病水準の外に出ること、勝利の快楽と敗北の屈辱との両方から解放されることについて、学びませんか?

敵化」について、詳しくはセミナーで学んでいただけます。

(10)3つのF

人は、有事において次の3つのF反応をするといわれます。
それは、”Flight(逃走)”、”Fight(闘争)”、”Freeze(凍結)”の3つの単語の頭文字のFを指します。

サバンナで、草食動物が肉食動物と出くわすと、まず「逃走」します。
それが叶わないと、「闘争」します。これは、窮鼠猫を噛むに譬えられます。
それも機能しないと、「凍結」し、死んだふりをします。なぜなら、肉食動物の中には、死んだ動物の肉は腐っていて体に毒と誤解し、獲物を見逃す場合があるためです。

その記憶が、人間の脳にも残っているといわれます。有事において人間は、動物的な3つのF反応を示します。あなたのクライエントは、まず逃走し、次に闘争し、最後に凍結します。

この中で、取り扱いの最も難しいのは、凍結です。それは、「解離」や「重篤なトラウマ」と関係しているためです。人の心が凍結状態にあるとき、情緒的反応はなくなり、無思考状態になります。頭が真っ白になります。こうした場合、反応しないクライエントに、問いをいつも以上に投げかけたくなるかもしれません。

が、それはクライエントに精神の二次被害を引き起こしかねません。注意と配慮が必要です。

(10)解離とトラウマ

あなたは、「解離とトラウマ」について聞いたことがありますか?

トラウマには、ほぼ間違いなく「解離」が関係しています。トラウマには、「時間」が介在せず、過去に起きた心的外傷が、いま正に生じているかのような錯覚を生じさせます。それは錯覚ですが、砂漠の蜃気楼のようにリアルさを伴うため、生々しく取り扱いが困難です。

トラウマに時間が介在しないのは、そこに「解離」があるためです。また、「解離」があると、トラウマに関する肝心な点を「言葉」にできません。善意の優しい弁護士が、傾聴と共感に徹しても、心にまったく動きを示さ(せ)ないのが「解離」とそれにまつわる「トラウマ」です。心が「凍結(Freeze)」しているためです。

「解離」は、プロ・カウンセラーでも対応が大変困難です。なぜならば、従来のカウンセリング教育に加えて、解離に特化した専門的トレーニングが欠かせないためです。弁護士のあなたは、通常のトレーニングを積んだカウンセラーやセラピストが取り扱えない「解離」や「トラウマ」と取り組んでいないでしょうか?

「解離」に時間が介在するようになり、「トラウマ」の癒しが進むと、心的外傷は、過去の1つの出来事、人生全体の1部として、心に収まります。ここに癒しが生まれます。あなたは、「解離」とそれにまつわる「トラウマ」とのプロフェッショナルな取り組みに関心がありますか?

弁護士とクライエントとの間でも起きやすい「解離」「トラウマ」について、詳しくはセミナーを参照してください。

(11)交渉

W.ビオンは、セラピストとクライエントとの間に、精神病的関係または共同幻想が生じることを発見しました。これには3つの型があります。

1つは、「共生(symbiotic)」です。これは、セラピストとクライエントとが、お互いを傷つけることの(全く)ない、依存しあった表面的関係です。

2つは、「寄生(parasitic)」です。この場合、セラピストとクライエントとは、搾取的関係にあります。セラピストが搾取することも、クライエントが寄生することもあります。

この共生と寄生は、「共依存」の亜型です。

3つは、「共存(commensal)」です。ここにおいて、セラピストとクライエントは、ウィンーウィン関係にあります。目指すべきは、共存関係です。

弁護士には、対相手方、対裁判所、対依頼者の「交渉」が必要です。この中で、土台となるのは依頼者との交渉です。にもかかわらず、困難になることが多いのもまた依頼者との交渉なのです。なぜでしょうか?

理由は、依頼者とあなたとの関係が、寄生的であったり、共生的であったりするためです。もっと言えば、クライエントが弁護士を全知全能の救済者と見ることに対して、弁護士が対応策を身に着けていないためです。

依頼者=クライエントとの交渉に、苦悩している弁護士は、少なくありません。

先述したように、誰の心にも「精神病水準」と「神経症水準(=健康な精神状態)」とがあります。弁護士は、クライエントの健康な精神と交渉し、チームワーク(共存関係)を築くことが欠かせません。

あなたのクライエントの訴えは、クライエントの精神病水準によるものですか?
依存的、寄生的関係になっていませんか?
あなたは救済者になっていませんか?

クライエントの健康な精神状態と契約を結ぶようにしてください。心の精神病水準の方が、健康な側面よりも、力(パワー)をもっています。そのため、つい精神病水準の言い分、声、叫びにほだされ、説得されがちです。注意が必要です。

IPPでは、健康な精神状態との「交渉」について、詳しくは連続講座(2時間×10回)で学んでいただけます。

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