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解離の心理療法 〜重複障害をめぐって~ |2018/10/28(日)

◎ 配布資料+音声データをご購入いただけます

1)今日、「解離」は、たくさんの人が、多かれ少なかれ負っている心理的課題です。取り扱いが大変難しく、癒しや回復、変容が生じにくいテーマです。今回は「解離」を取り上げ、臨床実践から新たに得た経験と知見をもとに、セミナーを開催します。

2)解離は、解離性障害に典型的な形で現れます。が、それだけにとどまらず、アルコールや薬物、買い物、セックスなどの各種依存症、共依存症、DVやIPV(親密なパートナーによる暴力)、自己愛性および境界性パーソナリティ障害などとの「重複障害」となって生じます。そのため、取り組み、癒し、回復、変容が非常に困難です。

解離は、現代人の心理テーマとして、潜在していることが少なくありません。

3)今から約30年前に、臨床場面で解離現象とはじめて出会って以来、私たちはその取り組みに苦心してきました。解離に対し、傾聴、夢ワーク、ボディワークなどを通じて、いい形でとり組めた、という経験はとても少なかった。解離は、そうした従来の教科書通りのやり方では、太刀打ちできませんでした。

4)そうではなく、セラピスト-クライエント間における、ときに激しい、ときに困難なやり取りを通じて、何とかやってきた・やってこれらた、乗り越えられた、というのが実感です。泥臭い汗をかくワークが、節目節目で不可欠となります。

5)解離は、心が分解され離れてしまっている現象です。解離されている心は、夢ワーク、イメージワーク、ボディワーク、ロールプレイだけでは、癒し、回復が起きにくい。なぜなら、分解された心には、離ればなれになった心の両側を結ぶ「架け橋」がないからです。

この架け橋になるのが、<セラピスト-クライエント関係>です。心の分断の癒し、回復、変容には、解離を患っている当人とは別の人との関係が必要です。他の人の心を、借用しなければなりません。(注:これが、私たちが関係療法を推奨する理由の1つです。)

6)架け橋になり得るセラピスト-クライエント関係とは、なんでしょうか? どういったものでしょう?

  • (A)転移ー逆転移
  • (B)投影同一化
  • (C)エナクトメント

です。あなたは、こういった関係についてご存知ですか?

セミナーで、解離との取り組みの<核>として、これらについて詳しくお伝えします。関係性に関するこの3つの見方は、各種依存症、共依存症、パーソナリティ障害、DVやIPVとの取り組みにも、大変有益です。プロフェッショナルな取り組みをご紹介します。

7)解離と出会うまで、私たちはセラピーにおけるアウェアネス(気づき)について勘違いしていました。たとえば、アウェアネスがあれば、解離にも自ずと癒し、回復、変容が生じる、と思い込んでいました。

が、それは誤りでした。

8)解離の人とカウンセリングを行ったとしましょう。その人は、解離があるにもかかわらず、(大変困難なのですが)ときに自分の解離についてアウェアネス(気づき)を持つことがあります。が、カウンセリング室を一歩出ると、その気づきを途端に忘れてしまう、といったことがよく起きます。面接室やワークショップでは、ある種の気づきを得るものの、それが根づかない。

なぜでしょうか?

詳しくは、セミナーでお伝えします。ここは1番の要所ですので、詳しくご説明します。セミナーを楽しみにしていてください。

9)ヒントを1点だけ書くと、気づきではなく、自我(=マインド・心)の修復が必要・必須だからです。解離がある場合、自我・マインド・心は、分解され離れてしまっています。アウェアネスがもたらされたとしても、解離による自我が修繕されていない場合、アウェアネスは(その自我に沿って)同じように分裂させられてしまうのです。

自我が修復されていない場合、アウェアネスによって、依存症が生み出されてしまったり、強化されてしまったりするといった、マイナスなプロセスが生じることさえあります。解離は、アウェアネスだけでは自然治癒しません。(注:アウェアネスと同じことは、「深さ」についても当てはまります。心を、どんなに深く掘り下げても、解離に癒しや変容が起きることは、まずありません。)

関係療法が、不可欠です。

10)さて、解離とスプリッティング(分割排除)は、どう異なるのでしょうか? また、現代の解離と、フロイトの時代の乖離(かいり)には、どういった違いがあるのでしょう? この2つは、よく聞く質問です。

詳しくは、セミナーでお伝えしますが、ここでは1点のみ述べます。スプリッティングは、パーソナリティ障害の心によく見られます。解離でもスプリッティングでも共に、心における(A)自分と(B)他者あるいは世界イメージが、割れています。

が、スプリッティングにおいては、(A)自分ではなく、(B)他者や世界の側の分割に意識が向き、他者や世界を、悪意がある、迫害的、攻撃的、などとみなすプロセスが表出しやすい。

一方、解離においては、方向が逆転します。

11)岡野憲一郎氏によると、たとえば性的意図を持った人に接近されると、解離のある人の場合、心の中から性的に奔放な人格が自然発生してきて、その状況を対処しようとします。性的意図を持った人(=外界からのストレス)に対応するために、その誘いに迎合する・してしまうのです。

ストレスを受けると、解離のある人の心には、緊張が走り、固まります。その状態を何とかしようとする脊髄反射的対処が、迎合なのです。(相手や世界の側でなく)自分・自我の内面の側にストレスを受け入れ、その場をしのごうとするのです。

なぜそうするのか、ですって?

理由は、それが心を守る、何とかする防衛だからです。

12)そうせざるを得ないのは、自分・自我が割れてしまっているからです。解離について取り組まなければ、自傷行為ともいえるそうした行動およびその行動を生む認知や思考に癒しや変化、変容をもたらすことは困難です。もっと難しいのは、解離のある人が、解離とスプリッティングの両方を抱え、重複障害を患っている場合です。

13)もしあなたが、夢ワークやボディワークや個人セラピー、個人コーチングを、何年にもわたって受けているにもかかわらず、癒しや回復や変容が生じていないとしたら、解離の存在を疑ってみるといいかもしれません。

わたしたちは、解離について知るまで、随分と遠回りをしました。

解離について理解した今でも、その癒しや回復、変化の道は長く困難です。

が、以前よりも格段の確かさをもって、現代人の多くに潜んでいるこの心理テーマと、とり組めるようになっています。その極意を、さまざまなケースを紹介しながら、お伝えしていきたいと考えています。

今回のセミナーでは、解離について取り上げます。解離に関する良質はケースをもとに、具体的に学びます。ロールプレイなども取り入れ、経験を通して、解離との取り組みを身に着けます。

このテーマにご関心のある専門家の人、専門家をめざす人、また、一般の人、初心者の人のご参加をお待ちしています。

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日時■ 2018年10月28日(日)10:00~17:00

会場■ 都内

費用■ メールマガジンにてご案内しております。

講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子