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家族の『世代間連鎖』という呪縛からの解放 ~心の承継、遺産相続を価値あるものにするために~|2023/12/24(日)

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1)セラピーで繰り返し聞く訴えに、親世代、祖父母世代から受け継ぐ「心の負の遺産」に関するものがあります。

「親から『我慢しなさい、歯を食いしばって頑張りなさい』と言われて、とても嫌だったけれど、気がついたら、自分が子どもたちに同じことを言っているのが、情けない」

「私が受けた親からの仕打ちを、子どもに経験させたくない」

「自分の世代で、断ち切りたい」

「祖父母世代から続く、負の歴史を終わらせるために、子どもを作りませんでした。次の世代がいなくてホッとしてはいるものの、今でも心の整理はすんでいません」

2)こうしたことは、心の「負の世代間連鎖」と呼ばれるものです。

「世代間連鎖」は、家族療法家マレー・ボーエンが、「ジェノグラム(家族図)」と共に発案した概念です。

負の世代間連鎖には、たとえば暴力や虐待などのDV、複雑性トラウマ、アルコール依存などの依存症や共依存、機能不全家族とアダルトチルドレン、解離などがあります。それは、前の世代から続く、心の「負の遺産相続」とも言えるでしょう。多くの場合、繰り返される悪運や悪夢やカルマ(業)のように感じられます。

3)私たちは、親、祖父母やさらに上の世代から、「正の遺産」だけでなく「負の資産」を受け継ぎます。 脳が大きくなった人間は、「生理的早産」の結果、未熟なまま生まれ、他者に「依存」しなければ生きていけません。そのため、親や上の世代の影響を強く受けないわけにはいかなくなりました。

これによって、正と負の世代間連鎖(カルマ)の中に、巻き込まれます。幼少期のあなたや私は、その世代間連鎖の呪縛に、無力あるいは非力です。

4)私たちは、事業承継や相続についての、心の相談、心理支援を行っています。なぜなら事業や資産を承継・相続するにあたっては、心、精神、情緒、魂、スピリチュアリティ、宗教性なども受け継がれるからです。

心の承継や相続は、無意識裡に少しずつ進みます。だからわかりにくい。心理支援には、心の承継のプラス面とともに、マイナス面、上の世代の心の「負債」にも、着目することが欠かせません。

5)心の負の遺産は、私たちに、苦しみ、痛み、辛さ、みじめさ、恥、空虚さ、不安、恐怖をもたらします。それを直視し、ブッダは「人生は苦である(Life is suffering)」と述べました。フロイトやユングは、苦痛や辛さ、みじめさ、空虚さ、恥、不安、恐怖といった負の感情とあなたが向き合い、あなたらしい人生を送る心の力を身につけるように支援しました。

6)心の負の遺産の中で、最も困難なのは何でしょう? 負の相続の中核には、何があるでしょうか?

そこには、精神病水準からくる「典型的パターン」が見られます。このパターンを、ユング派は「コンステレーション」、プロセスワークでは「ドリーミング・パターン」、ビオン派は「選択された事実」と呼びました。

7)心の負の遺産が、取り扱い不能であり、困難なのは、それが「精神病水準」をベースとしたプロセスだからです。W.ビオンはそれを、「言葉にならない恐怖」と、またD.スターンは「形にならない不安」と言っています。この恐怖や不安は、「言葉にならず、形をとらない」ので、家族の場全体に蔓延し、浮遊し、取り憑いて、私たちを苦しめます。

8)M.マーラーは、それを「共生状態」と考えました。それは境界のない、「味噌もくそも一緒」のありようです。暴力装置にもなりかねないこの状態に、ユングは、繰り返し注意を喚起しました。

9)こうした精神病水準のプロセスは、心の健康な「内的世界(コスモス)」を融解し、無に帰し、破滅させるアンチ・コスモス(反コスモス)です。それは、個人や家族の心を解体する(個人や家族の)「内側に起因する暴力や狂気」です。M.クラインやフロイトは、それを「死の破壊力」と考えました。

10)心の負の遺産との取り組みには、世代をまたいで受け継がれる、この精神病次元の「無意識的なパターン」を見抜けるかどうかに、かかっています。注意点は、それが『精神病水準由来』であることへの理解です。セミナーでは、精神病水準に根差した無意識的パターンとの取り組みを、基本から学びます。

11)この世に生れ落ちた時から私たちは、心の負の遺産を担わされます。そのことに「不当感」を感じ、「犠牲者意識」にまみれても不思議ではありません。今回、世代間連鎖する心の負の遺産、あなたが不当だ、もうやめにしたい、と考える家族のシャドウ(影)との取り組みを試みます。

12)そこで着目したいのが、E.エリクソンが創造した「ジェネラティビティ」です。「生殖性」「次世代育成性」「事業承継性」と訳される “generativity(ジェネラティビティ)” は、心の正の資産を、子どもや孫の世代に贈与します。

13)それに対して、ジェネラティビティの「欠如」と心の負の遺産とは、密接に関係しています。

また、ジェネラティビティの欠如は、世代間をまたぐ「破壊的権利付与」を生みます。破壊的権利付与とは、家族療法を実践する精神科医B. ナージの造語で、前の世代から受け継いだマイナスの経験を、私も行使する権利がある、とする妄念です。この無意識の権利意識が、負の世代間連鎖をもたらす家族の心の背景に、連綿と受け継がれるのです。

15)心の負の遺産は、いわば数世代に渡る心の「毒」であり、「ゴミ」です。が、「薬」は毒から、「黄金」はゴミや卑金属から発見されます。そう教えるのは、心理的錬金術です。

セミナーでは、心の負の遺産を、正の資産や豊かさ、果実に変化させるプロセスに取り組みます。

16)あなたは、心の負の世代間連鎖を断ち切って、不当感や委縮した犠牲者根性を「力みなぎる丈夫で自由なマインド」に変化させることに、興味がありますか?

もし「Yes」であれば、心の負の遺産を「自覚的に所有する」ことです。そして、負の遺産の背後に潜むドリーミング・パターンを見抜くことです。

17)「心の負の遺産」に所有されるのではなく、「あなた」が所有する側になる。心の負の遺産を「性急に」消去しようとするのではなく、「まずは」しっかりとホールドし、心に置くことができるようになること。そこから、あなたの全体性を内側からエンパワーする心理的錬金術の過程が始まります。

ユングは、錬金術の容器は「水」であり「火」である、と不思議なことを述べました。この不可思議な容器に包まれると、あなたの心に「温かさ」が生まれます。 あなたの心に、豊かなジェネラティビティが育成されます。

そのときあなたは、負から正に変容した遺産を活用した内的宇宙(コスモス)を、創造できるでしょう。
世代間連鎖から適切な距離を取り、実りあるあなたらしい人生を歩んでいることでしょう。

18)今回「家族の『世代間連鎖』という呪縛からの解放 ~心の承継、遺産相続を価値あるものにするために~」にご関心のあるセラピスト、コーチ、コンサルタント、アドバイザー、ケースワーカー、ナース、医師、保健師、ボディワーカー、弁護士、教育関係者の方、ファミリービジネスの専門家の方、そして一般の方、初心者の方のご参加をお待ちしています。

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日時■ 2023年12月24日(日)10:00~17:00

会場■ zoomオンライン会議(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)

費用■ メールマガジンにてご案内しております。

講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子