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1)あなたには、災害、事故や事件によるトラウマ体験や、思い当たるハッキリとした傷つきがないにもかかわらず、生きづらさ、フィットしない感じ、ズレた感じがないでしょうか?
なぜか、落ち込んだり、さみしかったり、むなしかったり、辛かったり、自信がなかったり、空虚だったり、しませんか? 言葉にしにくいモヤモヤやイライラに、さいなまれていませんか?
こうしたことが長年続いているとしたら、その背景に「複雑性トラウマ」があるかもしれません。
そこには、あなたが小さかったときの親からの繰り返される虐待やDV、遺棄、あるいは両親の喧嘩、親の病気といった複数のマイナスの出来事が関係している可能性があります。
2)脳が大きく進化したホモサピエンス(人類)は、出産のときに産道を通り抜けられるよう、未成熟のまま生まれるようになった、といわれます。そのため、生後、ひとりで生きられるようになるまでには、かなり長い間、養育者に依存しなくてはなりません。乳幼児は、養育者に、心身の安全や保護、安心や慰めを求めます。また、承認や受容、支援、共感、そして調律の提供を、期待します。
3)しかしその期待が、何度も裏切られ、踏みにじられたとしたら、どうなるでしょうか?
だまし、搾取する相手が、もし養育者だったとしたら、あるいは虐待し、ネグレクト(遺棄)し、過干渉する相手が、保護や安全を提供してくれるはずの大人だったとしたら、子どもにどんなことが起こるでしょう?
4)それは、『幼少期における関係性の傷つき』をもたらします。アタッチメント(愛着)理論は、「幼少期の関係性の傷つき」以上に酷いトラウマはない、といいます。
未成熟な乳幼児や子どもにとっての「私」は、イコール「私+養育者」、すなわち関係性です。なぜなら、幼い「私」は、ひとりで完結することはできず、保護や世話、承認、調律してくれる養育者がいて、はじめて「私」として存在できるからです。サピエンス(人類)は、幼少期に、私だけで生存することはできません。
5)頼りにせざるを得ない、その人なしでは生きられない養育者に、幼少期から繰り返し裏切られ、騙され、搾取され、支配されたら、(心/生存の)「基地は危険」になります。
アタッチメント理論によると、養育者がたとえ虐待的、ネグレクト的、あるいは過干渉で、「基地が危険」だとしても、乳幼児の依存したい気持ち、甘えたい気持ち、愛着の絆を求める思いは、全く軽減しない、といいます。生きるために、そこに依存せざるをえないからです。虐待的な親は、その依存性を悪用します。
6)そんな「危険な基地環境」で生じる/作られるのが、「複雑性トラウマ」です。複雑性トラウマを帯びた心は、マイケル・バリントのいう「基底欠損」に苦しみます。心の基底が壊れている複雑性トラウマは、「人としてのあり様」が「内部崩壊」するような、言葉にできない恐怖や不安を、常にもたらします。
7)それは、健康な心であれば持っているはずの「シールド/バリア」が破れた状態です。バリアの壊れた自我・心・主体性は、成人した後も「外的」には他人から、「内的」には無意識から、侵入/侵襲される危険に、常にさいなまれます。
それを回避し、ごまかし、やり過ごすための、とりあえずの防衛法、生き残る適応手段が、「解離」です。解離は、感覚や感情、記憶を遮断し、多様な心身症や離人症状を生みます。それは、自分を痛めつける過酷な超自我、恥トラウマ、空虚感、劣等感、アイデンティティの混乱、満たされなさ、無力感、孤立感を切り離します。
8)複雑性トラウマは、自然災害、事故、事件、暴力、いじめなどによって被る『大文字』のトラウマやPTSDと異なります。複雑性トラウマは『小文字』の複数のトラウマからなり、「繰り返された」トラウマです。それは、災害、事故、事件などと違い、『関係』を土台としたトラウマです。この関係を土台とする複雑性トラウマが未消化/未処理のままだと、大文字のトラウマは、より破壊的なものになります。
9)精神分析家のキャロライン・ガーランドは、トラウマからの癒しには、トラウマを「過去の出来事」に
する必要があると述べます。それには、トラウマを心の外に追い出したり、忘れ去ろうとするのではなく、「記憶する」ようにしてこそ、回復が起こるといいます。
癒えてないトラウマ的出来事や事件は、「時間」の入らない心の『3次元空間』で息づいています。そこに「時間」が入ると、心に『4次元空間』ができます。すると、出来事は『過去』あるいは『歴史』となります。
10)時間が入り、記憶として心に収まると、私たちは振り回されたり、支配されたりしなくなります。自己制御力、自己効力感、自己肯定感が芽生えます。そのためには、セラピスト-クライエント関係への眼差しが不可欠です。そこに「安全基地」が築かれなければなりません。
11)しかし、複雑性トラウマを負った人にとって、「人との関係性」は、不安や不信、恐怖を呼び覚ます土壌、でもあります。なぜなら、複雑性トラウマに苦しむクライエントには、「人との関係」くらい『危険なもの』ないからです。
セラピストが築こうとする関係性は、クライエントに『原初の人間関係におけるトラウマ』や『危険基地』を想起させるからです。ですので、セラピストに対し、不信感、不安感、拒絶感といった「陰性感情」が向けられます。
12)それはトラウマを負った心にとって、「健全」な感情です。とはいえ、クライエントおよびセラピストにとって、その取扱いは大変難しい。
13)複雑性トラウマとの取り組みには、セラピーで「安全基地」の構築が不可欠です。それには、クライエントの陰性転移との取り組みが必須です。セミナーでは、この陰性転移との取り組みについて、じっくりと学んでいきます。
14)複雑性トラウマのベースには、「負のアタッチメント関係」があります。それは、セラピーでは、セラピスト-クライエント関係に「再演」されます。
15)さらに複雑性トラウマは、「解離」され、身体や呼吸に埋め込まれます。身体の内臓感覚、気づきにくい不快感、緊張感や、呼吸の浅さ、速さ、リズムに微妙な形で現れます。
16)このセミナーでは、セラピスト-クライエント関係と、身体や呼吸とに、ホリスティックな眼差しを向けながら、複雑性トラウマの癒しに取り組みます。それにあたって、アタッチメントと関係性の回復を目指します。その視座をベースに、(a)精神分析、(b)トラウマ焦点化認知行動療法、(c)持続的エクスポージャー法、(d)サイコソマティック・セラピー、も参照します。
17)あなたが、長年、言葉にできない不全感、生きづらさ、ズレた感じ、落ち込み、むなしさ、辛かったり、自信のなさ、モヤモヤやイライラに苦しんできたなら、複雑性トラウマに目を向けてください。
複雑性トラウマは、個人、関係性、家族における現代の心のテーマの中核にあります。また、スクール・カウンセリング、クリニックでのセラピー、依存症や共依存、DVなどとの取り組みに有益です。
18)セミナーでは、「複雑性トラウマと解離の癒し」をテーマとします。あなたは、複雑性トラウマを過去の出来事にする技術に関心がありますか? 愛着と関係性の回復については、いかがですか?
多くの人の心に蔓延しているこのテーマを、今回、あなたとご一緒に取り組める機会を楽しみにしています。
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日時■ 2022年7月24日(日)10:00~17:00
会場■ zoomオンライン会議(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)
費用■ メールマガジンにてご案内しております。
講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子