あなたは、夫婦やカップル関係に苦しんでいませんか?
マリタル・セラピー(marital therapy, 夫婦療法)、カップル・セラピーは、日本では専門としているセラピストやカウンセラーが大変少ない。
私たちは、この領域で、数十年にわたって取り組んできました。
夫婦療法で扱ってきた問題には、次のようなものがあります。
- パートナーの不倫
- DV
- 借金
- 婚外子
- 中絶
- アルコール問題
- 腐れ縁(共依存)
- 回避的関係(冷戦状態)
- 敵化敵関係(戦争状態)
- 離婚の危機
- 親権
- 姑問題
- その他…
もしあなたが悩んでいるなら、私たちをご活用ください。
(1)夫婦療法が考える「夫婦」とは?
あなたは、夫婦を「自然」なものだと思いますか?
それとも、意図して、人工的、戦略的に創るものだと思いますか?
「夫婦療法」では、夫婦やカップルは、意図的、人工的に創造するものだと考えます。
中長期的な視座をもって。
妻と夫のウィン—ウィン関係を目指して。
妻と夫とからなる全体的視点の下に。
日本にはかつてイエ制度がありました。家族人類学のエマニュエル・トッドによると、日本の家族は、「直径家族」です。そこでは家長(父親)が権力を持ち、長男が全財産を相続するという考えが「自然」とされます。
しかし、それは自然ではなく、日本の歴史、社会制度の中で形成された人工物です。直系家族または家父長制におけるコミュニケーションは、「上意下達」です。目上の者が言ったことを、目下の者が「御意(ぎょい)」と反応することが作法・お約束事です。
しかし、21世紀の現在、日本の家族も、「横のコミュニケーション」を必要とするようになっています。特に、夫婦やカップルに、横のコミュニケーションや対話は欠かせません。夫はそのことに気づきがなくても、妻はそれを必要とします。夫婦関係のありようが、子供が育つ心の土壌の質に直結します。
(2)夫婦が「うまくいかない」のは当たり前
「夫婦療法」からすると、夫婦やカップルの「うまくいかない」は、当たり前です。
なぜなら、夫婦は自然の産物ではないからです。一緒に過ごしていれば何となくよくなっていくものではありません。仲良くなろうと努力しても、うまくいくものではありません。筋トレのような人工的なトレーニングが必要です。誤ったトレーニングではなく、適切で戦略的訓練が欠かせません。そのためには、学習が必要です。
健康で幸せで繫栄する夫婦についてのリテラシーが求められます。もっと詳しくいうと、
- 病的な「共依存夫婦、回避的夫婦(冷戦状態夫婦)、敵化夫婦(戦争状態夫婦)」
- 健康な「成熟依存(mature dependency)、相互自立(inter-independency)、相互依存(inter-dependency)」
との違いに関する理解が必要です。
もう一度言います。夫婦が「うまくいかない」のは当たり前です。
理由は、夫と妻が「他人」だからです。2人が「別の文化圏」からの出身者のためです。日本は単一国家という幻想がありますが、夫の出身源家族と、妻の出身源家族との文化的差異は、とても大きい。あなたが顕微鏡のような微視的視力を身に着けているなら、あなたの父方の出身源家族と、母親の出身源家族の文化、価値観、信念の違いは明らかではないでしょうか?
夫と妻との間で、早晩、文化衝突が必ず起きます。価値観やマナーの違いが浮上し、信念対立が生じます。夫婦が、自然物ではないためです。それは、夫と妻との「個人」的問題というより、「構造的」あるいは「文化的」な問題です。
ですので、衝突、対立が起きても、「個人」的に、取らないようにしてください。これは、あなたやパートナーのせいではありません。夫婦という「構造」について知らなかった、と考えてください。
日本のモンシロチョウと、ブラジルのモンシロチョウとは、難なく夫婦になれるでしょう。南アフリカのアゲハ蝶と、スペインのアゲハ蝶も同じです。なぜなら、昆虫や動物にとって夫婦は自然で、本能に基づいているからです。そこに衝突、対立、すれ違いはありません。
しかし、人間の夫婦は異なります。
歴史と文化によって、「これが夫婦」という形が、人工的に形成されるのです。日本の直系家族では、「妻は夫の3歩後を歩く」が自然とされていました。21世紀に生きる夫婦は、これまでの直系家族的夫婦関係に窮屈さ、疑問、生きにくさを感じています。
(3)結婚当初に文化衝突が起きない理由
それは、「ロマンチック・ラブ」や「恋愛結婚」への幻想、興奮、高揚感があるためです。ロマンチック・ラブや恋愛結婚は、ヨーロッパやアメリカにあるとされ描かれた少女漫画、映画、フォーク、ロックにおける絵に描いた餅、幻想です。そこにあるのは、地に足の着いた中身の詰まった親密な関係ではありません。浮ついた気分の高揚、興奮、性的快楽、躁転からなる蜃気楼です。
ですので、早晩、雲散霧消します。
逆に言えば、高揚感、有頂天、興奮、快楽が消えるまでは、文化衝突は生じません。
しかし、興奮が冷め、蜃気楼が消えると、現実が見え始めます。痘痕(あばた)はえくぼでなく、痘痕だったことが明らかになり、馬脚を露わします。2人の間にオアシスはなく、砂漠が広がっていたことが、はっきりとします。心理学的には「幻滅」が起きていると考えます。これは、耐えがたい心の痛みを伴います。
妻は思います。夫は「理想的な王子様」ではなかったのか?
夫も思います。妻は「お姫様」じゃなかったのか?
夫婦はお互いに、「相手に裏切られた、騙された」と幻滅し、他罰的になります。真実は、自分も相手も共に、蜃気楼、幻想に騙されたのです。2人とも、心が未成熟だったからです。
(4)幻想 → 幻滅 → 再構築
従来のイエ制度が風習として残っている間は(民法から無くなった後も)、幻滅の受け皿がありました。夫婦はイエ制度的な家族に文句を言い、不満を抱えながら、何とかやってきました。
が、現在、風習としてのイエ制度は、もはや機能不全に陥っています。妻も夫も、文句を言えない。すると、幻滅が、再び頭をもたげてきます。
であれば、幻滅と向き合う必要があります。
幻滅を、夫婦関係の再出発の糸口とすることが、大切です。夫や妻とは別に、理想の王子様・お姫様がいると思い込んで、今のパートナーを切り捨てたり、浮気に走ったり、ごまかしたりするのか?それとも、夫婦の再生に取り組み、2人で協力して再建に向かうのか?
2人で協力し、レジリエントに進んでいくためには、「幻滅」と取り組まなければなりません。
それは、大変な心のプロセスです。
あなたを心の崩壊をから守り、丈夫な心を作って夫婦の再構築のために、夫婦療法を利用してください。
(5)夏目漱石とドリーミング
——— “I love you.”
——— “So do I.”
あなたなら、どう訳しますか?
直訳は、「私はあなたを愛しています」「私もです」となります。
一方、夏目漱石は、次のように訳したそうです。
「月がきれいですね」「ほんとですね。こんな美しい月は見たことがありません」
夏目漱石の時代、男性が女性の目を見て「愛しています」ということなど、考えられなかったそうです。だから、訳にとても困ったらしい。日本に育った男女(あるいは男男、女女の同性愛カップル)は、「月」のような「第3のもの」を「横並び」で一緒に見て、愛を「間接的に」「ささやかに」わかちあう。ちなみに、当時の日本では、相手の目を見つめることは、脅しや無礼になりかねなかったそうです。
次に紹介するのは、プロセス指向心理学の創始者、アーノルド・ミンデルのケースです。
ジョアンとロルフは、お互い相手の正面を見て座り、別れる別れないで言い争っています。ジョアンは、ロルフが「頭でっかち」と批判します。ロルフは、自分の気持ちに触れるように努力してきた、と反論します。
ジョアンが「ロルフはしゃべり過ぎでうるさい」と言いますが、その時彼女の声はかすれ始めています。ミンデルがそのことに気づき、ジョアンに「かすれ始めた声」に注意を向けるように促します。
かすれ声に注目したジョアンは静かになって、沈黙し始めます。その様子をロルフがやさしく見つめ、目に涙を浮かべ始めます。しばらくしてジョアンが口を開きます。「悔しいけど、ロルフを本当に愛しているの。」
2人は見つめあっています。
ロルフが、2人がはじめて出会ったころの、夜見た夢について語りました。それは「2人の関係は、並んで座って、黙って静かな海を見ることでうまくいく」という夢でした。
面白いのは、アメリカ人であるジョアンとロルフにも、「月」のような『第3のもの』が、ロルフの「夢の海」に、表れていた点です。その海は静かで、静けさは、ジョアンのかすれ声から導かれました。
ロルフとジョアンは、静けさと海を、共有していたのです。2人の関係の深層で。
(6)「月」や「海」の役割
私たちは次のように考えます。
日本で育った人たちにも、欧米人にも、横並びで月や海を一緒に見つめることが、愛や温かい心のある良質な関係にとって大事なのではないか、と。
同時に、「見つめあうこと」も大切です。これは、向かい合う関係です。ロルフとジョアンは見つめあい、同時に、お互いの〈瞳の中〉に「静かな海」を横並びで見ていたのではないでしょうか。相手の肉眼を睨(にら)んで脅すためではなく、海や月を通じて、ドリーミング(夢)を分かち合うために。
関係性の深層に潜む「月」や「海」のようなドリーミングがあってこそ、夫婦やカップル関係が結びつき、安定し、愛や温かさが育まれます。お互いが相手を「肉眼」で見る、と同時に相手と一緒に「心眼」でドリーミングを共有する。
あなたは、ドリーミングを指向した夫婦療法に、ご関心がありますか?
(7)“we(私たち)” 創り
そのために必要なのは、〈健康な〉「自我」「私」「個人」です。
それがなかったら、「俺が月をきれいだと思っているんだから、君もぜひ同調して、俺のロマンチックな気分を盛り上げてくれ。俺の想いに合わせてくれて当然だろう。」となりかねません。それは、自己愛的、自己中心的、利己的「共生、融合、同一、同調」の強制に過ぎず、心の未熟さの反映です。
だからといって、「お互い相手の正面を見て座り、別れる別れないで言い争う」ような、自我、私、個人をベースに置いたやり取りが、無批判にいいとは考えません。そうした欧米流のやり方は、あまりに直截的で、そこに厚みや深みがないからです。
そうではなく、精神分析医トーマス・オグデンの「第3のもの(ここでは「月」や「海」のこと)」と、C.G.ユングやミンデルの「ドリーミング(夢)」が必要です。
ドリーミングは、深層に潜むものであり、時間や空間から自由で、「永遠」です。
「永遠なる第3のもの」が、夫婦やカップルの要点です。
夫も妻も、夫婦で創る “we(私たち)” を、“I(私)” つまり「私事」として思えるようになることが大切です。これは、大変困難です。なぜなら、“we” は、自分と文化衝突する相手を含んだものだからです。
「私たち」を「私」と考えることができるかどうか。
このとき同時に、自分と相手とのそれぞれ異なる「自我、私、個人」を敬うことが大切です。
どうすれば、「私」と思える「私たち(we)」を創造することができるでしょうか?
私たちと一緒に取り組みませんか?
(8)今まさに夫婦関係で悩んでいるあなたへ
パートナーの不倫、DV、借金、婚外子、中絶、アルコール問題、腐れ縁(共依存)、回避的関係(冷戦状態)、敵化敵関係(戦争状態)、離婚の危機、親権、姑問題などで苦しんでいたら、夫婦療法をご活用ください。
仕方がないと諦めず、絶望せず、うつに陥(いったままにな)らず、あなたの「助けて!」の声を聞かせてください。
あなたの夫婦関係やパートナーシップの再建を支援させていただきます。
長期的なサステナビリティ(持続可能性)とウェルビーイング(幸せと健康)を意図したセラピーをご提供させていただきます。
一般社団法人ファミリービジネス支援センターでは、ファミリービジネスに特化したマリタル・セラピー(夫婦療法)もご提供しています。
(9)夫婦療法を学びたい方へ
夫婦療法を学ぶのに最適のセミナーや連続講座をご用意しています。
あなたの興味・関心・問題意識に合わせて、ご活用ください。
夫婦・カップル療法の極意を学ぶ ~セラピストのパラダイムシフトとは~
夫婦療法やカップルセラピーのニーズが高まる一方で、専門的なトレーニングを積んだセラピストはほとんどいません。夫婦・カップル療法におけるメンタライジングや “Not-We” の観点を身につけます。
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