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夫婦療法 ~『敵』になった家族とコラボレーションなんてできるの!?~|2021/12/26(日)

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1)年末セミナーは、「夫婦療法」をテーマに、敵対する家族どうし、「敵」になってしまった家族どうしが、どうコラボレーションするか、という難題に取り組みます。これは夫婦だけでなく、敵対する親子や、兄弟姉妹関係にも通じる、困難なテーマでもあります。

2)夫あるいは妻を「敵」と見なすのは、ずいぶん極端かつ過激で、マイナスに思えます。しかし、次の数字を見ると、うなずけるところがあるかもしれません。2019年8月時点で、厚生労働省が発表した日本の離婚率は約38.3%です。およそ1分49秒に1組が離婚している計算になります。

警察白書によると、現代日本の凶悪犯罪は、年間約1,000件で、その半数以上が、家族がらみです。家族は、現代日本で、もっとも治安の悪い場所の1つ、と言えるでしょう。家族がらみの暴力事件の中には、夫婦が互いを「敵」と見なしたり、敵対している夫婦が子どもを巻き込み事件となっている場合が、少なくないと考えます。

3)長年、夫婦療法に携わってきた中で、夫または妻が、あるいは両者が、相手をいったん「敵」とみなしたり、決めつけたりしたら最後、その見方、考え方、立場を絶対に変えずに固執する、というケースに多々触れてきました。

そうしたことを、ファシリテーションの第一人者アダム・カヘンは、「敵化(enemyfying)」と呼びます。それは「相手こそ夫婦関係を悪くした張本人である、あるいは相手が自分を追い込み、傷つけ、苦しめる原因であると決めつけ、行動すること」です。敵化された相手には、「敵対者」「敵」「反対者」「悪人」「加害者」などのレッテルが貼られます。「悪魔(サタン)化( satanization)」されることもままあります。

敵化が長引くと、その決めつけを教育、啓蒙、説得で「変えさせる」ことはまずできません。カウンセリング・マインドをもって見守る中で、その考えを「変えてもらう」「変わるのを期待する」あるいは「変わるまで寄り添う」という姿勢やアプローチも機能しないことが、ままあります。

4)深層心理学には、相手を敵化する見方を、そう見る本人の「シャドウ(影)」や「投影」として考える立場があります。しかし、「シャドウ・ワーク」や「投影の引き戻し」という取り組みをどんなに試みても、敵化には役立たないことが少なくなくありません。カウンセリングや深層心理学(の見方、ツール)は、万能ではありません。

(注:シャドウ・ワークや投影の引き戻しは、大変有益な心理学的アプローチです。使い方を工夫すると、「敵」との取り組みに大変有益です。セミナーで、わかりやすくお伝えします)

5)夫婦が、相手を敵化している場合、カウンセリングや深層心理学的取り組みは、絶望的なのでしょうか? あるいは、交渉術には「ウィン-ウィン交渉」がありますが、果たしてそれも機能しないのでしょうか?

残念ながら、役に立たない場合がままあります。その理由は、相手を敵化することが、「心理的防衛」であったり、そう決断した自分が「新しいアイデンティティ」となっていたり、相手を「敵」とする見方、考え方が、「新しい信念」となっていたりするためです。

6)では、どうするといいのでしょうか?

ここで、話を別の角度から考えましょう。あなたは、敵化が起き(てい)る夫婦や家族の関係が、国家に譬えると独裁主義国家、専制主義国家のようになっていることをご存知ですか?

日本には、現在でも家父長制(=直系家族)の影響を受けている家族が、少なくありません。直系家族は父親~より適切には先祖~を頂点とし、長男を優遇する階層構造から成ります。そのため、そこには、独裁主義国家にあるような階層的暴力、遺棄や無関心が生じ、慢性化しやすい欠点があります。

7)2021年の現在、国連加盟国における「非民主」主義国家の数は、「民主」主義国家の数の約3倍あります。その状況の中で、民主主義のルールに則り、多数決を取ったらどうなるでしょう?

国連では「民主」主義国家が、「非民主」主義国家に数の論理で敗れることになります。そうしたケースが、実際に多い。独裁主義国家や専制主義国家が協力すれば、民主主義国家連合を「民主主義的」に、多数決で打ち負かすことができる。深刻かつ重大な問題です。

8)夫婦の「平時」や「ゆとり」のあるときは、民主主義、カウンセリング・マインド、深層心理学のシャドウ・ワーク、ウィン-ウィン交渉が、役立ちます。

しかし、「相手のことを、絶対に許せない」「結婚がうまく行かない原因は、わたしではなくあなたにある」「何がなんでも、相手が変わるべき」と考え、頑なになったとしたら、夫婦関係はゆとりのない切羽詰まった「有事」あるいは「極限状態」となります。

そのときの精神あるいは心は「日常の意識状態」から「変性意識状態」へと切り替わっています。この変性意識状態は、「敵」VS「味方」、「黒」VS「白」、「ゼロ」VS「100」といった極端な二分割、メラニー・クラインの「妄想-分裂」のポジション(立ち位置)からなる『精神病的状態』です。

(注:なぜ極端な二分割が精神病的状態で、それが変性意識なのでしょうか?セミナーで、ご一緒に学びませんか?)

9)対立が、もし「民主」主義国家どうしの間のことであれば、対話や交渉は可能です。しかし「民主」主義国家と「非民主」主義国家の間、あるいは「非民主」主義国家と「非民主」主義国家どうしの対立になれば、当然ながら、「民主」主義的手続きの機能しない場合がままあります。

「相手が悪い」という頑なな信念で、互いに「敵化」しあう夫婦どうしは、まさにこの状態になっていると言えるでしょう。夫婦関係が、暴力(=戦争状態)か、遺棄や無関心(=冷戦状態)かのいずれか、あるいはその両方に陥っているからです。

10)相手を敵化する心理的防衛、新しいアイデンティティ、新しい信念は、精神病的状態に根を張っており、基本的にすべて『妄想』です。が、それは絵空事ではなく、本人には「極端で強烈なリアリティ(実感)」が伴います。そしてその状態に、敵である相手、場合によっては子どもを巻き込みます。精神病的ですから、通常のやりとりは、基本的にまったく機能しません。

11)夫婦の問題は、実際はまちがいなく複雑で多彩で多岐にわたりますが、この「敵化」という精神病的あるいは妄想的見方は、物事を「白VS黒」「良いVS悪い」「犠牲者VS加害者」といった単純な図式で割り切ろうとします。この、わかりやすい粗雑でデフォルメされた(大きな)物語に、竜巻や土石流のように相手を巻き込みます。もちろん相手は悪者で、自分は被害者で善人、犠牲者です。

12)単純化されわかりやすくされた大仰な作り話は、高揚感、正義感、悲劇のヒーロー/ヒロイン感を?き立てます。それは、精神病的状態における「躁転」です。躁転は、夫婦間に存在する、また相手および自分に潜在する真の課題から目をそむかせ、問題解決の機会を失わせます。

それは、分断、二極化、無視、衝突を強化します。結果、複雑で多彩で細やかなプロセスが殺されます。それは、乱暴でがさつな見方、考え方です。家族療法的には、殺された複雑で多彩で細やかなプロセスは、「IP」~例えば子ども~が、マイナスの形で担わされます。

13)単純化された精神病的な夫婦関係には、家族療法家マレー・ボーエンの「三角関係化」、メラニー・クラインの「投影同一化」、ハインツ・コフートの「自己愛憤怒」が潜在します。(注:「敵化」に伴う三角関係化、投影同一化、自己愛憤怒については、セミナーでご説明します)

14)しかし、そのような状況、状態、条件下でも、夫婦においては、相手と協力、協働しなければならない場面が多々あります。たとえば、財産分与や子どもの親権などについて、相手とコンタクトしないわけにはいきません。コミュニケーションを拒む相手、コミュニケーション自体を信用しない相手、話し合いや交渉の場に現れることをしない相手、ワークなどもってのほかと考える相手、と協力することが求められるケースが多々あるのです。

民主主義的対話や協力を望まない人とも、あるいは自分の見方を相手に押しつけ服従させようとする人とも、さらには、相手の方が強いとわかった途端、卑屈になって相手に従順になる人であっても、「協働」が必要になるのです。

15)精神病的妄想に基づいて相手を敵化する人は、自己中心的、自己愛的で、相手をモノのように扱います。が、民主主義的マインドの持ち主も、自己愛をひそかに潜ませ、相手に勝手な期待をいだいている場合が、ままあります。

たとえば「自分が民主主義的であれば、相手も民主主義的になるはずだ(べきだ)」というものが、それに当たります。しかし、こちらがどれだけ民主主義的でも、相手が民主主義的になるとは限りません。もし、それを相手に期待するなら、そこに自己愛的妄想、相手に対する過大な期待、コントロール欲求があるのかもしれません。相手を変えることはできません。

16)こういった事実、現実を冷徹に見据えたうえで、今回、夫婦における「敵」とのコラボレーションやコミュニケーションについて、取り組みます。

それには、自分が相手を無意識に「敵化」していないか、また相手から自分が「敵化」されていないか、冷静に振り返ることが必要です。夫婦が、「非民主」主義国家VS「非民主」主義国家か、「民主」主義国家VS「非民主」主義国家のような状態に陥っていないか、見極めることが求められます。

17)非暴力的コミュニケーションの提唱者マーシャル・ローゼンバーグや、ファシリテーションの第一人者アダム・カヘンは、「愛(love)」だけでなく「パワー(power)」の行使を勧めます。従来のコミュニケーションやファシリテーションでは、「パワー(力)」は、マイナスのものとのみ見られ、忌み嫌われてきました。

しかし、対話の意志のない、あるいはやり取り、ワークを望まない「敵」には、愛だけでなくパワーが必要だというのです。その行使の仕方、塩梅(あんばい)について、セミナーでお伝えします。

18)システム論も参考になります。ただし、敵化の激しい夫婦関係と取り組むファシリテーターやセラピストは、自分が夫婦関係(システム)の中に巻き込まれることを回避できないこと、つまり自分が関係(システム)の当事者の1人になる点に、意識的であることが求められます。

それは、量子(quantum)的あるいは関係療法(relational)的視座です。関係の外から、客観的、中立的に夫婦を支援できるとする従来のシステム論的とは異なる考え方、やり方です。

19)加えて今回、
(a)「コンパッション(慈悲、共苦)」
(b)「発達心理学」
(c)「妄想-分裂ポジション」
(d)自己愛的期待や妄想からの「脱期待、脱妄想、脱錯覚」
(e)家族療法の「三角関係化」や「IP」
(f)ユング派精神科医、D.コールマンの「スケープゴート論」
(g)W.ビオンの精神病的関係ににおける「基本的仮定(basic assumption)」
(h)自己愛憤怒を総動員して取り組みます。

それらをまとめあげ、基本からわかりやすくお伝えします。

20)このセミナーでは、「敵化」の生じている単純化され、極端で、大仰で、頑なな夫婦関係への取り組み、介入、支援について学びます。あなたは、夫婦療法~敵、賛同できない相手、嫌いになった相手、信頼できなくなった相手とのコラボレーション~に、ご関心がありますか?

通常のセラピー、コーチング、ファシリテーション、交渉の俎上に載らない、「敵化」の起きている困難な夫婦関係に取り組むことは、大変な状況にあるクライエントの人の支援になり、あなたの対人援助力を鍛え磨きます。

またこの援助力は、夫婦関係だでなく、「敵化」の起きている兄弟姉妹関係や親子関係にも応用のできることは間違いありません。

21)このテーマにご関心のある対人援助の専門家、専門家を目指す方、初めて聞く内容だけれど、日々の暮らしに、また家族、ビジネスに活かしたいと考えている一般の方、初心者の方、そして難しいテーマを自己成長や自己実現の糧にしたいあなたの、セミナーへのご参加・ご購入をお待ちしています。

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日時■ 2021年12月26日(日)10:00~17:00

会場■ zoomオンライン会議(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)

費用■ メールマガジンにてご案内しております。

講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子