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甘えの心理療法 ~日本で生まれた最良の心理学的視座~|2019/05/26(日)

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1)今から48年前に出版された『甘えの構造』。英語やドイツ語をはじめ、8か国語で翻訳され、世界中でいまも読まれている、精神科医・土居健郎の名著です。「甘えの構造」という言葉については、おそらくあなたも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。しかし今日、この本を実際に読んだり、その中身を吟味したりする人は、少ないかもしれません。初版が出たのが、昭和46年。昭和から平成、そして令和と時代が変わっても、その中身は、まったく古さを感じさせません。

2)私たちの令和第1弾のセミナーでは、「甘えの心理療法」を取り扱います。土居が48年前に提唱した「甘え」にまつわる視座は、いま、関係療法の中でよみがえり、より一層の輝きを放っています。「甘えたい」「甘えられない」「甘えさせてもらえない」「どう甘えたらいいかわからない」これらは、心理療法の場面で繰り返し語られる言葉ですが、私たちにとって空気と同じくらい重要な「甘え」のテーマを、今回のセミナーでは、今日的な視点から、まっすぐ考えていきます。

3)土居は若かりし頃、留学したアメリカで出会った精神科医たちが、「概して、患者がもがいている状態に対して、恐ろしく鈍感である」こと、またその理由を、「彼らが、患者の隠れた<甘え>に容易に感知しないため」と明言しています。私たちは、土居の着眼点に賛同します。心理療法、コーチング、ボディワーク、ファシリテーション、コンサルティングにおいて、鈍感にならず、繊細で、かゆいところに手の届く対人援助を行うには、クライエントの水面下に潜む甘えに着目することは、不可欠だといえるでしょう。

4)土居が、日本人とイギリス人とのハーフの患者とセラピーを行っていたときのこと。ある日、その患者の母親(日本人)から、患者の生い立ちについて聞かされ、患者の幼少期のことに話が及んだとき、それまで英語で話していた母親が急に、「この子はあまり甘えませんでした」と日本語で語り、その後、すぐにまた英語に切り替えたというのです。土居が、その母親に、「なぜ、『この子はあまり甘えませんでした』ということだけ日本語で言ったのか」と聞いてみると、母親は、「これ(甘え)は英語では言えません」と答えたというのです。

5)当時、土居や彼の精神分析サークルは、甘えを、日本人や日本文化に特有なもの、英語文化圏には存在しない、存在したとしても例外的なもの、と考えていました。が、今日、関係療法が広く世界中に行き渡ったことに伴い、同様の心理現象が、文化を超えてどこにでも存在するものと理解されるようになっています。また甘えは、「自分」の基盤となる他者との関係への根本欲求と考えられています。「人間はかつて(ex.幼少期)に甘えることを経験しなければ、自分を持つことはできない」とも述べています。

6)そもそも、甘えとは何でしょうか?それは、味覚チャンネルにおける、口唇に関した経験です。赤ちゃんがお母さんのおっぱいを吸って、心地よさや安心を感じている場面を想像できるでしょうか?このとき、赤ちゃんにとって、味覚チャンネルでの快楽や安心感、つまり甘え体験は、自分を丸ごと包み込む、やさしく十全な世界体験といえるでしょう。「対象(ex.母親)と溶け合って一体化したい欲求」、「快楽をベースとした相手との想像的一体感を求める気持ち」を、<甘え欲求>といいます。これは、フロイトやロマン・ロランが「大洋的感情」と呼んだものであり、M.マーラーの「共生期」に属し、K.ウィルバーの「プレ・パーソナル」に当たります。(注:詳しくは、セミナーでお伝えします)

7)土居は、甘えを「他の人の好意をあてにしたり、それに依存したりすることのできる個人の能力および特権」と定義しました。この定義は、赤ちゃん時代以降に甘えの成功体験を積み重ねた結果、後天的に得られる能力であり、特権を指したものです。

8)さて、甘えがかなうかどうかは、相手次第です。特に、乳幼児期の甘えはそうです。甘えは、「関係」体験です。甘える側は、依存的かつ受け身的にならざるを得ません。(注:M.バリントは、これを「受け身的対象愛(passive object love)」と呼びました。それは、対象(=相手)に愛されることを求めることで、甘えと同じ概念といえるでしょう。詳しくは、セミナーでお伝えします)相手に受け身的に依存するため、甘えは、いつ、壊(さ)れても、なくなってもおかしくありません。甘えは、不安定な体験です。そのため、「甘え」は、即、「恨み」や「不信感」に反転します。恨みは、甘えの挫折に由来します。いや、(土居によると)甘えと恨みは本来未分化で混在しており、アンビバレント(両価的)な関係にあります。

9)「甘えと恨み」の系列上に、「すねる」「ひがむ」「ひねくれる」「こだわる」・・・といった感情があります。土居は、日本文化は甘えの文化であり、そのため、プラスの意味でもマイナスの意味でも、甘えに関する言葉が豊富にある、幼少期の母子関係や人間関係のテーマとの取り組みには、甘えについてよく学ぶことが、良質な臨床を保証すると考えました。日本での心理臨床には、M.クラインの「妄想-分裂ポジション」を、「ひねくれることであり、ひがむこと」と、H.コフートの「自己対象転移」を、「甘え」と、読み替えることが不可欠であるとも書いています。(注:このあたりに関しては、セミナーでわかりやすくご説明します)

10)土居は、「真に人間的な関係には甘えが内包されている」、「甘えは心と心の深い結びつきを可能にする」、「甘えは神聖(holy)で、無邪気である」などとも述べています。甘えは、1人心理学的な、心の縦次元(のみ)の神聖さやスピリチュアリティから私たちを解放し、横次元(=関係性)を加味した神聖さやスピリチュアリティについて考えるヒントを与えてくれます。あなたは、退行的な甘え(大洋感情)と、神聖さに通じる甘えの違いがわかりますか?

11)甘えは、「情緒応答性」「情動調律」「もの想い」といった繊細なやりとりや、それらの失敗による小文字の、見えにくいトラウマと密接に関係しています。これは、現代的うつ、摂食障害、アルコール依存といった嗜癖、共依存、パーソナリティ障害、強迫性障害をはじめとする各種の心のテーマと深く関連しています。情緒応答性、情動調律、もの想いを適切に行うには、関係への繊細なまなざしが不可欠です。これには、甘えの視座(パースペクティブ)が欠かせません。また甘えは、私たちのやる気、喜び、幸福感、レジリエンス(回復力)などを応援する源泉です。このセミナーでは、人間関係や「自分(作り)」の根本にかかわる甘えについて、基本から最先端までを、わかりやすくお伝えします。

甘えについてご関心のある専門家、および一般の人、初心者の人に役立てていただける内容です。たくさんのケースを交えて、あなたとご一緒に学べる機会を楽しみにしています。

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日時 ■ 2019年5月26日(日) 10:00~17:00

会場■ 都内(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)

費用■ メールマガジンにてご案内しております。

講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子

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個人、カップル、家族、組織に潜む『病態水準』の見極め方と対応|2019/04/28(日)

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1)カウンセリング、コーチング、コンサルティングを実践する上で、クライエントを理解し対応するための最高のツールとは、何だと思いますか?

私たちは、「病態水準」だと考えます。

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発達障害のこころの構造 〜その内的理解と取り組み〜|2019/03/24(日)

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1)私たちは勘違いしていました。約25年前に、発達障害(自閉スペクトラム症)で悩む人との心理療法に取り組むまで。それまで、象徴(シンボル)やメタファーこそが、心理療法の中核にあると思い込んでいました。C.G.ユングやM.クラインは、象徴を生み、形作ることが、こころの機能の中心だと考えました。私たちは、象徴やメタファーを豊かに創出する夢分析、イメージワーク、絵画療法、ドリームボディワークを好んで行っていました。

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幸せ心理学(Well-being Psychology, Happy Psychology)|2019/02/24(日)

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1)あなたは幸せについて、考えたことがありますか? なんとなく漠然と、あるいはまっすぐに?

人生の目的は、幸せになることだと思いますか?

今はまだ余裕はないけれど、いつか幸せについて真剣に考えたいと思っていますか?

自分はまだしも、子どもや孫、親や近親者、親しい友人には幸せになってほしいと考えていますか?

パートナーや家族と、幸せについて話しあったことはありますか?

あなたやパートナー、ご家族にとっての幸せは、どういったものでしょうか?

こうした問いに、当てはまるもの、思いあたることが1つでもあれば、今回のセミナーはあなたにお勧めです。

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タオ(Tao)とフロー(Flow)の心理学 ~共時性、コンステレーション、ゾーンを読み解く~|2019/01/27(日)

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1)あなたは、タオ(Tao)やフロー(Flow)という言葉や概念について、聞いたことがありますか?それでは、ゾーン(Zone)は、どうでしょうか?

フローやゾーンは、かつては人間性心理学やトランスパーソナル心理学において語られ、また、新しくはポジティブ心理学が唱えてきました。そして、ユング心理学でも、同様の内容を別の言葉で表現してきたものです。

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トラウマとレジリエンス~心的外傷からの回復力最前線!~|2018/12/23(日)&24(月祝)

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1)「心なんて、折れてなんぼ。私なんて、何度心が折れたか知れない。今でもしょっちゅう折れていますよ。(全日本女子バレー監督、中田久美氏の言葉)

「死ぬこと以外、かすり傷」(真山仁著『ハゲタカ』の主人公、鷲津政彦のきめ台詞)

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高機能依存症&共依存症 ~人生を台無しにしないために~|2018/ 11/25(日) 

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1)アルコールや薬物、買い物、ゲーム、ギャンブル、性的逸脱などに関する依存症や共依存症。それらは人の人生を台無しにしかねません。あなたは依存症についてどんなイメージを抱いていますか?

意志が弱い、性格破綻者、仕事と家族を失ったダメ人間、すべてを失くした酔っぱらい、(薬物依存に対しては)犯罪・・・。こういった一面的見方、偏見、ステレオタイプが蔓延しているかと思います。

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解離の心理療法 〜重複障害をめぐって~ |2018/10/28(日)

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1)今日、「解離」は、たくさんの人が、多かれ少なかれ負っている心理的課題です。取り扱いが大変難しく、癒しや回復、変容が生じにくいテーマです。今回は「解離」を取り上げ、臨床実践から新たに得た経験と知見をもとに、セミナーを開催します。

2)解離は、解離性障害に典型的な形で現れます。が、それだけにとどまらず、アルコールや薬物、買い物、セックスなどの各種依存症、共依存症、DVやIPV(親密なパートナーによる暴力)、自己愛性および境界性パーソナリティ障害などとの「重複障害」となって生じます。そのため、取り組み、癒し、回復、変容が非常に困難です。

解離は、現代人の心理テーマとして、潜在していることが少なくありません。

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サヨナラGGマインド ~自己活性化の心理学~|2018/09/30(日)

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1)あなたは「GG資本主義」という言葉を聞いたことがありますか?

「上の世代がいつまでたっても重要ポストに居座り、企業をはじめあらゆる場所で新陳代謝が起きにくくなっている。その結果、若い人たちが力を発揮する場所が一向に増えず、社会に新しい価値観が根づかない。時代が変化しつつあるのに、旧来型の発想から抜け出せず、成長の芽が摘まれてしまう。

私はこの社会現象を『GG資本主義』と名づけました。

GGが何かって・・・・・・?

もうおわかりでしょう(笑)」

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夫婦・カップル療法|2018/08/26(日)

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1)ここ数年、夫婦・カップル療法のニーズが高まっています。結婚、離婚、再婚、DV、アルコール依存、共依存などに関する心理相談がよりいっそう増えています。

にもかかわらず、夫婦・カップル療法の専門家、結婚、離婚、再婚カウンセリングに関する心理のプロの数は相変わらずとても少ない。

今回のセミナーは、夫婦・カップルセラピーの基本と最先端を学ぶものです。

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