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1)現代心理療法の最重要テーマの1つに、「ナルシシズム(自己愛)」があります。
あなたは、精神分析やトランスパーソナル心理学などが、過去数十年の間に取り組んできた最大の課題の1つが、ナルシシズムであることをご存知ですか?
続きを読む ナルシシズムの4つの型とスピリチュアリティ|2020/01/26(日)
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1)現代心理療法の最重要テーマの1つに、「ナルシシズム(自己愛)」があります。
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1)あなたは「贈与(gift、ギフト)」という言葉を聞いて、どんなことを思い浮かべるでしょうか?
「贈与」は、古くは経済人類学の、近年では経営や交渉術の最先端のキーワードです。
2015年、国連サミットでは、持続可能な開発目標である「SDGs」が採択されました。そこでターゲットとされた、地球規模でのいのちや経済の持続可能性を達成するうえでも、欠かせない概念。それが「贈与論」であり、大変豊かで、また聖なるコンセプトです。
2)あなたは、「贈与論」について聞いたことがありますか?
今年の年末恒例の集中セミナーでは、この「贈与」をベースに置いた夫婦、結婚、離婚、再婚療法セミナーを、1年のまとめとして開催します。私たちの今年1年間の心理臨床や、ファミリービジネス・コンサルティング、コーチング、講座を統合した、1年間のエッセンスが詰まった内容です。
3)贈与は、人と人との関係に、新しいスピリチュアルなパースペクティブ(視座、参照枠)を提供します。贈与が、人と人の間の、また人と超越的存在との間の、円環性、相互依存性、全体性、”give&give”、神聖さなどと、不可分だからです。贈与が神聖さと関係があると聞いて、驚かれたでしょうか?
4)円環性、相互依存性、全体性、神聖さ/スピリチュアリティなどとの関連でとらえる贈与の視点は、人類学、社会学、哲学、経営学、宗教学、交渉術などの各分野で、最先端のテーマとして議論されてきています。しかし、その成果は、不思議なことに心理療法には、ほとんど入っていません。
5)今回は、日本ではほとんど知られていない、ユング心理学的夫婦療法、および関係療法的夫婦療法を参照して、贈与(gift)の観点から、夫婦、結婚、離婚、再婚について学びます。
ユング心理学的夫婦療法とは、ポリー・ヤング=エイゼンドラス(Polly Young-Eisendrath)が創始した「ダイアローグ・セラピー(Dialogue Therapy)」や、ハーヴィル・ヘンドリクス(Harville Hendrix)による
「イマーゴ・リレイションシップ・セラピー(Imago Relationship Therapy)」を指します。両セラピーとも、日本ではほとんど知られていません。加えて、関係療法的夫婦療法については、新しい精神分析を中心にお伝えします。
6)贈与について私たちの目を開かせたのは、社会人類学者のB.マリノフスキと、M.モースでした。彼らは、未開社会や古代社会を研究し、
次のことを見出しました。
モースによると、贈与には
(a)与える義務
(b)受け取る義務
(c)返礼の義務
の3側面があります。
この3つが円環的に進まないと、世界は機能しなくなるといいます。社会が停滞してしまうのです。
停滞は回避されなくてはなりません。したがって、(a)(b)(c)のいずれかをコミュニティのメンバーが拒否すると、社会からの制裁(ex.村八分)が課せられます。
7)あなたは、与えることだけでなく、受け取ることの義務、をイメージできるでしょうか?
理由は、人が受け取ることを拒むと、社会的交流が滞ってしまうからです。モースによると、この3つは、人間社会が交流し、生存&永続するために不可欠な仕掛けです。贈与を元にした円環的交流は、社会における見えない血管とそこを流れる血液であり、社会および人を滋養し、豊かで元気にするもの、力や意味を与えるものです。
8)さて、
(a)与える義務を果たさないのは、戦いを宣言するに等しく、
(b)受け取る義務を拒むのは、返礼への恐れの表明ととられ、さらに、
(c)返礼の義務を果たさないと、権威や社会的な地位や他者からの尊敬を失います。
贈与の真逆にあるのは、戦争です。 (a)(b)(c) が適切に展開しないと、戦争が起きても不思議ではないというのです。
構造人類学者のレヴィ・ストロースによると、贈与の典型的な例は結婚であり、結婚は、異なる部族間の、また家と家、人と人の間の戦いを防ぎ、関係を密なものとする最良の仕掛けです。
9)このセミナーでは、結婚、離婚、再婚を、「戦争と平和」というところからもとらえます。結婚を、戦争や平和といった点からとらえるなど、大仰な誇大妄想に聞こえるかもしれません。しかし、戦争や平和を、内的なプロセスととらえ直すと、それらが結婚や夫婦療法に大変有益であることが見えてくるかもしれません。
詳細は、セミナーでお伝えします。
10)モースが述べた贈与(gift)は、物理的貨幣、つまり金銭にまつわるものではありません。物理的貨幣や金銭に還元できない、非物質的価値を伴ったものです。
「甘えの構造」の著者で精神分析家の土居健郎氏は、「日本人は贈り物に<魂>を込める」と述べました。
11)私たちは、良質な夫婦関係、結婚には、金銭では計り知れない、贈与を通じた非物理的次元での相互交流が不可欠だと考えます。
ここで重要なのは、夫(あるいは妻)のパートナーへの贈り物が金銭に還元できないこと、また、夫(あるいは妻)の贈り物がパートナーの贈り物と等価交換できないことです。金銭や等価交換を超えた、想定外の贈与や交換こそが、豊かで意味ある夫婦関係を作り育む血管であり、そこを流れる血液です。
一方、それが金銭に還元でき、等価交換できるとしたら、単なる「ギブ&テイク(give & take)」に帰結してしまいかねません。それでは、夫婦間に、真の意味での円環性、相互依存性、”win-win/give-give”、神聖さ/スピリチュアリティ、全体性を生み出すことはありません。
12)あなたは、数字に表せない、等価交換できない贈与を想像できますか?
そこには、非日常性、魂、奥行きが伴います。それこそが、夫婦や家族関係を真に豊かにします。一方、金銭、等価交換、ギブ&テイクは、それがどんなに素晴らしく高価でも、夫婦関係を日常的次元に留めます。日常的次元には、深みがありません。フラットランド(平板)です。
13)今回取り組む贈与を起点とした夫婦療法は、非日常性、聖なるもの、スピリチュアリティ、魂といった次元にまなざしを向けたものです。
非日常的次元には、情緒、魂、スピリチュアリティが実在します。この次元を大事にしないと、夫婦関係は親密さや絆、豊かさを築くこと、育てること、持続することが難しくなります。
14)では、こうした非日常的次元を包含する夫婦関係や結婚をクリエイト(create)するには、どうすればいいのでしょうか?
あなたはどう思いますか?
現在、夫婦療法、恋愛、結婚、離婚、再婚に関するセラピーのニーズは、ますます高まっています。若い世代だけでなく、中年、高齢者の間でも、恋愛、結婚、不倫、離婚、再婚は、カウンセリングの場面で繰り返し登場する喫緊の最重要テーマの1つです。このセミナーでは、贈与(gift)を中心とした夫婦療法について、基本から最先端までを学びます。
15)今回のセミナーは、私たちのこの一年間の心理臨床、コーチング、コンサルティング、セミナーを統合してお届けするものです。
贈与にもとづく円環的交流をベースにした、豊かで多次元的な結婚や離婚、再婚、家族の支援。また、贈与論をもとにした関係療法的な心理療法。
それらをあなたとご一緒に学べる機会を楽しみしています。
専門家の方および一般の方、初心者の方のご参加を歓迎いたします。
* * * * *
日時 ■ 2019年12月28日(土)・29日(日) 10:00~17:00
会場■ 都内(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)
費用■ メールマガジンにてご案内しております。
講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子
◎ 配布資料+音声データをご購入いただけます
1)心理療法における「分身」とは何でしょうか?
なぜセミナーで、分身を取り上げるのでしょう?
心理的分身とは何を意味するのでしょう?
今月のセミナーでは、「心の次元」である<分身(twinship、ツインシップ)>と、「魂の次元」における<分身(twinsoul、ツインソウル)>に着目します。
あなたは、心理療法における心のツインシップや、魂のツインソウルまたはソウルメイト(soul mate)について聞いたことがありますか?
分身が、心や魂の次元で、とても大切な役割を担っていることを、ご存知ですか?
2)ツイン(分身)は、半身となった心、分裂・分断された魂が、全体性を回復し、「自分」になること、人として「 I am OK」感を持つうえで、大変重要です。
3)分身を重要視した心理療法家に、ハインツ・コフートがいます。
コフートは、人が「まとまりをもった自己」感覚を得るには、幼少期に母親に認められ、ほめられることを通して「野心」を健全に発揮したり、また、父親が北極星のような「理想」の存在であることが必要だ、と考えました。野心や理想は、幼児期に「自己」を確立する上で不可欠です。
コフートは、子どもがこの2つをいい形で体験できないと、I am OKの感覚、等身大の自分、自分らしさの土台となる「まとまった自己」を形成できない、と考えました。
4)しかし、他にも自己形成のチャンスはあります。
「分身」です!
エディプス期と言われる3歳以降、潜伏期、そして青年期に、分身を見つけることで、自分にまとまりを作ることができます。
分身とは、何でしょうか?
5)分身は、英語で”twinship(ツインシップ)”ないしは”alter-ego(オルターエゴ)”です。ツインシップには「双子」、オルターエゴには「親友」という意味があります。心理的双子や心理的親友ができると、「自己」はまとまりを得て、安定します。
6)人格形成においてベストは、野心と理想が満たされ、さらに分身を持つこと。少なくとも、野心、理想、分身の3つのうち、2つが充足されていること、だと言われています。
が、ハインツ・コフート自身、幼少期に野心と理想が満たされず、失望と孤立、孤独の中で、さみしい時を過ごしました。そうした中で、彼は、10歳年上の男性の家庭教師に、分身を見出したといいます。
7)コフートは、家庭教師を親友(分身)のように感じ、愛や親密さを経験します。それまで失望し、孤立感にさいなまれていたコフートにとって、家庭教師は救済者のように映り、精神的な同性愛感情を抱いた、といいます。
8)統合失調症治療の第1人者である、ハリー・スタック・サリバンは、青年期の同年代による同性愛的親密性を重視しました。これは、男性も女性も同じです。
古今東西の未開文化には、かつて「通過儀礼」がありましたが、そこでは、人工的にピアグループによる同性愛的親密関係が形成されました。同性愛的親密関係を持つことが、子どもを、大人に変容・成長させるための、不可避の要素だと考えられていたからです。
9)サリバンによると、親友との親密さが欠けると、人~特に青年~は、不安定で安全や保障感や確かさを体験できず、精神病状態に陥りやすくなります。また、ボッチ感や恥の感覚にさいなまれやすくなります。
10)母からの承認、および父親への理想化がかなわない場合、人は「自己」にまとまり、統合感、秩序を得るために、心理的分身を切望する。これが、コフートの考えです。
11)分身は、自分との類似性や同一性を心理的に共有でき、We(私たち)の感覚を持てる相手です。分身は、自分を理解してくれる存在であり、自分にとって理解したい存在です。この体験をベースに、人は、「自分はここにいていいんだ」という、世界に対する所属感や居場所感を持つことができます。
12)分身は、青年期には「親友」として、また、人生後半には「後継者」といった形で、希求されます。自分の事業や生涯を継いでくれる存在を、中年期以降、私たちは求める、というのです。
13)さて、ここまでは、「心ないし主観」の次元における分身について、述べてきました。次に、「魂」の次元の分身について、少し考えます。
たとえば、表面的には仲が悪く、なぜ、長期間にわたって関係を維持しているのか、よくわからない夫婦がいたとします。
夫婦カウンセリングをしていくと見えてきたのが、2人がよく似た傷つきを、人生のメインテーマとして、繰り返してきた、ということだったりします。心のより深い魂の次元で、まるで分身のようであることが2人に理解されると、今までよりも、ずっとまとまり・統合感のある夫婦になっていきました。夫婦カウンセリングをするまで、この点は明らかになっていませんでした。
14)魂の深い傷つきを通して、相談者の癒しの作業を行うヒーラーを、「ウンデット・ヒーラー(wounded healer、傷を負った癒し手)」といいます。ユング心理学は、このイメージを大切にして、心理療法を行います。
「あなたもそうだったのですか、私も同じタイプの傷を負っているので、あなたの傷つきに共感できると思います」
「エッ、先生もそんな傷を負ってたのですか?!」
といったやり取りを、深い次元で行い、クライエントの人の癒しを応援するのです。それはまるで、「ツインソウル」をさがす作業のようです。2人が、ソウルメイトであったことを、見出す過程かのようです。
あなたは、ソウルメイトに関心がありますか?
15)「啐啄同時(そったくどうじ)」や「共時性」は、自分と世界とのスピリチュアルな分身体験です。(注:啐啄同時と共時性に関しては、セミナーでお伝えします)
16)このセミナーでは、分身について考えるにあたって、さまざまな視点を多角的に取り入れます。上に述べたこと以外に、河合隼雄氏の「片子(かたこ)」、カルロス・カスタネダの「分身」、土居健郎氏の甘えと同性愛感情との関係、プラトンの「人間球体説」、その他です!
☆今回、心理療法において、とても大切でありながら明確化されてこなかった「分身」について、基本から最先端までをご紹介します。カウンセリング、心理療法、コーチング、コンサルティングの臨床力、実践力を身に着けるうえで有益な機会です。
専門家の方および一般の方、初心者の方のご参加を歓迎いたします。
あなたとご一緒に学べることを楽しみにしています。
りご連絡ください。
* * * * *
日時 ■ 2019年11月24日(日) 10:00~17:00
会場 ■ 都内
費用■ メールマガジンにてご案内しております。
講師 ■ 富士見ユキオ・岸原千雅子
会場■ 都内(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)
費用■ メールマガジンにてご案内しております。
講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子
◎ 配布資料+音声データをご購入いただけます
1)日本人のカウンセリング、セラピー、コーチングには、共通の弱点があります。あなたはそれが何だか想像できますか?
父性の弱さです。
続きを読む 父性とリーダーシップの心理療法|2019/10/27(日)
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1)困難な心の課題を、クライエントひとりの心で
なんとかしよう、あるいはさせようとするのではなく、
セラピストとクライエント、二つの心を使って、
ふたりの関係の場で、取り扱う。
それが関係療法、二者心理学の取り組みです。
これは今日の心理療法、対人援助において、
注目される、新しい考え方でもあります。
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1)家族療法は、システム論をベースに発展してきました。家族メンバー個人を、バラバラに見るのではなく、全体をシステムとみて、アプローチしていく。「木を見て森を見ない」あり方ではなく、体や存在全体を見通す、東洋医学やホリスティック的な観点をもとに、臨床実践が育まれてきました。
2)その一方で、家制度、イエ、ファミリーの深層に潜むのが、「グレートマザー」の働きです。グレートマザーが否定的に働くと、その営みはたとえば、ふとしたこんなセリフの背後にうごめきます。
「言葉にしなくても気持ちはわかっている。だって家族だもの」
続きを読む 家族に潜むグレートマザー その多次元的取り組み ~家族療法のパラダイムシフト~|2019/08/25(日)
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1)あなたは「シャドウ(shadow)」と聞いて、どんなことをイメージしますか?シャドウは、人のパーソナリティの、暗い影の側面を言います。光のあるところに、影は必ず存在します。光のもと、あなたが動くと、影もあなたと一緒に動きます。消失することはなく、あなたに付着してきます。
2)シャドウ〜人の暗い影の部分~との取り組みは、人の成長、成熟、変容に欠かすことができません。ユングによって命名された概念です。
続きを読む シャドウ(影・陰)との多次元的取り組み|2019/07/28(日)
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1)「僕は、僕の<内部からひとりでに出てこようとするもの>だけを、生きてみようとしたにすぎない・・・それがなぜ、あれほど難しかったのだろうか。<運命>とはどこかよそからやってくるものではなく、自分の心の中で成長するものである」
これは、ヘルマン・ヘッセ著『デミアン』の中の言葉です。
2)ヘッセは、内部からひとりでに出てこようとする潜在可能性を、「運命」と呼びました。そして、この自分の内部から出てこようとする「潜在可能性を、最大限実現すること」を、アブラハム・マズローは「自己実現」と呼びました。
ヘッセが「運命」と述べた、内側から自(おの)ずと出てこようとするもの。これは、自我が想定したものでなく、コントロールのきかない、自分ではどうにもならない時に恐ろしく、時に気味の悪い、が、強烈に引きつけられる「内なる他者」です。
この内なる他者を、ユング心理学では「魂(アニマ・アニムス)」と呼びます。
3)フロイト派の女性分析家、カレン・ホーナイは、自己実現を「真の自己が成長発展する過程」と説明しています。D.W.ウィニコットや土居健郎にも、真の自己とその発達過程への、同様の眼差しがあります。内部からひとりでに出てこようとする、自律的・自発的潜在可能性は、東洋の自然(じねん)であり、タオ(Tao)に当たります。
4)〈分化〉とは、成長・発達や個性化にとって、不可欠なプロセスです。
この〈分化〉のプロセスと〈自己実現)の過程。
今回のセミナーは、この2つを重ね合わせ、潜在可能性、運命、魂、真の自己、タオが心の中で自ずと成長する過程、ヘッセが示唆した「生きてみようとする過程」について、学ぶものです。
これは、自己実現から自己超越を唱えたマズローの段階説、精神分析の男性中心的な部分を批判し、フェミニズムに影響を与えた、ホーナイのいう自己実現のプロセス、そして、ユングの個性化のプロセスに該当します。
5)潜在可能性、運命、魂、真の自己を、自分の心の中で成長させるには、どうすればいいでしょうか?
ヘッセは言います。
「忘れてはいけない。偉大な人間になって何か立派なことを成し遂げようと思ったら、多くのことを断念できなくてはならないということを」と。
潜在可能性、運命、魂、真の自己の成長には、「断念、分化、分離」が欠かせません。
ユング派の河合隼雄氏は、「魂にメスはいらない」とかつて述べましたが、私たちは、「魂にはメスが必要で、メスがあってこそ、断念、分化、分離が可能になる」と考えます。
6)ヘッセが意味した、偉大な人間がする立派なこととは、潜在可能性、運命、魂、真の自己を内面で成長させることです。(決して、社会的・外的に偉大で立派な人間を目指すものではありません)
これに必要なのは、心に卵を作ることです。
ヘッセは続けます。
「卵から生まれるとき、鳥は無理やり出ようとする。卵とは世界である。生まれ出ようとする者は、一つの世界を破壊しなければならない」と。
自己実現のために、破壊しなければならない一つの世界とは、あなたにとって、どんな世界でしょうか? イメージできますか?
卵から生まれることは、グリム童話「カエルの王子さま」に登場するカエルが王子様に変容すること。また、青虫が蛹(さなぎ)になり、蛹が蝶になることです。が、それにはまず、機が熟すまで、心の中で卵を温めなければなりません。
7)あなたは、「啐啄(そったく)同時」という言葉をご存知ですか?
鳥の雛(ひな)が卵から産まれ出ようとするとき、殻の中から卵の殻をつついて音をたてます。これを「啐(そつ)」と言います。そのとき、すかさず親鳥が外から殻をついばんで破る、これを「啄(たく)」と言います。「啐」と「啄」が同時に生じてはじめて、殻が破れて雛が生まれます。
ホーナイは、心理療法を自己実現(=真の自己が成長する)過程のサポート、と考えました。これには、雛と親鳥、クライエントとセラピストの協働作業、関係療法が不可欠です。
内面に卵を作るために。
卵を温めるために。
卵の殻を破るために。
8)自己実現は、ユングの個性化(individuation)過程に当たります。ユングの個性化は、人生の後半を中心としたものです。
これに対し、人生前半の自己実現には、マーガレット・マーラーの分離-個性化(separation-individuation)過程が参考になります。分離-個性化は、永遠の少年・少女が目指す「幻想上の誇大自己」から、健康な自我を分離・分化し、抽出するプロセスを後押しします。
9)健康な自我とは、等身大の自己・身の丈の自分を指しますが、健康な自我があってこそ、無理のない形での魂、運命、真の自己の実現が可能になるでしょう。
自己実現には、健康な等身大の自我形成が欠かせません。
10)さて、魂、運命、真の自己は、内界に潜在する植物の種のようなものです。内なる種の発芽、成長、開花のプロセスについて、このセミナーでは取り組みます。それには、環境への眼差しが欠かせません。
環境は、ある植物にとっては、南国の高温多湿がよく、別の植物にとっては、気温が低く雨の少ないドライなものがよかったりします。生存戦略上、他の植物が絶対に回避する厳しい環境を選択する種もいます。
自己実現や個性化は、極めてオリジナルなものですが、それには、魂、運、真の自己(=種)と共に、それらが開花するための環境の多様性、独自性を見極めること、承認し、尊重することが必要です。
11)ユングは、自己実現や個性化を、「全体性へと向かう過程」と考えました。全体性は、(A)自分と、(B)自分にとって想定外の、時に恐ろしく、時に引きつけられる魂、運命、真の自己、タオの総合からなります。
さて、ユングの自己実現は、健康な中年男性をモデルにしたものでした。
そこには、女性やLGBTや高齢者や障碍者の自己実現が欠けていました。
当時想定されていなかったほど後期高齢者が増えた先進国における、自己実現とは、いったいどういったものでしょうか?
ユング心理学には、一部ですが、女性や障碍者の自己実現についての考察があります。
このセミナーでは、あらゆる角度から、多面・多次元的に、自己実現について取り組みます。令和における自己実現の可能性について、分化、分離との関連で、考えていきます。
今回、「分化と自己実現の心理療法」について、専門家、一般の人、初心者のあなたに、わかりやすく、かみ砕いてお伝えします。良質な事例と(簡単な)体験的エクササイズを通じて、セミナーを進めていきます。
あなたのご参加を、お待ちしています。
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1)今から48年前に出版された『甘えの構造』。英語やドイツ語をはじめ、8か国語で翻訳され、世界中でいまも読まれている、精神科医・土居健郎の名著です。「甘えの構造」という言葉については、おそらくあなたも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。しかし今日、この本を実際に読んだり、その中身を吟味したりする人は、少ないかもしれません。初版が出たのが、昭和46年。昭和から平成、そして令和と時代が変わっても、その中身は、まったく古さを感じさせません。
2)私たちの令和第1弾のセミナーでは、「甘えの心理療法」を取り扱います。土居が48年前に提唱した「甘え」にまつわる視座は、いま、関係療法の中でよみがえり、より一層の輝きを放っています。「甘えたい」「甘えられない」「甘えさせてもらえない」「どう甘えたらいいかわからない」これらは、心理療法の場面で繰り返し語られる言葉ですが、私たちにとって空気と同じくらい重要な「甘え」のテーマを、今回のセミナーでは、今日的な視点から、まっすぐ考えていきます。
3)土居は若かりし頃、留学したアメリカで出会った精神科医たちが、「概して、患者がもがいている状態に対して、恐ろしく鈍感である」こと、またその理由を、「彼らが、患者の隠れた<甘え>に容易に感知しないため」と明言しています。私たちは、土居の着眼点に賛同します。心理療法、コーチング、ボディワーク、ファシリテーション、コンサルティングにおいて、鈍感にならず、繊細で、かゆいところに手の届く対人援助を行うには、クライエントの水面下に潜む甘えに着目することは、不可欠だといえるでしょう。
4)土居が、日本人とイギリス人とのハーフの患者とセラピーを行っていたときのこと。ある日、その患者の母親(日本人)から、患者の生い立ちについて聞かされ、患者の幼少期のことに話が及んだとき、それまで英語で話していた母親が急に、「この子はあまり甘えませんでした」と日本語で語り、その後、すぐにまた英語に切り替えたというのです。土居が、その母親に、「なぜ、『この子はあまり甘えませんでした』ということだけ日本語で言ったのか」と聞いてみると、母親は、「これ(甘え)は英語では言えません」と答えたというのです。
5)当時、土居や彼の精神分析サークルは、甘えを、日本人や日本文化に特有なもの、英語文化圏には存在しない、存在したとしても例外的なもの、と考えていました。が、今日、関係療法が広く世界中に行き渡ったことに伴い、同様の心理現象が、文化を超えてどこにでも存在するものと理解されるようになっています。また甘えは、「自分」の基盤となる他者との関係への根本欲求と考えられています。「人間はかつて(ex.幼少期)に甘えることを経験しなければ、自分を持つことはできない」とも述べています。
6)そもそも、甘えとは何でしょうか?それは、味覚チャンネルにおける、口唇に関した経験です。赤ちゃんがお母さんのおっぱいを吸って、心地よさや安心を感じている場面を想像できるでしょうか?このとき、赤ちゃんにとって、味覚チャンネルでの快楽や安心感、つまり甘え体験は、自分を丸ごと包み込む、やさしく十全な世界体験といえるでしょう。「対象(ex.母親)と溶け合って一体化したい欲求」、「快楽をベースとした相手との想像的一体感を求める気持ち」を、<甘え欲求>といいます。これは、フロイトやロマン・ロランが「大洋的感情」と呼んだものであり、M.マーラーの「共生期」に属し、K.ウィルバーの「プレ・パーソナル」に当たります。(注:詳しくは、セミナーでお伝えします)
7)土居は、甘えを「他の人の好意をあてにしたり、それに依存したりすることのできる個人の能力および特権」と定義しました。この定義は、赤ちゃん時代以降に甘えの成功体験を積み重ねた結果、後天的に得られる能力であり、特権を指したものです。
8)さて、甘えがかなうかどうかは、相手次第です。特に、乳幼児期の甘えはそうです。甘えは、「関係」体験です。甘える側は、依存的かつ受け身的にならざるを得ません。(注:M.バリントは、これを「受け身的対象愛(passive object love)」と呼びました。それは、対象(=相手)に愛されることを求めることで、甘えと同じ概念といえるでしょう。詳しくは、セミナーでお伝えします)相手に受け身的に依存するため、甘えは、いつ、壊(さ)れても、なくなってもおかしくありません。甘えは、不安定な体験です。そのため、「甘え」は、即、「恨み」や「不信感」に反転します。恨みは、甘えの挫折に由来します。いや、(土居によると)甘えと恨みは本来未分化で混在しており、アンビバレント(両価的)な関係にあります。
9)「甘えと恨み」の系列上に、「すねる」「ひがむ」「ひねくれる」「こだわる」・・・といった感情があります。土居は、日本文化は甘えの文化であり、そのため、プラスの意味でもマイナスの意味でも、甘えに関する言葉が豊富にある、幼少期の母子関係や人間関係のテーマとの取り組みには、甘えについてよく学ぶことが、良質な臨床を保証すると考えました。日本での心理臨床には、M.クラインの「妄想-分裂ポジション」を、「ひねくれることであり、ひがむこと」と、H.コフートの「自己対象転移」を、「甘え」と、読み替えることが不可欠であるとも書いています。(注:このあたりに関しては、セミナーでわかりやすくご説明します)
10)土居は、「真に人間的な関係には甘えが内包されている」、「甘えは心と心の深い結びつきを可能にする」、「甘えは神聖(holy)で、無邪気である」などとも述べています。甘えは、1人心理学的な、心の縦次元(のみ)の神聖さやスピリチュアリティから私たちを解放し、横次元(=関係性)を加味した神聖さやスピリチュアリティについて考えるヒントを与えてくれます。あなたは、退行的な甘え(大洋感情)と、神聖さに通じる甘えの違いがわかりますか?
11)甘えは、「情緒応答性」「情動調律」「もの想い」といった繊細なやりとりや、それらの失敗による小文字の、見えにくいトラウマと密接に関係しています。これは、現代的うつ、摂食障害、アルコール依存といった嗜癖、共依存、パーソナリティ障害、強迫性障害をはじめとする各種の心のテーマと深く関連しています。情緒応答性、情動調律、もの想いを適切に行うには、関係への繊細なまなざしが不可欠です。これには、甘えの視座(パースペクティブ)が欠かせません。また甘えは、私たちのやる気、喜び、幸福感、レジリエンス(回復力)などを応援する源泉です。このセミナーでは、人間関係や「自分(作り)」の根本にかかわる甘えについて、基本から最先端までを、わかりやすくお伝えします。
甘えについてご関心のある専門家、および一般の人、初心者の人に役立てていただける内容です。たくさんのケースを交えて、あなたとご一緒に学べる機会を楽しみにしています。
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日時 ■ 2019年5月26日(日) 10:00~17:00
会場■ 都内(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)
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講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子
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1)カウンセリング、コーチング、コンサルティングを実践する上で、クライエントを理解し対応するための最高のツールとは、何だと思いますか?
私たちは、「病態水準」だと考えます。
続きを読む 個人、カップル、家族、組織に潜む『病態水準』の見極め方と対応|2019/04/28(日)