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1)困難な心の課題を、クライエントひとりの心で
なんとかしよう、あるいはさせようとするのではなく、
セラピストとクライエント、二つの心を使って、
ふたりの関係の場で、取り扱う。
それが関係療法、二者心理学の取り組みです。
これは今日の心理療法、対人援助において、
注目される、新しい考え方でもあります。
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1)困難な心の課題を、クライエントひとりの心で
なんとかしよう、あるいはさせようとするのではなく、
セラピストとクライエント、二つの心を使って、
ふたりの関係の場で、取り扱う。
それが関係療法、二者心理学の取り組みです。
これは今日の心理療法、対人援助において、
注目される、新しい考え方でもあります。
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1)家族療法は、システム論をベースに発展してきました。家族メンバー個人を、バラバラに見るのではなく、全体をシステムとみて、アプローチしていく。「木を見て森を見ない」あり方ではなく、体や存在全体を見通す、東洋医学やホリスティック的な観点をもとに、臨床実践が育まれてきました。
2)その一方で、家制度、イエ、ファミリーの深層に潜むのが、「グレートマザー」の働きです。グレートマザーが否定的に働くと、その営みはたとえば、ふとしたこんなセリフの背後にうごめきます。
「言葉にしなくても気持ちはわかっている。だって家族だもの」
続きを読む 家族に潜むグレートマザー その多次元的取り組み ~家族療法のパラダイムシフト~|2019/08/25(日)◎ 配布資料+音声データをご購入いただけます
1)あなたは「シャドウ(shadow)」と聞いて、どんなことをイメージしますか?シャドウは、人のパーソナリティの、暗い影の側面を言います。光のあるところに、影は必ず存在します。光のもと、あなたが動くと、影もあなたと一緒に動きます。消失することはなく、あなたに付着してきます。
2)シャドウ〜人の暗い影の部分~との取り組みは、人の成長、成熟、変容に欠かすことができません。ユングによって命名された概念です。
続きを読む シャドウ(影・陰)との多次元的取り組み|2019/07/28(日)◎ 配布資料+音声データをご購入いただけます
1)「僕は、僕の<内部からひとりでに出てこようとするもの>だけを、生きてみようとしたにすぎない・・・それがなぜ、あれほど難しかったのだろうか。<運命>とはどこかよそからやってくるものではなく、自分の心の中で成長するものである」
これは、ヘルマン・ヘッセ著『デミアン』の中の言葉です。
2)ヘッセは、内部からひとりでに出てこようとする潜在可能性を、「運命」と呼びました。そして、この自分の内部から出てこようとする「潜在可能性を、最大限実現すること」を、アブラハム・マズローは「自己実現」と呼びました。
ヘッセが「運命」と述べた、内側から自(おの)ずと出てこようとするもの。これは、自我が想定したものでなく、コントロールのきかない、自分ではどうにもならない時に恐ろしく、時に気味の悪い、が、強烈に引きつけられる「内なる他者」です。
この内なる他者を、ユング心理学では「魂(アニマ・アニムス)」と呼びます。
3)フロイト派の女性分析家、カレン・ホーナイは、自己実現を「真の自己が成長発展する過程」と説明しています。D.W.ウィニコットや土居健郎にも、真の自己とその発達過程への、同様の眼差しがあります。内部からひとりでに出てこようとする、自律的・自発的潜在可能性は、東洋の自然(じねん)であり、タオ(Tao)に当たります。
4)〈分化〉とは、成長・発達や個性化にとって、不可欠なプロセスです。
この〈分化〉のプロセスと〈自己実現)の過程。
今回のセミナーは、この2つを重ね合わせ、潜在可能性、運命、魂、真の自己、タオが心の中で自ずと成長する過程、ヘッセが示唆した「生きてみようとする過程」について、学ぶものです。
これは、自己実現から自己超越を唱えたマズローの段階説、精神分析の男性中心的な部分を批判し、フェミニズムに影響を与えた、ホーナイのいう自己実現のプロセス、そして、ユングの個性化のプロセスに該当します。
5)潜在可能性、運命、魂、真の自己を、自分の心の中で成長させるには、どうすればいいでしょうか?
ヘッセは言います。
「忘れてはいけない。偉大な人間になって何か立派なことを成し遂げようと思ったら、多くのことを断念できなくてはならないということを」と。
潜在可能性、運命、魂、真の自己の成長には、「断念、分化、分離」が欠かせません。
ユング派の河合隼雄氏は、「魂にメスはいらない」とかつて述べましたが、私たちは、「魂にはメスが必要で、メスがあってこそ、断念、分化、分離が可能になる」と考えます。
6)ヘッセが意味した、偉大な人間がする立派なこととは、潜在可能性、運命、魂、真の自己を内面で成長させることです。(決して、社会的・外的に偉大で立派な人間を目指すものではありません)
これに必要なのは、心に卵を作ることです。
ヘッセは続けます。
「卵から生まれるとき、鳥は無理やり出ようとする。卵とは世界である。生まれ出ようとする者は、一つの世界を破壊しなければならない」と。
自己実現のために、破壊しなければならない一つの世界とは、あなたにとって、どんな世界でしょうか? イメージできますか?
卵から生まれることは、グリム童話「カエルの王子さま」に登場するカエルが王子様に変容すること。また、青虫が蛹(さなぎ)になり、蛹が蝶になることです。が、それにはまず、機が熟すまで、心の中で卵を温めなければなりません。
7)あなたは、「啐啄(そったく)同時」という言葉をご存知ですか?
鳥の雛(ひな)が卵から産まれ出ようとするとき、殻の中から卵の殻をつついて音をたてます。これを「啐(そつ)」と言います。そのとき、すかさず親鳥が外から殻をついばんで破る、これを「啄(たく)」と言います。「啐」と「啄」が同時に生じてはじめて、殻が破れて雛が生まれます。
ホーナイは、心理療法を自己実現(=真の自己が成長する)過程のサポート、と考えました。これには、雛と親鳥、クライエントとセラピストの協働作業、関係療法が不可欠です。
内面に卵を作るために。
卵を温めるために。
卵の殻を破るために。
8)自己実現は、ユングの個性化(individuation)過程に当たります。ユングの個性化は、人生の後半を中心としたものです。
これに対し、人生前半の自己実現には、マーガレット・マーラーの分離-個性化(separation-individuation)過程が参考になります。分離-個性化は、永遠の少年・少女が目指す「幻想上の誇大自己」から、健康な自我を分離・分化し、抽出するプロセスを後押しします。
9)健康な自我とは、等身大の自己・身の丈の自分を指しますが、健康な自我があってこそ、無理のない形での魂、運命、真の自己の実現が可能になるでしょう。
自己実現には、健康な等身大の自我形成が欠かせません。
10)さて、魂、運命、真の自己は、内界に潜在する植物の種のようなものです。内なる種の発芽、成長、開花のプロセスについて、このセミナーでは取り組みます。それには、環境への眼差しが欠かせません。
環境は、ある植物にとっては、南国の高温多湿がよく、別の植物にとっては、気温が低く雨の少ないドライなものがよかったりします。生存戦略上、他の植物が絶対に回避する厳しい環境を選択する種もいます。
自己実現や個性化は、極めてオリジナルなものですが、それには、魂、運、真の自己(=種)と共に、それらが開花するための環境の多様性、独自性を見極めること、承認し、尊重することが必要です。
11)ユングは、自己実現や個性化を、「全体性へと向かう過程」と考えました。全体性は、(A)自分と、(B)自分にとって想定外の、時に恐ろしく、時に引きつけられる魂、運命、真の自己、タオの総合からなります。
さて、ユングの自己実現は、健康な中年男性をモデルにしたものでした。
そこには、女性やLGBTや高齢者や障碍者の自己実現が欠けていました。
当時想定されていなかったほど後期高齢者が増えた先進国における、自己実現とは、いったいどういったものでしょうか?
ユング心理学には、一部ですが、女性や障碍者の自己実現についての考察があります。
このセミナーでは、あらゆる角度から、多面・多次元的に、自己実現について取り組みます。令和における自己実現の可能性について、分化、分離との関連で、考えていきます。
今回、「分化と自己実現の心理療法」について、専門家、一般の人、初心者のあなたに、わかりやすく、かみ砕いてお伝えします。良質な事例と(簡単な)体験的エクササイズを通じて、セミナーを進めていきます。
あなたのご参加を、お待ちしています。
* * * * *
日時 ■ 2019年6月30日(日) 10:00~17:00
会場 ■ 都内(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)
費用■ メールマガジンにてご案内しております。
講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子
◎ 配布資料+音声データをご購入いただけます
1)今から48年前に出版された『甘えの構造』。英語やドイツ語をはじめ、8か国語で翻訳され、世界中でいまも読まれている、精神科医・土居健郎の名著です。「甘えの構造」という言葉については、おそらくあなたも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。しかし今日、この本を実際に読んだり、その中身を吟味したりする人は、少ないかもしれません。初版が出たのが、昭和46年。昭和から平成、そして令和と時代が変わっても、その中身は、まったく古さを感じさせません。
2)私たちの令和第1弾のセミナーでは、「甘えの心理療法」を取り扱います。土居が48年前に提唱した「甘え」にまつわる視座は、いま、関係療法の中でよみがえり、より一層の輝きを放っています。「甘えたい」「甘えられない」「甘えさせてもらえない」「どう甘えたらいいかわからない」これらは、心理療法の場面で繰り返し語られる言葉ですが、私たちにとって空気と同じくらい重要な「甘え」のテーマを、今回のセミナーでは、今日的な視点から、まっすぐ考えていきます。
3)土居は若かりし頃、留学したアメリカで出会った精神科医たちが、「概して、患者がもがいている状態に対して、恐ろしく鈍感である」こと、またその理由を、「彼らが、患者の隠れた<甘え>に容易に感知しないため」と明言しています。私たちは、土居の着眼点に賛同します。心理療法、コーチング、ボディワーク、ファシリテーション、コンサルティングにおいて、鈍感にならず、繊細で、かゆいところに手の届く対人援助を行うには、クライエントの水面下に潜む甘えに着目することは、不可欠だといえるでしょう。
4)土居が、日本人とイギリス人とのハーフの患者とセラピーを行っていたときのこと。ある日、その患者の母親(日本人)から、患者の生い立ちについて聞かされ、患者の幼少期のことに話が及んだとき、それまで英語で話していた母親が急に、「この子はあまり甘えませんでした」と日本語で語り、その後、すぐにまた英語に切り替えたというのです。土居が、その母親に、「なぜ、『この子はあまり甘えませんでした』ということだけ日本語で言ったのか」と聞いてみると、母親は、「これ(甘え)は英語では言えません」と答えたというのです。
5)当時、土居や彼の精神分析サークルは、甘えを、日本人や日本文化に特有なもの、英語文化圏には存在しない、存在したとしても例外的なもの、と考えていました。が、今日、関係療法が広く世界中に行き渡ったことに伴い、同様の心理現象が、文化を超えてどこにでも存在するものと理解されるようになっています。また甘えは、「自分」の基盤となる他者との関係への根本欲求と考えられています。「人間はかつて(ex.幼少期)に甘えることを経験しなければ、自分を持つことはできない」とも述べています。
6)そもそも、甘えとは何でしょうか?それは、味覚チャンネルにおける、口唇に関した経験です。赤ちゃんがお母さんのおっぱいを吸って、心地よさや安心を感じている場面を想像できるでしょうか?このとき、赤ちゃんにとって、味覚チャンネルでの快楽や安心感、つまり甘え体験は、自分を丸ごと包み込む、やさしく十全な世界体験といえるでしょう。「対象(ex.母親)と溶け合って一体化したい欲求」、「快楽をベースとした相手との想像的一体感を求める気持ち」を、<甘え欲求>といいます。これは、フロイトやロマン・ロランが「大洋的感情」と呼んだものであり、M.マーラーの「共生期」に属し、K.ウィルバーの「プレ・パーソナル」に当たります。(注:詳しくは、セミナーでお伝えします)
7)土居は、甘えを「他の人の好意をあてにしたり、それに依存したりすることのできる個人の能力および特権」と定義しました。この定義は、赤ちゃん時代以降に甘えの成功体験を積み重ねた結果、後天的に得られる能力であり、特権を指したものです。
8)さて、甘えがかなうかどうかは、相手次第です。特に、乳幼児期の甘えはそうです。甘えは、「関係」体験です。甘える側は、依存的かつ受け身的にならざるを得ません。(注:M.バリントは、これを「受け身的対象愛(passive object love)」と呼びました。それは、対象(=相手)に愛されることを求めることで、甘えと同じ概念といえるでしょう。詳しくは、セミナーでお伝えします)相手に受け身的に依存するため、甘えは、いつ、壊(さ)れても、なくなってもおかしくありません。甘えは、不安定な体験です。そのため、「甘え」は、即、「恨み」や「不信感」に反転します。恨みは、甘えの挫折に由来します。いや、(土居によると)甘えと恨みは本来未分化で混在しており、アンビバレント(両価的)な関係にあります。
9)「甘えと恨み」の系列上に、「すねる」「ひがむ」「ひねくれる」「こだわる」・・・といった感情があります。土居は、日本文化は甘えの文化であり、そのため、プラスの意味でもマイナスの意味でも、甘えに関する言葉が豊富にある、幼少期の母子関係や人間関係のテーマとの取り組みには、甘えについてよく学ぶことが、良質な臨床を保証すると考えました。日本での心理臨床には、M.クラインの「妄想-分裂ポジション」を、「ひねくれることであり、ひがむこと」と、H.コフートの「自己対象転移」を、「甘え」と、読み替えることが不可欠であるとも書いています。(注:このあたりに関しては、セミナーでわかりやすくご説明します)
10)土居は、「真に人間的な関係には甘えが内包されている」、「甘えは心と心の深い結びつきを可能にする」、「甘えは神聖(holy)で、無邪気である」などとも述べています。甘えは、1人心理学的な、心の縦次元(のみ)の神聖さやスピリチュアリティから私たちを解放し、横次元(=関係性)を加味した神聖さやスピリチュアリティについて考えるヒントを与えてくれます。あなたは、退行的な甘え(大洋感情)と、神聖さに通じる甘えの違いがわかりますか?
11)甘えは、「情緒応答性」「情動調律」「もの想い」といった繊細なやりとりや、それらの失敗による小文字の、見えにくいトラウマと密接に関係しています。これは、現代的うつ、摂食障害、アルコール依存といった嗜癖、共依存、パーソナリティ障害、強迫性障害をはじめとする各種の心のテーマと深く関連しています。情緒応答性、情動調律、もの想いを適切に行うには、関係への繊細なまなざしが不可欠です。これには、甘えの視座(パースペクティブ)が欠かせません。また甘えは、私たちのやる気、喜び、幸福感、レジリエンス(回復力)などを応援する源泉です。このセミナーでは、人間関係や「自分(作り)」の根本にかかわる甘えについて、基本から最先端までを、わかりやすくお伝えします。
甘えについてご関心のある専門家、および一般の人、初心者の人に役立てていただける内容です。たくさんのケースを交えて、あなたとご一緒に学べる機会を楽しみにしています。
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日時 ■ 2019年5月26日(日) 10:00~17:00
会場■ 都内(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)
費用■ メールマガジンにてご案内しております。
講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子
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1)カウンセリング、コーチング、コンサルティングを実践する上で、クライエントを理解し対応するための最高のツールとは、何だと思いますか?私たちは、「病態水準」だと考えます。あなたは、神経症水準、パーソナリティ障害水準、精神病水準、ASD(自閉スペクトラム症)水準、といった言葉を聞いたことがあるでしょうか?3月のセミナーでは、ASD水準について取り上げました。今回、従来お伝えしてきた、神経症、パーソナリティ障害、精神病の3つに、新たに自閉症スペクトラム症を加え、病態水準について総合的に学びます。これによって、各病態をつながりを持って見通すことができ、病態全体を整理しながら、俯瞰して理解することが可能になります。あなたは、各病態の違い、細部を、よりクリアに知ることができるでしょう。
2)加えて今回、この見通しを、個人だけでなく、カップル、家族、組織、コミュニティに活用し、役立てることを試みます。あなたが病態水準を、組織、企業、学校、コミュニティ、家族に対し、使えるようになることを目指します。組織や集団に病態水準の視座・考え方を活用した1人に、ウイルフレッド・ビオンがいます。このセミナーでは、同様の試みを、最新の知見を交えて、カップル・夫婦、家族、コミュニティ、企業に行っていくことを試みます。
3)病態水準は、「内面」および「深層」からの見立てを可能とする、最良のアセスメント・ツールです。あなたは病態を内側から、また深みから見極めることができるようになり、プロの対人援助職として、自信や効力感、手応えを、確かなものとして感じることができます。
4)病態水準の見立てを身につけると、どんな利点があるでしょうか?1つは、医療専門職・関係者と、自信をもって対話し、連携協働することができます。これによってあなたは、クライエントの人を、よりトータルにサポートできるようになります。
5)ビオンは、グループや組織を、精神病水準と神経症水準との比較から理解しました。結果、それまで見えなかったグループや組織の深層構造や問題が明らかになったのです。グループや組織の病態を理解することで、学校、会社、福祉法人、NPO法人、家族、夫婦などに起きている、扱うことのできなかった問題が、内側や深みから理解でき、アプローチ可能になります。このセミナーでは、こうした病態水準の極意について、事例を交えながら、丁寧にお伝えしていきます。
6)組織、グループ、家族は、個々の参加メンバーを足し算したものではありません。機械のように、命の通っていないものであれば個々の部品の総計から全体を考えることもできます。しかし、組織、グループ、コミュニティ、家族、夫婦は、参加メンバー全体の、合計以上のものです。システム論が想定するように、それらは、ひとつの生命体のようなものだからです。
7)しかし、ここに難題が生まれます。システムとしての組織、グループ、家族の病態と、そのメンバー1人1人の病態とに、違いのある場合が、しばしば生じるためです。たとえば、参加メンバーのそれぞれは神経症水準なのに、集まった組織や家族の病態水準は、精神病である、ということがあります。ユングは、グループや組織を忌み嫌いました。理由は、人が集団を形成すると、たとえその構成員がみんな精神的に健康であっても、精神病的になるからだ、というのです。健康な人たちを足し算していったら、精神病的になったというのです。なぜでしょう?先述したように、グループは、個々のメンバーの総計以上の何か~生命体的システム~だからです。あなたは個々のメンバーを見て、システム全体の病態を正確に把握することはできません。ではこうしたシステムに、どのように介入、対処するといいのでしょうか?
8)私たちはまず、システム(家族や組織)について、病態水準の観点から見極めることが必須だと考えています。病態水準の視座は、従来のグループ療法、組織療法、コーチング、ファシリテーション、コンサルティングを磨き、より機能的で有用なものにするでしょう。
9)病態水準は、発達心理学をベースとしています。それは、各病態を、治りようのない病気や障害ととらえるのではなく、発達上の停止と固着という観点からとらえます。発達心理学は、治療ではなく、発達の再活性化を試みます。
10)かつてトランスパーソナルのケン・ウイルバーは、心理学の各流派を、発達心理学のパラダイムから見直しました。そしてたとえば、古典的精神分析は、神経症水準に、母子関係を志向する新フロイト派は、パーソナリティ障害水準に、ユング心理学は、精神病水準に、と、振り分け、当てはめていきました。この見方は、各心理療法学派のすみ分けと共存を可能にします。同じく、各コーチング、ファシリテーション、組織心理学、コンサルティング流派の協働を促します。
11)私たちは家族療法、組織心理学、コミュニティ心理学を、プロセスワークやワールドワーク的に実践していました。ある時から、病態水準の見方を、それらに採用するようになりました。するとそこには、ビオンやユングの言うように、精神病水準がたびたび顕在化することがわかりました。さらに、産業心理学で注視されるグループ・バイアス(偏見、誤解、勘違い)が、どのように表れているか、よりはっきりと見えるようになったのです。結果、それまで以上に自信をもって、家族、組織、集団、コミュニティにコミットできるようになっています。
12)病態水準は、対人援助職であれば、絶対に身に着けておきたいツールです。時代を超え、流派を超えて役立つ、普遍的なツールです。このツールをいかに使うかは、あなたのクリエイティビティにかかっています。このセミナーでは、病態水準の活用法についても、たくさんの事例を通して学びます。あなたの創意工夫を発揮しながら、病態水準についてご一緒に学びませんか?
病態水準の理解や支援にご関心のある専門家、一般の人、初心者の人のご参加をお待ちしています。
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日時 ■ 2019年4月28日(日) 10:00~17:00
会場■ 都内(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)
費用■ メールマガジンにてご案内しております。
講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子
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1)私たちは勘違いしていました。約25年前に、発達障害(自閉スペクトラム症)で悩む人との心理療法に取り組むまで。それまで、象徴(シンボル)やメタファーこそが、心理療法の中核にあると思い込んでいました。C.G.ユングやM.クラインは、象徴を生み、形作ることが、こころの機能の中心だと考えました。私たちは、象徴やメタファーを豊かに創出する夢分析、イメージワーク、絵画療法、ドリームボディワークを好んで行っていました。
2)が、もしクライエントの人が、象徴に興味を示さなかったり、象徴を生み出す(ユングやクラインが想定した)こころを持っていなかったりしたら、あなたはどう対応するでしょうか?象徴化されていないプロセスは、フラット(平板)で文字通り(literal)なもの。そこに含意はありません。フラットでリテラルなプロセスは、従来、心理療法の対象外とされてきました。そこに、心理療法で扱うべき、象徴、メタファー、含意が存在しないからです。ここが、私たちが、勘違いしていた点です。
3)私たちは当時、発達障害には、心理「療法」はむしろ役に立たない、「療育」的なサポートこそが適切だ、と誤解していました。しかし今日、「発達障害のこころ」との、心理療法的取り組みの有益性が、理解されるようになっています。たとえそこに、象徴やメタファーを産むこころがなくても。この点について、あなたとご一緒に、ていねいに考えていきます。
4)ポスト・クライン派のA.アルヴァレズは、こころを「自閉的部分」と、「非自閉的部分(健康なパーソナリティ)」とに分けました。また、発達的視点を持ち込み、この2つの部分に関する発達的な相違にまなざしを向けました。そのうえで、非自閉的側面(健康な側面)の成長、およびこころ全体の癒しを促すかかわりを試みたのです。
5)自らの心理臨床を、自閉スペクトラム症との取り組みにささげたD.メルツァーは、発達障害のこころの構造を、「こころの次元」からとらえます。彼は、こころを、次のような4つの次元に分け、構造化しました。象徴を生むことのない(A)「マインドレス(こころのない、mindless)」な<一次元>、(B)「人の模倣と表面的な対人関係」に彩られた<二次元>、象徴を生むが(C)妄想と一方的(自己愛障害的)コミュニケーションを中心とした<三次元>、(D)共感と双方向のコミュニケーション・交流が可能な(健康な)<四次元>このうち(A)(B)が、特に自閉症スペクトラムに関係する次元です。(C)の三次元も、自閉症スペクトラム特有のコミュニケーション・パターンを理解するうえで参考になりますが、まずは(A)と(B)について、よく理解することが欠かせません。
6)(A)は「点」や「直線」の、(B)は「平面」の世界で、この2つに象徴は存在しません。なぜなら、この2つは、こころが生まれる以前の領域だからです。(A)のマインドレスな一次元は、こころが意識と無意識に分かれる前の「(こころの)非二元」あるいは「非意識」であり、身体的感覚に彩られた世界です。それは、「神経症」「パーソナリティ障害」「精神病」といった代表的な3つの病態水準以前の次元です。上記の3つは、こころが生まれた後の病態ですが、(A)の一次元、(B)の二次元は、そうではありません。あなたは、こころが現れる以前の、一次元的およびや二次元的世界を想像できますか?
7)(A)と(B)は、心理臨床世界では、あまり着目・重視されずにきました。が、トランスパーソナル発達心理学(病態水準論)では、40年も前から、常に議論の対象でした。今回のセミナーでは、トランスパーソナルな視点について、(再度)ご紹介します。
8)では、自閉スペクトラム症には、「こころ」はないのでしょうか?医師の広沢正孝氏は、人のこころの構造の原型に、次の2つを想定しています。1つは、「胎蔵界曼荼羅(マンダラ)」的なもの、もう1つは「金剛界曼荼羅(マンダラ)」的なもの、です。こころの全体性が、マンダラ的だと最初に指摘したのは、ユングでした。が、彼が着目したのは、あくまで「胎蔵界的マンダラ」です。それに対して、広沢氏は、発達障害の背景に潜むのは、金剛界的世界だというのです。金剛界マンダラの特徴は、中心がないこと、タッチパネル的、格子的、デジタル的であることです。これは、中心を持ち、同心円状に拡がり展開していく胎蔵界マンダラとは対照的です。
9)広沢氏は、「胎蔵界マンダラ」的こころの構造は、(妄想型を中心とする)統合失調症に潜在し、一方、「金剛界マンダラ」的こころの構造は、自閉症スペクトラムの背後に潜むと仮定します。今回、2つのマンダラを比較検討しながら、発達障害のこころの構造について、詳細に考えます。発達障害は、統合失調症と混同されることが少なくありません。この2つの違いについても、わかりやすくお伝えします。
10)私たちは関係療法に準拠した取り組みを行っています。関係療法は、こころは人の脳の内に閉じられて(自閉されて)いるのではなく、間主観的なものだと仮定します。これは、量子論を参照したもので、こころの構造を関係的にとらえる視座です。先に述べた、ポスト・クライン派のアルヴァレズは、こころを、自閉的部分と非自閉的部分とに分けました。関係療法は、この2つの部分を、クライエントとセラピストの交流の中で取り上げ、発達障害の心理的発達および癒しを促すものです。関係的こころにおける「発達障害」のこころの構造について、あなたとご一緒に学べる機会を楽しみにしています。
今回のセミナーでは、「発達障害」のこころの構造、発達障害に向けた認知行動療法や行動科学的アプローチ、療育的かかわりとは異なる心理療法にご関心のある専門家、専門家をめざす方、また、発達障害に苦しむ方、そのご家族、発達障害の方のサポートをする会社や組織の方、一般の方、初心者の方のご参加をお待ちしています。
* * * * *
日時 ■ 2019年3月24日(日) 10:00~17:00
会場■ 都内(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)
費用■ メールマガジンにてご案内しております。
講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子
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1)あなたは幸せについて、考えたことがありますか? なんとなく漠然と、あるいはまっすぐに?
人生の目的は、幸せになることだと思いますか?
今はまだ余裕はないけれど、いつか幸せについて真剣に考えたいと思っていますか?
自分はまだしも、子どもや孫、親や近親者、親しい友人には幸せになってほしいと考えていますか?
パートナーや家族と、幸せについて話しあったことはありますか?
あなたやパートナー、ご家族にとっての幸せは、どういったものでしょうか?
こうした問いに、当てはまるもの、思いあたることが1つでもあれば、今回のセミナーはあなたにお勧めです。
続きを読む 幸せ心理学(Well-being Psychology, Happy Psychology)|2019/02/24(日)◎ 配布資料+音声データをご購入いただけます
1)あなたは、タオ(Tao)やフロー(Flow)という言葉や概念について、聞いたことがありますか?それでは、ゾーン(Zone)は、どうでしょうか?
フローやゾーンは、かつては人間性心理学やトランスパーソナル心理学において語られ、また、新しくはポジティブ心理学が唱えてきました。そして、ユング心理学でも、同様の内容を別の言葉で表現してきたものです。
続きを読む タオ(Tao)とフロー(Flow)の心理学 ~共時性、コンステレーション、ゾーンを読み解く~|2019/01/27(日)◎ 配布資料+音声データをご購入いただけます
1)「心なんて、折れてなんぼ。私なんて、何度心が折れたか知れない。今でもしょっちゅう折れていますよ。(全日本女子バレー監督、中田久美氏の言葉)
「死ぬこと以外、かすり傷」(真山仁著『ハゲタカ』の主人公、鷲津政彦のきめ台詞)
続きを読む トラウマとレジリエンス~心的外傷からの回復力最前線!~|2018/12/23(日)&24(月祝)