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夫婦・カップル療法|2018/08/26(日)

◎ 配布資料+音声データをご購入いただけます

1)ここ数年、夫婦・カップル療法のニーズが高まっています。結婚、離婚、再婚、DV、アルコール依存、共依存などに関する心理相談がよりいっそう増えています。

にもかかわらず、夫婦・カップル療法の専門家、結婚、離婚、再婚カウンセリングに関する心理のプロの数は相変わらずとても少ない。

今回のセミナーは、夫婦・カップルセラピーの基本と最先端を学ぶものです。

2)夫婦・カップル療法は、関係療法と、家族療法の「中間」に位置し、両者を「結ぶもの」です。関係療法と家族療法は、共に、従来の(一者心理学的)個人療法が取り扱うことができなくなった現代の心理学テーマに、光明をもたらします。

不倫・浮気、DV、家庭内離婚、ワークライフ・アンバランス、アルコール、買い物、摂食、盗癖、ドラッグなどに関する依存症、共依存・・・。こうした課題には、夫婦・カップル療法の視座が欠かせません。なぜでしょうか?

3)関係療法の特徴は、クライエントとセラピストの関係を取り扱う点にあります。本来、セラピストには何の関係もないクライエントの心理テーマを、クライエント—セラピスト関係に着目することで、解決していこうとするのです。

クライエントの人が、自分の精神的な悩みをセラピストに相談していると、いつの間にか、その悩みをダイレクトに反映したもうひとつの無意識的関係が、必ず、セラピスト—クライエント間に(水面下で)自然発生する、と関係療法は仮定します。

不可思議だと思いませんか?

心や体の悩みや問題が、セラピスト—クライエント関係に移行され反映される、というのです。そして、そうしたことが、自然発生する。さらに、それが、必然だというのですから。

セラピスト—クライエント間に生まれる無意識的関係を紐解くことで、クライエントの人の元々の悩みや問題が癒えるのをサポートする、それが、関係療法の視点です。

4)無意識裡に自然発生するもう一つの関係とは、「転移—逆転移」、「投影同一視(化)」、「エナクトメント」などを指します。転移とは、クライエントの人の悩みや問題の深層・核心が、「転じ」てセラピストに「移される」ことです。悩みや問題が転じて、別の人間(たとえばセラピスト)に移されることは、心理的感染に当たります。

セラピストが、あえて心理的に感染すること、感染を受け入れることで、悩みや問題の内側に入り、そこから、クライエントの人の心の中・深層に展開するプロセスをクライエントの人と一緒に体験し、理解しようとするのが、関係療法の神髄です。

(注:そこにセラピスト側からクライエントに向かう逆方向の転移のテーマも絡んできます。が、この点は複雑ですので、セミナーで詳しくご説明いたします)

5)無意識的関係は、水面下で自ずと生じます。自然物ですので、そのことで、クライエントの人は、責められたり、罰せられたりすることはありません。むしろ、自然発生する(病的)関係こそが、分析や理解の対象です。関係療法にとって、悩みや問題が関係性へと移された無意識的関係は、癒しの原石です。あるいは、錬金術師の第一質量(たとえば鉛)です。鉛を、どう黄金に変容させるか、が、心理錬金術師の課題です。

6)問題は、自ずと生じるはずの無意識的関係が起きない・起こすことができない症状がある、と、かつて言われたことでした。たとえば、フロイトは、精神病や自己愛性パーソナリティ障害には、転移は生じない、と述べました。

現代の夫婦やカップルにおける心理的課題、たとえば、依存症、DV、不倫、父親不在、家庭内離婚・・・の背景には、部分的にしろ精神病水準や自己愛障害の課題が潜在していることがほとんどです。

もし、転移が起きないのであれば、関係療法は、機能しません。

が、現代の関係療法は、転移—逆転移の見方を深化洗練させ ~たとえば、そこに投影同一化やエナクトメントの観点を統合し~ 、現代の心理的テーマにフィットするものへと作り変えてきました。投影同一化やエナクトメントを通して、現代的な心理深的悩みや問題の背後に、転移—逆転移を見れるようになったのです。

7)次に、家族療法について述べます。

家族療法の特徴の代表的な点は、循環・円環的因果律という見方にあります。従来の一者心理学は、〇〇の原因は××にある、と考える直線的因果律を基本としていました。

たとえば、妻の精神状態が悪くなったのは、夫のせい(夫源病)というように。

が、循環的因果律は、〇〇の原因は××であると同時に、××の原因は〇〇である、というように、円環的な見方・とらえ方をします。

たとえば、妻の状態が悪くなったのは夫のせいだが、同時に、夫の精神状態が悪くなったのは、妻のせい(妻源病)というように。

つまり原因が結果であり、同時にその結果が原因である、というふうに、原因と結果を循環的に見るのです。循環的因果律は、夫源病や妻源病でなく、「夫婦」源病を、悩みや問題の背後に見抜きます。

8)循環的因果律は、夫と妻の関係性や循環、夫と妻とで(半ば意識的に、半ば無意識的に)生み出す全体性から、問題や悩みをとらえるのです。

夫や妻を別個に、あるいは一個人(=I)としてではなく、二人の総合や全体(=We)から、問題をとらえる視座を、システム論と言います。システム論は、個人を、悩み問題の原因・犯人にすることはしません。そうではなく、システム全体の循環や調和・バランス、滞りや不協和に、着目します。

9)さて、関係療法の課題、欠落点は、いま述べた循環論的な視点です。夫婦や家族の間で生じている循環は、実は、セラピスト—クライエントの間でも、必ず生じているのですが、その視座が取り入れられていません。セラピストとクライエントで、ある一つの全体的システムを作っている、という観点が、ないためです。

そのため、セラピストが、クライエントの悩みや問題を(循環的に)維持強化してしまっているのではないか、という危険性を、考慮できません。

10)一方、システム論に欠けているのは、セラピストが、システムの一部になっている、という視点です。転移—逆転移のところで、簡略に述べましたが、セラピーを行っていると、もう一つの無意識的関係が、いつの間にか作られます。そして、セラピストは、その無意識的関係の一部となってしまいます。

家族療法も、例外ではありません。が、家族療法家には、その意識が薄い。それは、ケン・ウイルバーが喝破したように、システム論が近代科学の外部の観察者を、前提にしているためです。

システム論を無批判に採用すると、セラピストは、悩みや問題で苦しむ家族を、あくまで外部から観察評価し、分析するという近代科学者的存在に終始してしまいかねません。それでは、関係療法家のように、クライエントの人の悩みや苦しみを、内側から、その人の身になって共感、理解することは困難です。

11)今回私たちは、最強の心理学ツール、関係療法とシステム論、両方のいいとこどりをしたいと考えています。システム論を内側から捉え把握し、捉えることで、クライエントの人をサポートし、応援するためです。それは、量子力学的視点を意味します。

量子的視点は、ともするとオカルト、ニューエイジ、スピ系、精神世界系と混同されがちです。が、別個のものです。このセミナーでは、オカルトとは無関係な確かな理論と技術と歴史を持った、関係療法とシステム論を媒体に、量子的セラピーとその可能性について、お伝えします。

なぜなら、それが、夫婦・カップル療法に最適だからです。

このセミナーでは、私たちオリジナルの夫婦・カップル療法をお伝えします。

12)最後に、私たちが、先輩の夫婦・カップル療法家から教わった点を一言。

「ある人を理解しようとするときに、その人のパートナーや家族、親密な友人との関係に着目すると、その人に関する重要な情報を得ることができる」

ユング的に言うと、パートナーや家族、友人たちは、その人の、広い意味での影(shadow、シャドウ)に
当たります。

その人が、自分のシャドウと、どういったパートナーシップ、カップル関係を持ち、育んでいるのか?

私たちは、こうした情報を、夫婦・カップル療法だけでなく、個人療法を行うときにも、とても大切にしています。

今回、夫婦・カップル療法にご関心のある専門家の人、専門家をめざす人、また、一般の人、初心者の人のご参加をお待ちしています。

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日時■ 2018年8月26日(日)10:00~17:00

会場■ 東京都内(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)

費用■ メールマガジンにてご案内しております。

講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子