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トランスパーソナル心理療法の神髄(エッセンス) ~メタスキルとトランスパーソナルな意志~|2018/05/27(日)

◎ 配布資料+音声データをご購入いただけます

1)今回、ミンデル博士夫妻の来日を記念して、3年ぶりに「メタスキル(meta-skill)」を取り上げます。

メタスキルは、プロセスワークが発見した対人援助職における最も良質なアート(技芸)です。セラピストやコーチ、コンサルタントなどの技の背後で、クライエントに提供する具体的な技術に影響を与え、技術以上にクライエントに影響を及ぼす、セラピストの姿勢、信念、ビジョンや、人間観、世界観のことです。

2)一方、このメタスキルを、トランスパーソナル指向の対人援助において、より実践に活かすための重要な概念に、「トランスパーソナル・ウィル(意志)」があります。この「トランスパーソナルな意志」は、サイコシンセシスの創始者、ロベルト・アサジオリによって考案された、スピリチュアル次元における、技芸と実践のための、エッセンスです。

今回のセミナーでは、この2つに加え、さらに、トランスパーソナル心理療法の代表的臨床家、フランシス・ヴォーンが提示した「トランスパーソナルな信念」を総合し、トランスパーソナル心理療法の神髄(エッセンス)について、丁寧にお伝えしていきます。

3)F. ヴォーンは、述べています。「トランスパーソナルと他の心理療法を分かつものは、技法(テクニック、スキル)や手法、道具ではなく、パラダイム、コンテキスト、パースペクティブである」と。

4)たとえば、クライエントの人がスピリチュアリティに関する話を無意識に始めたり、スピリチュアルな次元のプロセスをふと開示させたとしましょう。そのとき、スピリチュアリティに関する妥当性や基準を仮説として抱いているトランスパーソナル・セラピストは、その話やプロセスを取り上げ、意識化をうながし、真摯に向き合うことを試みます。

一方、エディプス・コンプレックスの見方を採用する精神分析的心理療法家は、その話やプロセスをまっすぐに受容せず、退行的なプロセスとして解釈するでしょう。

5)なぜでしょうか?

人間や世界に対する見方や信念、仮説が異なるからです。トランスパーソナル心理学は、人間をスピリチュアルな存在ととらえます。一方、古典的精神分析は、強い自我を持つことを、セラピーの目標と考えてきました。

6)F.ヴォーンによると、人は、~意識しているかいないかにかかわらず~ 自分が心に抱いている人間観や世界観、信念や理念に沿ったパラダイムやコンテキスト、仮説を、内面に潜在させているといいます。

7)セラピストの内的な信念は、セラピーのあらゆる場面で、目に見えない形で、無意識に表現されている / 表現されてしまうのですが、目に見えない信念を意識化し、磨き、変容させ、道具や手段やスキル(技術)として活用できるようにしたものを「メタスキル(メタ技術)」と言います。プロセスワークでは、スキルの背後にあるこのメタスキルを、セラピストが意識し、十二分に活用できるようになることを大切にします。

8)セラピストの内的な信念、理念、ヴィジョンや仮説は、具体的には、どのように表現されるのでしょうか? それは、目に見えないものだったのではないでしょうか?

9)ミンデル夫妻は、ある時期、(グレゴリー・ベイトソンが最晩年を過ごした)カリフォルニア・ビッグサーにあるエサレン研究所に招聘され、長期滞在しながら、プロセスワーク・セミナーを提供しました。詳しくは、『うしろ向きに馬に乗る』(春秋社)を参照してください。

エサレンは、ゲシュタルト・セラピーのメッカの1つです。ミンデルたちは、そこでゲシュタルト療法に、はじめて触れたそうです。

10)ゲシュタルト療法の創始者、フリッツ・パールズと、エサレンで最も慕われ、リスペクトさていたディック・プライス。ふたりの著名なゲシュタルト・セラピストのセッションを、ビデオで繰り返し見たところ、次のような驚くべき発見をしたといいます。

2人のセラピーは、まったく違う!
同じゲシュタルト派のセラピーを行っているのに。

詳細に見ると、2人が使っているセラピーのテクニックやスキル、道具、セラピーの手順は、酷似している。にもかかわらず、そのセラピーがとても違って見えるのは、なぜなのだろう? なにが異なるのだろう?

11)パールズは、対決や直面化や指示することを好む。一方、プライスは、よりオープンで、穏やかで、受容的。

12)「そうか!」

手法、手順、使う道具 ~ゲシュタルト療法では「椅子」をセラピーの道具としてよく使います~ の違いではなく、その背後に潜む、目に見えない、セラピストの想い、哲学、考え方、信念、理念などに、違いがあるのではないだろうか、という気づき・ひらめきを、このとき、ミンデル夫妻は抱いたのです。

13)パールズは、人間性&実存主義心理学の王道を行くセラピストでした。一方、プライスは、ビパサナー瞑想を好む、トランスパーソナルなセラピストだったのです。2人は、人間観、生死観などにおいて、異なる信念、哲学、理念を持っていました。その2人が、同じ学派(ゲシュタルト療法)の道具や手法、手順を採用していたのです。技術からすると、2人は同じ流派に属していたのですが、信念や世界観、哲学からすると、違う学派だったのです。

13)ミンデルたちは、技術や手法からでなく、想い、理念、信念、ヴィジョン、死生観などから心理療法をとらえ直す重要性を強調します。セラピストの生死観、理念、哲学などから心理療法を学ぶことを、「セカンド・トレーニング(第二の訓練)」と呼んでいます。今回、セカンド・トレーニングの視座を大事にして、セミナーを開催します。

14)今回のセミナーでは、メタスキルと、トランスパーソナルな意志および信念を総合し、トランスパーソナル心理療法の最良のエッセンスを身につける取り組みを行います。今回の内容はまた、トランスパーソナル心理療法だけでなく、あらゆる流派の心理療法の基礎となるものであり、有益です。

セラピストやコーチ、コンサルタントなど援助職の方で、ご自身の援助のスタイル、理念や信念、構えや姿勢を、あなたの具体的な技術とともに、役立てていきたい、と思われる方にも、役立てていただけます。皆様のご参加を、お待ちしています。

初心者の方、一般の方のご参加も、心から歓迎いたします。

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日時■ 2018年5月27日(日)10:00~17:00

会場■ 東京都内(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)

費用■ メールマガジンにてご案内しております。

講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子