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メンタライゼーションと心の癒し ~心理療法の最先端、基本、そして古典から学ぶ~|2018/04/15(日)

1)4月のセミナーでは、「メンタライゼーション」をメインに、心の癒しについてとり組みます。

あなたは、「メンタライゼーション」という言葉、概念をご存知でしょうか。メンタライゼーションは、最も新しい、しかし同時に古典でもある心理療法の基礎概念です。精神分析、愛着理論、認知療法、対人関係療法、クライエント中心療法・・・など、あらゆる心理療法やコーチングに貫かれた、対人援助のエッセンスです。

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外的コンテキストとマネジメント ~あなたのカウンセリングを現場で活かす リレーション力、コミュニケーション力、リノベーション力~|2018/03/21(日)

◎ 配布資料+音声データをご購入いただけます

1)カウンセリング、心理療法、コーチングをコツコツまじめに、誠実に学んでいれば、それらを、現場で実際に役立てることができるようになるのでしょうか?

かつて、私たちはそう思っていました。

が、それほど単純ではありませんでした。

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コンテイナーと治療構造 ~心の変容をうながす「内的容器(インキュベーター)」と「外的治療構造」作り~|2018/02/25(日)

◎ 配布資料+音声データをご購入いただけます

1)今から約30年前、私たちがユング心理学や精神分析に魅かれた最大の理由に、心の質的変化、つまり変容や成熟を可能にする心理学、という点がありました。

しかし、なぜその2つが、変容や成熟を促せるのか、その秘訣を見出すのに必死だったことを、昨日のことのように覚えています。

心の質的変化、変容や成熟のために不可欠なもの、それが今回のセミナーで扱う、「コンテイナー(心の容器)」であり、それをプロテクトする、「外的な治療構造」です。

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コンステレーションと個人神話|2018/01/28(日)

◎ 配布資料+音声データをご購入いただけます

1)あなたは、「コンステレーション」という言葉を聞いたことがありますか?

コンステレーションは、ユング派心理臨床の最良の視座であり、切り口です。それは、ユング心理学における「秘伝」といえるものです。今回、久しぶりに、コンステレーションをテーマに、セミナーを開催します。最新の有益な見解や情報をとり入れ、基本から多面的に学びます!

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うつの徹底理解と対応 ~単極うつと双極うつ、愛着とうつ、自己愛の傷つきとうつ、パーソナリティ障害とうつ、健康なうつ、中高年期のうつ、悲哀とうつ、トランスパーソナルとうつをめぐって~|2017/12/23(土)&24(日)

◎ 2日間開催
◎ 配布資料+音声データをご購入いただけます

1)私たちがうつに本格的に関心を抱いたのは、いまから数十年前のことでした。ユング派のジェームズ・ヒルマンによって創始された元型心理学が、うつを、心理学のパラダイムやパースペクティブ(=よって立つ観点)にしていたり、うつをギフト(gift、贈り物)、癒し力(healing power)、アート(art)などととらえていることを知り、その発想に大変驚き、魅かれたのがきっかけです。

2)それまで、うつは、医療によって治療されるべきもの、と早計していました。河合隼雄氏は、うつには自殺・自死が伴いやすく、基本的に、カウンセラーが関わる領域ではない、と書籍などで述べていました。

3)にもかかわらず、河合氏の属するユング心理学の元型学派はうつを積極的にとりあげ、うつに能動的に取り組んでいたのです。それも、彼・彼女ら独特のやりかたで。なぜでしょうか?   それは、どういったことを意味するのでしょうか?

4)元型心理学は、うつは、治すべきものではなく、パラダイムやパースペクティブだと言います。???   それは、発想、視座の大転換を意味します。

5)治されるものとしてのうつは、精神医学の「内容」物です、一方、パラダイムやパースペクティブとは、さまざまな内容物を内に抱える、「コンテキスト(文脈)」ないしは「フレーム(枠組み)」です。元型心理学は、うつを、「内容」物から、何と、「コンテキスト」や「フレーム」へと、大転換させてしまったのです!(注:詳しくは、セミナーで学びます。元型心理学の洗練されたパースペクティブに、感動されると思います)

6)それでは、元型心理学が提唱する「コンテキストとしてのうつ」、「うつのパースペクティブ」とは、何でしょうか?   ここで一言だけ述べると、「深み」です。元型心理学は、心理学に深みを持ち込み、深みという視座から、うつを見直し(re-visioning)、夢、症状、悩み問題、訴えを聴くようになったのです。

7)そのアプローチは、ユング心理学、プロセスワーク、トランスパーソナル心理学に近いところもありますが、決定的な違いもあります。その相違は、ほんのわずかなもののように映ります。が、実際のカウンセリングにおいては、大きな、また質的差異を生みます。このセミナーでは、ユング心理学、プロセスワーク、トランスパーソナル心理学のうつの捉え方と、元型心理学のうつのパラダイムとの違いを明確にお伝えし、うつや躁うつに関して、多次元的、多面的に理解していきます。

8)元型心理学のアプローチは、(心理)錬金術の影響を包含しています。錬金術は、うつを、人間の自己実現・個性化プロセスの、第一段階(ニグレド、黒化)の開始、ととらえます.ニグレド、それは、何を意味するのでしょうか?   (注:ちなみに、自己実現・個性化の過程に不可避の、ニグレド的うつプロセスに参与するのは、容易ではありません。それは、「魂」の成熟が始まった印と言えますが、ニグレド的うつプロセスに加わるために、何年、何十年をも必要とする場合が、少なくありません。特に、永遠の少年・少女タイプの人にとっては、困難です)

9)ニグレド的うつは、魂の成熟、あるいは自己実現・個性化過程の開始を意味します(注:ニグレド的うつの、その他の重要な意味に関しては、セミナーを楽しみにしてください)。うつが、(心理)錬金術や元型心理学的に見直されると、それは、決して病的なものではないことがわかります。

10)メラニー・クラインが提唱した、「抑うつポジション」にまつわるうつも、マイナスなものではなく、むしろ健康・健全なうつです。それは、自我の成熟を意味します(注:うつには、「魂」の成熟を指標するものと、「自我」の成熟のしるしとなるものがあります。その違い、および抑うつポジションについては、セミナーで学びます)。

11)ニグレド的うつ、抑うつポジション的うつは、共に病的なものではありません。むしろ、健康で、深みがあり、成熟に向けたものです。にもかかわらず、うつに変わりはなく、経験としては、大変困難なプロセスです。では、どうすれは、ニグレド的うつ、および抑うつポジション的うつを応援できるのでしょうか?   また、そのプロセスを、安全にやり遂げるには、どのような工夫や仕掛けが不可欠でしょうか?   ご一緒に学びませんか!

12)(私たちが準拠してきた)プロセスワーク、トランスパーソナル心理学、各種人間性心理学は、躁うつ(双極性障害)の認識に、弱いところがあります。弱いと述べたのは、躁うつを見抜く明確な視点を持ち合わせていない、という意味です。いわゆるうつは、単極(一極)のうつであるのに対し、躁うつのうつは、双極(二極)の(中の)うつです。その二つに対する心理学的アプローチは、相当違い、場合によっては、真逆のこともあります。

13)過去5年の間に、NHKで、日本うつ病学会理事長で防衛医大教授の野村総一郎氏が、複数回にわたって、うつと躁うつの違い、またそれら双方に対する治療~特にクスリ~の相違について明確に述べたのをあなたは、ご存知でしょうか?   それに関して、心理カウンセラーやセラピスト、コーチは、絶対に学んでおくべきです。なぜなら、医療だけでなく、心理療法やコーチング、ファシリテーションにおいても、うつと躁うつ(のうつ)に対するアプローチを、変える必要があるためです。うつや躁うつは、心の訴えの中でも、死に最も近いところがあります。その点を踏まえて、謙虚に、誠実にうつや躁うつについて学び、とり組む必要があります。

14)先ほど、述べた躁うつへの見方に弱いところがあると、どういったマイナス面、副作用が伴うでしょうか?   一点だけ簡略に述べます。それは、躁うつの「躁」や、躁的防衛の「躁」を、プラス(肯定的)なプロセスと誤解・誤読してしまう点です。精神科医の笠原嘉氏と木村敏氏は、躁うつの「躁」を、「うつ」が一段悪化したもの、と考えています。私たちは、その見方を、参照し、大事にしています。躁うつは、うつよりも、自死が多い心の訴え、という専門家もいます。今回、あなたとご一緒に、「躁」についても、基本から学びたいと考えています。15)さて、今までのうつの治療法では良くならない現代型うつが紹介されて、随分時がたちました。現代型うつの癒しがなぜ困難なのか、という要因の一つに、それが、自己愛の傷つきや、各種パーソナリティ障害と関わっている点があげられます。パーソナリティ障害とうつの関係についても、学ぶ必要があります。その基本と、最前線に関しても、お伝えしたいと考えています。

16)うつは、大切な人を失った時、(若さを喪失する)中高年期、死が明確に意識される老年期に、(潜在的な)悲哀と共に、早晩必ずやってくるプロセスでもあります。それらは、上に述べた魂の成熟と、自我の成熟の両方に関わる危機の時期でもあります。危機とは、「危」険 + 好「機」です。危険を意識し、どう回避す るのか、また好機 をいかにものにするか、が問われる時です。物語や事例を参考に、うつと、魂および自我の成熟についても、取り組みたいと考えています。

このセミナーでは 、うつの多次元性や多様性にご関心のあるプロ・カウンセラー、セラピスト、コーチ、ファシリテーターなどの対人援助職の方、また、そうした領域でのプロをめざす方の、
ご参加を心からお待ちしています。初心者の方、一般の方のご参加も、心から歓迎いたします。

* * * * *

日時■ 2022年12月23日(土)&24日(日)10:00~17:00

会場■ 都内(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)

費用■ メールマガジンにてご案内しております。

講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子

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愛着とカウンセリング ~心理療法の最前線~|2017/11/26(日)

◎ 配布資料+音声データをご購入いただけます

1)関係療法や家族療法の中で、この十数年、脳科学などと共に、最も話題になってきているテーマの1つに「愛着」があります。今回、愛着について、マンスリーセミナーで、はじめてとりあげますあなたは、愛着が、心理療法の中で、大変重要視されるようになっていることを、ご存知でしょうか?   各種の重篤なパーソナリティ障害、精神病水準、依存症、共依存、虐待、発達障害、家族における心の負の世代間伝達などの理解に、愛着は欠かせない視点となってきています。今回のセミナーでは、その基本と、最先端の一端を、心理セラピーとの観点から、わかりやすく、実践に役立てることを意図して、お伝えします。

2)「愛着」や「近接」と訳される英語の”attachment(アタッチメント)”は、「付着」や「取りつけ」などとも訳されます。Attachmentには、小さなものあるいは付属のものを、大きいものまたは本体に、取りつける,くっつける,張りつける、という意味もあります。心理療法の文脈で言うと、乳幼児や子どもが、親や重要な他者、大人に、取りつく、くっつく、張りつく、付着する、近接する、と言えるかと思います。

3)愛着は、仏教では、対象(人や動物やもの)を追い求めることで、否定的にとらえられます。一方、乳幼児観察の視点からすると、それは、単に後追いを指します。動物・比較行動学のコンラート・ローレンツは、「刷り込み(imprinting、インプリンティング)」について、論じましたが、それは、愛着理解に参考になります。たとえば、カモなどの鳥に、卵から孵化した後、一定時間内に人や動物、あるいは物体を見せて追尾させると、その鳥は一生それを後追いするようになります。ローレンツの研究室には、実際、彼を親鳥と勘違いし、大人になった後も追尾するカモがいました。それでは、なぜ、動物や人間は、後追いし、付着、近接、愛着するのでしょうか?

4)心理療法的には、愛着が、安全感・安心感を得ること・維持すること・回復することを、可能にするから、と説明できます。愛着理論や関係療法からすると、愛着は、食事や睡眠や生殖と同じように生存に必要で、生涯にわたって私たち一人ひとりの情緒や思考や行動に、多大な影響を与えるものです。それは、他人との肯定的な関係が、空気や酸素と同様、私たちが生きていく上で不可欠なもの、と考えたハインツ・コフートの自己心理学や、大乗仏教の縁起の考え方と同様、関係性を前面に打ち出した視点です。その視座は、性欲求や攻撃性のような本能、あるいはドリーミングといった本質的なものが個人の内面にあって、それが、あなたや私の人生を規定する、と考える、1人心理学的見方とは異なります。このセミナーでは、本質と環境、また個人と関係の違いをわかりやすくご説明しながら、心理療法における愛着の役割、重要性、意味について考えます。

5)次に、愛着と心理療法に関する3人の代表的論客の見解を見てみましょう。ジョン・ボウルビィは、愛着を、「人(たとえば、子ども)が、危機的状況にあるとき、あるいは、そうした危機状態を予測し、恐れや不安などの感情が喚起されるときに、自分にとって大切・重要な人に物理的・実際に近づくことを通して、「安全感」を獲得・回復・維持しようとする試み」と考えました。アラン・ショアーによると、それは、「個人の情緒・情動の崩れを、関係性によって制御するシステム」です。一方、ピーター・フォナギーは、「恐れ、おびえ、不安のようなネガティブな感情を、子どもに耐えられる形にやわらげ、適切に映し出す・照らし返すこと」、また、「映し返しを通じて、子どもが、自分および他者の心の状態を、オープンに・柔軟に・まっすぐに理解する能力を、あますところなく発達させることができるように応援すること」を、愛着機能、と考えました。(注:フォナギーの愛着の視点には、コフート、ウイニコット、ビオンなどの影響が、多々見られます。それは、愛着理論と関係療法の統合と言えます。今回のセミナーで、ご一緒に考えませんか?   )

6)それでは、生涯にわたって私たち一人ひとりの情緒や思考や行動に影響を与える愛着に、もし(決定的な)問題が生じたなら、どのようなことが起きるでしょうか?   たとえば、接近と回避という首尾一貫性のない行動をとるようになるかもしれません。顔をそむけながら、しがみつく、といった相反的な行動を、愛着理論は、「無秩序・無方向型」、と命名しました。それは、グレゴリー・ベイトソンのダブルバインド的行動様式です。元来両立するはずのない真逆の愛着行為を(同時に)する子どもには、虐待が疑われる、と考えられています。また、無秩序・無方向型と重いパーソナリティ障害の関係についても理解が進んでいます。

7)愛着は、子どもとのカウンセリングにはもちろん、大人との心理療法やコーチング、ファシリテーションにも、不可欠な視点となっています。それは、重篤なパーソナリティ障害、依存症、共依存、DV、心の負のテーマの家族における世代間連鎖などに対して、緻密で精妙な視座を与えてくれるからです。

8)愛着理論は、実証的観察をベースとした古典的科学の王道から生まれています。一方、従来の臨床心理学の多く~特に深層心理学やトランスパーソナル心理学~は、イマジネーションやファンタジーやメタファーの読みや解釈、また、新たなナラティブ(物語)の紡ぎ出しを手段とするアート的な側面を、色濃く打ち出してきました。

9)その2つは元来相いれず敵対的です。しかし、実際の問題や悩み、症状で痛み、苦しみ、困難さを抱えているクライエントの人と、現場で関わっている実務・実践家が、その両方を、存分に活用しない手は、ありません。

10)心理療法やコーチング、ファシリテーションにおいて、アートと科学を統合的に活かすことを最初に、全面的・本格的に提唱したのが、トランスパーソナルのケン・ウイルバーでした。愛着に関するアートと科学の統合は、今日、ダニエル・スターン、フィリップ・ブロンバーグ、ピーター・フォナギー、ジェームズ・マスターソンらの関係精神分析の中で、実現されています。

11)愛着は、言語以前の発達段階で形成されます。そのため、言語とは違う手段による心理セラピーが、有益です。たとえば、ウイニコットのスクイグルやアートセラピー。たとえば、ボディワーク的セラピー。たとえば、瞑想的セラピー。それらを関係療法に組み入れた愛着と取り組みについても、今回、お伝えします。

* * * * *

日時■ 2017年11月26日(日)10:00~17:00

会場■ 都内(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)

費用■ メールマガジンにてご案内しております。

講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子

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パーソナリティ障害の多様性と徹底理解 ~境界性パーソナリティ障害、自己愛パーソナリティ障害、そしてスキゾイド・パーソナリティとは何か?~|2017/10/28(土)&29(日)

◎ 2日間開催
◎ 配布資料+音声データをご購入いただけます

1)現代型うつ病、依存症、共依存、DV(家庭内暴力)などの中には、各種パーソナリティ障害が潜んでいることが少なくありません。

パーソナリティ障害に関する理解がないばかりに、カウンセリング、セラピー、コーチング、
ファシリテーション、コンサルティングが行き詰まっていることが、しばしば見られます。

そうした課題を解決し、より良質な対人援助を行うために、
今回、現代人に最も多い代表的パーソナリティ障害の3つに焦点を当て、その基本から最先端までを学びます。

その3つとは、境界性パーソナリティ障害、自己愛性パーソナリティ障害、
スキゾイド・パーソナリティ障害です。

今まで私たちは、境界性パーソナリティー障害と
自己愛性パーソナリティ障害に関するセミナーを、繰り返し開催してきました。

このセミナーでは、それに加え今回初めてスキゾイド・パーソナリティ障害について、
基礎からていねいにお伝えしていきます

(あなたは、スキゾイドないしはシゾイド、という言葉を聞いたことがありますか?
セミナーで、ご一緒に学びましょう)。2日間をかけて、3つの代表的パーソナリティ障害について取り組みます。

2)パーソナリティ障害の「パーソナリティ(personality=人格)」や「パーソン(person=人)」は、ラテン語の”persona(ペルソナ、仮面)”を、語源としています。

仮面ですので、付け替えが可能です。仮面(ペルソナ)を取り換えることで、
人格(パーソナリティ)や人(パーソン)のあり様に、質的変化が生じます。質的変化、
つまり変容によって、パーソナリティ障害に癒しや回復が起こり得ます。

今から約30~40年前、日本の心理療法の世界では、パーソナリティ障害は、治らないものと理解され、負のレッテルが張られていました。

パーソナリティ障害、と診断されることは、社会的スティグマ(烙印)を押されることでした。
が、今日パーソナリティ障害は、変化・変容が、十分に可能である、と理解されています。
かつてと比べて、心理療法が進化し、洗練されたからです。

その中核には、「ペルソナ」への眼差しがあります。今回、その点について、詳しくお伝えします。

3)では、ペルソナの交換を、どのように行えばいいのでしょうか?

今回、私たちは、関係療法や家族療法、ならびに発達心理学を参照します。

また、ユングの「ペルソナ(外的世界・世間に対する人格)」論についても、再考します。

1点注意していただきたいのは、ペルソナやパーソナリティは、基本的に、自我や主体に関わる
心理的テーマである、というところです。

それは、無意識や夢やドリーミングといった深みにではなく、意識や自我や外的人格に、
より関係しています。
また、20年ほど前までのパーソナリティ障害の特徴として、
マニピュレーション(manipulation=<自己中心・自己愛的>操作性・ごまかし・小細工)が、
際立っていました。

一方、現在のパーソナリティ障害では、以前とは変化し、その特徴は、
自我やパーソナリティの未成熟さにあります。

ですので、今日、パーソナリティ障害との取り組みには、
未成熟な自我またはパーソナリティの成長プロセスを描いた発達心理学が欠かせないのです。

さらに、愛着理論や神経生物学的脳研究、メンタライゼーションの基礎理解も必須です
(その3つに関しては、セミナーでお伝えします)。


4)パーソナリティ障害水準のパーソナリティあるいは自我は、不安定です。

パーソナリティ障害水準には、部分的に精神病水準が含まれ、また、部分的に神経症水準が、混在しています。
そのため、不安定で、混沌としています。

しかし、その不安定さや混在性は、(実は)構造化・パターン化され、安定していて、
簡単には、変化が生じない、ということが、かつて精神科医のオットー・カーンバーグによって示されました。

パーソナリティ障害水準との取り組みには、
精神病水準と神経症水準への眼差しと理解が欠かせません。

このセミナーでは、パーソナリティ水準に加えて、
精神病水準と神経症水準に関しても、わかりやすくお話します。

不安定な安定、を潜在させたパーソナリティ障害水準への関わりには、
精神病ならびに神経症水準の理解が必須だからです。


5)カウンセラー、セラピスト、コーチ、ファシリテーターの中には、
パーソナリティ障害水準について、よく知りたい、という人が少なくありません。

それについて、学びたいと思ってきたのに、先延ばしをしてしまい、
今まで、本格的に学ぶ機会がなかった、という対人援助職の人は、多いのではないでしょうか?

いまさら聞くことが・学ぶことが恥ずかしい、といった人も、いらっしゃるかと思います。

病態水準など知らなくても、傾聴や共感に徹したり、プロセスに従えば何とかなると教わり、
そう信じてきたけれど、心のどこかでは、
「いや、そうではない、やっぱり、プロ(予備軍)としては、
パーソナリティ障害について、きちんと学習しておかないとよくない」、
と思っていないでしょうか?

今書いたうちのどれかが、あなたにフィット・該当するとしても、
それは、あなたが悪かったからではなく、
パーソナリティ障害水準の全貌について学ぶ機会がなかった、
どこで教わればいいか知らなかった、という場合が、少なくないと考えます。

そんなあなたに、このセミナーはいい機会となることでしょう。


6)最後に、パーソナリティ障害水準について理解を深めるために、
神経症水準との比較から、少し考えてみましょう。

それに当たって、心の内的世界および対人関係(より正確には、対象関係)のあり方について、
述べます。

神経症水準以上のレベルまで心が発達している場合、心の内的世界、そして対象関係を、
「全体」的にとらえることができます。

一方、心の成長がパーソナリティ障害水準で止まっている時には、
心を「部分」的にしか捉えることができません。

部分的にしかとらえることができない段階で、心の成長が停止した場合の典型的な問題は、
部分を、全体と<勘違い>してしまう点です。

ユングやクラインは、心は本来、白と黒、昼と夜、陽と陰のような「全体」からできていると
考えましたが、パーソナリティ障害水準では、白のみ、または黒だけを、
つまり「部分」を「全体」と<誤解>してしまいます。

自分の内的世界は真っ白で光り輝いていて、
自分の対人関係も、汚れた・邪(よこし)まなところのない、
裏切らない純粋な人だけによって作られている、と信じて疑いません。

黒い世界は、自分の外にあり、それは自分とは無関係と思い込んでいます。
他の人の事情を考えずに、そんなふうにスッパッと・キッパリと切り分けています。


7)パーソナリティ障害において、心の内界や対人関係が、
なぜ、白と黒のように全くの別世界として切り分けられるかというと、
そこにスプリッティング(splitting、分割&相互排除)という防衛機制が働くためです。
(注、なぜ、スプリッティングが防衛機制なのか、セミナーで、詳しくお伝えします)。

問題は、自分(の内界や対人関係)は白と思っていたのに、
突然、それが、黒に反転してしまうことが、少なくないことです。

スプリッティングは解消されていないのに・いないからこそ、
白から黒、黒から白、そしてまた白から黒、といった反転が生じます。

結果、そこに、一貫性(恒常性、持続可能性)ができず、
自信、自尊心、自己効力感、自己達成感、自己の連続性を持つことができません。

トーマス・オグデンは、スプリッティングが特徴であるパーソナリティ障害の心を指して、
「歴史なき、または歴史(人生史)を作ることができない」と述べました。


8)一方、白だけでなく、黒をも心の内面に収める力を身につけた
神経症水準以上においては、心は「全体」的であり、
そのため、白から黒、黒から白、白から黒といった動きに揺さぶられ、不安定になることは
ありません。

自我(エゴ・アイデンティティ)には一貫性ができ、
恒常性のある自分に信頼(=自信)、自尊心、自己効力感を持つことができます。

自分の人生に、積み上げてきた歴史感覚を抱くことが可能になります。


9)今回取り上げる3つのパーソナリティ障害には、それぞれ大きな違いがありますが、
心の内界と対人関係世界にスプリッティングがあるところが共通点です。

それらは、神経症水準とは、質的に異なります。

* * * * *

日時■ 2017年10月28日(土)&29日(日)10:00~17:00

会場■ 都内(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)

費用■ メールマガジンにてご案内しております。

講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子

 

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臨床家の粋を極める ~ビオン・オグデンの心理療法~|2017/09/24(日)

◎ 配布資料+音声データをご購入いただけます

私たちは、現在、カウンセリングやセラピーを実践する上で、最も有益なものとして、各種の「関係療法」に力を注いでいます。その最初のきっかけを作ってくれたのが、メラニー・クラインを創始者とする「対象関係論」です。

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夫婦療法、家族療法の新しいアプローチ|2017/05/28(日)

◎ 配布資料+音声データをご購入いただけます

1)「この世界を理解することはできませんが、抱きしめることはできます。世界に存在する誰かを抱きしめることによって」——— マルチン・ブーバー(人間関係とスピリチュアリティについて考え続けた哲学者、ユダヤ教の宗教学者、神秘主義者。もっとも有名な本に、『汝と我』<岩波文庫>があります)

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病態水準の徹底理解|2017/04/29(土祝)&30(日)

◎ 配布資料+音声データをご購入いただけます

1)「病態水準」の基本から最先端を、ていねいに、わかりやすくお伝えする集中セミナーです。あなたは自信をもってカウンセリングをしているカウンセラーと、そうでないカウンセラーの違いは何だと思いますか?

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