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発達障害のこころの構造 〜その内的理解と取り組み〜|2019/3/24(日)

◎ 配布資料+音声データをご購入いただけます

1)私たちは勘違いしていました。約25年前に、発達障害(自閉スペクトラム症)で悩む人との心理療法に取り組むまで。それまで、象徴(シンボル)やメタファーこそが、心理療法の中核にあると思い込んでいました。C.G.ユングやM.クラインは、象徴を生み、形作ることが、こころの機能の中心だと考えました。私たちは、象徴やメタファーを豊かに創出する夢分析、イメージワーク、絵画療法、ドリームボディワークを好んで行っていました。

2)が、もしクライエントの人が、象徴に興味を示さなかったり、象徴を生み出す(ユングやクラインが想定した)こころを持っていなかったりしたら、あなたはどう対応するでしょうか?象徴化されていないプロセスは、フラット(平板)で文字通り(literal)なもの。そこに含意はありません。フラットでリテラルなプロセスは、従来、心理療法の対象外とされてきました。そこに、心理療法で扱うべき、象徴、メタファー、含意が存在しないからです。ここが、私たちが、勘違いしていた点です。

3)私たちは当時、発達障害には、心理「療法」はむしろ役に立たない、「療育」的なサポートこそが適切だ、と誤解していました。しかし今日、「発達障害のこころ」との、心理療法的取り組みの有益性が、理解されるようになっています。たとえそこに、象徴やメタファーを産むこころがなくても。この点について、あなたとご一緒に、ていねいに考えていきます。

4)ポスト・クライン派のA.アルヴァレズは、こころを「自閉的部分」と、「非自閉的部分(健康なパーソナリティ)」とに分けました。また、発達的視点を持ち込み、この2つの部分に関する発達的な相違にまなざしを向けました。そのうえで、非自閉的側面(健康な側面)の成長、およびこころ全体の癒しを促すかかわりを試みたのです。

5)自らの心理臨床を、自閉スペクトラム症との取り組みにささげたD.メルツァーは、発達障害のこころの構造を、「こころの次元」からとらえます。彼は、こころを、次のような4つの次元に分け、構造化しました。象徴を生むことのない(A)「マインドレス(こころのない、mindless)」な<一次元>、(B)「人の模倣と表面的な対人関係」に彩られた<二次元>、象徴を生むが(C)妄想と一方的(自己愛障害的)コミュニケーションを中心とした<三次元>、(D)共感と双方向のコミュニケーション・交流が可能な(健康な)<四次元>このうち(A)(B)が、特に自閉症スペクトラムに関係する次元です。(C)の三次元も、自閉症スペクトラム特有のコミュニケーション・パターンを理解するうえで参考になりますが、まずは(A)と(B)について、よく理解することが欠かせません。

6)(A)は「点」や「直線」の、(B)は「平面」の世界で、この2つに象徴は存在しません。なぜなら、この2つは、こころが生まれる以前の領域だからです。(A)のマインドレスな一次元は、こころが意識と無意識に分かれる前の「(こころの)非二元」あるいは「非意識」であり、身体的感覚に彩られた世界です。それは、「神経症」「パーソナリティ障害」「精神病」といった代表的な3つの病態水準以前の次元です。上記の3つは、こころが生まれた後の病態ですが、(A)の一次元、(B)の二次元は、そうではありません。あなたは、こころが現れる以前の、一次元的およびや二次元的世界を想像できますか?

7)(A)と(B)は、心理臨床世界では、あまり着目・重視されずにきました。が、トランスパーソナル発達心理学(病態水準論)では、40年も前から、常に議論の対象でした。今回のセミナーでは、トランスパーソナルな視点について、(再度)ご紹介します。

8)では、自閉スペクトラム症には、「こころ」はないのでしょうか?医師の広沢正孝氏は、人のこころの構造の原型に、次の2つを想定しています。1つは、「胎蔵界曼荼羅(マンダラ)」的なもの、もう1つは「金剛界曼荼羅(マンダラ)」的なもの、です。こころの全体性が、マンダラ的だと最初に指摘したのは、ユングでした。が、彼が着目したのは、あくまで「胎蔵界的マンダラ」です。それに対して、広沢氏は、発達障害の背景に潜むのは、金剛界的世界だというのです。金剛界マンダラの特徴は、中心がないこと、タッチパネル的、格子的、デジタル的であることです。これは、中心を持ち、同心円状に拡がり展開していく胎蔵界マンダラとは対照的です。

9)広沢氏は、「胎蔵界マンダラ」的こころの構造は、(妄想型を中心とする)統合失調症に潜在し、一方、「金剛界マンダラ」的こころの構造は、自閉症スペクトラムの背後に潜むと仮定します。今回、2つのマンダラを比較検討しながら、発達障害のこころの構造について、詳細に考えます。発達障害は、統合失調症と混同されることが少なくありません。この2つの違いについても、わかりやすくお伝えします。

10)私たちは関係療法に準拠した取り組みを行っています。関係療法は、こころは人の脳の内に閉じられて(自閉されて)いるのではなく、間主観的なものだと仮定します。これは、量子論を参照したもので、こころの構造を関係的にとらえる視座です。先に述べた、ポスト・クライン派のアルヴァレズは、こころを、自閉的部分と非自閉的部分とに分けました。関係療法は、この2つの部分を、クライエントとセラピストの交流の中で取り上げ、発達障害の心理的発達および癒しを促すものです。関係的こころにおける「発達障害」のこころの構造について、あなたとご一緒に学べる機会を楽しみにしています。

今回のセミナーでは、「発達障害」のこころの構造、発達障害に向けた認知行動療法や行動科学的アプローチ、療育的かかわりとは異なる心理療法にご関心のある専門家、専門家をめざす方、また、発達障害に苦しむ方、そのご家族、発達障害の方のサポートをする会社や組織の方、一般の方、初心者の方のご参加をお待ちしています。

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日時 ■ 2019年3月24日(日) 10:00~17:00

会場■ 都内(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)

費用■ メールマガジンにてご案内しております。

講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子