永遠の少年とは
あなたは「永遠の少年」をご存知ですか?「永遠の少年」は、成人することなく死に、死んだかと思うと太母(グレート・マザー)の子宮の中で再生して、少年として再びこの世に現れる、永遠に成人しない古代ギリシャの子どもの神です。時に英雄的な仕事をするため、太母の自慢のカワイイ子どもです。永遠の少年は、太母に愛され、彼女との(精神的)近親姦関係にあります。
彼は、マザコンで、太母の前では、決して頭が上がりません。母なるものに掌(てのひら)の上で転がされ、踊らされ有頂天になるママッ子/僕ちゃんです。いつまでも年を取らず~年を取りそうになると死んで、あるいは殺されて、また若々しい姿で甦るので~、永遠に青春期にいます。恋愛、ロマンス、アバンチュール、不倫に事欠かず、危険さとスリルのある遊びが大好きです。
その神(永遠の少年)に、人が憑依されるとどうなるでしょうか?
鼻持ちならない「自己愛性パーソナリティ障害」を、発症したとしても不思議ではありません。自分は特別で、本気を出せば(いや、出さなくても)スゴイ事をできると妄想し、たくさんの女性(あるいは男性)の所有を、生きる目的とします。女性(男性)との真の関係性の育成やパートナーシップに関心はありません。どの分野、領域でもいいので、どんなことをしてでも、一番になること、頂上に立つことにのみ、囚われます。が、ギリシャ神話のイカロスのように、早晩、墜落し、死ぬ運命にあります。
イカロスは、父親ダイダロスの考案した蝋(ろう)でできた翼によって、幽閉されていたクレタ島から脱出に成功します。しかし、父親の忠告を無視して、太陽より高く飛べるとばかりに有頂天/傲慢になっていたところ、太陽の熱で蝋制の翼が溶けてしまい、海中に落下し溺れ死んだ、と伝えられています。
永遠の少年と同じような心性を持つ男性および女性はたくさんいますし、永遠の少年が大好きで食べちゃいたい、と欲求する太母に憑依された人(女性と男性)も、いっぱいいます。
ピーターパン・シンドローム
永遠の少年神に捕まった男性は「ピーターパン・シンドローム」や「カサノバ・コンプレックス」などと呼ばれました。永遠の少年神にとらえられた女性は「シンデレラ・コンプレックス」といわれました。永遠の少年神は、異性愛者だけでなく、同性愛者にも憑依します。その3つには、「顕示型」や「隠れ型(非顕示型)」あるいは「厚顔的」や「薄皮的」自己愛性パーソナリティ障害が、潜在しています。
さて、永遠の少年神に捕まると、中高年期、老年期を失います。たとえば、30代になっても、40代になっても、50代になっても、ときには70代、80代になっても、自分は思春期/青年期にいるつもりでいます。そのため、中高年期、老年期に、地に足をつけて生きることができません。
身体的に老いた自分を直視しようとせず、精神はまだ若いのだから、肉体もまだ若いはず、といった妄想に囚われ若作りします。老いても、若いオネーチャンを求めてキャバクラや風俗通いしたり、若い燕を追ってホストクラブにハマったりします。アイドルの追っかけも止まりません。結果、中高年期を成人として生きれず、中高年期を失います。あるいは、貧相な中高年期、老年期になります。
思春期/青年期とは「質的に」異なる大人の世界、人生の成熟期を謳歌できません。心はいつまでも「青い果実」のままです。中高年期や老年期を忌み嫌い、憎みます。
永遠の少年/少女が知らないこと
永遠の少年はまた「太母」的精神を、合わせもっています。そのため、他の永遠の少年/少女を見ると(女性だけでなく男性の内なる)「母性」が「キュン」と胸がトキメキ揺さぶられます。が、気をつけてください。次の瞬間、他の永遠の少年/少女を呑み込み、殺してでも子宮に戻したくなっている衝動に襲われるからです。永遠の少年は「子ども」でありながら、『同時に』「太母」でもあるところが、注意点です。それが、中高年になった永遠の少年/少女が、キャバクラやホストクラブ通い、アイドルの追っかけをする一因です。「子ども-太母」は、他の永遠の少年/少女を追いかけて、喰い物にします。
あなたは、中高年期や老年期における芳醇/豊潤(mellow)さに、ご関心がありますか?
そこには思春期/青年期とは質の異なる深み、奥行き、実りがあります。
永遠の少年/少女は、そのことを知りません。
フロイトやジャック・ラカンが提示した考えに、「去勢」があります。「ペニス」は「万能/全能」「完璧」「無限の力」「永遠の若さ」などの象徴ですが、子どもが大人になるには、ペニスの去勢が必須です。去勢を通じて、自分が万能/全能でないこと、完璧でないこと、無限の力をもっていないこと、永遠に若くはないこと(幻滅)の受け入れが必要です。精神分析によれば、去勢はすべての社会に共通の『掟』で、子どはそれを経験してこそ「まともな人間」になり、「社会人」になります。
子どもが大人になるには「イニシエーション(通過儀礼)」が必須です。イニシエーションをいつになっても経ないのが、永久に思春期/青年期を繰り返す(繰り返さざるを得ない)「永遠の少年/少女」たちです。
太母の魔力
問題は、死んだ永遠の少年を子宮に呑み込んで、再び永遠の少年としてこの世に生み出す太母の魔力、魔的存在です。
太母は、少年が大人として社会に出ていくのを決して赦さない。
永遠の少年は、イカロスのように死を経験するのですが、死からさえ何も学びません。太母に魅入られ、標的になっているために、死が、心の変化、変容、成長に結実しないのです。永遠の少年は、死んではまた若者として生まれる過程を、無思考のまま半永久的に生きなければなりません。
永遠の少年/少女の苦悩
永遠の少年神に取り憑かれた人も、その悪循環の中で、長きにわたって苦悩することになります。
あなたは、そんな永遠の少年性を、思春期/青年期を過ぎた後も、生きたいと思いますか?
永遠の少年/少女神に、憑依された人の肉体は老います。が、精神は、成長も進展もないまま、同じ過程、同じパターンを延々と繰り返します。そこに、時間も歴史もありません。学びは生じません、肉体年齢と精神年齢とのギャップは、早晩、人を窮地に追い込みます。時間は待ってくれません。老いも待ったなしです。ギャップが解消されないと、肉体面ではごまかせても、精神や心の面では「幼い&醜い&貧相な」中高年者、老人となりかねません。
ここに、永遠の少年にとりつかれた40代の男性あるいは女性と、太母のような母親または父親と、セラピストと3人がいるとしましょう。セラピストが、40代のクライエントに質問をします。そのクライエントは、即答できず、困っています。すると、太母に憑りつかれた母親あるいは父親がしゃしゃり出て、40代の子どもを遮り、子どもに代わって答えようとします。「先生は、○○と言っているの、わかるでしょう。わかったのなら、○○と答えなさい」セラピストは驚きます。40代の人を見ると、ほくそ笑んでいます。セラピストは、あっけにとられて背筋が「ゾッ」とします。
こういったやり取りが、クライエントの子どもの頃から、40代になった今まで、太母との間で延々と繰り返されています。太母は、セラピストと子どもの間に入ってセラピストの質問を子どもから奪い、セラピーの場を占有します。これでは、40代になったクライエントの心が、現実に根づくことはありません。根づく(根づこうとする)と、太母に大きな舌を出され、ペロッと舐められ、呑み込まれて「主体性の芽」を奪われてしまいます。それは、ナメクジが双葉を喰らう姿を彷彿とさせます。
太母は、現実に根づくことよりも、イカロスのように飛翔して、太母の夢に添うように、永遠の少年が舞い続けることを期待(強要)します。永遠の少年は、恋愛、ロマンス、アバンチュール、不倫、危険さとスリルのある遊びにかまけなければなりません。
ちなみに、太母は、「母親」だけでなく「父親」の場合もよくあります。会社には、太母的サラリーマンとOLとが、たくさんいます。恋愛、ロマンス、不倫、危険な遊びは、太母の大好物です。太母は、永遠の少年の恋愛、ロマンス、危険な遊びを、我が事/我が物とし、ムシャムシャ食べてしまいます。太母は、永遠の少年と同じく「万能感/全能感」「完璧」「無限の力」に魅せられ、囚われているからです。
永遠の少年も、太母も、共に、自己愛障害といえるでしょう。
自己愛との取り組み
先ほどのセッションで、セラピストは、どのような介入をしたと思いますか?
あなたはイメージできますか?
クライエントの、あるいはセラピスト自身の「自己愛」に取り組みたい方には、次のセミナーが有益です。
【この下にも「永遠の少年」の記事が続きます】
通過儀礼
永遠の少年と太母との間で繰り返される無時間的悪循環を断ち、心、精神、魂の成長を促すのが「死と再誕生」からなる「イニシエーション(通過儀礼)」です。それは、子ども、少年、青年が死んだ後、(太母が行うこととは違って)まともな人間、大人、社会人、成人として再誕生するのをサポートする過程です。人生における「第二の出産」と呼ばれます。
ここには、『健康な父性』が介在します。「永遠の少年と太母とからなる近親姦」関係に、異質な「健康な父性」が、入り込まなければなりません。「健康な父性」が、第二の出産を行います。ところで、「健康な父性」は男性や父親に限定されたものではありません。女性や母親の方が「健康な父性」をもっていることがよくあります。
かつて、イニシエーションを経ていない永遠の少年は、「モラトリアム人間」と呼ばれました。モラトリアム人間のまま年を取ると、永遠の少年/少女期が間延びするだけで、実年齢に見合った中高年期を満喫できません。
現代人には、幾つになっても永遠の若さへの憧憬を手放せずに渇望、執着している人が少なくありません。しかし、健康な心、精神、魂は、「イニシエーション」を求めています。「永遠の少年」から抜けることができなくて、「太母」に捕まったまま心を病み、セラピーに来る男性および女性は少なくありません。IPPでは、心のイニシエーション過程を支援します。
ここで、注意点があります。「太母ー永遠の少年」から「健康な父性ーまともな人間としての再誕生」への《間》に、子ども/少年の成長を歓迎する『健康な母性』の介在が必要な点です。この点は、IPPでセラピーを受ける方と、無料メールマガジンに登録 された方にのみ、お伝えします。どうぞ楽しみにしてください。
「太母(グレートマザー)」「父性」について詳しく学びたい方には、こちらのセミナーがおすすめです。
【この下にも「永遠の少年」の記事が続きます】
去勢を受け入れる / 受け取る
さて、イニシエーションを経験すると、あなたは「去勢を〈受け入れる/受け取る〉能力」を身に着けます。すると、あなたは人間、大人、社会人、成人になるだけではなく、「万能感/全能感」「完全主義」「無限の力」への妄信、渇望、執着から自由になり、「身の丈の自分」にOKを出すことができます。心のイニシエーションは思春期/青年期にだけでなく、その後も、中高年期から老年期への移行時期、愛する人のそして自分の死ぬ時、独身から結婚する時などにも必要とされますが、その移行過程を〈受け入れ/受け取り〉やすくなります。
また、適応する必要のある新たな/異質の枠組みや文脈(コンテキスト)を〈受け入れ/受け取り〉参画しやすくなります。さらに、与えられた枠組みや文脈を俯瞰的に見て相対化し、リフレーム(枠組みの読み替え)をするクリエイティブで柔軟な能力が身に着きます。
イニシエーションは、困難な心、精神、魂の作業です。が、それは、人生で何より貴重な「去勢を〈受け入れる/受け取る〉能力」をあなたに与えます。「イニシエーション」と「去勢を〈受け入れる/受け取る〉能力」は、中年期以降のあなたとあなたの人生に、芳醇と豊潤(mellow)さをもたらす糸口となるでしょう。
IPPでは、困難な心、精神、魂の作業をしたいあなたを応援します。
あなた自身のために、心理療法(サイコセラピー、カウンセリング)を活用してください。
中年期に向けて
あなたは、中年期以降のあなたの人生に、芳醇と豊潤(mellow)さをもたらすための具体策にご関心がありますか?
答えが “Yes” であれば、以下のセミナーや連続講座、そして マリタル・セラピー(夫婦療法)がお勧めです。
より実践的に取り組みたい方は、マリタル・セラピー(夫婦療法)をお申し込みください。
夫婦やカップル(男女・男男・女女)のパートナーシップに、豊かさと潤いをもたらすために大変有効です。