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錬金術的家族療法 ~見えない家族の「宝」を見える化する試み~

◎ 2022年1月7日(金)〜 全10回 オンライン開催
◎ 配布資料+音声データをご購入いただけます

1)これまで、家族療法、夫婦療法、ファミリービジネス・セラピーに関する講座を積み重ねてきました。今回は、家族やファミリービジネスの不思議、秘密、影、奇跡と取り組みます。

家族やファミリービジネスには、計り知れない側面があります。ハリースタック・サリバン的には、それは、家族の”Not-Me(私でない私)”あるいは”Not-Us(私たちでない私たち)”の側面です。「私」だけれど私に見えない、「私たち」にもかかわらず私たちから切り離されている。

そうした家族の見えないものを、見える化する試み。

それは、家族がよりレジリエントで、丈夫になり、深みや力を身に着けることを内側から支援します。

2)見えないもの。それは、家族にとっての「見えない宝」と言ってもいいでしょう。「宝」という漢字は、旧字「寶」の略字にあたります。もとの「寶」は象形文字で、分解すると、それぞれが次のような象徴的意味を持っています。

「ウ(うかんむり)=家屋」
「王=3つの玉(珠)をひもで貫いた形」
「缶=酒などを入れるふくらみのある土器」
「貝=子安貝(貨幣)」

つまり、家屋の中に「宝石と酒を醸す土器と貨幣」がある、それが「宝」という字の意味です。

3)家族療法や心理療法の観点からすると、家族の見えない宝ものには、以下のようなものがあります。

・代々受け継がれてきたパターン
・正の遺産、負の遺産
・忌み嫌われてきたタブーとその意味
・祖先や亡くなった家族メンバーとのつながり
・代々の心残り、後悔、憤り、悔しさや恨み

家族とお会いしていて、あるいは家族のジェノグラムから、プラスのもの及びマイナスのものをどのように「見える化」し、読み解くか。それをどう援助に役立て、家族のサステナブルな豊かさに、どのように生かせる宝物にしていくか。この講座では、これらを目指し、また身に着けていきます。

3)ここで、錬金術的家族療法を実践した臨床心理学者、ラルフ・メツナーのケースから考えます。

50代の女性スーザンは、20代で経験した中絶に、今も苦しんでいます。

20代のころ、MBAを取得して、初めての仕事にワクワクしていたスーザンは、親友のシンディと参加したパーティで、チャックと出会います。チャックと恋に落ちたスーザンは、避妊していたにもかかわらず、子どもを授かることとなりました。

両親に相談すると2人は気が触れてしまうに違いない。それに、就いたばかりの責任ある仕事を投げ出すわけにはいかない。そう考えたスーザンは、両親には隠したまま中絶を決意します。親友シンディとチャックは、そんな彼女をサポートしてくれました。

中絶は、身体から生命の力を抜き取られる恐ろしい体験でした。術後、彼女は不安定になり、半ば気が狂ってしまいます。また手術中、彼女は胎児は男の子に違いない、という感覚を得たといいます。チャックは、彼女の感情の揺れに耐えられなくなって、やがてスーザンのもとを離れます。子どもとパートナー、両方の喪失に苦悩するスーザンの具合は、さらに悪化しました。

しかしその後、別の男性との結婚を機に、落ち着きます。とはいえ、30年経った今でも、痛み、悲しみ、罪意識を引きずっています。

4)50代になったスーザンは、ラルフ・メツナーが行っている「錬金術的心理セラピー」を受けることにしました。その具体的進め方、セラピストが持つべき心の姿勢、技芸に関しては、講座でわかりやすくお伝えします。

5)メツナーによる魂次元での、良質で、豊かで、深い取り組みを経験したスーザンは、数年後、メツナーにこんな手紙を書きました。

ある時、あなたとのセラピーを思い出していると、突然、若い男性の声が聞こえてきました。

「こんにちは、スーザン、僕はロブ。僕に起きたことなら大丈夫。僕には、母さんであるあなたとの縁はなかった。けれど、父さんとは縁があったんだ」

その声を聞いて私は、よくわからないながらも、歓喜が沸き上がってくるのを経験しました。私の身体に宿った魂と再びコンタクトできたからです。彼が大丈夫だ、ということをリアルに感じたからです。もちろん、彼との縁がなかったのは残念です。

昔、別れたチャックとは、友人として、夫公認の上、その後も時々連絡を取っていました。チャックには、子どもがいませんでした。ですので、ロブと名乗る男性の語った内容は、私を混乱させました。

しかし、ある時チャックが次のような話をしてくれました。彼の3人目の妻のパティには連れ子が数人いて、その中の男の子と、とても関係がいいとのこと。そしてその子の名前が、何と「ロブ」だというのです。私は思わず、ロブの年齢と生年月日について質問しました。それは、私が中絶した同じ年の、手術から2か月後のことでした。いまチャックとロブは、父親と息子として親密な絆を築いています。

6)スーザンはこの経験を通じて、「宇宙」がどのように機能するのか、その不思議、秘密、奇跡を学ぶことができたと書いています。ロブとのつながりを回復して、スーザンは30年間にわたる否定的な感情を手放すことができのです。彼女に起きたことを、彼女の夫は理解しています。

メツナーは、「魂は、その人生の計画や目的を、それ独自のやり方で、この世の経験に編み込んでいく」と述べています。

7)家族、ファミリービジネス、夫婦、カップルの計り知れなさ、見えないもの、不思議、秘密、奇跡と取り組むのが、錬金術的家族療法です。今回、錬金術を、家族理解の道先案内とします。

それは、見えない世界への回路を開きます。

錬金術的家族療法は、死、事故、病気、流産、喪失、解離、アディクション、共依存などといった、家族の影(シャドウ)に取り組むうえでの、良質な枠組み(フレーム)です。

8)錬金術は、西洋で生まれ発展したものですが、東洋で生まれたヨーガと同様、シャーマニズムを源流としています。現代心理学で、錬金術の流れをくむものに、ユング心理学、元型的心理学、スタニスラフ・グロフのトランスパーソナル心理学、プロセスワーク、ラルフ・メツナーの心理学があります。

いままで、ユング心理学や元型的心理学をベースとした家族療法は、紹介されてきませんでした。ジェノグラム(家族図)におけるスピリチュアリティの側面やバージニア・サティアの家族療法とサイコシンセシスを統合したセラピーも、知られていませんでした。そうした家族療法を総合して、今回、家族やファミリービジネスの不思議、秘密、影、奇跡、深みに向けた錬金術的アプローチを、あなたとご一緒に学びます。

9)錬金術は、相反するものの統合を目的とします。

たとえば、「男性性」と「女性性」との。
たとえば、「自然に従え」と「自然に従うな」との。
たとえば、「水」と「火」との。

それは、「対立物の結合」と呼ばれます。どういうことでしょうか? 講座でご一緒に学びませんか?

10)日本で、家族やファミリービジネスの支援を行っていると、「因縁(いんねん)」「業(ごう)」「生まれ変わり」「呪術」「憑依」「死者(先祖)とのつながり」・・・といった前近代的言葉が、たびたび発せられます。それらは、現代の家族の表面からは切り離されていますが、家族療法が深まってくると、話題にされることが少なくありません。どう理解したらいいのでしょう?

「不思議」という観点からとらえてもいいですし、「見えないもの(Not-Me、Not-Us)」という視点から
見てもいいですし、「ナラティブ(物語)」の視点からとらえてもいいと考えます。

大事なのは、家族やファミリービジネスの不思議、秘密、陰について誠実に受け止め、取り組むことのできる家族療法を欲している家族、ファミリービジネス、夫婦、カップルがたくさんいる点です。

11)そのために必須なのが、「容器(container、コンテイナー)」です。ユングは、心の成長、成熟、変容には、「容器」が欠かせない、と述べました。錬金術とは、卑金属に象徴される「苦しみ」「悩み」「痛み」を「容器」に入れ、大いなる作業を積み重ねることで、やがて黄金という「宝」に変容させるプロセスのこと。変容のためには、そのプロセスをじっくりと抱え、守り抜くことのできる錬金術の容器(フラスコ、レトルト)が欠かせません。

ユングは、この錬金術の作業になぞらえて、心の成長、成熟、変容のための装置を、「不思議な容器」と呼びました。不思議な容器があってこそ、家族および家族メンバーの心の回復、癒し、変容が促され、隠された傷や秘密、影と適切に取り組み、「宝」を得ることが可能になります。

12)家族とは何でしょうか? あなたはどう思いますか? 現実の家族と、心や魂次元の家族とは同じでしょうか? あるいは、異なるでしょうか?

錬金術的家族療法を参照し、そうした問いについてもあなたとご一緒に考えていきます。

13)今回「錬金術的家族療法」にご関心のあるセラピスト、コーチ、ファミリービジネス・コンサルタント、またそうした専門家を目指す方、一般の方、初めての方、そしてあなたの連続講座へのご参加・ご購入を心からお待ちしています。

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日時■ 2021年7月8日(金)〜全10回 毎月第2金曜日 19:00~20:50

会場■ 初回はzoomオンライン会議にて開催いたします。第2回以降、状況に合わせ、zoomオンライン会議および東京都内会場の並行開催へと随時移行していく予定です。

費用■ メールマガジンにてご案内しております。

講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子