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贈与(give)の心理学 ~夫婦・結婚・離婚の関係療法~|2019/12/28(土)・29日(日)

贈与(give)の心理学

1)あなたは「贈与(gift、ギフト)」という言葉を聞いて、どんなことを思い浮かべるでしょうか?

「贈与」は、古くは経済人類学の、近年では経営や交渉術の最先端のキーワードです。
2015年、国連サミットでは、持続可能な開発目標である「SDGs」が採択されました。そこでターゲットとされた、地球規模でのいのちや経済の持続可能性を達成するうえでも、欠かせない概念。それが「贈与論」であり、大変豊かで、また聖なるコンセプトです。

2)あなたは、「贈与論」について聞いたことがありますか?

今年の年末恒例の集中セミナーでは、この「贈与」をベースに置いた夫婦、結婚、離婚、再婚療法セミナーを、1年のまとめとして開催します。私たちの今年1年間の心理臨床や、ファミリービジネス・コンサルティング、コーチング、講座を統合した、1年間のエッセンスが詰まった内容です。

3)贈与は、人と人との関係に、新しいスピリチュアルなパースペクティブ(視座、参照枠)を提供します。贈与が、人と人の間の、また人と超越的存在との間の、円環性、相互依存性、全体性、”give&give”、神聖さなどと、不可分だからです。贈与が神聖さと関係があると聞いて、驚かれたでしょうか?

4)円環性、相互依存性、全体性、神聖さ/スピリチュアリティなどとの関連でとらえる贈与の視点は、人類学、社会学、哲学、経営学、宗教学、交渉術などの各分野で、最先端のテーマとして議論されてきています。しかし、その成果は、不思議なことに心理療法には、ほとんど入っていません。

5)今回は、日本ではほとんど知られていない、ユング心理学的夫婦療法、および関係療法的夫婦療法を参照して、贈与(gift)の観点から、夫婦、結婚、離婚、再婚について学びます。

ユング心理学的夫婦療法とは、ポリー・ヤング=エイゼンドラス(Polly Young-Eisendrath)が創始した「ダイアローグ・セラピー(Dialogue Therapy)」や、ハーヴィル・ヘンドリクス(Harville Hendrix)による
「イマーゴ・リレイションシップ・セラピー(Imago Relationship Therapy)」を指します。両セラピーとも、日本ではほとんど知られていません。加えて、関係療法的夫婦療法については、新しい精神分析を中心にお伝えします。

6)贈与について私たちの目を開かせたのは、社会人類学者のB.マリノフスキと、M.モースでした。彼らは、未開社会や古代社会を研究し、
次のことを見出しました。

モースによると、贈与には
(a)与える義務
(b)受け取る義務
(c)返礼の義務
の3側面があります。

この3つが円環的に進まないと、世界は機能しなくなるといいます。社会が停滞してしまうのです。
停滞は回避されなくてはなりません。したがって、(a)(b)(c)のいずれかをコミュニティのメンバーが拒否すると、社会からの制裁(ex.村八分)が課せられます。

7)あなたは、与えることだけでなく、受け取ることの義務、をイメージできるでしょうか?

理由は、人が受け取ることを拒むと、社会的交流が滞ってしまうからです。モースによると、この3つは、人間社会が交流し、生存&永続するために不可欠な仕掛けです。贈与を元にした円環的交流は、社会における見えない血管とそこを流れる血液であり、社会および人を滋養し、豊かで元気にするもの、力や意味を与えるものです。

8)さて、
(a)与える義務を果たさないのは、戦いを宣言するに等しく、
(b)受け取る義務を拒むのは、返礼への恐れの表明ととられ、さらに、
(c)返礼の義務を果たさないと、権威や社会的な地位や他者からの尊敬を失います。

贈与の真逆にあるのは、戦争です。 (a)(b)(c) が適切に展開しないと、戦争が起きても不思議ではないというのです。

構造人類学者のレヴィ・ストロースによると、贈与の典型的な例は結婚であり、結婚は、異なる部族間の、また家と家、人と人の間の戦いを防ぎ、関係を密なものとする最良の仕掛けです。

9)このセミナーでは、結婚、離婚、再婚を、「戦争と平和」というところからもとらえます。結婚を、戦争や平和といった点からとらえるなど、大仰な誇大妄想に聞こえるかもしれません。しかし、戦争や平和を、内的なプロセスととらえ直すと、それらが結婚や夫婦療法に大変有益であることが見えてくるかもしれません。

詳細は、セミナーでお伝えします。

10)モースが述べた贈与(gift)は、物理的貨幣、つまり金銭にまつわるものではありません。物理的貨幣や金銭に還元できない、非物質的価値を伴ったものです。

「甘えの構造」の著者で精神分析家の土居健郎氏は、「日本人は贈り物に<魂>を込める」と述べました。

11)私たちは、良質な夫婦関係、結婚には、金銭では計り知れない、贈与を通じた非物理的次元での相互交流が不可欠だと考えます。

ここで重要なのは、夫(あるいは妻)のパートナーへの贈り物が金銭に還元できないこと、また、夫(あるいは妻)の贈り物がパートナーの贈り物と等価交換できないことです。金銭や等価交換を超えた、想定外の贈与や交換こそが、豊かで意味ある夫婦関係を作り育む血管であり、そこを流れる血液です。

一方、それが金銭に還元でき、等価交換できるとしたら、単なる「ギブ&テイク(give & take)」に帰結してしまいかねません。それでは、夫婦間に、真の意味での円環性、相互依存性、”win-win/give-give”、神聖さ/スピリチュアリティ、全体性を生み出すことはありません。

12)あなたは、数字に表せない、等価交換できない贈与を想像できますか?

そこには、非日常性、魂、奥行きが伴います。それこそが、夫婦や家族関係を真に豊かにします。一方、金銭、等価交換、ギブ&テイクは、それがどんなに素晴らしく高価でも、夫婦関係を日常的次元に留めます。日常的次元には、深みがありません。フラットランド(平板)です。

13)今回取り組む贈与を起点とした夫婦療法は、非日常性、聖なるもの、スピリチュアリティ、魂といった次元にまなざしを向けたものです。

非日常的次元には、情緒、魂、スピリチュアリティが実在します。この次元を大事にしないと、夫婦関係は親密さや絆、豊かさを築くこと、育てること、持続することが難しくなります。

14)では、こうした非日常的次元を包含する夫婦関係や結婚をクリエイト(create)するには、どうすればいいのでしょうか?

あなたはどう思いますか?

現在、夫婦療法、恋愛、結婚、離婚、再婚に関するセラピーのニーズは、ますます高まっています。若い世代だけでなく、中年、高齢者の間でも、恋愛、結婚、不倫、離婚、再婚は、カウンセリングの場面で繰り返し登場する喫緊の最重要テーマの1つです。このセミナーでは、贈与(gift)を中心とした夫婦療法について、基本から最先端までを学びます。

15)今回のセミナーは、私たちのこの一年間の心理臨床、コーチング、コンサルティング、セミナーを統合してお届けするものです。

贈与にもとづく円環的交流をベースにした、豊かで多次元的な結婚や離婚、再婚、家族の支援。また、贈与論をもとにした関係療法的な心理療法。

それらをあなたとご一緒に学べる機会を楽しみしています。

専門家の方および一般の方、初心者の方のご参加を歓迎いたします。

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日時 ■ 2019年12月28日(土)・29日(日) 10:00~17:00

会場■ 都内(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)

費用■ メールマガジンにてご案内しております。

講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子