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関係療法と意識のテクノロジー|2020/7/26(日)

◎ オンライン開催
◎ 配布資料+音声データをご購入いただけます

1)今回のセミナーについてご紹介するうえで、まず、黒澤明監督映画『7人の侍』の一場面から始めることにしましょう。ある貧しい農村では、農作物の収穫時期になると、野武士集団に繰り返し襲撃され、村の農民が困り果てていました。村人たちは、用心棒となってくれる浪人たちを探しに、町へと向かいます。

何人かの浪人たちが村に来てくれることになりました。が、村人たちは、彼ら浪人の力を本当には信用していません。そこで、浪人たちを試すことにします。どうしたかというと、農家の入り口のかげに若者をかくれさせ、浪人たちが玄関の敷居を通過しようとした、その瞬間、突然、若者に浪人を襲わせる、という企てをしたのです。

2)1人目の浪人が敷居をまたぎます。
若者に、さんざん不意打ちを喰らってしまいました。失格です。

2人目の浪人が来ました。
浪人は、ヒラリと身をかわすと、逆に若者に一撃を与えます。大変腕のある浪人です。合格です。

3)さて3人目。玄関の前で、笑いながら言います。

「ご冗談を!」

達人です。戦う前に、若者の存在を見抜いてしまったのですから。

4)禅仏教を西洋に紹介した鈴木大拙によると、この浪人は、玄関のかげに何者かがかくれている「殺気」や「気配」を直覚したのだ、と説明します。何か・誰かがいるかどうかを、肉眼で確かめる以前に、「直覚」によって見破ったというのです。幾度となく、生死の危機を通り抜けてきた浪人の、経験の積み重ねから生まれた感覚です。

5)A.ミンデルは、サバンナで虎に襲われる前に、虎を感知する感覚を、「明晰性(lucidity、透明性)」と命名しました。ダライ・ラマはそれを、「野生的意識(pristine consciousness)」と呼びます。

殺気や気配を、明晰に感知することができるのでしょうか?
私たちには、そうした野生的感覚が備わっているのでしょうか?
それは、劇画の中だけのことであって、実際には、あり得ないのではないでしょうか?

6)鈴木大拙によると、剣の達人、柳生但守(やぎゅうむねのり)は、師匠の沢庵老師から、禅の心を「ものごとに心を留めぬこと」「滞(とどこお)りのないサラリとした動き」と教わりました。侍にとって、心の滞りは、即、死を意味する、といいます。殺気、気配を感じられなくなるためです。禅の心は、(武道で勧められる)丹田に注意を置くことを禁じます。心や動きが、滞りかねないからです。

7)フロイトは、精神分析の姿勢を「平等に漂う注意力(evenly-suspended attention)」と述べました。注意が、どこかに集中するのを禁じたのです。集中が、心の自由な流れや漂いを止め、停滞させてしまうためです。

8)対象関係論のW.ビオンは、同じことを「記憶なく、欲望なく、理解なく」と述べました。記憶、欲望、理解が、心を留め固定させるからです。

9)このセミナーでは、記憶、欲望、理解を超えた深層の意識の次元に着目します。そこは、記憶、欲望、理解のない、無知、無意味、無能、無力の領域です。が、しかし、臨済禅の福島老師によると、無や空は、創造的な(creative)な心だといいます。なぜでしょうか? 創造的心が、殺気や気配を、想定外の仕方で捕らえるからです。

10)それは、無意識の働きであり機能です。剣の達人は、ときに自分が敵を斬ったことにも気づかない、といいます。野口整体の創始者、野口晴哉氏は、ふと気づくと自分の手を、人の身体の患部にサッと当てている。これが「手当て」の本来の意味であり、整体はそのように行う必要がある、と述べています。

11)あるクライエントの人は「1週間がとても素晴らしかった」と明るく元気に話しました。それを聞いていたカウンセラーは、話の内容にそぐわない違和感、不快感のあることを、身体のどこかで何となく、微かに感知します。この感覚を保持していると、次第に退屈感やうつうつとした感覚に変化していくではありませんか。と同時に、クライエントの人が、親密な関係で何度も傷つき、その度に心の殻に入っていたことを想起します。この連想をもとに、クライエントの人に応答します。

クライエントは、カウンセラーに対しても、殻に入っていて本当に話したいことを避けていたこと、本音で話すことが不安だったことに気づきを得ます。このとき、退屈感、うつっぽい感覚、違和感、不快感は、セラピストから消えていました。

12)これは、心理学でいう「転移-逆転移」過程を簡略に述べたものです。セラピストの自我(表層)意識は、クライエントの人の明るく元気な話に耳を傾けていました。しかし、そこに違和感、不快感が浮上しました。何が、誰が、その違和感、不快感を感じたのでしょうか? あなたはどう思いますか?
(注:転移-逆転移プロセスについては、セミナーで分かりやすくご説明します)

「自我(表層)意識」でないことは、確かです。

13)「無意識」や「身体」が、感知したのではないでしょうか?
しかし、違和感や不快感を感知する(さらに)前に、無意識や身体は、「何か」を捕らえていたのではないでしょうか?

その何かに対して、無意識や身体が、違和感、不快感を感じとったのです。

14)この過程は、とても精妙です。が、じっくり、ゆっくりとたどること。ここに合点がいくようになると、あなたの対人援助力は、飛躍的に伸びます。クリエイティビティは、より豊かになります。関係性は、より実りのあるものになるでしょう。また、世界とのつながりを確かさをもって、感じることができるでしょう。

15)殺気や気配の次元は、従来の深層心理学が重きをおいてきた、イメージや夢より、さらに深い領域です。あなたは、こうした意識の次元と、そのとらえ方、深層意識のテクノロジーに関心がありますか?

このセミナーでは、イメージや夢が生まれる以前の領域に着目します。なぜなら、それが、関係療法の核心である「転移ー逆転移」「投影同一化」「エナクトメント」「解離」といった関係における難儀な側面へのサポートを後押しするからです。
(注:これらの専門用語については、セミナーで基本からご説明します)

16)今回、夢よりも深い領域に着目し、そこに関する「意識のテクノロジー」について学びます。たとえば、滞りのないサラリとした心の動きについて。たとえば、平等に漂う注意力について。たとえば、明晰性について。たとえば、直覚について。それとの関連で、マインドフルネスやアウェアネス、サイコシンセシスのトランスパーソナルな意志も取り扱います。また、自我(表層)意識が、丈夫で豊かになることを応援します。

17)殺気や気配への直覚や明晰性、転移ー逆転移との関りは、目に見えないものだけに、魔法や奇跡に映ったり、神秘化、オカルト化されたりしかねません。今回はそれを「見える化」し、誰にでも利用可能なものにします。大変有益なツールです。あなたに身につけていただき、使っていてただきたいと考えています。

18)今回、関係療法と意識のテクノロジーにご関心のある心理カウンセラー、ケースワーカーなどの援助職や、専門家の方および一般の方、初心者の方、そしてあなたのご参加をお待ちしています。コーチ、コンサルタント、アドバイザーなどの専門家にも学んでいただきたい内容です。また、アートやクリエイティビティにご関心がある人にお勧めです。

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日時■ 2020年7月26日(日)10:00~17:00

会場■ zoomオンライン会議(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)

費用■ メールマガジンにてご案内しております。

講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子