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1)混迷の現代社会は、VUCA(ヴーカ)と呼ばれます。それは、Volatility(不安定)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(両義、曖昧) の頭文字を組み合わせた造語です。
コロナ禍や戦争、地球沸騰化など、想定外の災禍が続く、不確実で、複雑で、曖昧で、不安定な現代社会においては、従来の精神やマインド、価値観、生き方では、太刀打ちできなくなりつつあります。
これまでの対応や対処法は、VUCAの時代には通用せず、また、そもそもVUCAの対応に「正解」がないからです。
2)でも考えてみれば、セラピストは以前から臨床現場で、VUCAと取り組んできました。クライエントの悩み、問題、症状、訴えのプロセスは、常に、不安定、不確実、複雑、曖昧さを含んでいます。特にセラピーの佳境になると、VUCAでいっぱいになります。それは「複雑怪奇」や「不可思議」といった様相を呈します。
そのとき、助けとなるのが「クリアクション(creaction)」と「ネガティブ・ケイパビリティ(negative capability)」です。
4) “creaction (クリアクション)” は、起業家教育全米No.1のMBAプログラムを持つ、バブソン大学で使われている造語です。それは、 “creation(創造)” と “action(行動、行為、活動)” とからなる言葉です。
5) “negative capability(ネガティブ・ケイパビリティ)” は、英国の詩人ジョン・キーツが最初に使い、精神分析家ウィルフレッド・ビオンが広めた「負 / 陰の能力」です。それは、小学校から大学院まで要求される「正解を導く」 “positive capability(ポジティブ・ケイパビリティ) ” と対照的です。
ネガティブ・ケイパビリティは、混迷(VUCA)の中で、答えのない、不愉快で苦しい心の宙づり状態に持ちこたえて、クリエイティビティ、イノベーション(価値創造+技術革新)、アート、遊び心の産出を促す力です。それは、哲学者で思想家の井筒俊彦氏が「神話詩的産出機能(mytho-poetic function)」と呼んだものに酷似します。
7)VUCAに対して、従来の価値観や対処法は、基本的に役立ちません。官僚主義は、「先例のなさ」を嫌いますが、VUCAと向き合うのに、先例は役立ちません。
たとえそれが、成功体験であったとしても。
VUCAにとって、「(従来の)成功は失敗のもと」です。
8)では、どうすればいいのか。
ネガティブ・ケイパビリティを心に持って、実際の新たなアクションを起こすことが欠かせません。が、このアクションは、『必ず / 絶対に』失敗します。正解はわからず、従来の成功体験も、役に立たないのですから。にもかかわらず、アクションを起こさないわけにはいかない。VUCAの中で、進むには。
これがこのセミナーで身につける、VUCAにおける、そしてセラピーの実践における、考え方のベースです。
10)ここで、経済学者ピーター・ドラッガーが、アントレプレナーシップ(起業 / 企業家精神)について述べた言葉を紹介します。
「起業 / 企業家精神とは、イノベーションを武器として、変化の中に好機を見い出し、事業を成功させるための行動体系」です。
これはそのまま、混迷(VUCA)中のセラピーにあてはまる、と言えるでしょう。ここで大事なのは、アクション(行動)を起こすこと、そして、起こしたアクションに対する「フィードバック」を、「好機」として見ることです。
11)さて、ここでアクションが、失敗に終わったと仮定しましょう。
それは、単なる失敗でしょうか?
「ポジティブ・ケイパビリティ(positive capability)」にとって、それは失敗にすぎません。ポジティブ・ケイパビリティは、「正解を引き出す能力」でした。この能力にとって、失敗は、「失敗」です。
12)一方、「ネガティブ・ケイパビリティ」や「クリアクション」にとって、失敗はフィードバックの1つです。そのフィードバックをもとに、自分の仮説や今回のアクション、あるいは従来の価値観、さらには自分自身を変えるための、または調整するための、「好機」となります。
13)深層心理学は、「行動(action)」を、忌み嫌ってきました。たとえば、「行動化(acting out)」や「エナクトメント(enactment)」には、「アクト(act)」の文字が入っていますが、大変マイナスにとらえられてきました。深層心理学は、「行動」ではなく、「思索」や「内省」を重んじてきました。
14)それに対し、VUCAの人生や、VUCAが不可避の対人援助には、「行動(act)」が、欠かせません。ネガティブ・ケイパビリティを心に抱いたうえでの、クリアクション(cre-action)の実践が求められます。
15)ネガティブ・ケイパビリティとクリアクションは、失敗を不可避と考え、抱擁し肯定するあり方です。そのためには、ダメな、恥ずかしい、ミス(失敗)をする私を見せてOKな、「環境」または「安全基地」が必要です。
この「環境」や「安全基地」を用意するための「心理的安全性」を強調するのが、ハーバード・ビジネススクール教授のエイミー・エドモンドソンです。
彼女の考えは、発達心理学者マーガレット・マーラーの「練習期」や「分離-個体化期」における良質な環境を想起させます。環境が、安全で安心できるものだと、子どもは、イキイキ、のびのびと行動し、世界探求や冒険に着手します。トライ・アンド・エラーの中で、チャレンジ(挑戦)を繰り返します。創意工夫して、イノベイティブな遊びを産出します。
16)心理的安全性が確保されていない環境では、失敗は、ダメな、恥ずかしい、屈辱的なことであり、やってはいけないことと、批判され、断罪され、排除されたり、制裁を受けたりする。あるいは、恥をかかされたりもする。
そうした環境では、アクションを起こすことが難しい。アクションを起こすこと自体が、危険です。
17)しかし、心理的に安全な環境では、ミスが抱擁されます。あなたのミスには批評が加えられますが、それは、前向きで、未来志向的なものです。肯定的側面を引き出すためのものです。生産的なやり取りが、繰り返され、永続します。
こうした交流があれば、あなたは遊び心や創造性を発揮し、クリアクションとネガティブ・ケイパビリティを、身につけることができるのではないでしょうか?
18)セミナーでは、クリアクションとネガティブ・ケイパビリティについて学びます。その2つはVUCAの時代にあって、あなたのライフスタイルを豊かで楽しく、また持続可能なものにするでしょう。あなたの対人援助を、クリエイティビティ、アート、遊び心、パッションのあるものにするでしょう。否定的に見られてきたアクティング・アウトやエナクトメントに(さえ)、肯定的側面を見い出すことができます。
また、セラピー、コーチング、コンサルティングやスモールビジネス(小商い)の「開業」や、起業 / 企業、価値創造、に、関心のある方にもお勧めです。
19)M.マーラー、アタッチメント心理学はもちろん、経営学、レジリエンス、コンパッション、失敗学に関する資料から、良質なケースを複数選択し、それを素材に、あなたとご一緒に取り組みます。
あなたが、実際に、アクションを起こし、チャレンジできるように、あなたに潜在するクリアクションとネガティブ・ケイパビリティとを引き出し、鍛え、磨きます。
19)クリアクションとネガティブ・ケイパビリティとを掛け合わせ、2つの相乗効果を通じて、VUCAの状況における生き抜く力を身につけませんか?
セミナーでは、セラピスト、コーチ、コンサルタント、アドバイザー、ケースワーカー、ナース、医師、保健師、ボディワーカー、弁護士、教育関係者の方、ファミリービジネスの専門家の方、一般の方、初心者の方のご参加をお待ちしています。
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日時■ 2023年9月24日(日)10:00~17:00
会場■ zoomオンライン会議(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)
費用■ メールマガジンにてご案内しております。
講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子