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セラピー関係の相互作用に起きる”憑依”とは ~投影同一化、ドリーミング・アップを読み解く~|2023/1/29(日)

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1)あなたは”憑依(ひょうい)”と聞いて、どう思いますか?

オカルト、時代遅れ、などと思うでしょうか?

では、憑依がセラピーで頻繁に起きている、と知ったら、どう感じますか?

うさんくささを感じ、目をそむけたくなるでしょうか?

憑依を取り扱うことが、心に関する現代的問題、悩み、症状や、苦悩へのアプローチの鍵となる、と聞いたらどう考えるでしょう?

どういうことか聞いてみたい、と思いますか?

2)憑依は、セラピーだけでなく、コーチング、カウンセリング、ボディワーク、コンサルティング、ケースワーク、医療、教育、つまり対人援助の全般で、頻発します。それは、解離、スプリッティング、暴力、依存症、共依存、重いパーソナリティ障害、精神病状態、自閉症スペクトラム障害との取り組みにおいて、必ず生じます。

3)問題は、憑依現象に気づくか気づかないか、そして、憑依の取り扱い方を知っているかいないか、です。この点に関する知識がないと、重いパーソナリティ障害、精神病状態、自閉症スペクトラム障害、依存症、共依存との取り組みに、手こずるでしょう。まったく太刀打ちできず、支援が行き詰まるかもしれません。

4)クライエントが取り扱うことのできない情緒や思考、クライエントのパーソナリティから切り離された部分が、セラピスト、コーチ、コンサルタント、医師、ナース、ケースワーカー、ボディワーカー、教師に憑(と)りつきます。

クライエントから切り離されたパーソナリティ、心や情緒は、行き場を失ってセラピストの心や身体、イメージを、「宿り木」にします。「宿り木」現象は、クライエントとセラピストとのやり取りの中でたびたび生じます。

5)憑依は、宗教学的には霊媒(medium、ミーディアム)やチャネラー(channeler)に属します。霊媒やチャネラーは、霊的存在や宇宙存在のメッセージを「直接的」に媒介する人、と定義されます。チャネリングには、催眠、トランスまたは変性意識状態に入って、異次元と交信(コンタクト)することが、欠かせないといいます。

6)解離されたクライエントの心、情緒、パーソナリティは、日常的自我意識とは異なる変性意識の側に行ってしまいます。日常的意識に行き場がないためです。だから変性意識に、いわば逃げ込みます。変性意識に飛んで行ったクライエントの心、情緒、パーソナリティは、「あるやり方」で、セラピストの無意識的そして非意識的な心、情緒、身体、イメージを宿り木にします。

7)「あるやり方」とは、”憑依”です。セラピーにおける憑依は「逆転移」と呼ばれ、昔は回避されるべきこと、禁忌と考えられてきました。しかし、近年、ウィルフレッド・ビオンらの仕事によって、逆転移の一部が「投影同一化(objective identification)」としてリフレーム(再考)され、積極的に活用されています。

それどころか、解離、スプリッティング、暴力、依存症、共依存、重いパーソナリティ障害、精神病状態、自閉症スペクトラム障害との取り組みにおいて、不可欠だと考えられるようになりました。そんなふうに、深層心理学の各学派は理解しています。

8)たとえば、C.G.ユングは投影同一化を、「神秘的融即(participation mystique)」と呼び、注意を喚起しました。「融即」とは「別個人の心を別物とせずに、自分の心に同一化して結びつけてしまうこと」です。

ユングは、融即が、神秘的、不可思議な形で起きる、と考えました。それは一種の「共生」あるいは「精神病」状態です。ユングは神秘的融即を、古代にあっただけでなく、今も「意識の古代的な次元」で、頻発する心の現象ととらえたのです。

9)投影同一化は、対人援助職が活用すべき大変良質な「視点」です。

が、問題もあります。その1つは、投影同一化にまつわる催眠、トランスあるいは変性意識に対する「定義」があいまいな点です。そのため、投影同一化を十分に活用できていません。ここは、トランスパーソナル心理学やプロセスワークが補完し、貢献できる側面です。

10)セラピーにおいては、憑依が無意識裡に必ず起きます。そして、セラピストはクライエントの切り離された心、情緒、パーソナリティを「直接的に媒介」させられます。霊媒やチャネラーのように。が、現代のセラピー・トレーニングで、「憑依の取り扱い方」を意識的に行っているところは、皆無だと考えます。

11)しかし、トレーニングは必要です。なぜなら、そこに起きているのは、まちがいなく憑依だからです。クライエントの切り離された心、情緒、パーソナリティを、憑依によって直接に媒介させられることは、セラピストにとって強要であり、大変な負担だからです。

12)さて、セラピストに憑依されたクライエントの心や情緒、パーソナリティは、クライエントが「言葉にできない」「考えることのできない」「イメージできない」「夢見(ドリーミング)できない」ところです。「できないところ」を、憑依を起点に、夢見ていくのが、投影同一化アプローチのもう1つの肝(きも)です。夢見によって、心の治癒、回復、変化が促されるからです。

13)夢見を、セラピストはクライエントとの交流の中で、クライエントの代わりに行います。あなたは、伝統社会におけるシャーマンが、クライエントの代わりに、夢見=シャーマンの旅を、行っていたことをご存知ですか?

投影同一化を扱うセラピストも、シャーマンと同じ役割を果たしています。

14)夢見が展開すると、セラピストの心や情緒、身体、イメージを宿り木にしていたクライエントの心、情緒、パーソナリティは、セラピストから離れ、クライエント自身の心に戻っていきます。これをシャーマンは「魂の回復(soul retrieval)」といいます。魂が回復されると、クライエントのパーソナリティは豊かになり、成長、成熟が可能になります。

15)夢見は、「シャーマン」の仕事です。一方、憑依は「霊媒やチャネラー」の仕事です。投影同一化に関してセラピストは、霊媒とシャーマンと両方の役割と仕事を「意識的」「人工的」に行わなければなりません。これは、大変な作業です。

16)ドリーミング・アップ(dreaming-up)を、プロセスワークは、セラピストが、クライエントの「見た」夢を見させられること、と考えます。

一方、精神分析医のトーマス・オグデンやアントニーノ・フェッロは、セラピストが、クライエントの「見ることのできない」夢を見させられること、ととらえます。

2つは似ていますが、異なります。

17)プロセスワークは夢見の「後」、オグデンとフェッロは夢見の「前」との関連で、ドリーミング・アップを考えます。セミナーでは、ドリーミング・アップについて、多角的に捕らえ、投影同一化を生産的、建設的、創造的に活用することを学びます。ドリーミング・アップこそ、投影同一化理解の要だからです。

18)オグデンやフェッロは、投影同一化を、クライエント「個人」から切り離された心、情緒、パーソナリティとの関係でとらえます。一方、ユングやプロセスワークは、それを個人を「超えた」古代意識、集合的無意識、集合的場の理論から見ていきます。意識を「個人」と「古代」との2つの別次元から見ていくことで、投影同一化は、さらなる深みと厚みとを持つことができます。

19)投影同一化は、憑依を介して、クライエントとセラピストとを『勝手につなぐ』神秘的融即です。その状態は一種の精神病または共生状態です。それをセラピストとクライエントの心の交流を通して、先ずはセラピストが、次にクライエントが夢見るようにします。

夢見は、未分化の共生状態を『分化』し、それまでクライエントの日常的自我意識の「外」に解離されていた心、情緒、パーソナリティを、クライエントの心の「中」に収まるようにするための技です。これは、セラピストとクライエントが共同で行う生産的、建設的、そして創造的な営みです。

20)セミナーでは、どこからどこまでが霊媒的「憑依」で、どこからどこまでがシャーマン的「夢見」かの見極めについて、学びます。それによって、クライエント-セラピスト関係における今ここで、投影同一化を活用しやすくなるでしょう。

21)投影同一化は、クライエントとセラピストを『勝手に結びつけ』てしまうため、「関係療法」の中核といえます。それは、クライエントの言葉にできない、考えることのできない、イメージできない、夢見(ドリーミング)できない側面の非言語的なメッセージであり、暗黙のコミュニケーションです。

22)投影同一化は、セラピスト-クライエントの間ではもちろん、カップルや夫婦、親子など家族の間で、あるいは職場や組織の中で、たびたび起こり、人間関係に行き詰まりを生じさせます。

今回、個人だけでなく、カップルや家族関係における投影同一化も取り上げる予定です。あなたは、カップル、夫婦、家族、組織、企業を支援しやすくなることでしょう。

23)このセミナーでは、「セラピー関係の相互作用に起きる”憑依”とは~投影同一化、ドリーミング・アップを読み解く~ 」にご関心のあるセラピスト、コーチ、ビジネスコンサルタント、ボディワーカー、ケースワーカー、医師やナースなど医療関係者、教育関係者、一般の方、初心者の方のセミナーへのご参加をお待ちしています。

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日時■ 2023年1月29日(日)10:00~17:00

会場■ zoomオンライン会議(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)

費用■ メールマガジンにてご案内しております。

講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子