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自己愛障害と『病的な自己愛』の徹底理解 ~健康なこころとスピリチュアリティのために~|2022/10/30(日)

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1)「神経症や精神病の人は自分を追い込み半狂乱にする、その一方で、パーソナリティ障害の人は周りを巻き込んで追い込み、半狂乱にする」

これは自己愛性パーソナリティの専門家、アルバート・バースティンの言葉です。

パーソナリティ障害の人は、他人を自分の病理に巻き込み、他罰的で、他人に責任を負わせる、また、人間関係におけるマイナスの出来事に対する、自分の関与や責任への眼差しが欠落している、のが特徴です。

夫婦や家族関係、職場の関係で問題やトラブルが起きた場合、自分に非のある可能性を考えることができず、そのためセラピー、カウンセリング、コーチングの助けを求める人が少ない。本人に代わって、パートナーや家族メンバー、職場や組織の人が苦悩し、自分と自己愛の人との問題についてセラピーを求める、といったことがままあります。

今月のセミナーでは、パーソナリティ障害の中でも最も訴えの多い「自己愛性」について取り上げます。

2)あなたは、自己愛には「健康なもの」と「病的なもの」とがあるのをご存知でしょうか。

「病的なもの」が優位になると、自分の身体、大切な人との関係、そこに生じる情緒を、自ら犠牲にすることになります。なぜなら、心の中で「病的自己愛」が玉座に座り、本来は自然な本能欲求である食欲や関係への欲求を、自己愛を満たす手段としてしまうからです。病的自己愛に、自然な欲求が利用されるのです。

3)たとえば、相手との豊かな情緒的つながりや良質な性的関係への欲求は、自分のイケてる自己愛イメージを高めたり、自己愛的快楽を満たしたりする道具としての使用に、とって代わられてしまいます。

食事も、身体の自然な欲求に従って摂取されるのではなく、自分がヤセている、あるいは筋肉ムキムキのカッコイイ理想的なボディイメージをかなえるために利用され、過酷に制限されたり、過度に摂取されたりします。そのため、身体の健康が損なわれることも生じます。

睡眠も同様です。自己愛的達成のために睡眠が削られ、うつに陥ってしまうこともあります。

4)アブラハム・マズローの欲求段階説は、順に生理的、安全、社会的、承認、自己実現、自己超越という6段階の欲求を提唱しています。このうち自己愛と密接に関連するのが、4段階目の承認欲求ですが、自己愛が病的である場合、この承認欲求を満たすために、下位段階の生理的、安全、社会的欲求も、また上位の自己実現、自己超越の欲求も、すべてが利用されることになります。どのような欲求に対しても、自己愛欲求が優先され、自己愛欲求の満足のために使われるのです。

5)バースティンは、自己愛性パーソナリティ障害を「渇望型」「男根型」「妄想型」「操作型」の4つに
分けました。一方、精神分析医の小此木啓吾氏は、自己愛障害を「画一型」「破綻型」「スキゾイド型」「自己実現型」の4つから見ています。セミナーでは、以上の計8つを中心に、自己愛の基本と全般について見ていきます。

6)ここでは、その中の「自己実現型」について、見てみることにしましょう。チベット密教の高僧チョギャム・トゥルンパは、自己実現型自己愛の病理を「スピリチュアルな物資主義(spiritual materialism)」と呼び批判しました。同じことを、心理学者のジョージ・フェラーは「スピリチュアル・ナルシシズム(スピリチュアルな自己愛障害)」と言っています。それは、心、精神、スピリチュアリティ、人間性、意識、体験を、病的自己愛欲求を満たす「物質(モノ)」や「商品」として扱うことを指します。

8)そうではなく、真の人間性やトランスパーソナル、スピリチュアリティを発達させようと思えば、自己愛の問題と向き合うことが欠かせません。たとえば、瞑想を真に深める際に障壁となるのが「我執」や「執着」ですが、これらの中核にあるのが、病的自己愛です。

トランスパーソナルやスピリチュアリティの実践に潜む「自己愛の病理」に光を当て、課題を意識化することが必要です。そのことで人間性-トランスパーソナル心理学やボディセラピー、コーチング、体験的セラピー、自己啓発系ワークショップなどの体験が、自己愛のために消費されるのを防ぐことができるでしょう。

9)進化の過程で脳を発達させ、頭が大きくなった人類(ホモ・サピエンス)は、赤ちゃんが出産の際に産道を通り抜けられるよう、未熟な状態で誕生することを選択しました。そのため生まれた後も、しばらくの間は、安全を担保してくれる「疑似的子宮」を必要とします。この疑似的子宮は、作家ロマン・ロランの言葉である「大洋体験」をもたらします。それは、胎児が母親のお腹の中で、母親と一体になっていること、すなわち、無限で広大な海と自分との間に境界のない完全なる一体感、安心感、満ち足りた感覚を味わうことです。

10)母親は、お腹の中にいる、あるいは生まれた赤ちゃんに対し、「うちの子は、どの赤ちゃんよりカワイイ。特別で、大切な存在」という思いを抱くでしょう。その想いや情緒について、精神科医シャーンドル・フェレンツィは、赤ちゃんに向けた「母性的没頭(maternal preoccupation)」といいました。

母性的没頭は、主観的で自己愛的な幻想(思い込み)です。

が、その誇大的で赤ちゃんを理想化した思いが、赤ちゃんとお母さんに一体感をもたらす「大洋感情」を与え、安心感を喚起し、かけがえのない心の子宮を提供します。この自己愛的子宮の中で、赤ちゃんは心理的な安全安心を得て、スクスクと心を育んでいきます。

11)それは、万能的で、完璧な原初的自己愛体験です。

が、この時期の赤ちゃんとお母さんにとっては「なくてはならない健康な自己愛」です。赤ちゃんだけでなくお母さんにも、この上ない豊穣体験をもたらします。

12)なくてはならない健康な自己愛が、何らかの理由で欠落したり、壊れたり、希薄だと、赤ちゃんは、心に傷を負い病むことになるでしょう。原初的自己愛の傷つきは大きくて深いため、将来、精神病水準の問題を生みかねません。

13)生後しばらく、健康な自己愛は「安定型アタッチメント」や「健康な甘え」によって、ほどよい形で育成され続け、マネージされ、やがて収束していきます。が、それがかなわないと、自己愛性パーソナリティ障害や複雑性(発達性)トラウマを負いかねません。

14)人間は、自分で自分を見ることができません。自分を見るには、〈鏡〉を必要とします。精神科医ジャック・ラカンやハインツ・コフートによると、赤ちゃんは、お母さん(養育者)の「眼差し」や「微笑み」を鏡として、自分を確認します。この時、お母さんが「うちの赤ちゃんは、特別にカワイくて、一番で、何より愛おしく、大切」という『思い込み(幻想)』をもって、赤ちゃんを見つめ、映し返(reflect)してくれることが重要です。

15)このことで、赤ちゃんにはコフートのいう〈健康な〉「誇大自己」が生まれます。健康な誇大自己はとても大切ですが、ある時期までです。ある時期を過ぎても、誇大自己が手つかずのままでいると、心の成長は停止して〈病的〉になります。

16)成長が止まって病的となった「誇大自己」は、早晩「ミットモナイ自己」を発生させます。そして、その2つは表裏一体になります。「表」は誇大自己、「裏」がミットモナイ自己、この2つの病理化が、自己愛性パーソナリティ障害につながっていきます。それが「表」の顕示型や男根型の、「裏」の隠れ型や渇望型の自己愛パーソナリティ障害になります。

詳しくは、セミナーでじっくりと見ていきます。

17)自己愛の病理や課題は、母親(養育者)と赤ちゃんの「二者関係」から発生します。病的自己愛からの癒しや解放には、健康な父性の介在する「三者関係」が不可欠です。ここでは、『自我理想』や『超自我』が求められます。

そのうち『自我理想』は、「誇大自己」と一見似ていますが、質がまったく異なります。

また『超自我』と「過酷な超自我」も質が違います。

このあたりは大変重要ですので、セミナーでわかりやすくご説明します。
ご一緒に理解を深めていきましょう。

19)さて、自己愛の取り扱いを巡っては、アメリカにおける精神分析とトランスパーソナル心理学が、共に過去40年余りの間、格闘してきました。自己愛が、アメリカ人の最大の心の問題であり続けてきたからです。

20)一方私たちは、日本にも自己愛性パーソナリティ障害の人、その人との関係で苦しむパートナー、家族、職場の同僚がたくさんいる、と考えてきました。ただ、アメリカには表型、顕示型が多く、自己愛の病理が見えやすいのに対して、日本には隠れ型が多く、裏に潜んで見えにくくなっていました。その全体像を、セミナーで見える化します。

21)自己愛をテーマとしたセミナーについては、これまで数回にわたり行ってきました。今回は、それらのセミナーを全てを参照し、また自己愛についての最新の臨床的知見と実践を踏まえたうえで、バースティンの渇望型、男根型、妄想型、操作型、および、小此木の画一型、破綻型、スキゾイド型、自己実現型の8つを起点に自己愛性パーソナリティ障害について、わかりやすく見ていきます。

あなたはこのセミナーで、たくさんの人を苦しめる自己愛の病理に関して、基本と全体像を学ぶことができます。病的自己愛は、他人にだけでなく、自分にも大いにマイナスです。その対処法について、セミナーでは良質な事例を交えてわかりやすくお伝えします。

22)今回、「自己愛障害と『病的な自己愛』の徹底理解~健康なこころとスピリチュアリティのために~」について、具体的的取り組みにご関心のあるセラピスト、コーチ、コンサルタント、ケースワーカー、医師、教育関係者、ナース、一般の方、初心者の方のセミナーへのご参加をお待ちしています。

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日時■ 2022年10月30日(日)10:00~17:00

会場■ zoomオンライン会議(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)

費用■ メールマガジンにてご案内しております。

講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子