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1)「ママは悪くない、悪いのは私」「お母さんとお父さんの仲が悪いのは、ボクのせい。ボクがいい子にしてないから」こういった嘆き、つぶやき、訴えは、セラピーの場では絶えません。上は高齢者から下は幼児まで、年齢を問わず発せられる言葉です。その声は、「インナー・チャイルド(内なる子ども)」や「インナー・インファント(内なる幼児)」からのものです。
家族療法のシステム論からいうと、それは家族の中で「IP ( Identified Patient、患者と同定された家族メンバー)」である子どもが、『自分が悪い』と思わされてしまうところからくる悩み、呻き、訴えです。本来は、家族システムに不具合があるのですが、そのことに大人が目を向けなかったり、大人が責任を取ろうとしないと、子どもは「自分が悪いからだ」と無意識に問題を引き取ってしまうのです。
2)質のいい心や関係の育成されていない(残念な)家族では、子どもが「自分は問題だ、厄介者だ、お荷物だ」と思い込まされるマインドコントロールが、システム(構造)的に生じがちです。子どもがそう思うのを、個人のせいにするのでなく、システム全体の問題、と考えるのが、家族療法です。
3)一方、ちまた(世間)では、それは母親が「毒親」「鬼母」だからだ、と母親個人に原因をなすりつける考え方が、席巻しています。
それは、その母親への愛や思いやりのない夫、あるいは母親をいじめる舅や姑の存在が見逃されていたり、母親自身が重病やうつに苦しんでいて、子どもに愛情や手間暇をかけることが物理的にできなかった、などの要因が、排除された見方だったりします。しかし、毒親や鬼母という言い方は、刺激が強く、単純でわかりやすく、受けのいいキャッチコピーで、流布しやすいのかもしれません。
4)が、「ママは悪くない、悪いのは私」という思いからすると、毒親や鬼母は、ニュアンスの強すぎる言葉です。「だって悪いのは私、ママは悪くない」「お母さんとお父さんの仲が悪いのは、ボクのせい。ボクがいい子にしてないから」には、もっと複雑な要因が絡んでいます。
どういうことでしょうか?「悪いのは私」と考える(内なる)子どもや幼児は、心の中で、どんな思いを抱いているでしょうか?
そのいくつかを検討してみましょう。(注:より詳しくは、セミナーでお伝えします。)
5)1つは、「罪悪感」です。罪悪感に盲目だと、そこに自動反応が起きて、子どもは、自分を追い込み、自責感を抱きます。すると、早晩、病的抑うつ感が沸き上がってきます。
2つは、「英雄(ヒーロー・ヒロイン)」的精神です。これは、「救済者」的マインド、と言い換えてもいいかもしれません。このマインドを抱くと、「私は、ママやパパを幸せにできる、いや、しないといけない。だって私は、スーパーヒーロー/ヒロインなんだから」と考えます。しかし、ママやパパが笑顔になってくれない、2人が仲良くならないと、「ママとパパを救えない、私は悪い子」といった無力感、無能感、劣等感、敗北感に、おそわれます。
そうならないために、良い子になって、ママやパパやおばあちゃんやおじいちゃんを喜ばせること、幸せにすることに、躍起になります。
(注:こうした内なるよい子的マインドは、摂食障害、アルコール依存症、薬物依存症、買い物依存症、セックス依存症、共依存などの背景に、例外なく潜んでいます)
6)英雄的精神、救済者マインド、無能感、罪悪感は、すべて洗脳(マインド・コントロール)から生まれる典型的な盲目的自己管理/規制です。元々は、「外」~たとえば親~からの管理/抑制だったのですが、それがいつの間にか、内面化され自分を中から責め始めます。盲目的自己管理/規制は、マインド・コントロールに対する自動的で機械的な反応なので、そこでは「心」が育ちません。
「悪いのは私」という思いに囚われると、「悪くない子」=「良い子」=「機能する子ども」~たとえばお勉強のできる子、明るい子、お返事のちゃんとできる過剰適応する子~ になることに必死で、「心」の次元に目が向きません。
7)お母さんの期待にこたえるかどうかや、学校や社会で機能するかどうかと、「心」とは、別次元のことです。セラピーには、学校、社会、組織そして「家族」に過剰適応し機能しているにもかかわらず ~いや、高機能で過剰機能だからこそ~、疲れ果て、破綻して、相談に来る方が絶えません。
8)発達心理学から、考えてみましょう。進化の過程で頭部を肥大化させたホモ・サピエンス(人類)は、赤ちゃんが産道を通り抜け出られなくなる前の、未熟な状態での出産を選択しました、そのため、出産後の生存には、長期間にわたる養育者からのアタッチメント・ケアを必要とします
赤ちゃんの安定的アタッチメント、子どもの健康な成長に不可欠なのは、親から赤ちゃんや子どもへの「利他心」や「愛情」です。それがなければ、乳児は生存できません。親が自己中心的欲求や欲望を抑制して、赤ちゃんや子どものニーズ(欲求)を優先する。それが、健康な利他心や愛です。
9)利他心や愛情のない、あるいは希薄な親と、その子どもをとりまく家族システムが、「悪いのはボク」という思いを、子どもに抱かせます。
利他心や愛情がないのは親の側(の問題)であるにもかかわらず、子どもは、「私が悪い」と即断、妄信します。「僕がダメだから、ママは、僕を好きじゃないんだ」「ヒロインになれなくて、ママとパパを助けられない私が悪い」と考えます。
「そもそもママの愛情は希薄だから」、あるいは「パパは、ママのことが好きじゃない」と思う代わりに、「私が悪いから、そんなふうになっている」と、私に原因を帰します。
10)それは「裏返った自己愛的な想い」です。けなげに聞こえますが、そこには「隠れ自己愛(closet narcissism)」や「思い上がり」が、潜んでいます。
(注:詳しくは、セミナーでお伝えします)
11)こうした子どもは、親の力を信用できません。親の力は、D.W.ウィニコットの「抱え」やW.ビオンの「コンテイニング」といった心のキャパの度合いを意味します。親の方に心の力がなく、子どもの嘆き、つぶやき、訴えを受け止められないとき、子どもは「僕が悪い」と自分を責めます。
12)たとえば親がキレると、「私がダメで、ママ(の心)を壊してしまったから、ママは切れた」「ママを怒らせる私は、妖怪あるいはモンスターだ」と思い込みます。それは、子どもにとって、「問題は、親の方にあったんだ」「自分は悪くなかった」という真実をみつめる方が、きついからです。「母親が精神的にいなかった」「親が心理的に死んでいた」とわかることが辛いためです。(これがなぜ辛くきついのでしょうか。心理的には大切なテーマです。セミナーで解説します)
それよりも、「自分に問題があって、悪い」と妄信し続ける方が、楽です。これもしんどいですが、習い性になっているから耐えられます。
13)その妄信は、もともと、外側の洗脳(マインド・コントロール)からもたらされたものです。この洗脳を見抜くのは大変です。気づきには、マインドフルな「メタ認知」や「メンタライゼーション」が必要です。
(注:あなたはメタ認知やメンタライゼーションについて、ご存知ですか?)
14)が、それを精神分析やユング心理学でいう「過酷な超自我」が、阻みます。過酷な超自我が、個人の内面および家族システムに循環する「悪いのはボク・ワタシ」という誤認知を永続させます。
あなたは、過酷な超自我と、その見破り方にご関心がありますか?
15)ここを見破って、解放されるには、過酷な超自我の「脅し」と向き合う必要があります。なぜなら、言葉にならない不安や恐怖や名状しがたい罪悪感が伴うからです。この過程にしっかりと寄り添い、サポートするのが、セラピストです。具体的なやり方は、良質な事例(ケース)を参照しながら、お伝えます。
16)「ママは悪くない、悪いのは私」「お母さんとお父さんの仲が悪いのは、ボクのせい。ボクがいい子にしてないから」との取り組みが困難な理由がもう1つあります。
それは、その妄信の外側に、「〈真の私〉の中核に潜む内なる子どもや内なる幼児」が、長年遺棄され、放置されてボッチ状態、絶望状態にあった点を、見つめなければならないことです。そこには、精神的痛みを伴う気づきが生じます。また、たとえ気づいたとしても、どう扱ったらいいかわからない。だからこそ直視したくない、という怖れや不安、絶望感も、そこにはあります。
これらについての良質な支援の仕方を、わかりやすく学びませんか?
17)あなたは「悪いのは私」という誤認知にハマって苦悩しているクライエントへの、温かい体温の感じられる、または手触り感のある質のいい介入に、ご関心がありますか?
今回のテーマについて、これまでいろいろなセミナーで、その都度少しずつ取り上げ、取り組んできました。今回、初めて「悪いのはボク・ワタシ」と妄信し苦しんでいる(内なる)子どもや幼児を前面に出し中心テーマとして、セミナーを行います。
18)たくさんのクライエントを悩ませている「悪いのは私」との具体的的取り組みにご関心のあるセラピスト、コーチ、コンサルタント、ケースワーカー、医師、教育関係者、ナース、一般の方、初心者の方のセミナーへのご参加をお待ちしています。痒いところに手の届くの技やツールを身に着けるために、良質で具体的なケースをご用意させていただきます。
このテーマは、あなたの内なる子どもや幼児の傷のケアや癒し、あなたの成長や成熟に寄与するでしょう。
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日時■ 2022年9月25日(日)10:00~17:00
会場■ zoomオンライン会議(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)
費用■ メールマガジンにてご案内しております。
講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子