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心と脳、身体、そして関係性の癒し ~マインドサイトに学ぶ、傷ついたつながりとその修復~|2022/08/28(日)

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1)あなたは、「マインドサイト(mindsight)」という言葉を聞いたことがありますか?

それは、ハーバード大学医学部出身で、小児科、精神科、脳科学、対人神経生物学(interpersonal neurobiology)を専門とするダニエル・シーゲル氏によって、提唱されました。

シーゲルは、マインドサイトを次のように説明しています。

  • それは自分と他者の心を把握する能力である。
  • 私たちの内的世界を、よりクリアかつコンパッションを持って理解し、脳を統合し、他者との関係を強化するためのパワフルなレンズである。
  • 私たちの心と脳の働きについて観察することを可能にする、一種のマインドフルな注意力である。
  • 私たちが経験する情動をなだめ、名づけ、飼いならすことを可能にする。それによって、情動に圧倒されることが軽減し(あるいは無くなり)、情動を象徴化できるようになる。
  • 私たちは五感についてよく耳にするが、胃や腸などの「内臓感覚」は第六感であり、マインドサイトは第七感である。

(注:第六感と第七感については、セミナーでご説明します)

2)今月のセミナーで、マインドサイトを取り上げるのは、以下のような理由からです。

  • 先月のセミナーテーマ「複雑性トラウマ」や、「ACE( Adverse Childhood Experience、小児期逆境体験)」に、非常に有益なアプローチだからです。
  • 脳科学や神経生物学を「関係性」の中でとらえ、そこに身体を統合しているからです。
  • 私たちが実践してきたトランスパーソナル心理学やプロセスワークに新たな視点を加え、より良質なものに刷新する可能性を秘めているためです。

3)マインドサイトは、以前、取り上げたことのある「メンタライゼーション(mentalization )」に近い概念です。P.フォナギーとJ.G.アレンたちによって提唱されたメンタライゼーションは、「自分自身を外側から観察すること、他者の心をその内側から見つめること」「心を心で包む/抱えること(holding mind in mind)」などを指しました。

4)マインドサイトもメンタライゼーションも、ともに「アタッチメント(愛着)理論」に強い影響を受けています。

アタッチメント理論は、養育者への愛着についての乳幼児の不安や恐怖を中心に据えた視座です。その不安や恐怖をマインドフルに観察し『制御』することを通して、安定型のアタッチメントを構築したり、解放と自由、および多様性と選択を支援したりするのが、マインドサイトであり、メンタライゼーションです。

5)いま述べた乳幼児の不安や恐怖は、放置されるとW.ビオンのいう「名状しがたいもの(nameless)」に簡単に転化し、古い脳を刺激して、3つのF反応~「闘争(Fight)」「逃走(Fight)」「凍結(Freeze)」~のいずれかを生むものです。

そこに、「ブレーキ」を導入するのが、マインドサイトです。

解放と自由、多様性と選択には、「アクセル」や「ブレークスルー」が必要と誤解されがちですが、そうではなく、実は3つのFに対する「ブレーキ(制御)」が欠かせません。

6)マインドサイトの中核には、先にも述べたとおり、「対人神経生物学(interpersonal neurobiology)」があります。対人神経生物学は、心と脳、そして身体のつながりに、人と人との関係を絡めてとらえる新しい分野です。それは、関係の中で、脳がどのように働くかを観察します。

7)対人神経生物学は、「関係的神経科学(relational neuroscience)」と呼ばれることもあります。関係的神経科学は、赤ちゃんにとって重要な他者との関係が、どのように脳の構造や機能の発達に影響するのかを見ていきます。

この分野では、右脳同士のやり取りに着目したアラン・ショアの仕事が有名で、精神分析やユング派セラピーに、影響を与えています。セラピーでは、たとえばクライエントの乳幼児期における重要な人との関係や脳の機能が、セラピーの場で、どのようにクライエント-セラピスト関係に反映(転移)されるかを観察し、介入を試みます。

8)対人神経生物学や関係的神経科学は、自己理解と自己共鳴とを通じて、自己治癒力、自己表現力を支援します。しかし、トラウマを負っている場合、他者のサポートが欠かせません。それに当たって、対人神経生物学は、8つの次元での統合が必要であると考えます。

そのうち2つについて簡単に書くと、1つは「垂直統合」です。頭のてっぺんからつま先までの流れや機能を統合させる。神経系でいえば、身体から脳幹、大脳辺縁系、大脳皮質というように垂直に配置されている機能を統合させることです。

2つは、左脳と右脳から成る「水平統合」です。

他の6つを含んだ統合に関する詳細は、セミナーでお伝えします。

9)あなたは、WHO(世界保健機関)が、ACE(小児期逆境体験)について取り組んでいるのを、ご存知ですか?

ACEは、アメリカにおいて、「若者のウェルネス(健康と幸福)のためのセンター」の中心テーマとして、取り上げられてきました。このセンターは、女性で初めてアメリカ国務長官になったM.オルブライトや現・副大統領であるK.ハリスらがコミットして来たことでも有名です。

センターの設立者兼CEOの小児科医ナディーン・バーク・ハリスによると、ACEの放置は幼少期の有害な経験および有害なストレスとなり、後に次のような病気の発症率を高める、と述べています。

  • 自己免疫疾患(たとえばギランバレー症候群)
  • 心臓病
  • 虚血性心疾患
  • がん
  • 炎症性腸疾患
  • 片頭痛
  • 持続性抑うつ障害
  • 脳卒中
  • 慢性気管支炎あるいは肺気腫
  • 糖尿病
  • 肝炎あるいは黄疸
  • 自己評価した健康不良

(注:それらの多くは、従来心身医学/心療内科の領域で取り扱われてきました)

10)マインドサイトは、ACEや複雑性トラウマに向けた有益なアプローチです。それは、メンタライゼーション、ビオンの「コンテイニング」、ダニエル・スターンの「情動調律」、さらには「情緒的応答性」と重なるところが多々あります。

11)脳は幾つになっても成長をやめません。それを後押しするには、マインドサイトのための神経回路を発達させることです。それは、人との良質な関係の中で育成されます。

セミナーでは、脳科学や神経生物学を「関係性」の中でとらえ、そこに身体を統合するために、また、より洗練されたセラピーの可能性について考え、学ぶために、マインドサイト、メンタライゼーション、情動調律、情緒応答性、コンテイニングをトータルに見ていきます。それらを具体的なケースから、学んでいきます。

12)マインドサイトは、不安や恐怖がスイッチを入れる3Fの反応や妄想からあなたを解き放ちます。それは、レジリエンス(回復力)とウェルビーイング(健康と幸せ)に関する脳の回路を活性化し、コンパッションや共感力を開花させます。

13)このセミナーでは、マインドサイトおよびそれと同様のラインに立つ有益な新しいセラピー(メンタライゼーション、関係的神経科学、情動調律、情緒応答性、コンテイニング)を参照し、複雑性(発達性)トラウマ、ACE、その他の困難ケースに対するセラピーの可能性を見ていきます。

14)あなた自身のウェルビーイング(健康と幸せ)、癒し、可能性の開花のために、また、セラピスト、コーチ、コンサルタント、ケースワーカー、医師、教育関係者、ナースにとって痒いところに手の届くの技やツールを身に着けるために、セミナーでは良質で具体的なケースをご用意させていただきます。

あなたのご参加をお待ちしています。

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日時■ 2022年8月28日(日)10:00~17:00

会場■ zoomオンライン会議(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)

費用■ メールマガジンにてご案内しております。

講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子