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心の分離/分化と発達成長、その微細な変容過程を体得する ~関係性プロセスへの『ミクロの決死圏』~|2022/04/24(日)

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1)セラピーの中核的な目的の1つに、「分離・分化」があります。あなたは、分離(separation)/ 分化(differentiation)について、聞いたことがありますか?

分離/分化は、精神分析、トランスパーソナル心理学、そしてマレー・ボーエンの家族療法、錬金術的セラピーの中心テーマです。

2)初めて分離/分化について聞いたとき、私たちはその意味をよく把握できませんでした。違和感を感じ、なぜセラピーで分離/分化をすすめるのか、当時、よくわかりませんでした。

3)「私」という個人の心、すなわち自我や主体は、セラピーにおいて、発達心理学の分離/分化をベースに考えられてきました。精神分析やトランスパーソナル心理学は、発達心理学です。ボーエンの家族療法は、発達心理学の影響下にあります。錬金術的セラピーは、分離/分化を、変容との絡みで考えます。

4)日本に生まれ育った私たちにとって、分離/分化、個人や主体といった考えや概念は、当初なじみませんでした。それらとは逆の、共生、融合、一体、同調、同一性に親和性を感じていました。

5)しかし、セラピーをいい形で進めるには、またクライエントを支援するには、分離/分化について、学ばずにはいかなくなりました。なぜなら、現代の多くの心理的な困難課題が、「共生、融合、一体、同調、同一性」の病理に関係していることが、見えてきたからです。

たとえば、過剰適応や摂食障害、強迫性障害、共依存やDV(ドメスティック・バイオレンス)、アルコールなどの物質依存症、買い物やセックス、ゲームや窃盗癖などの行為依存症、など、あるいは、精神病水準、自己愛や境界性パーソナリティ障害の心、とくに「自己愛構造体」と言われる固い構造の心、こうした困難な心の回復や癒し、解放には、「分離/分化」を通じた心の「個人/主体づくり」の必要性が、明らかになったからです。

6)特に、「解離」との取り組みには、微細なレベルでの分離/分化が欠かせません。解離、自己愛構造体、摂食障害、依存症、共依存、DVには、実は「粗雑な」切り離しが関係しています。しかし、それらからの癒し、回復、解放には、「微細な」分離・分化が欠かせません。

あなたは、『粗雑な』切り離しと、『微細な』分離/分化との違いに、ご関心がありますか?

7)この違いの理解は、困難な心の課題、症状、訴えとの取り組みに、とても有益です。そこには、コンパートメント(compartment、仕切り、区切り)、コンテイニング(containing、包含、封印)、ドリーミング(dreaming、夢見)が求められます。

8)精神分析、トランスパーソナル心理学、ボーエン派家族療法は、心の悩み、問題、訴えを、単に「病理」ととらえません。代わりに、心の成長発達の「停止、阻止」や「停滞、固着」を見ます。治すのではなく、成長、変化、成熟、変容を促すことで、悩み、問題、訴えからの解放を試みます。

9)さて、ここで「無理心中」から考えてみましょう。

親が、自分と子どもの将来に絶望し、子どもと一緒に無理心中する。これは、日本で育った人には、小説で読んだことがあったり、聞いたことがあったりして、なんとなく知った話のような気がするかと思います。

そのことを、富士見がアメリカに留学中に、文化人類学の授業で発表したところ、大変驚かれたのをよく覚えています。無理心中について、ほとんどの学生が聞いたことがなかったからです。よく調べてみると、諸外国にも心中事件はあるのですが、一般にはあまり知られていません。

10)そのため、学生たちが驚いたのです。その理由は、子どもにも人権はある、というところから来ていました。たとえ乳幼児や子どもであっても、親と子どもは別人格だ。だから、親が将来を憂い、死にたいのなら、親だけ死んで、子どもは施設などに預けたらいい、といった考えがほとんどでした。

11)その子どもが大人になって、親が自分を道連れに無理心中をしようとしていた話を聞いても、日本で育った人にとっては、どこか「そんなものか」と思い、疑問を抱かない場合が、少なくありません。親と子どもが、ともに「共生、融合、一体、同調、同一性」の渦(うず)の中に、〈呑み込まれている〉ためです。ユング心理学は、この「共生、融合」の渦に呑み込む働きを、「グレートマザー(元型)」と呼びました。

12)大人になったそうしたマインドの人は、自分の考え、気持ち、本音を、脊髄反射的に〈呑み込む〉ことが少なくありません。そこに、主体性、自我、「私」はありません。知らぬ間に、本人がグレートマザー(共生、融合、一体、同調、同一性状態)になっていて、自分で自分の考え、気持ち、本音を〈呑み込んでいる〉、ということに、気づかないためです。

そのことによる苦しみが、解離、自己愛構造体、摂食障害、依存症、共依存、過剰適応、強迫性障害、買い物依存、セックス依存などの背景にあります。

13)このセミナーは、「共生、融合、一体、同調、同一性」からの解放と自由、癒し、回復、変容を試みるものです。「分(わ)かる」は、「分ける」つまり「分離/分化」から生まれます。分離/分化は、イメージや言語によって進みます。しかし、そこには、イメージや言語を付与/贈与する他者との関係性が、欠かせません。

14)いま、問題は「共生、融合、一体、同調、同一性」であるかのように、述べました。実はそれだけではなく、『粗雑な』分離/分化が、そこに伴っています。

15)ではどうすると、いいのでしょうか?

粗雑な分離/分化の背景あるいは深みに赴いて沈潜し、そこで分離/分化を『丁寧に、微細に』やり直すことが求められます。それは、関係性におけるミクロの決死圏あるいはミクロコスモス(小宇宙)への微視的旅といえるでしょう。微に入り、細を穿(うが)つようにして、関係性におけるミクロコスモスを旅し、そのプロセスを体得する、のが今回のセミナーの目的です。

16)分離/分化は、心の発達成長の核心です。このセミナーでは、分離/分化のための内的宇宙船の作り方、その操縦法、宇宙服、セラピストとクライエントのチームワーク、微視的旅の仕方などについて学びます。

17)そのことによって、あなたは主体性、個人の尊厳、「私」、個性について学ぶことできます。あなたは、自分の考え、気持ち、本音を〈呑み込まなく〉なります。自分の想いや情緒を、自分の言葉で表明/表現するようになります。

なぜなら、無理心中をしようとした、あるいは自分の考え、気持ち、本音を〈呑み込もう〉とした真の理由を分離/分化できるからです。あなたは、「真の理由」の分離/分化にご関心がありますか?

18)また、ボーエン派家族療法のいう「世代間境界」を理解できるでしょう。ファミリービジネスにおける家族と経営を分離/分化しやすくなります。発達心理学の心の成長と、心理錬金術の変容過程を体得できるでしょう。

19)今回、「『分離/分化』と心の発達成長の微細な変容過程を体得する ~関係性プロセスへの『ミクロの決死圏』~」にご関心のある対人援助の専門家、専門家を目指す方、初めて聞く内容だけれど、日々の暮らしに、また家族、ビジネス、対人関係に活かしたいと考えている一般の方、初心者の方、そしてこの困難なテーマを生活の糧にしたいあなたのセミナーへのご参加をお待ちしています。

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日時■ 2022年4月24日(日)10:00~17:00

会場■ zoomオンライン会議(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)

費用■ メールマガジンにてご案内しております。

講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子