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共依存から相互依存へ~癒し、回復、変容の旅~|2020/12/27(日)

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◎ 配布資料+音声データをご購入いただけます

1)家族療法家のマレー・ボーエンは、子どもの心の問題を、その子どもと直接会わず、子どもの両親との夫婦セラピーを行って、解決したことで知られています。子どもは、家族全体に及ぶ相互依存関係の1側面である、と考えるからです。両親の関係が健康になるようにサポートすることで、両親と相互関係にある次世代の子どもに、プラスの影響が波及することを意図するのです。

魔法とは違います。ボーエンはシステム論に基づいて、豊かで、良質なセラピーを家族に提供しました。

2)健康な関係とは「相互」依存であり、不健康な関係とは「共」依存です。あなたは、相互依存と共依存の質的違いをご存知ですか?

3)たとえば、アルコール依存者に対して、パートナーや家族が、依存の問題に向かい合おうとせず、当人に代わって尻ぬぐい、後始末を繰り返すことで表面を取り繕う。そして、何とかなるだろう、何とかなってほしいという甘い妄想期待の下に病的関係を永続させる。それが、共依存です。

パートナーや家族は、しばしば大変な迷惑をこうむります。しかし、自分以外に依存者の尻ぬぐいはできない、後始末をしてくれる人はいないという、マゾ的万能感、達成感にパワー、価値観、優越感をひそかに感じていたりします。表面的には、献身的で、犠牲的ですが、どこかで依存者が自立する機会、行為、力を巧妙に邪魔し、心に砂糖を盛って、自立、自己実現への道を阻みます。そこには、隠れ自己愛障害に特徴的な、裏返った自己中心性が潜んでいます。

夫婦やパートナーだけでなく、親子や祖父母と孫の間、上司と部下、教員と生徒、治療者と患者、コンサルタントとクライエントの間でも、しばしば生じます。

4)共依存は、「関係」への依存といわれます。が、それは間違いで、共依存には、関係の前提として不可欠な、「真の他者」がいません。そこにあるのは、自己愛的、自己中心的な「独り(よがり)マインド」です。独りマインドは、「他者」とは何なのか、本当のところはよくわからない、という麻痺した感覚をいだいています。

5)他者が何なのかわからない2人が依存し合うところから生まれる「関係中毒」。それが「共依存」です。そこに真の関係性はありません。お互いが、相手に対する自己愛的、自己中心的な期待や思惑(おもわく)を、勝手に抱いている。その期待や思惑を互いに投影をし合う。しかし、その中身について、向き合って話し合うことはない。そこにあるのはダイアローグ(対話)ではなく、2つのモノローグ(独白)からなる平行線。

6)他者とは、実のところ何なのかわからない。そのうえで相互投影することによって、暴力性、搾取、サドマゾ的なものが吐出しやすいのも、共依存の特徴です。あなたは、共依存関係に潜み、暴力性、搾取、サドマゾ的なものを触発しやすい投影、特に相互投影についてご存知ですか? ご一緒に学びませんか?

7)「相互」依存の前提として不可欠な他者性について、「共」依存に陥っている人は、なぜわからないのでしょうか? 精神分析的発達論によると、心が十分に成長を遂げていないためです。精神分析的発達論を広めたマーガレット・マーラーによると、心が「共生期(生後1~6ヵ月の心の発達状態)」や「分離-個体化初期(5~14ヵ月)」に留まり、そこに固着しているためです。マレー・ボーエン的には、心の「分化」が進んでいないためです。

共依存の精神年齢は、生後1か月~14ヶ月のどこかで停滞&固着しています。肉体的、社会的に大人であっても、心の成長は乳幼児段階で止まってしまっています。アルコール、薬物、ギャンブル、セックス、ゲームからもたらされる興奮や高揚は、乳幼児に必要なおっぱい(快楽)の代理品です。そうした点について、マーラーやボーエンの心の発達理論から、わかりやすくお伝えします。特に、マーラーの「心の分化」は大変有益な視座です。

8)トランスパーソナル&統合心理学のケン・ウィルバーは、心の真の成長は、「超える」と「含む」の2側面から成り立つと言います。ある心の発達課題をやり残したまま、次の発達段階に移行することは可能でしょうか?

表面的には可能です。しかし、発達課題は水面下で消えることなく、残されたままです。残された課題から、「依存/中毒(addiction)」が発生します。

9)たとえば、乳児が「分離-個体化期」へと発達を遂げたとしましょう。分離-個体化は心の発達段階ですが、部分的には、肉体の成長によってもたらされます。肉体的な成長の陰で、心が発達課題をやり残していたら、心は前段階の「共生期」に固着することになります。

心は、「共生期」つまり「融合状態」や「一体化」を求めて、アルコール、ドラッグ、セックス、ギャンブルといった「依存/中毒」を発生させたとしても不思議ではありません。理由は、「共生期」を真に「超えて」いないためです。こうした発達の視点から、「依存」や「共依存」「関係中毒」について考えます。

10)サイコシンセシスの創始者ロベルト・アサジオリは、「無自覚に同一化」しているものに、私たちの心は「乗っ取られる」と述べました。これは、心理セラピーにおける記念碑的大発見です。たとえば、あなた(の内的乳幼児)が共生期に無意識に同一化していると、その発達段階に、あなたの心は奪われれてしまいます。そして、アルコール、ドラッグ、共依存などを通じて、融合状態、一体化を求めるよう煽られ、強制されます。あなたは、知らぬ間に、共生期の奴隷、囚人とならざるを得ません。

11)奴隷、囚人状態にある共依存と、相互依存とは質的に異なります。相互依存は、心の分離-個体化、心の分化を十分やり遂げたうえで、はじめて可能です。相互依存では、共依存と異なり、ダイアローグ(対話)が可能です。ユングは、「セラピーは、セラピスト-クライエント間の対話や対決を通じてはじめて可能になる」と繰り返し述べました。

12)さて、共依存、関係中毒、ラブ・アディクションは、独立や自立することで癒し、回復が可能になる、と考えられたことがありました。これは、1人心理学(one-person psychology)の視点によるものです。それに対して、関係心理学は、良質な相互依存の視座やベースによって共依存、関係中毒、ラブ・アディクションからの癒し、回復、変容が可能になるといいます。

13)心の独立、自立、分離-個体化、分化は必要ですが、不十分です。そこには、視座、考え方、パラダイムの転換が欠かせません。参考になるのは、関係療法、家族システム論、大乗仏教の縁起の視座です。こうした視座について、ていねいにお伝えします。このセミナーでは、依存について多層的に理解し、共依存から相互依存への癒し、回復、変容の旅に取り組みます。それは、ユングやマズローの自己実現の過程をサポートするでしょう。

14)専門家として特に有意義なのは、クライエント-セラピスト間に生じる相互投影、転移と逆転移、投影同一化、エナクトメントの取り扱いです。また、サイコシンセシスの「無意識同一化」も見逃せません。基本からじっくりと学びます。

このセミナーでは、共依存、関係中毒、関係アレルギー、家族システム論、縁起について学びます。こうしたテーマに関してご関心のある対人援助の専門家、専門家を目指す方、一般の方、初心者の方、そしてあなたのセミナーへのご参加・ご購入をお待ちしています。

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日時■ 2020年12月27日(日)10:00~17:00

会場■ zoomオンライン会議(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)

費用■ メールマガジンにてご案内しております。

講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子