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コンテイナーとコンテイニング ~心的&魂的子宮への着床、出産~|2020/02/24(月祝)

コンテイナーとコンテイニング ~心的&魂的子宮への着床、出産~

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1)あなたは、心的子宮あるいは魂的子宮という言葉を聞いたことがありますか?

「心理療法」は、英語でpsychotherapy(サイコセラピー)です。Psycho(サイコ)は、語源的には「蝶、心、魂」を意味し、therapy(セラピー)は「ケア、奉仕、サービス、看護、付き添い」の意です。心理療法は、語源からすると「心の看護、サービス」「魂のケア、奉仕」「(青虫がさなぎを経て)蝶に変態する過程に付き添うこと」です。

今日、心理療法の世界では、
(a)エヴィデンスに基づいた医学的、行動科学的セラピーと、
(b)社会的文脈に基づいたカウンセリング
が、2大巨頭となりつつあります。

が、それとは別に、心や魂を想定し、その次元を対象として心理療法を行っているグループがあります。これには、ユング心理学やトランスパーソナル心理学、元型的心理学、人間性心理学や精神分析の一部が当てはまります。Psychoanalysis(精神分析)は、説話論的には「ピン止めされ飛べなくなった蝶(psycho)の軛(くびき)をすっかりほどいて(analysis)、蝶が自由に羽ばけるようにする作業」です。

2)私たちは医学、福祉、司法など別領域との協働、および行動科学的仮説を尊重しています。社会的コンテキストを重視するのは、言うまでもありません。しかし、ベースには、心、魂、スピリチュアリティへのまなざしを据えています。そして、心理療法を、心の質的変化、すなわち変容、(蝶への)孵化を促すサービス・奉仕だと考えています。質的変化、変容の鍵が「心的子宮」や「魂的子宮」です。これまで、心的子宮に着目したのは、W.ビオン、O.ランク、F.タスティン。魂的子宮にも言及したのが、C.G.ユング、J.ヒルマン、S.グロフです。

3)古今東西、世界中の宗教に、子宮のメタファーを見出すのは難しくありません。宗教的子宮は、人をスピリチュアルな新しい人として誕生させるため上で、必須の装置です。象徴人類学者のV.ターナーは、未開・前近代化社会においては「子宮」と「墓場」がたびたび同じ<名称>で呼ばれ、<同一視>されていると述べました。西洋の錬金術でも「子宮」イコール「墓場」と考えられてきました。

4)それまでの世俗的な人間が死に、神聖さを尊ぶことのできる人間として新たに生まれ出る。心理的死と誕生の両プロセスを含んだものとして「子宮」が意味づけられてきたのです。

5)このセミナーでは、心的および魂的子宮を取り上げます。心の変容、成長、成熟、癒し、回復には、心的、魂的子宮が不可欠だからです。ビオン、ユング、グロフの子宮へのまなざしは、精神病やパーソナリティ障害水準に、タスティンの子宮への視座は自閉症水準に向けたものです。ユングとグロフの視点は同時に、深層心理やトランスパーソナル水準へのものでもあります。

6)さて、精神病やパーソナリティ障害、自閉症といったディープなプロセスのケアには、心や魂の子宮への着床が欠かせません。しかし、この着床の過程は、困難を極めます。たとえば、摂食障害、ギャンブル依存、アルコール依存といった、各種依存症や共依存の背景では、H.S.サリバンの「消えそうな私」「不在の私」(Not-Me)が解離放置され、そこには、H.コフートの「絶滅不安」や、対象関係論の「破滅−解体不安」「迫害不安」が潜んでいます。

7)「消えそうな私」「不在の私」を探し出し、そこに伴う「絶滅不安」や「迫害不安」を取り上げることには困難を伴います。圧倒する強大な破壊的プロセスであるため、クライエントの人だけでなく、セラピストも、知らぬ間に排除してしまいがちになるためです。

が、そうしたプロセスを取り上げ、取り扱わなければ、ディープな癒しおよび変容、成熟過程は進展しないでしょう。各種依存症、各種パーソナリティ障害、ASD(自閉症スペクトラム障害)といった、現代的における心理的テーマ、訴え、悩みに応えるには、心的、魂的子宮へのまなざしが欠かせません。

8)「消え入りそうな私」「不在の私」を受け止める容器は「心的子宮」です。心的子宮は、不安や恐怖との取り組みを可能にします。一方「絶滅」「破滅」「解体」の『側』のプロセスを受け止める容器が「魂的子宮」です。

あなたは、絶滅、破壊、解体させる「側」について、想像できますか?

想像できると、ユングやヒルマンが「魂的子宮」に言及した意味が、理解しやすくなるでしょう。

9)心的子宮は「コンテイニング(containing、容器に入る過程)」といわれるもので、これは、クライエントとセラピストとの今-ここでのやり取り、交流を通じて展開します。魂的子宮は、ユングが「コンテイナー(container)」=「ヘルメスの容器」と呼んだものに当たります。ヘルメスの容器は、何から何までが不可思議さに満ちています。

容器が水できているかと思えば、火に変化したり、伸び縮みしたり、固くなったり柔らかくなったり、厚くなったり薄くなったり、重くなったり軽くなったりと、人知を超えたプロセスからできています。これをセラピストが取り扱うには、ヒルマンやビオンが好んだ「ネガティブ・ケイパビリティ(negative cpability、否定的能力)」が欠かせません。(注:ネガティブ・ケイパビリティについて、ヒルマンとビオンから学びます。)

10)「消え入りそうな私」や「不在の私」、また「分割排除された私」「解離された私」「場にそぐわない私」「よそ者の私」は、たとえていうと、この世に居場所を見出すことができず、心底苦悩しています。この「私」のための居場所(の端緒・土台)が、心的子宮であり、魂的子宮です。(注:詳しくはセミナーでお伝えします。)

基本からわかりやすく、かみ砕いてご説明します。

11)「不在」の私はコンテイニングに、解体側のプロセスはコンテイナーに着床してこそ、質的変化、変容、成長、成熟、癒し、回復が可能になります。コンテイニングやコンテイナーなしに、変容や孵化、成熟はありません。根を張って、栄養を吸収する心的魂的土壌がないためです。

12)「シャーマニズム」について、私たちを啓蒙した宗教学者M.エリーアーデや、臨床心理学者のS.インガ―マンが「魂の回復(soul retrieval)」について述べています。インガ―マンによると、魂の回復は「解体されバラバラになった心の修繕」を試みるシャーマンの癒しの作業の肝です。解体された心の側面は、この世から去って、あの世に身を潜めています。

この側面には、居場所がありません。宙づり状態です。しかし、この世に戻ること、現実に根づくことを、頑なに拒絶することも少なくありません。なぜでしょうか?

この拒絶や抵抗が、コンテイニングという容器に入る過程を困難にします。

13)コンテイニングおよびコンテイナーに参入することを「イニシエーション(死と再生の通過儀礼)」といいます。ここで大切なのは、クライエントの人だけが、死と再生の過程を通過するのでなく、援助者の側も、死と再生を経る必要がある、という援助者側の姿勢です。さもなければセラピストは、心や魂のプロセスから隔離された近代科学者・医学者と変わりません。

14)このセミナーは、プロセスの心的および魂的プロセスの着床と出産をテーマとするものです。それに当たって、コンテイニングとコンテイナーに着目します。青虫が蝶になるために不可欠なさなぎ、および、さなぎ過程に特にフォーカスします。心的子宮と魂的子宮の両方を肯定する視座は、精神病やパーソナリティ障害水準、解離、羨望、幻滅、依存症、共依存といった今日たくさんの人が苦悩する困難な心理的テーマとの良質な取り組みを可能にします。また、深層心理学やトランスパーソナル心理療法の核心にある心や魂次元での変容についてもご一緒に学びます。

コンテイナーとコンテイニング~心的&魂的子宮への着床、出産~にご関心のある専門家の方および一般の方、初心者の方、あなたのご参加をお待ちしています。

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日時■ 2020年2月24日(月祝)10:00~17:00

会場■ 都内(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)

費用■ メールマガジンにてご案内しております。

講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子