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関係療法とプロセスワークの出会い ~劇的対話(dramatic dialogue)の心理学~|2020/09/27(日)

関係療法とプロセスワークの出会い~劇的対話(dramatic dialogue)の心理学~

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1)あなたは、「劇的対話(dramatic dialogue)」について、聞いたことがありますか?
現代の関係療法の土台を作ったシャーンドル・フェレンツィの概念です。

フェレンツィは、ハンガリーの精神分析医。フロイトの初期の弟子であり、また、メラニー・クラインの最初の分析家でもありました。フェレンツィは、心理療法の営みを、クライエントとセラピストとの間に自然発生する演劇的(dramatic)対話(dialogue)を通じて進む過程、ととらえました。

2)クライエントが、セラピストと出会った瞬間、たとえばセラピストを、自分が大嫌いな父親と重ねて、見始めるとしましょう。これは、水面下で無意識に進むプロセスで、「転移」と呼ばれます。表面では、クライエントは心の悩みをセラピストに訴えますが、2人の水面下では、「父が嫌いな子ども」と「子どもに嫌われた父」との間のドラマ(劇)が、勝手に発生し、無意識裡に展開します。父が嫌いな子どもと、子どもに嫌われた父親との間の対話。これが、劇的対話です。

3)水面下で繰り広げられる深層心理劇あるいは劇的対話に、遊び心いっぱい(playful、プレイフル)に加わる。フェレンツィは、心理療法で一番大切なものを、「解釈」や「分析」ではなく「遊び(playing)」と考えました。彼に影響を受けた英国精神分析家のD.W.ウィニコットは、心理療法を「2人の人間が、一緒に遊ぶこと(two people playing together)」と述べています。

4)水面下の劇的対話には、情緒、パトス(情念)、身体、魂、スピリット、といった、非理性的プロセスが、たっぷりと介在します。そこで進むのは、悲劇、苦劇、喜劇です。劇的対話に、心理療法家が、遊び心をもって加わるには、どうすればいいのでしょうか?

5)不信感に苦しむ男性クライエントと、フェレンツィの事例から考えます。クライエントは、フェレンツィを暗黙裡に祖父と見ていました。「転移」です。あるセッションで、突然クライエントがフェレンツィの肩に手を回し、つぶやきます。

「おじいちゃん、子どもを授かることになったんだ・・・。けど、怖いんだ」

フェレンツィはひるむことなく、同じトーンでつぶやきます。

「どうしたんだい、何が怖いんだ?」

6)簡単なやり取りです。フェレンツィが、「コール&レスポンス的ゲーム」と呼ぶ、こうしたプレイフルで親密な応答、劇中人物になりきる対話スタイルは、
精神分析にとってイノベーションでした。関係療法のG.アトラスとL.アロンは、フェレンツィの劇的対話を現代風に刷新しています。

「劇的対話は、クライエントとセラピストの間で浮上する多彩な自己を劇化し、お互い同士ドリームアップ(dreaming-up)しあいながら進む」

アトラスとアロンの2人は、劇的対話を「多次元的自己状態」「多次元的自己-他者関係」「覚醒夢」「解離」「生成的エナクトメント」「将来機能」「運命」という点から見直しています。その多くは、今回、日本で初めて紹介されるものです。セミナーを楽しみにしてください。

7)アトラスとアロンによると、劇的対話が展開する代表的プロセスが「エナクトメント(enactment)」です。水面下で展開するクライエント-セラピスト間の想定外の無意識的行動。それが、エナクトメントです。従来、あってはならない、起きてはならない心理的プロセスとされ、タブー視されてきました。よく理解されていなかったためです。

8)アトラスとアロンは、エナクトメントを「生成的(generative)」と述べ、また、ユングの「将来機能(prospective function)」を使って肯定的にとらえています。(注:セミナーで解説します)

これは、従来のエナクトメントになかった視座です。エナクトメントは現代関係療法のキーワードです。セミナーで、基本からしっかりと、じっくりと、ゆっくりと学びます。

9)あなたは、精神分析の各流派から生まれた現代の関係療法が、ユングの将来機能や運命といった考え方、また、プロセスワークの専売特許であったドリームアップや覚醒夢といった概念を採用していることを、ご存知ですか? 現代の関係療法が、豊かで、よりいっそう面白くなってきました。

10)今回、プロセスワークの「場の理論(field theory)」や「ドリームアップ」を見直します。そのために、ミンデル著『武道家としてのリーダー』(未訳)を参照します。

11)プロセスワークと最新の関係療法から、「劇的対話」について見ていきます。これにあたって、新しい精神分析、プロセスワーク、ユング自身の遊び心いっぱいの事例(ケース)を参照します。関係療法が、ユングの事例を、ドリームアップから分析しているところは圧巻です!

12)心理療法を、劇的対話、深層劇という観点から見直すことで、その機能を活性化し、より有益な技芸にすることについて学びます。このセミナーでは、劇的対話の心理学をご紹介します。関係療法とプロセスワークの出会いにご関心のある心理カウンセラー、コーチ、催眠療法家、ケースワーカーなどの援助職や、アドバイザーやコンサルタントといった専門家の方および一般の方、初心者の方、そしてあなたの、このセミナーへのご参加をお待ちしています。

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日時■ 2020年9月27日(日)10:00~17:00

会場■ zoomオンライン会議(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)

費用■ メールマガジンにてご案内しております。

講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子