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ソウル・ペイン(間-魂)の心理学 ~傷ついた癒し手のセラピー〜|2020/10/25(日)

ソウル・ペイン(間-魂)の心理学~傷ついた癒し手のセラピー〜

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1)「ケイローン(Chiron)」は、ギリシャ神話に登場する最良の癒し手です。治療者であると共に、患者である。それがこの癒し手の特徴です。ふつう患者は病んでいるものであり、その一方で、治療者は健康であると考えられています。それに対してケイローンは、治療者でありながら患者、健康であると同時に傷を負っています。

そんなケイローンが、なぜ良質な癒し手なのでしょうか?

2)ケイローンを現代心理学に復活させたのが、C.G.ユングです。また、ユング派の精神科医、G.B.クレイグによってさらに光が当てられました。ユング心理学は「全体志向心理学」です。全体とは、光と闇、昼と夜、陰と陽から成ります。そこからすると、治療者と患者、健康と病気の両面で全体です。全体は、古典ギリシャ語で“holos(ホロス)” ですが、ホロスは「癒える」「癒し」の語源でもあります。

全体は、癒しを促すのです。

3)セラピストが治療者だけを生きると、クライエントは患者だけを生きざるを得ません。なぜなら、それによって、治療者-患者の全体性が完結するからです。が、この場合、セラピストの意図とは別に、クライエントは半永久的に患者でなければなりません。

4)これに対して、セラピストが内面で「治療者-患者」の全体性を生きると、クライエントも内面で「患者-治療者」の全体を生き始めます。これが、ユング派の戦略です。ユング心理学では、セラピストは、目の前のクライエントに

加えて、自分の内なる患者に目を向けます。すると、クライエントは、目の前のセラピストにプラスして、自らの内的治療者とチームを築くことができるというのです。ユング派は、このやり方で、クライエントの「内なる治療者」との良好な関係を活性化し「自己治癒力」を促します。

5)でも、具体的には、それをどうやって実践するのでしょうか?

セラピストが、治療者と患者の両方を、心の内的世界で生きるとは、いったい何を意味するのでしょう?

クライエントが、自らの内なる治療者とチームを組むとは、どういったことでしょうか?

これらについて学ぶのが、セミナーの目的です。

6)ケイローンは、生涯決して治ることのない傷を負いました。しかしこの傷つきのお蔭で、彼はなんとギリシャで一番の癒し手となったのです!「ウンデット・ヒーラー(wounded healer、傷ついた癒し手)」と、彼は呼ばれます。ユング派の書籍の中に、傷を負った癒し手「ケイローン」の完全な物語が描かれたものは、なかなか見つかりません。今回は、ケイローン神話の完全版をご紹介しながら、癒し、セラピスト、セラピスト像について、じっくりと考えます。

その中で、神から火を盗んだ文化的英雄であり、またトリックスターの「プロメテウス」と「ケイローン」の関係についても、取り組みます。また、ケイローンの医術の師匠であった「アポロン」、さらに自身の弟子である「アスクレピオス」についても取り上げます。ケイローンだけでなく、プロメテウス、アポロン、アスクレピオスも取り上げ、ケイローンの癒しについて多角的に考えます。

7)ケイローンは「傷を負った者」が「癒す者」であることを伝えます。と同時に、河合隼雄さんの師匠、C.A.マイヤーによると、ギリシャでは「傷つける者」が「癒す者」でもありました。「傷つけられた」に加えて「傷つけた」者が「癒し」の鍵になるというのです。どういうことでしょうか?

8)A.ミンデルは著書で、次のように述べています。

「クライエントから傷つけられることが何度もあった。しかし、傷けられたことや、傷つきに伴うディープ・ペイン(深い痛み)を抑圧したり、放置したりしてきた。が、今日では、クライエントがセラピストや他人を傷つけるところに着目し、そのことについてしっかりと対話する」。

ミンデルも、傷つける中に、癒しの鍵があることに着目してきました。

9)米精神科医のハロルド・サールズは、精神病の治療に専心したことで有名です。彼もまた、傷つける者に着目して、癒しの実践をしたことで知られています。サールズは、ユング派ではありませんが、ユングと比較して議論されることの多い精神科医です。今回、サールズと彼の治療にも目を向けます。

10)傷を負うことや傷を負わせることから、癒し(ヒーリング)についてとら直す。この視座は、今日でも、大変有益です。今回、プロセスワークやトランスパーソナル心理学、心理療法、コーチング、ボディワーク、コンサルティングを全体的観点から、また深みから実践することを後押しします。

11)傷を負った癒し手は、個人の次元を超えた深層次元にいる「元型的存在」です。この存在は、対人援助の実践において、ありとあらゆるセラピスト-クライエント関係の深みで、ほぼ間違いなく自発的に動き始めます。ユング心理学によると、この動きや存在と良質な関係を営むこと、連携することに、癒し、回復、変容の鍵があります。

元型次元は「魂の領域」と言われます。ここでは、クライエントの魂と、セラピストの魂とが出会い「間-魂」に傷を負った癒し手な自然発生します。

12)ウンデット・ヒーラーは「元型次元の傷」、つまり「魂の傷」の癒し手です。それは「ソウル・ペイン(魂の痛み)」を取り扱います。今回、ソウル・ペインにも着目しながら、カウンセリング、セラピー、コーチング、コンサルティングの本質と可能性について取り組みます。ウンデット・ヒーラに関する複数の良質なケースをご用意して、あなたのご参加をお待ちしています。

今回、傷ついた癒し手、傷つける者と癒し、ソウル・ペインにご関心のある心理カウンセラー、コーチ、催眠療法家、ボディワーカー、ケースワーカーなどの援助職や、アドバイザーやコンサルタントといった専門家の方および一般の方、初心者の方、そしてあなたの、このセミナーへのご参加をお待ちしています。

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日時■ 2020年10月25日(日)10:00~17:00

会場■ zoomオンライン会議(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)

費用■ メールマガジンにてご案内しております。

講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子