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クリニカル・ディヴィネーション~ 運と縁と偶然を生きる心理学~

◎ 2021年10月22日(金)〜 全10回 オンライン開催
◎ 配布資料+音声データをご購入いただけます

1)境界性パーソナリティ障害の治療者として有名なジェームズ・マスターソンは、クライエントを理解するうえで、「生まれ」「育ち」「運」の3側面に光を当てる必要がある、と述べています。

「生まれ」とは、素質、才能、特性など生得的なこと、
「育ち」とは、母子関係、家族、教育、文化といった環境、
「運」とは、幸運、不運、縁、偶然など、想定外の出来事を指します。

セラピー領域では、「育ち」に働きかける学派が大半です。近年、エビデンスや医学の影響を受けた「生まれ」に射程を合わせる行動科学的、神経科学的な流派が隆盛しています。それに対して、「運」「縁」「偶然」にフォーカスしたセラピーは、とても少ない。ユング心理学やプロセスワークは、その代表といえるでしょう。

2)私たちはこれまで、関係療法から「環境」に、行動科学や神経科学から「生得的側面」に着目し、セミナーを行ってきました。今回は、「運」「縁」「偶然」に向けた連続講座を開催します。

3)あなたは、自分の人生における「運」について、どう考えますか? 運が良かった、と考えますか? 不運の連続だった、と思いますか? 運、縁、偶然との「関係」を育み、「対話」ができたら、これからの人生はどうなるでしょうか?

4)ライフネット生命の創業者で、立命館アジア太平洋大学学長の出口治明氏や、経済学者ロバート・フランク氏、パナソニック創業者の松下幸之助氏は、人生における「運」の役割を大切にしています。たとえば、松下幸之助氏は、採用面接の最後に、「あなたは運がいいですか」と質問したそうです。「運が悪い」と答えた人は、学歴が高くても、また面接での印象がどんなによくても、不採用にしたとのこと。

5)イタリアのカターニア大学が最近発表した論文によると、最も大きな経済的富を得たのは、最も才能があるとされた人々ではなく、最も運が良いとされた人たちです。あなたは、才能に優れ、頭のいい人や力のある人が、経済的富を勝ち取る、と親や先生から教えられてきませんでしたか? 事実は、そうではありません。

6)作家の五木寛之氏は、次のように言っています。

最近、専門家の解説が、ことごとく裏目に出ることが少なくない。エビデンスといういかにも科学的、客観的な証拠として援用される統計やグラフも、結局は普通の人間が作る。人間は、いい加減な動物なのだ。そして知性にも学識にも限界がある。

さて、そんな時代に私たちはどのように対処していけばいいのか。いかに私たちが自分の判断を鍛え、知識を育んだところで限界がある。『明日のことはわからない』と、はっきり覚悟すること。それがこの予測不能の時代に生きていく唯一の智恵なのだ。

『日刊ゲンダイ』2018年5月3日、特別寄稿より

7)五木さんは、「エビデンスといういかにも科学的、客観的な証拠として援用される統計やグラフ」を作っている「人間」にフォーカスしています。「人間」は、合理と非合理(いい加減さ)とから成っています。いい加減さがその一部(いや、その大半)である人間から作られるエビデンス、知性、学識には、「限界」がある、というのです。

8)「明日のことはわからない」、すなわち「想定外」の智恵に着目する古(いにしえ)の技芸が、ディヴィネーションです。それは決して、あなたに現生利益のためのオカルト的能力を与えるものではありません。そうではなく、「明日のこと、想定外のことはわからない」と、はっきり覚悟したうえで、そのプロセスとの関係育成や対話を促すものです。

9)”divination”(ディヴィネーション)は通常、「占い」「予言」と訳されます。が、語源的には、”divine”(「神聖な、神の、神から授かった」「天与の」「直観によって~とわかる」)という意味が備わっています。「神」「天」「直観」が、ディヴィネーションを理解するためのキーワードです。

10)ディヴィネーション(divination)は、紀元前からの古の知恵の体系ですが、なぜ今でも、たくさんの人が惹かれるのでしょうか? あなたは、どう思いますか?

11)臨床心理学者でトランスパーソナル心理学者のラルフ・メツナーは、ディヴィネーションについて、「未来」だけでなく、「過去」にも、「現在」にも通じている点を強調します。メツナーは、ディヴィネーションを「未来」を見通す力、つまり「占い」に限定することに、異を唱えます。

それは、過去、現在、未来についての情報や知識を得るための構造化(マニュアル化)された質問法です。なぜ、未来だけでなく、過去にも、また現在にも関係するのか、講座でお伝えします。また、マニュアル化されていない、ディヴィネーションのやり方についても、わかりやすくご説明します。

12)幸運を得るには、どうするといいのでしょうか? 想定外の出来事に触れる機会を増やすことです。ビジネス界では、それを「型にとらわれずに考える(think outside the box)」といいます。それは、”the box(型)”の中に納まっている考え方、たとえば常識や従来の思考停止状態から”outside(外)”に出て、想定外の領域で考えることを意味します。イノベーションは、常にこの「think outside the box」から生まれる、と言っていいでしょう。

H.S.サリバン的には、”not-me(従来の自分を否定する自分)”の領域で、考えることです。

13)現代催眠の開祖、ミルトン・エリクソンは、クライエントを予想外の領域に導き、癒しを喚起する達人でした。彼は、催眠を使ってクライエントを、従来の凝り固まったマインドから切り離し、予期しない場所へと誘い、サポートしたのです。

14)古代ギリシャでは、神聖な場所での「水」や「鏡」を使った技芸によって、同様のことが促されました。たとえば、洞窟の地下に貯まった水や、ブロンズ製の光る鏡を見つめ、スピリチュアルな世界に住まう祖先たちからの、想定外のアドバイス、メッセージ、ビジョンが送られてくるのを待ったのです。

15)ディヴィネーションは、姿かたちを変え、現代でも「経済予測」「科学的仮説」として息づき生き残っています。経済学者の予測は、ディヴィネーションの域を超えるものではない、と言っていいのかもしれません。ディヴィネーションについてよく理解されていないためか、頓珍漢な予測が絶えません。

ノーベル生理・医学賞を受賞した山中伸弥教授は、「予想外のこと」と「偶然」がなければ、iPS細胞という科学的発見はなかったといいます。山中氏は、「『偶然を大切にする』ことがすごく大事だと思います」と述べています。

16)さて、偶然について真摯に取り組んできたのが、ユングです。その源流は、かつて世界各地にあった「シャーマニズム」です。それが、洗練され生まれたのが、東洋の「ヨーガ」や西洋の「錬金術」です。また、易、占星術、ルーン、タロットなども、元をたどるとシャーマニズムにたどり着きます。この講座では、シャーマニズム、ヨーガ、錬金術を中心に、世界に広がるディヴィネーションの技芸を参照します。

17)A.ミンデルは、かつて「プロセスワークは、もはやセラピーではない。セラピー体系におさまらない」と述べました。プロセスワークは、セラピー以上に、現代版ディヴィネーション的様相を呈しています。

18)ユング心理学も同じです。ユングは、ディヴィネーションの視座からクライエントの夢を聞いて、将来起こり得る危機について、たびたび話題にしました。河合隼雄氏は、ユング心理学のエッセンスを「コンステレーションを読むこと」と述べました。「コンステレーション(constellation)」は、「星座」と訳されます。「星座を読むこと」がユング心理学であるとすれば、それはまさしく、ディヴィネーションです!

19)今回、身体と夢、共時性、転移、逆転移、交渉術などを、ディヴィネーションの視座から読み直していきます。いま関係療法で着目されているものに、「エナクトメント」があります。エナクトメントは、正に想定外のプロセスであり、ディヴィネーションの眼差しが必要とされる領域です。エナクトメントは、解離、各種依存症、共依存、パーソナリティ障害への取り組みにおいて、「急所」というべきプロセスです。詳しくは、講座でご説明します。

20)想定外の出来事に触れる機会を増やすと、あなたは幸運に出会いやすくなります。想定外は、「神秘」「不思議さ」と言い換えることができます。と同時に、不運や理不尽さや不条理に見舞われることも多くなるでしょう。想定外は、「理不尽さ」「不条理」でもあるからです。

しかし、大事なのは不確実さや予想外の出来事やプロセスにオープンになって、それが幸運でも不運でも、「運」そのものとの出会いを増すことです。それには、”box”の外に出ること、”not-me”の領域に踏み込むことです。

21)もし、その領域が嫌だったら、逃げる。逃げ方を事前に学んでおきましょう!あるいは、レジリエント(復活)力が発揮されるように準備する。この講座では、逃げ方やレジリエントについても取り組みます。

22)今回、シャーマニズム、ヨーガ、錬金術、タロット、ルーンなどを参照し、ディヴィネーションおよび、不運を幸運にする技芸について、学びます。

23)その時に必要なのは、W.ビオンの「わからないこと(not-knowing)」、ソクラテスの「無知の知」、ユングの「タブララーサ(白紙)」マインド、禅の「ビギナーズ・マインド(初心)」、J.キーツの「ネガティブ・ケイパビリティ(負の能力)」といった心の姿勢です。それは、box外のnot-meの領域に無限に広がる運、縁、偶然にコンタクトするための「直観」の発動を準備します。

24)クリニカル(臨床的)ディヴィネーションは、あなたの人生が神や天の領域から贈られた運、神秘、不可思議さ、畏怖でいっぱいであったことを、想起させます。今回、そうした運や縁や偶然との関係の育成、対話力を鍛えます。

25)最後に、運、神秘、不可思議さ、畏怖との出会い、触れ合いを回避するマインドとは、どういったものでしょうか? どうすれば回避しない柔軟性と強靭さとを持ったマインドを育てることができるでしょうか?

私たちは、私たちの誕生と死、また人生全体が、運、神秘、不可思議さ、畏怖に取り囲まれていると考えます。人生を十全に生きるためには、運、偶然、縁、神秘、不可思議さ、畏怖に眼差しを向けることが欠かせません。

26)今回、「クリニカル・ディヴィネーション~運と縁と偶然を生きるための心理学~」にご関心のあるセラピスト、コーチ、ボディワーカー、コンサルタント、またそうした専門家を目指す方、一般の方、初めての方、そしてあなたの連続講座へのご参加・ご購入を心からお待ちしています。

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日時■ 2021年10月22日(金)〜全10回 毎月第4金曜日 19:00~20:50

会場■ 初回はzoomオンライン会議にて開催いたします。第2回以降、状況に合わせ、zoomオンライン会議および東京都内会場の並行開催へと随時移行していく予定です。

費用■ メールマガジンにてご案内しております。

講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子