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『永遠の少年』×『自己愛構造体』~フォン・フランツとメラニー・クラインの出会い~|2023/7/30(日)

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1)今月のテーマは、「永遠の少年」と「自己愛構造体」です。

「永遠の少年」病理の中核は、自己愛性パーソナリティ障害(NPD)です。そしてNPDの理解には、ポスト・クライン派の「自己愛構造体」が有益です。

2)永遠の少年(puer aeternus)は、「チューリッヒ湖畔の魔女」と呼ばれたユング派のマリー=ルイーズ・フォン・フランツによって、よく知られるところとなりました。

自己愛構造体(narcissistic organization)は、「小さな黒猫」と言われたメラニー・クラインの系譜から生まれました。

セミナーのもう1つのテーマは、魔女と小さな黒猫との出会いです。

3)永遠の少年は、年を取らず ~いや、取れず~ 永遠に若くて美しい。そのイメージに魅かれる人は少なくありません。しかし、永遠の少年に捕えられたら最後、その人は今この瞬間を生きることができません。

いくつになっても「少年/少女のまま」で、その人には過去も、未来も、そして今も、なくなります。現実の時間を生きることなく、少年性を夢見ます。人生が積みあがらず、歴史が生まれません。年齢に関係なく、若さを追い求めます。

4)「永遠の少年」と聞くと、肯定的イメージを浮かべる人が少なくありません。しかし、そのマイナス面、病理面に着目して、私たちを驚かせたのが、A.ミンデルの教育分析家で、ユングの心理錬金術が生まれる際の片腕であった、フォン・フランツです。また、ユング派の発達心理学の大家、E.ノイマンの見解も、大変参考になります。

5)2人によると、永遠の少年にとりつかれた人間は、「心理的」「主観的」に年を取ることができません。肉体は衰えていっても、心はいつまでも青くさく、若作りを止められません。極端な場合には、肉体の老いを許せず、「自死」を試みるケースさえあります。

あるいは、「まだ若い」と思っていたら、「あっという間に、急に、老いていた」 ~「若さ」と「老い」との『間』の抜けた~ 浦島太郎状況に陥りかねません。

6)または、いくつになっても自分は若いと思っているため、あるいは心の一部が永遠の少年的であるため、いつか必ず『青春』を取り戻せると、心のどこかで妄想していたりします。この妄想は、深層心理学的には、「魂」からの内的要請、あるいは目くらましによるものです。が、当人はそのことについて、まったく知りません。盲目です。

7)なぜ、人は、「若さ」や「青春」への妄想を抱くのでしょうか?

フォン・フランツやノイマンによると、その人の深層に、永遠の少年という『元型』が宿るからです。元型には、スピリチュアリティと精神病とが混在します。それは、妄想を抱かせる絶大な力を持っています。人を自死に追い込むヤバイ魔力を秘めています。

8)永遠の少年は、ユング的には「男性のシャドウ(影)」であり、「女性のアニムス(内なる男性性)」です。シャドウであったり、アニムスであったりする永遠の少年に、時に、人は捕まり、憑依され、魅了され、人生を浪費させられます。ひどい場合には、何年、いや何十年にもわたって、「心」を乗っ取られます。

9)永遠の少年は、「不変の若さ、強さ、美しさ、可能性、創造性、能力」を持っています。が、一方で、その能力に対して、鼻持ちならない慢心、過信、傲慢さを抱いています。自分を客観視する能力を欠き、神にも負けぬ「完璧さ」「完全無欠さ」を持っている、と誤解します。そして、自らの若さ、強さ、美しさ、可能性、創造性、能力に、溺れてしまいます。

10)ギリシャ神話に登場する「イカロス」が、その典型例です。イカロスは、蜜蝋で固めた翼によって、自由自在に飛翔する能力を手にします。しかし彼は、自分の能力を過信し、太陽の高さにまで飛んでいける、という思いに駆られます。

父親ダイダロスの忠告があったにもかからわず、イカロスは、この思いを抑制できません。そして、太陽神へーリオスに向かって飛んでいきます。すると、蜜蝋が太陽の熱で溶け、翼を失います。最後には、墜落して死んでしまいます。

永遠の少年は、基本的に「死」に近いところにいて、亡くなるケースもままあります。

11)永遠の少年は、外からは若さ、強さ、美しさ、可能性、創造性、能力にあふれているように見えます。だからといって、「心」が豊かであったり、柔軟であったりするわけではありません。

なぜなら、永遠の少年の基本的特性は、「個人的な心、あるいは自分自身のもの」ではなく、個人的な心を超えた「元型」の働きだからです。そのため、能力や才能を持っていたとしても、当人は主観的に、死ぬほどの苦悩を抱えていたりします。

12)さて、フォン・フランツやノイマンによると、永遠の少年は、グレートマザー(太母)の「永遠の良い子」です。グレートマザーに対する「最大の裏切り」は、少年の『成長』であり、「大人になる」ことです。

ノイマンの著書には、成長しようとする永遠の少年を、頭から『喰らい、呑み込み』、無にしてしまう(我が子を殺してしまう)凶暴なグレートマザーについて、詳しく述べられています。喰らい、呑み込まれないためには、少年は、『永遠のマザコン』でなければなりません。
(注:なぜ、永遠の少年の成長が、グレートマザーにとっての裏切りなのかについては、セミナーで学びます)

13)「マザコンの永遠の良い子」は、小生意気で、口がうまく、偉そうなことを吹聴します。小ずるくて、行動の伴わない「内弁慶的」NPDです。「モラトリアム人間」の典型です。モラトリアム人間は、ありもしないことを夢見て妄想に耽(ふけ)ることを好み、現実的なことを嫌悪、回避します。

モラトリアムを許容してくれる空間 ~たとえば家庭や学校や飲み屋~ では大威張りですが、社会的空間では「委縮」します。

14)NPDは、6月セミナーで扱ったBPD(境界性パーソナリティ障害)と同様、心が割れている(splitting)点に、特徴があります。しかし、BPDに比べて、NPDの方が、揺らぎが少なく、心が「固定化」されています。その背景に、「自己愛構造体」があるからです。

15)自己愛構造体は、「精神病水準」に落ち(退行し)ないように、また「神経症水準」そして「健康」に向かって成長しないように、『心』を捕え、幽閉し、固めるメカニズムです。自己愛構造体は、心を「理想的でイケてる私」と、「恥ずかしくてミットモナイ私」との2つに割り(split)、自分は「理想的でイケてる『永遠の少年だ』」と思わせます。これは、顕示型自己愛です。

16)一方、自分の側ではなく『あなた』の方が、「理想的でイケてる永遠の少年だ、少年でなければならない」と思い込むのが、隠れ型自己愛です。「恥ずかしくてミットモナイ私」の中に幽閉され、固まっている隠れ型NPDも少なくありません。

17)NPDのインフラ(基盤)は、「自己愛構造体」です。しかしNPDの心は、この基盤に気づくことはできません。それは、魚にとっての水のようだからです。魚が水の存在に気づくことがないように、NPDの心は、基盤としての自己愛構造体を意識化できません。

18)サイコシンセシスのR.アサジオリは、自分が盲目的にハマっている(同一化している)インフラに、人は、捕まり、拘束され、固められ、振り回される、と述べました。この盲目的同一化からの解放と自由(=脱同一化)が、セミナーの重要なテーマの1つです。

問題は、ハマっている「自己愛構造体」や「永遠の少年元型」の中身です。

19)クライン派のH.ローゼンフェルドによると、自己愛構造体は、マフィア、暴力団、無法者、暴走族といったイメージで表されます。一方、永遠の少年は、マフィア、暴力団、無法者、暴走族をテーマとした映画や物語にしばしば登場し、光り輝き、また活躍します。

が、それこそが、永遠の少年の問題です。映画や物語で、永遠の少年は、しばしば死を迎えるからです。イカロスのように。

この点については、セミナーで、ていねいに考えましょう。

20)永遠の少年を喰らうグレートマザーは、少年の成長を促す「命の働き」を憎み、嫌悪します。成長力や命の力を、羨望することもままあります。人が心理的成長、成熟、変容を遂げるには、グレートマザーとの真摯な取り組みが、欠かせません。

21)さもなければ、永遠の少年性や自己愛構造体に捕らえられた人は、自分の能力、可能性、才能を発揮することができずに、フラストレーションを抱え、半永久的に苦悩することでしょう。そして、肉体は年老いているのに、若さに憑りつかれたその心は、未成熟で、貧弱なまま中高年期、老年期を迎え、心ここにあらずの状態で、ボーッと過ごすことになるでしょう(「チコちゃんに叱られ」かねません)。

22)魔法をかけることのできる魔女は、魔法を解くこともできます。セミナーでは、フォン・フランツ(魔女)とクライン(小さな黒い猫)との出会い、じゃれ合い、遊びを通して、永遠の少年および自己愛構造体と、まっすぐに取り組みます。

23)あなたは、青年期はもちろん、中高年期、老年期の内面に住み着き、心の真の成長、成熟、命の活性化を阻む「永遠の少年」×「自己愛構造体」との取り組みに、関心がありますか?

このセミナーは、可能性や命の開花、成長、成熟、変容に興味のあるあなたに、有益な内容です。

24)セラピスト、コーチ、コンサルタント、アドバイザー、ケースワーカー、ナース、医師、保健師、ボディワーカー、弁護士、教育関係者の方、一般の方、初心者の方のご参加をお待ちしています。

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日時■ 2023年7月30日(日)10:00~17:00

会場■ zoomオンライン会議(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)

費用■ メールマガジンにてご案内しております。

講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子