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トランスパーソナル療法と関係療法をつなぐ鍵|2018/06/24

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1)トランスパーソナル療法は、素晴らしい可能性を秘めているのに、なぜ、今一つ実践では有効でないのでしょうか?

その一方で、関係療法は、とても実践的で、臨床上有益なのですが、この関係の営みに、トランスパーソナル的な深みを浸透させるには、どうすればいいでしょうか?

その二つの問いは、私たちの長年の課題でした。このセミナーでは、この二つを総合した心理慮法の可能性と実際について、わかりやすく具体的にあなたにお伝えします。

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トランスパーソナル心理療法の神髄(エッセンス) ~メタスキルとトランスパーソナルな意志~|2018/05/27(日)

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1)今回、ミンデル博士夫妻の来日を記念して、3年ぶりに「メタスキル(meta-skill)」を取り上げます。

メタスキルは、プロセスワークが発見した対人援助職における最も良質なアート(技芸)です。セラピストやコーチ、コンサルタントなどの技の背後で、クライエントに提供する具体的な技術に影響を与え、技術以上にクライエントに影響を及ぼす、セラピストの姿勢、信念、ビジョンや、人間観、世界観のことです。

2)一方、このメタスキルを、トランスパーソナル指向の対人援助において、より実践に活かすための重要な概念に、「トランスパーソナル・ウィル(意志)」があります。この「トランスパーソナルな意志」は、サイコシンセシスの創始者、ロベルト・アサジオリによって考案された、スピリチュアル次元における、技芸と実践のための、エッセンスです。

今回のセミナーでは、この2つに加え、さらに、トランスパーソナル心理療法の代表的臨床家、フランシス・ヴォーンが提示した「トランスパーソナルな信念」を総合し、トランスパーソナル心理療法の神髄(エッセンス)について、丁寧にお伝えしていきます。

3)F. ヴォーンは、述べています。「トランスパーソナルと他の心理療法を分かつものは、技法(テクニック、スキル)や手法、道具ではなく、パラダイム、コンテキスト、パースペクティブである」と。

4)たとえば、クライエントの人がスピリチュアリティに関する話を無意識に始めたり、スピリチュアルな次元のプロセスをふと開示させたとしましょう。そのとき、スピリチュアリティに関する妥当性や基準を仮説として抱いているトランスパーソナル・セラピストは、その話やプロセスを取り上げ、意識化をうながし、真摯に向き合うことを試みます。

一方、エディプス・コンプレックスの見方を採用する精神分析的心理療法家は、その話やプロセスをまっすぐに受容せず、退行的なプロセスとして解釈するでしょう。

5)なぜでしょうか?

人間や世界に対する見方や信念、仮説が異なるからです。トランスパーソナル心理学は、人間をスピリチュアルな存在ととらえます。一方、古典的精神分析は、強い自我を持つことを、セラピーの目標と考えてきました。

6)F.ヴォーンによると、人は、~意識しているかいないかにかかわらず~ 自分が心に抱いている人間観や世界観、信念や理念に沿ったパラダイムやコンテキスト、仮説を、内面に潜在させているといいます。

7)セラピストの内的な信念は、セラピーのあらゆる場面で、目に見えない形で、無意識に表現されている / 表現されてしまうのですが、目に見えない信念を意識化し、磨き、変容させ、道具や手段やスキル(技術)として活用できるようにしたものを「メタスキル(メタ技術)」と言います。プロセスワークでは、スキルの背後にあるこのメタスキルを、セラピストが意識し、十二分に活用できるようになることを大切にします。

8)セラピストの内的な信念、理念、ヴィジョンや仮説は、具体的には、どのように表現されるのでしょうか? それは、目に見えないものだったのではないでしょうか?

9)ミンデル夫妻は、ある時期、(グレゴリー・ベイトソンが最晩年を過ごした)カリフォルニア・ビッグサーにあるエサレン研究所に招聘され、長期滞在しながら、プロセスワーク・セミナーを提供しました。詳しくは、『うしろ向きに馬に乗る』(春秋社)を参照してください。

エサレンは、ゲシュタルト・セラピーのメッカの1つです。ミンデルたちは、そこでゲシュタルト療法に、はじめて触れたそうです。

10)ゲシュタルト療法の創始者、フリッツ・パールズと、エサレンで最も慕われ、リスペクトさていたディック・プライス。ふたりの著名なゲシュタルト・セラピストのセッションを、ビデオで繰り返し見たところ、次のような驚くべき発見をしたといいます。

2人のセラピーは、まったく違う!
同じゲシュタルト派のセラピーを行っているのに。

詳細に見ると、2人が使っているセラピーのテクニックやスキル、道具、セラピーの手順は、酷似している。にもかかわらず、そのセラピーがとても違って見えるのは、なぜなのだろう? なにが異なるのだろう?

11)パールズは、対決や直面化や指示することを好む。一方、プライスは、よりオープンで、穏やかで、受容的。

12)「そうか!」

手法、手順、使う道具 ~ゲシュタルト療法では「椅子」をセラピーの道具としてよく使います~ の違いではなく、その背後に潜む、目に見えない、セラピストの想い、哲学、考え方、信念、理念などに、違いがあるのではないだろうか、という気づき・ひらめきを、このとき、ミンデル夫妻は抱いたのです。

13)パールズは、人間性&実存主義心理学の王道を行くセラピストでした。一方、プライスは、ビパサナー瞑想を好む、トランスパーソナルなセラピストだったのです。2人は、人間観、生死観などにおいて、異なる信念、哲学、理念を持っていました。その2人が、同じ学派(ゲシュタルト療法)の道具や手法、手順を採用していたのです。技術からすると、2人は同じ流派に属していたのですが、信念や世界観、哲学からすると、違う学派だったのです。

13)ミンデルたちは、技術や手法からでなく、想い、理念、信念、ヴィジョン、死生観などから心理療法をとらえ直す重要性を強調します。セラピストの生死観、理念、哲学などから心理療法を学ぶことを、「セカンド・トレーニング(第二の訓練)」と呼んでいます。今回、セカンド・トレーニングの視座を大事にして、セミナーを開催します。

14)今回のセミナーでは、メタスキルと、トランスパーソナルな意志および信念を総合し、トランスパーソナル心理療法の最良のエッセンスを身につける取り組みを行います。今回の内容はまた、トランスパーソナル心理療法だけでなく、あらゆる流派の心理療法の基礎となるものであり、有益です。

セラピストやコーチ、コンサルタントなど援助職の方で、ご自身の援助のスタイル、理念や信念、構えや姿勢を、あなたの具体的な技術とともに、役立てていきたい、と思われる方にも、役立てていただけます。皆様のご参加を、お待ちしています。

初心者の方、一般の方のご参加も、心から歓迎いたします。

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日時■ 2018年5月27日(日)10:00~17:00

会場■ 東京都内(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)

費用■ メールマガジンにてご案内しております。

講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子

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メンタライゼーションと心の癒し ~心理療法の最先端、基本、そして古典から学ぶ~|2018/04/15(日)

1)4月のセミナーでは、「メンタライゼーション」をメインに、心の癒しについてとり組みます。

あなたは、「メンタライゼーション」という言葉、概念をご存知でしょうか。メンタライゼーションは、最も新しい、しかし同時に古典でもある心理療法の基礎概念です。精神分析、愛着理論、認知療法、対人関係療法、クライエント中心療法・・・など、あらゆる心理療法やコーチングに貫かれた、対人援助のエッセンスです。

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外的コンテキストとマネジメント ~あなたのカウンセリングを現場で活かす リレーション力、コミュニケーション力、リノベーション力~|2018/03/21(日)

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1)カウンセリング、心理療法、コーチングをコツコツまじめに、誠実に学んでいれば、それらを、現場で実際に役立てることができるようになるのでしょうか?

かつて、私たちはそう思っていました。

が、それほど単純ではありませんでした。

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コンテイナーと治療構造 ~心の変容をうながす「内的容器(インキュベーター)」と「外的治療構造」作り~|2018/02/25(日)

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1)今から約30年前、私たちがユング心理学や精神分析に魅かれた最大の理由に、心の質的変化、つまり変容や成熟を可能にする心理学、という点がありました。

しかし、なぜその2つが、変容や成熟を促せるのか、その秘訣を見出すのに必死だったことを、昨日のことのように覚えています。

心の質的変化、変容や成熟のために不可欠なもの、それが今回のセミナーで扱う、「コンテイナー(心の容器)」であり、それをプロテクトする、「外的な治療構造」です。

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井筒俊彦とW.ビオンに学ぶ深層関係療法

◎ 2018年3月23日(金)〜 全10回
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1)井筒俊彦氏は、日本を代表する、哲学的神秘主義者です。『コーラン』(岩波書店)の訳者であり、禅やタオイズム(道教)、西洋神秘思想などに深く通じているだけでなく、ユング派の誰もが尊敬するほど、深層心理学への造詣の深さでも、定評があります。

2)一方のウィルフレッド・ビオンは、メラニー・クラインの対象関係論に端を発し、そこに、自らの苦難に満ちた人生と、統合失調症や戦争のトラウマ、パーソナリティ障害といった方々とのかかわりを重ねて、独自の哲学的・神秘主義的な精神分析的関係理論を展開した人です。ビオンの実践は、危機状態にあるこころに対し、とても実践的で、有益な癒しや変容を喚起する心理療法を提供しています。

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コンステレーションと個人神話|2018/01/28(日)

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1)あなたは、「コンステレーション」という言葉を聞いたことがありますか?

コンステレーションは、ユング派心理臨床の最良の視座であり、切り口です。それは、ユング心理学における「秘伝」といえるものです。今回、久しぶりに、コンステレーションをテーマに、セミナーを開催します。最新の有益な見解や情報をとり入れ、基本から多面的に学びます!

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ケース(事例/症例)を通して、病態水準を内側から身に着けよう

◎ 2018年1月11日(木)〜 全10回 対面開催
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1)カウンセリングやコーチングなどの援助職において、プロの技とアマチュアを分ける、もっとも重要なポイントは何か、あなたはご存知でしょうか。 もっとも大切な、最初の鍵は、「病態水準を見分けること」です。 

2)目の前のクライエントさんの語る恐怖が、「精神病水準」から生じているのか、それとも「パーソナリティ障害水準」の恐ろしさなのか。 抱える不安が、「神経症水準」の落ち着かなさなのか、それとも他の病態水準によるものなのか。 あなたは、見分けることができるでしょうか。

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うつの徹底理解と対応 ~単極うつと双極うつ、愛着とうつ、自己愛の傷つきとうつ、パーソナリティ障害とうつ、健康なうつ、中高年期のうつ、悲哀とうつ、トランスパーソナルとうつをめぐって~|2017/12/23(土)&24(日)

◎ 2日間開催
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1)私たちがうつに本格的に関心を抱いたのは、いまから数十年前のことでした。ユング派のジェームズ・ヒルマンによって創始された元型心理学が、うつを、心理学のパラダイムやパースペクティブ(=よって立つ観点)にしていたり、うつをギフト(gift、贈り物)、癒し力(healing power)、アート(art)などととらえていることを知り、その発想に大変驚き、魅かれたのがきっかけです。

2)それまで、うつは、医療によって治療されるべきもの、と早計していました。河合隼雄氏は、うつには自殺・自死が伴いやすく、基本的に、カウンセラーが関わる領域ではない、と書籍などで述べていました。

3)にもかかわらず、河合氏の属するユング心理学の元型学派はうつを積極的にとりあげ、うつに能動的に取り組んでいたのです。それも、彼・彼女ら独特のやりかたで。なぜでしょうか?   それは、どういったことを意味するのでしょうか?

4)元型心理学は、うつは、治すべきものではなく、パラダイムやパースペクティブだと言います。???   それは、発想、視座の大転換を意味します。

5)治されるものとしてのうつは、精神医学の「内容」物です、一方、パラダイムやパースペクティブとは、さまざまな内容物を内に抱える、「コンテキスト(文脈)」ないしは「フレーム(枠組み)」です。元型心理学は、うつを、「内容」物から、何と、「コンテキスト」や「フレーム」へと、大転換させてしまったのです!(注:詳しくは、セミナーで学びます。元型心理学の洗練されたパースペクティブに、感動されると思います)

6)それでは、元型心理学が提唱する「コンテキストとしてのうつ」、「うつのパースペクティブ」とは、何でしょうか?   ここで一言だけ述べると、「深み」です。元型心理学は、心理学に深みを持ち込み、深みという視座から、うつを見直し(re-visioning)、夢、症状、悩み問題、訴えを聴くようになったのです。

7)そのアプローチは、ユング心理学、プロセスワーク、トランスパーソナル心理学に近いところもありますが、決定的な違いもあります。その相違は、ほんのわずかなもののように映ります。が、実際のカウンセリングにおいては、大きな、また質的差異を生みます。このセミナーでは、ユング心理学、プロセスワーク、トランスパーソナル心理学のうつの捉え方と、元型心理学のうつのパラダイムとの違いを明確にお伝えし、うつや躁うつに関して、多次元的、多面的に理解していきます。

8)元型心理学のアプローチは、(心理)錬金術の影響を包含しています。錬金術は、うつを、人間の自己実現・個性化プロセスの、第一段階(ニグレド、黒化)の開始、ととらえます.ニグレド、それは、何を意味するのでしょうか?   (注:ちなみに、自己実現・個性化の過程に不可避の、ニグレド的うつプロセスに参与するのは、容易ではありません。それは、「魂」の成熟が始まった印と言えますが、ニグレド的うつプロセスに加わるために、何年、何十年をも必要とする場合が、少なくありません。特に、永遠の少年・少女タイプの人にとっては、困難です)

9)ニグレド的うつは、魂の成熟、あるいは自己実現・個性化過程の開始を意味します(注:ニグレド的うつの、その他の重要な意味に関しては、セミナーを楽しみにしてください)。うつが、(心理)錬金術や元型心理学的に見直されると、それは、決して病的なものではないことがわかります。

10)メラニー・クラインが提唱した、「抑うつポジション」にまつわるうつも、マイナスなものではなく、むしろ健康・健全なうつです。それは、自我の成熟を意味します(注:うつには、「魂」の成熟を指標するものと、「自我」の成熟のしるしとなるものがあります。その違い、および抑うつポジションについては、セミナーで学びます)。

11)ニグレド的うつ、抑うつポジション的うつは、共に病的なものではありません。むしろ、健康で、深みがあり、成熟に向けたものです。にもかかわらず、うつに変わりはなく、経験としては、大変困難なプロセスです。では、どうすれは、ニグレド的うつ、および抑うつポジション的うつを応援できるのでしょうか?   また、そのプロセスを、安全にやり遂げるには、どのような工夫や仕掛けが不可欠でしょうか?   ご一緒に学びませんか!

12)(私たちが準拠してきた)プロセスワーク、トランスパーソナル心理学、各種人間性心理学は、躁うつ(双極性障害)の認識に、弱いところがあります。弱いと述べたのは、躁うつを見抜く明確な視点を持ち合わせていない、という意味です。いわゆるうつは、単極(一極)のうつであるのに対し、躁うつのうつは、双極(二極)の(中の)うつです。その二つに対する心理学的アプローチは、相当違い、場合によっては、真逆のこともあります。

13)過去5年の間に、NHKで、日本うつ病学会理事長で防衛医大教授の野村総一郎氏が、複数回にわたって、うつと躁うつの違い、またそれら双方に対する治療~特にクスリ~の相違について明確に述べたのをあなたは、ご存知でしょうか?   それに関して、心理カウンセラーやセラピスト、コーチは、絶対に学んでおくべきです。なぜなら、医療だけでなく、心理療法やコーチング、ファシリテーションにおいても、うつと躁うつ(のうつ)に対するアプローチを、変える必要があるためです。うつや躁うつは、心の訴えの中でも、死に最も近いところがあります。その点を踏まえて、謙虚に、誠実にうつや躁うつについて学び、とり組む必要があります。

14)先ほど、述べた躁うつへの見方に弱いところがあると、どういったマイナス面、副作用が伴うでしょうか?   一点だけ簡略に述べます。それは、躁うつの「躁」や、躁的防衛の「躁」を、プラス(肯定的)なプロセスと誤解・誤読してしまう点です。精神科医の笠原嘉氏と木村敏氏は、躁うつの「躁」を、「うつ」が一段悪化したもの、と考えています。私たちは、その見方を、参照し、大事にしています。躁うつは、うつよりも、自死が多い心の訴え、という専門家もいます。今回、あなたとご一緒に、「躁」についても、基本から学びたいと考えています。15)さて、今までのうつの治療法では良くならない現代型うつが紹介されて、随分時がたちました。現代型うつの癒しがなぜ困難なのか、という要因の一つに、それが、自己愛の傷つきや、各種パーソナリティ障害と関わっている点があげられます。パーソナリティ障害とうつの関係についても、学ぶ必要があります。その基本と、最前線に関しても、お伝えしたいと考えています。

16)うつは、大切な人を失った時、(若さを喪失する)中高年期、死が明確に意識される老年期に、(潜在的な)悲哀と共に、早晩必ずやってくるプロセスでもあります。それらは、上に述べた魂の成熟と、自我の成熟の両方に関わる危機の時期でもあります。危機とは、「危」険 + 好「機」です。危険を意識し、どう回避す るのか、また好機 をいかにものにするか、が問われる時です。物語や事例を参考に、うつと、魂および自我の成熟についても、取り組みたいと考えています。

このセミナーでは 、うつの多次元性や多様性にご関心のあるプロ・カウンセラー、セラピスト、コーチ、ファシリテーターなどの対人援助職の方、また、そうした領域でのプロをめざす方の、
ご参加を心からお待ちしています。初心者の方、一般の方のご参加も、心から歓迎いたします。

* * * * *

日時■ 2022年12月23日(土)&24日(日)10:00~17:00

会場■ 都内(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)

費用■ メールマガジンにてご案内しております。

講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子

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愛着とカウンセリング ~心理療法の最前線~|2017/11/26(日)

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1)関係療法や家族療法の中で、この十数年、脳科学などと共に、最も話題になってきているテーマの1つに「愛着」があります。今回、愛着について、マンスリーセミナーで、はじめてとりあげますあなたは、愛着が、心理療法の中で、大変重要視されるようになっていることを、ご存知でしょうか?   各種の重篤なパーソナリティ障害、精神病水準、依存症、共依存、虐待、発達障害、家族における心の負の世代間伝達などの理解に、愛着は欠かせない視点となってきています。今回のセミナーでは、その基本と、最先端の一端を、心理セラピーとの観点から、わかりやすく、実践に役立てることを意図して、お伝えします。

2)「愛着」や「近接」と訳される英語の”attachment(アタッチメント)”は、「付着」や「取りつけ」などとも訳されます。Attachmentには、小さなものあるいは付属のものを、大きいものまたは本体に、取りつける,くっつける,張りつける、という意味もあります。心理療法の文脈で言うと、乳幼児や子どもが、親や重要な他者、大人に、取りつく、くっつく、張りつく、付着する、近接する、と言えるかと思います。

3)愛着は、仏教では、対象(人や動物やもの)を追い求めることで、否定的にとらえられます。一方、乳幼児観察の視点からすると、それは、単に後追いを指します。動物・比較行動学のコンラート・ローレンツは、「刷り込み(imprinting、インプリンティング)」について、論じましたが、それは、愛着理解に参考になります。たとえば、カモなどの鳥に、卵から孵化した後、一定時間内に人や動物、あるいは物体を見せて追尾させると、その鳥は一生それを後追いするようになります。ローレンツの研究室には、実際、彼を親鳥と勘違いし、大人になった後も追尾するカモがいました。それでは、なぜ、動物や人間は、後追いし、付着、近接、愛着するのでしょうか?

4)心理療法的には、愛着が、安全感・安心感を得ること・維持すること・回復することを、可能にするから、と説明できます。愛着理論や関係療法からすると、愛着は、食事や睡眠や生殖と同じように生存に必要で、生涯にわたって私たち一人ひとりの情緒や思考や行動に、多大な影響を与えるものです。それは、他人との肯定的な関係が、空気や酸素と同様、私たちが生きていく上で不可欠なもの、と考えたハインツ・コフートの自己心理学や、大乗仏教の縁起の考え方と同様、関係性を前面に打ち出した視点です。その視座は、性欲求や攻撃性のような本能、あるいはドリーミングといった本質的なものが個人の内面にあって、それが、あなたや私の人生を規定する、と考える、1人心理学的見方とは異なります。このセミナーでは、本質と環境、また個人と関係の違いをわかりやすくご説明しながら、心理療法における愛着の役割、重要性、意味について考えます。

5)次に、愛着と心理療法に関する3人の代表的論客の見解を見てみましょう。ジョン・ボウルビィは、愛着を、「人(たとえば、子ども)が、危機的状況にあるとき、あるいは、そうした危機状態を予測し、恐れや不安などの感情が喚起されるときに、自分にとって大切・重要な人に物理的・実際に近づくことを通して、「安全感」を獲得・回復・維持しようとする試み」と考えました。アラン・ショアーによると、それは、「個人の情緒・情動の崩れを、関係性によって制御するシステム」です。一方、ピーター・フォナギーは、「恐れ、おびえ、不安のようなネガティブな感情を、子どもに耐えられる形にやわらげ、適切に映し出す・照らし返すこと」、また、「映し返しを通じて、子どもが、自分および他者の心の状態を、オープンに・柔軟に・まっすぐに理解する能力を、あますところなく発達させることができるように応援すること」を、愛着機能、と考えました。(注:フォナギーの愛着の視点には、コフート、ウイニコット、ビオンなどの影響が、多々見られます。それは、愛着理論と関係療法の統合と言えます。今回のセミナーで、ご一緒に考えませんか?   )

6)それでは、生涯にわたって私たち一人ひとりの情緒や思考や行動に影響を与える愛着に、もし(決定的な)問題が生じたなら、どのようなことが起きるでしょうか?   たとえば、接近と回避という首尾一貫性のない行動をとるようになるかもしれません。顔をそむけながら、しがみつく、といった相反的な行動を、愛着理論は、「無秩序・無方向型」、と命名しました。それは、グレゴリー・ベイトソンのダブルバインド的行動様式です。元来両立するはずのない真逆の愛着行為を(同時に)する子どもには、虐待が疑われる、と考えられています。また、無秩序・無方向型と重いパーソナリティ障害の関係についても理解が進んでいます。

7)愛着は、子どもとのカウンセリングにはもちろん、大人との心理療法やコーチング、ファシリテーションにも、不可欠な視点となっています。それは、重篤なパーソナリティ障害、依存症、共依存、DV、心の負のテーマの家族における世代間連鎖などに対して、緻密で精妙な視座を与えてくれるからです。

8)愛着理論は、実証的観察をベースとした古典的科学の王道から生まれています。一方、従来の臨床心理学の多く~特に深層心理学やトランスパーソナル心理学~は、イマジネーションやファンタジーやメタファーの読みや解釈、また、新たなナラティブ(物語)の紡ぎ出しを手段とするアート的な側面を、色濃く打ち出してきました。

9)その2つは元来相いれず敵対的です。しかし、実際の問題や悩み、症状で痛み、苦しみ、困難さを抱えているクライエントの人と、現場で関わっている実務・実践家が、その両方を、存分に活用しない手は、ありません。

10)心理療法やコーチング、ファシリテーションにおいて、アートと科学を統合的に活かすことを最初に、全面的・本格的に提唱したのが、トランスパーソナルのケン・ウイルバーでした。愛着に関するアートと科学の統合は、今日、ダニエル・スターン、フィリップ・ブロンバーグ、ピーター・フォナギー、ジェームズ・マスターソンらの関係精神分析の中で、実現されています。

11)愛着は、言語以前の発達段階で形成されます。そのため、言語とは違う手段による心理セラピーが、有益です。たとえば、ウイニコットのスクイグルやアートセラピー。たとえば、ボディワーク的セラピー。たとえば、瞑想的セラピー。それらを関係療法に組み入れた愛着と取り組みについても、今回、お伝えします。

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日時■ 2017年11月26日(日)10:00~17:00

会場■ 都内(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)

費用■ メールマガジンにてご案内しております。

講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子