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1)今回は、私たちの心や生き方、人間関係に、暗く重く、暗夜のように影を落とす苦悩、M.クラインの「羨望」について、取り上げます。クラインの「羨望」に加え、「嫉妬」や羨(ねた)み、嫉(そね)み、H.コフートの「自己愛憤怒」、さらに関連してM.ボーエンの「三角関係化」について、総合的にアプローチする予定です。それは、親しい人との関係性において、私たちの手足を縛り、自由を奪ってきます。私たちの尊厳や主体性にダメージを及ぼし、人生と人間関係の可能性をくじいてくるものです。
2)羨望は、私たちの人生を台無しにするほど、絶大な力をもっています。にもかかわらず、それらとどう取り組み、対処するといいか、わからず困惑し、苦しんでいる人は少なくありませんセミナーではこうしたダークな感情に、正面から光を当てます。セラピー、コーチング、コンサルティングを行ううえで、理解しておくべき必須の感情です。
3)私たちは、「羨望(envy)」についてはじめて触れたとき、大変驚きました。なぜなら、羨望が「嫉妬(jealousy)」と質的に異なることを、それまで知らなかったからです。嫉妬は、たとえば、あなたの恋人を奪おうとする『悪い』相手に向けられる攻撃的感情です。それに対して羨望は、『良い』相手に向けられる憎悪や敵意です。どういうことでしょうか?
4)たとえば、”白雪姫”の母親は、白雪姫に《羨望》しています。なぜなら白雪姫が「良い存在」だからです。一方、”シンデレラ”の母や姉たちは、シンデレラに羨望していません。《嫉妬》しています。
5)嫉妬の相手(シンデレラ)は、”Bad-Me(悪い私)”です。これは、C.G.ユングやK.ウイルバーの「シャドウ(影)」に該当するでしょう。一方、羨望の相手(白雪姫)は、”Not-Me(わたしでない私)”で、こちらは、ユングやウイルバーの想定していなかったシャドウです。それは『未知の私』です。詳細は、セミナーでお伝えします。
6)さて、乳幼児を育てる母親は、誰もが、幼い子どもの要求に応えきれず、必ず壁 / 限界に当たります。人間ですから、限界があって当然です。しかし母親のその限界は、未熟な子どもに欲求不満や憤怒をもたらします。欲求不満があまりに強烈な場合、不満や怒りに耐えられない子どもは、愛する母親を破壊しようとします。「良いもの」を破壊しようとする。ここに「羨望」が介在します。どういうことでしょうか?
7)自分の限界のない甘え欲求を、母親に適切に受容(コンテイン)してもらえないと、子どもは傷つき、憤怒し、羨望を生じさせるのです。それだけでなく、羨望は、母親にまるごと依存したい子ども自身の《甘え/つながり欲求》をも破壊します。この背景には、「過酷な超自我」と「破壊的で万能的、そして孤高で尊大な自己イメージ」が、浮上します。そのとき子どもは、母親を「憎んでいるのか」それとも「愛しているのか」識別できなくなるといいます。
8)これは『重いパーソナリティ障害』の深層に潜むメカニズムです。見捨てれられ不安が中核にある境界性パーソナリティ障害よりも《重篤な》、「自己愛構造体」「隠れ自己愛」「過剰適応」「依存症」などの核心にある深層メカニズムです。
9)クラインによると、羨望の中核には「死の本能」や「破壊衝動」があります。羨望は、「精神病」水準の欲動です。羨望について学ぶことで、あなたは、精神病水準、重いパーソナリティ障害の深層、解離と背中合わせにあるプロセスについて、よく理解できるようになるでしょう。
10)人間関係のベースには、相手の「良きもの」への確信や信頼が必要です。その確信や信頼を根本から揺らし、破滅させるものが羨望です。
11)が、それだけに留まりません。羨望は、自分の”内なる”「良きもの」、そして自分自身への信頼(すなわち「自信」)を解体します。だから「自分の良さ」が育ちません。「自信」も持てません。A.マズローのいう自己の実現が、進展しません。羨望=死の本能&破壊衝動が、自分の人生、命、潜在可能性に代わって、内なる玉座を奪い取っているからです。
12)もう1つ問題があります。それは、セラピスト、コーチ、ケースワーカー、コンサルタント、弁護士、教員、医師、ナース、ボディ・ワーカーなど対人援助職への羨望です。羨望のテーマを抱えるクライエントは、自分の「味方」である対人援助職が、『良い』仕事をすることを嫌悪します。その点を知らない善意の対人援助職は、クライエントの利益となる良い仕事に対して、なぜクライエントから敵意を向けられるのか、わからず混乱します。あなたが対人援助を行っているのであれば、あなたを混乱させるこの難題について、ぜひ学んでください。
13)加えて、さらなる大問題があります。それは、対人援助職側が、クライエントの良い面の実現に、羨望することです。クライエントの成長、成功、癒しに羨望するセラピスト、コーチ、教員、コンサルタント、弁護士、ボディ・ワーカーなどは、少なくありません。とても恐ろしいことです。それは、対人援助職が、自分自身の羨望のテーマと、真摯に向き合っていないためです。
15)さて、羨望についての理解は、家族療法家M.ボーエンが提唱した、家族の「三角関係化」を考えるうえで、重要なヒントを提供してくれます。「三角関係化」とは、家族のうちの2人の関係が不安定なときに、3番目の人物を巻き込むことで、安定をはかる、というあり方です。たとえば、父と母の夫婦仲がよくないとき、どちらかがひとりの子を味方につけ、「三角関係」を作ることで、仲の悪さを露呈させずにいられる、といったことです。ひとりの子どもの問題行動に取り組むことで、あたかも夫婦の二者関係が安定したように見える、といったこともあります。似たような構図は、学校や職場などで生じる「いじめ」にも、よく見られます。羨望や嫉妬が、三角関係化にどのように関係しているか、ご一緒に考えたいと思います。
16)もうひとつ、羨望がからむ人間関係のダークな感情に関するテーマに、「自己愛憤怒」があります。プライドが傷つけられたり、顔に泥を塗られたり、体面を失ったり、といった自己愛のトラウマを経験すると、相手を「破壊」するまでおさまらない。このとき噴出するのが、「自己愛憤怒」です。セミナーでは、羨望との関連で自己愛憤怒の理解も深めていきます。
17)一方で、スポーツやゲームで、勝敗が決まればそこで終わる「攻撃性」は、羨望と違って『健康』なものです。ライバルに対する「嫉妬」によって、自分を奮起させ、力量を増すために励む場合、これも『健全』です。精神分析医O.カーンバーグは、羨望が癒え改善すると、嫉妬に変化すると述べています。
18)羨望、嫉妬、嫉み、三角関係化、自己愛憤怒、恥トラウマは、やっかいで取り扱いが困難な感情です。私たちは、それらを避け、ごまかそうとしがちです。しかし、ビジネス、組織、家族などの関係において、こうした負荷の高い情緒に、巻き込まれ、遭遇しないでいることもまた、不可能です。なぜ、私たちの関係に「羨望」といったやっかいな情緒体験が生じてしまうのか。それを取り扱い、愛ある人生と人間関係へと変容させるには、どうしたらいいのか。今回、じっくりと学び、理解していきます。
19)セミナーでは、羨望、嫉妬、嫉み、三角関係化、自己愛憤怒、恥トラウマの「内実」について、光を当てて見える化します。さらに羨望、嫉妬、嫉み、三角関係化による心の傷の癒し、回復、変化、成熟についても取り組みます。
21)今回「関係性の暗夜(Dark Night of the Relationship):”羨望”の徹底理解~愛ある人生と人間関係のために~」について学びます。セラピスト、コーチ、ボディワーカー、ケースワーカー、コンサルタント、医師、看護師、その他の医療関係者、弁護士、税理士、教師、ファミリービジネスの専門家に、お勧めの内容です。このテーマにご関心のある一般の方、初心者の方のご参加も大歓迎です。
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日時■ 2025年4月27日(日)10:00~17:00
会場■ zoomオンライン会議(お申し込みいただいた方に詳細をお伝えします)
費用■ メールマガジンにてご案内しております。
講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子