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『私』と『内なる私』、『私』と『他者』の “あいだ” の孤独 ~スキゾイド性パーソナリティ障害の深奥~|2025/09/28(日)

◎ オンライン開催
◎ 配布資料+音声データをご購入いただけます

1)今月のセミナーでは、「スキゾイド性パーソナリティ障害(Schizoid Personality Disorder:SPD)」をとりあげます。

パーソナリティ障害と聞くと、感情の上がり下がりの激しい「自己愛性パーソナリティ障害(NPD)」や「境界性パーソナリティ障害(BPD)」を思い浮かべるかもしれません。SPDはその2つと違って、感情の起伏は少なく、落ち着いて見えるので、パーソナリティ障害に思えません。

しかし、SPDのために苦悩し、生きづらさを抱えている人は少なくありません。今回のセミナーで、SPDについて理解を深めていただくと、SPDは、部分的には “誰も” が抱えている側面であることがわかります。

それに合点がいくと、私たちの生活の質(QOL)は向上し、生きにくさの理由に合点がゆき、自由と開放感を味わことができるでしょう。クライエント支援に、役立てていただけるでしょう。

2)SPDは喜怒哀楽感情を表さないため、周囲には心が平板で冷たく他者に無関心の人といった印象を与えます。深層には「情熱」を秘めているのですが、自分でも気づかなかったり、うまく表現できなかったりします。セミナーでは、SPDの(a)心の内的構造、対人関係の青写真、魂と、(b)外的 / 実際の人間関係、仕事や生活との関係について初歩から学びます。

3)まず語源から考えてみましょう。”schizoid(スキゾイド)” は、「分裂する」や「切り離す」を意味します。SPDのどこに、分裂や切り離しがあるのでしょう?ひとつは、情緒的分離です。情緒へのアクセスが苦手で、「自分の感情が分からない」「何も感じない」となりがちです。ふたつめは、社会的孤立です。他者と深くかかわることに恐怖や拒否感を抱き、近しさを回避するために、孤独を選択します。そして3つめは、外界と内界の断絶です。外界との接触が希薄で、内的空想世界や自己完結的な思考に没頭し、引きこもります。それとは正反対に、内面を切り離し、魂を遺棄(neglect)するケースもあります。4つめは、精神と身体の分離です。自分の身体の実感が薄く、身体のニーズ(空腹、疲労、性欲)や痛みに鈍感です。「お腹がすいたかどうかわからない」「体が疲れているのに気づかない」「いつの間にか慢性的腰痛になっていた」となりがちです。最後の5つめが、自我 / 主体の分裂です。SPDの自我や主体は、分裂しています。それは自己断絶です。分裂 / 断絶の度合いや深さによって、SPDの重篤さが変わります。

4) “スキゾ” イド性パーソナリティ障害では、対人関係、情緒、身体との結びつきが希薄ですが、”スキゾ” フレニア(統合失調症)とは違って、「現実検討能力」は保持されています。対人関係、情緒、身体から切り離されているSPDには、”関係性”、”情緒”、”身体” を『統合』したセラピーが有益です。統合的セラピーについては、セミナーでお伝えします。

5) 『永遠の少年』の著者として知られるユング派の分析家でA.ミンデルの教育分析家であったフォン・フランツ博士によると、永遠の少年にはSPDが少なくありません。永遠の少年は、母親(グレートマザー)の夢を自分の理想と勘違いし、それを叶えるべく無理をして “高み” を目指します。しかしその母親は、彼が成長して「自分になる」のを決して許しません。永遠の少年は、母の過干渉や、彼女に呑み込まれる恐怖に脅えます。高みを飛びまわることを希求し、何にも、誰にもコミットしません。地に足を下ろすことを忌避します。装った見かけのカッコよさの背後に、激しい孤独感、空虚感、絶望を抱えています。そのありようは、SPDに酷似しています。(注:このセミナーは、「永遠の少年」に、ご関心のある方にもお勧めです)

6) SPDの苦しみには、「つながりたいのに、つながるのが怖い」という内面での分裂した想いが関連しています。孤独を好むように見えますが、深い孤立感に苦しみます。感情に一喜一憂しません、しかし感情のわからなさ、感じられなさに、さいなまれます。ふと訪れる激しい感情に、圧倒されます。外からは安定しているように映りますが、空虚感、生きる実感の乏しさ、退屈感を秘めています。退屈感は精神分析医W.フェアベーンの「無目的 / 無意味の感覚(sense of futility)」に関連します。無目的の感覚については、セミナーで学びましょう。

7) SPDの中核にある苦しさは、「拒絶されることへの恐怖」「拒否され見捨てられる / 見放される不安」に関連しています。それは “繊細な対人関係不安” を、心に生じさせます。それを回避するために、孤独を選択します。(注:ちなみにBPDは「”自分になる” と見捨てられるのではないか、という不安」、NPDは「承認 / 注目されないことへの見捨てられ不安」に脅えます。パーソナリティ障害全般について詳しく理解したい方は、IPPのかつてのセミナーをご参照ください)

8) SPDのクライエントとのセラピーで、セラピストが経験する逆転移に「氷のような冷たさ」「死んでいるような感じ」「八方ふさがり」があります。しかし、”氷” の向こうには「暖かさ」「生命」「情熱」「豊かなイマジネーション」が潜みます。が、SPDのクライエント自身は、暖かさ、生命、情熱、イマジネーションの豊かさを経験できません。「内なる氷」が、邪魔をするからです。

9) SPDと取り組んだ代表的セラピストに、精神分析医のW.フェアベーン、D.ウィニコット、H.ガントリップ、T.オグデン、J.マスターソンがいます。彼らによるとSPDの人は、発達のごく早期の段階で、親に独占される(呑み込まれる)か、あるいは遺棄 / 無視され、「剥奪」と「卑小 / 劣等感」という発達 / 複雑性トラウマを被っているる場合がよくあります。そのトラウマは、親への固着や、依存と回避を生じさせます。それは「病的自己愛」と「内的世界への過大評価」に帰結します。SPDにとって、親は「強烈に引きつけ自分を刺激する」また「拒絶したい」二律背反的存在です。この「拒絶したい」が反転して「拒絶される恐怖」となります。

10) セラピーでは、病的自己愛と内面への過大評価とが取り扱われなければなりません。マスターソンによると、SPDの自己愛は、NPD(自己愛性パーソナリティ障害)の自己愛よりも “肥大化” していて、病的なことが少なくありません。なぜでしょうか?また、内面への過大評価にも、自己愛のテーマが絡んでいると述べます。どういうことでしょう?セミナーでは、SPDをNPD ~特にSPDと誤解されがちな「隠れ自己愛(CNPD)」~ と比較して、理解を深めます。

11) また「真の自己」と「偽りの自己」も重要なテーマです。SPDは他者に呑み込まれ、侵入 / 侵略される恐れと、その他者に拒絶 / 見捨てられる恐れをもっています。その「防衛」が偽りの自己の確立です。偽りの自己は、冷たい態度、感情の乏しさ、空想壁などとセットになっています。その背後には、「真の自己の “痛み”」があります。真の自己の痛みとは何でしょうか? セミナーで、ご一緒に学びましょう。

12) SPDとのセラピーでは、暖かさ、生命、情熱、イマジネーションを産出する「魂」にも、目を向けることが大切です。SPDの魂には、身体の “分裂した” 、半分が人間でもう半分が動物や妖怪である「片子(かたこ)」や、「シャーマン」のテーマの関係していることが、よくあります。深層心理学やトランスパーソナル心理学の知見を参照し、取り組みましょう。心の “氷結部分” に配慮しながらの、ワークが求められます。

13) 私たちの誰もが部分的には、SPD的側面を抱えています。それと取り組むことは、私たちの生活や人間関係を良質にし、開放と自由をもたらします。また、対人援助の質を高めます。

14) 今回「『私』と『内なる私』、『私』と『他者』の “あいだ” の孤独~スキゾイド性パーソナリティ障害の深奥~」にご関心のあるセラピスト、カウンセラー、コーチ、教師、グリーフ・ケアワーカー、コンサルタント、ファミリービジネスの専門家、福祉や医療関係者のご参加を、お待ちしています。このテーマにご関心のある一般の方、初心者の方のご参加も大歓迎です!

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日時■ 2025年9月28日(日)10:00~17:00

会場■ zoomオンライン会議(お申し込みいただいた方に詳細をお伝えします)

費用■ メールマガジンにてご案内しております。

講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子