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『相続』の心理療法・家族療法・関係療法 ~『争続』ではなく、家族の想いを乗せた『想続』にするために~|2025/05/25(日)

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1)いま、50代の人で7割、60代では9割の人が、親の「相続」を経験していると言われます。しかし、2021年に行われた意識調査によると、50代以上の世代で、親の相続に対して積極的にかかわった人は、半数弱しかいない、とのこと。(MUFG相続研究所『現代日本人の相続観』2021年6月より)そもそも相続とは、「受け継ぐこと」「先代に代わって跡目をつぐこと」の意味です。しかし、家族が亡くなった際に法律上必要とされる、「財産や権利を承継する」という「相続手続き」については、親が亡くなって初めて向き合わざるを得ない人、そして、誰かにまかせたり、結果争ったりする人が、いかに多いか、私たちは数十年の臨床で、数々目にしてきました。

2)今年2025年には、団塊世代が、75歳以上の後期高齢者に到達します。相続は、これまでにないほど、大きな社会課題のひとつとなるでしょう。今回は、この「相続」について、心理療法、家族療法、関係療法の立場から取り上げます。心で考え、想い、家族で話し合うことの難しいこのテーマを、まっすぐ取り扱います。

3)なぜ、私たちは、「相続」について取り組むのが難しいのでしょうか。ひとつは、そこに家族の「死」が絡んでいるからです。「死んだ『あと』」にまつわることは、誰もが話題にするのは避けたい、難しい。本音でのコミニケーションや対話を重ねてこなかったファミリーやファミリービジネスは、「いよいよ」という時になり、「尻に火がつく」ようにして、ようやく重い腰をあげる。しかし、そうなってもなお、「相続」について考える、ましてや話し合うことは、本当に難しいものです。

4)精神分析家のウィルフレッド・ビオンは、「考える人のいない考え(thought without a thinker)」という概念を提唱しました。それは「考えられない想いや考え」、あるいは「熟考できない」考え。潜在的には、ある。しかし自分の心で想い描くことのできない、もやもやとした、何か。ビオン派の心理療法では、この「もやもや」を、まずはセラピストの心でとらえ、考え、想ってもらうことから始まります。クライエントは、セラピストとともに言葉を紡ぎ、言葉を与えられ、やがて「自身でも考えられる」ようになり、自分の言葉を獲得していく。すると起きていることがハッキリと見え始め、腑に落ち、納得できる。

5)繰り返しになりますが、「相続」とは、家族が「死んだあと」生じるもの。「考えられることのない考え」であって、当然です。それは回避したい話題です。が早くから準備しておきたい。家族と話し合っておきたい。しかし、家族と言葉でやりとりし、想いを重ねていくのは、至難の業です。心で想う(reverie)のは、辛く苦しい。今回のセミナーでは、この困難なテーマについて、考えることができるようになること、家族とコミュニケーションができるようになること、そのうえで、家族と想いを重ねることができるようになること、を目指します。そのことで「相続」は、家族のバトンをつなぐ「想続」になると考えるからです。(ちなみにビオンは、先月の羨望を扱ったセミナーで取り上げた、メラニー・クラインの訓練分析を受けて分析家になりました。先月セミナーにご関心のある方はお問い合わせください)。

6)するとあなたの家族の相続は、腑に落ちるもの、納得のいくものになります。「考えられない」まま相続を進めると、ただ専門家のアドバイスを鵜呑みにしたり、マニュアルに従ったりしかねません。心が伴わず、話し合いも進みません。そのことで、大切な家族と争う「争続」にもつながりやすくなります。このセミナーは、心で考え、「少しでも」あなたやあなたの家族にフィットする相続について、取り組むものです。「想続」について考えることは、法定上の相続を済ませてしまった人や家族にも、お勧めです。

7)遺産相続は、お金、不動産、株といった〈有形資産〉の承継だけに、限られるものでしょうか?「ウチには大したお金がないから、相続なんて気にしなくて大丈夫」と思うでしょうか?そうではありません。お金の有る無し、多い少ないに関係なく、問題は生じます。相続には、目に見える財産だけでなく、目に見えない感情や、無意識的な対立の側面があるからです。さらに、家族療法的な「マイナスの世代間連鎖」といった〈無形資産〉もかかわります。

8)未解決の親子関係やきょうだい関係のこじれ、心理的な距離感や冷たさ、不信感、価値観の違いが、相続時に、お金にまつわる問題として現れる、といったことがよくあります。お金が少なくても、もめたり争いになることが、あるのです。未完了のままにしていた関係トラブルや心の傷つきが、お金、不動産、株に絡んで、表出するためです。セミナーでは、相続を「想続」にするための「家族会議」についても、具体的にお伝えします。

9)相続は、今後の自分と家族のウェルビーイング(幸福と健康)に大きく関係します。私たちは、目に見える有形資産だけでなく、目に見えない無形資産も、もれなく受け継ぐからです。意識しないうちに、誰もが承継します。無形資産は、「無意識」にかかわることだからです。ユングやフロイトのいうように、無意識には境界線が《なく》、世代を超えて伝心します。マイナスの無形資産は、「家族の業(カルマ)」のようです。

10)たとえ有形資産を公平に分けても、無形資産を放置したままだと、結果的に相続問題が解決しなかったり、「争続」につながったりすることは、よく起こります。たとえば、子どものころからずっと不公平さを感じてきた人が、親の遺産の「平等な」分割に対して異議申し立てをする、といったことがあります。その平等さに、「不当感」を覚えるためです。他のきょうだいよりも、多く相続しないと気がすまない、と感じているからです。「自分は、何十年もの間、親の期待を引き受け、本当にやりたいことをガマンしてきた。だから、平等な分け方は不当だ」と思っていたりするためです。それは、金額の問題ではなく、きょうだいへの長年にわたる不信感の無意識的表現だったりします。こうした事例もご用意し、皆様とご一緒に学んでいきます。

11)私たちは、相続について関心をもち、長年学んできました。多くのクライエントから、相続にまつわる悩みや痛み、怒りや憤り、悲しみ、苦しみを耳にしてきたからです。相続は、本音を述べ「偽りの自分」を止め、「真の自分」になるいい機会となります。真の自分をベースに、家族関係を再構築するチャンスとなるでしょう。

12)そのためには、家族の間での粘り強い、誠実なコミュニケーション、対話、交渉が求められます。相続を「争続」や絶縁に終わらせないための、要点です。このとき、「円満」や「事なかれ」を求めるあまり、「争い ・対立・ 葛藤(conflict)」を、”避けない”こと。セミナーでは、粘り強い良質なコミュニケーション、対話、交渉についても学びます。争いを見える化して、対話、議論、対決、交渉をしましょう。それが、想続につながります。

13)このセミナーでは なぜ、家族は遺産相続で揉めるのか 感情のもつれやわだかまりを、どう紐解いていくのか 「争続」で終わらないためのコミュニケーションとは どうすれば「怖れ」を乗り越え、相続について話題にし、早くから準備することができるか 家族関係を修復するための関係性と心のケアとは 個人と家族と両方を尊ぶ相続(想続)とはどういったものか といったテーマを取り扱います。

14)〈こんな方におすすめです〉

  • 現在、相続問題で苦しんでいる人
  • 将来の相続に不安のある家族
  • 相続について、心の準備をしたい人
  • 家族間でお金のトラブルを経験されている人
  • こじれた家族関係を、今のうちに修復したいと考えている人
  • 相続におけるトラウマからの回復について学びたい人
  • 有形資産の相続は終わったが、無形資産の争続は終わっていない、と感じる人
  • 相続の心理的側面について理解したい専門家~税理士、弁護士、司法書士、金融関係者、経営者など~
  • 将来、相続の心理的側面について取り組みたいと考えているセラピスト、カウンセラー、コーチ

15)深層心理学の立場から、相続時に浮上する「家族神話」についても着目します。家族神話とは、「家族に潜む無意識の脚本」を「逝った人の魂」を想起しながら、読み直すものです。それまで気づかなかった家族の見えない価値、目的、意義、レガシーを、明らかにするでしょう。

16)セミナーは、セラピスト、カウンセラー、コーチ、弁護士、税理士、司法書士、ファミリービジネスの専門家、コンサルタント、福祉や医療関係者に、お勧めの内容です。このテーマにご関心のある一般の方、初心者の方のご参加も大歓迎です!

コンパッションのある相続(想続)について、学びませんか?

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日時■ 2025年5月25日(日)10:00~17:00

会場■ zoomオンライン会議(お申し込みいただいた方に詳細をお伝えします)

費用■ メールマガジンにてご案内しております。

講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子