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1)いま欧米世界で「エルダー(elder)」の存在に関心が高まっています。
“elder” は「高齢者」「年寄り」「老人」と訳されますが、それは「肉体」の衰えをベースにした訳語です。高齢者、年寄り、老人には、エルダーよりも、「オールダー(older)」の方が適切です。エルダーはオールダーではなく、社会的、心理的経験に裏打ちされた、心と関係についての知恵を備えた人です。
2)エルダーには、「ヤンガー(younger、若者)」との良好な関係で成り立つ、という特徴があります。ヤンガーとの相対的関係の中で、育成されるのがエルダーです。また、「エルディスト(eldest、最高齢者)」のように、それ単体で極まることはありません。
どういうことでしょうか?
3)エルダーの好例「老子(Lao-tse)」から、考えてみましょう。「老」は「エルダー」、「子」は「ヤンガー」です。エルダーとヤンガーという、正反対のものが1つ(全体)になり、またエルダーとヤンガーが好循環関係にある、それが老子の意味です。
4)エルダーはヤンガーを、温かさ、愛、コンパッションで導き、ヤンガーはエルダーを敬い、従います。エルダーとヤンガーの両面が、個人の「内面」にあり、また「対人関係」で生きられること、それが老子の現代的意味です。
5)エルダーは、正確には『エルダー(老)&ヤンガー(子)』です。エルダーは、いつでもヤンガーのように、遊び、しなやかさ、軽やかさで一杯になる長老です。また、常にヤンガーの「無知さ」を愛します。それは「ネガティブ・ケイパビリティ(負の能力)」への愛です。
6)エルダーはまた、「メンターン」としても知られます。メンターンは、エルダーに関する著述家のチップ・コンリーが、「メンター(指導者)」と「インターン(実習生)」を掛け合わせた造語です。メンターンは、実習生や若者から、謙虚に学ぶ指導者です。
7)元型的心理学のJ. ヒルマンによると、ヤンガーとの関係の切れたエルダーは、孤独なオールダー(年寄り)になります。オールダーは、温かさ、遊び心、しなやかさ、軽やかさを失った、冷たく、厳格、頑なで、重々しい高齢者です。
そんなおじいさんおばあさんに、出会ったことはありますか?
その人の内面は、「さみしい小児暴君」です。
(注:ちなみに、エルダーとの関係の途絶えたヤンガーは、「自己愛的な永遠の少年・少女」です)
8)エルダーは、年を取ったら誰もがなれる、というわけではありません。心、精神、魂、スピリチュアリティを、人工的・意識的に育てる必要があります。自然なままでは、心は進展しません。深まりません。
9)年齢を重ねるごとに、肉体は衰えていきます。一方、心はいつまでも伸びる可能性を秘めています。しかし、中高年期の心の発達は、青年期のように高み・上方・外側に向かうものではなく、深み・下方・内側に向かうものです。
10)今回のセミナーのテーマは、「エルダー」です。近年では「ネオ・エルダー(新しいエルダー)」や「モダン・エルダー(現代型エルダー)」と呼ばれたりもします。エルダーの進展は、深み・下方・内側に向かう成熟への道です。「グローイング・アップ(上に向けた成長)」でなく、「グローイング・ダウン(下に向けた成長)」です。
11)ホモサピエンス(人類)が地球に誕生して以来、今日ほど多くの人間が長生きをする時代は、歴史上ありませんでした。そのため、中高年期を、どのうように生きればいいのか、わからずにさ迷っている人がたくさんいます。
グローイング・「ダウン」せずに、青年期と同様、グローイング・「アップ」を目指していたりします。肉体的若作り(だけ)を、求めていたりします。それは、「カテゴリーエラー」です。進む方向を間違えています。
12)それでは、混乱が増します。混乱は、中高年期のうつ状態、無気力、空虚、絶望を生みます。
13)カテゴリーエラーの起きる理由に、中高年期の良質なロールモデルの不在があります。後半生のための羅針盤(コンパス)が、欠落しています。エルダーについての情報も、教育もありません。
私たちは、ファミリービジネス支援を行っていますが、高齢になった経営者、オーナーや、そのパートナーが、事業から引退した後「どう生きたらよいのか」という質問をたびたび受けます。
14)その答えの1つが、「エルダー」です。
「高齢者(オールダー)」から「エルダー」へと変容すること。
それが、今回のセミナーの目的です。そのための具体的方法を、わかりやすくお伝えします。
15)とはいえ、エルダーは実は年齢に関係ありません。子どもや青年で、エルダー性を備えた人は、少なくありません。エルダーは、ジェンダーとも関係がありません。日本では、エルダーは男性、と思われがちですが、女性・男性、あるいは性別を問いません。
16)中高年期になると、多くの人が方向性を喪失して、さ迷います。不安になったり、落ち込んだり、焦ったり、イラついたりします。
子どもが育ち、更年期を迎えたある女性は、「空の巣症候群」にさいなまれ、せっかく昇進したある男性は「中年期の(うつ状態の)危機」に苦しみます。しかし、どうしていいかわからず、行き詰ってしまいます。それまでの人生の指針が、役に立ちません。
17)方向性を転換(トランジション)しなければなりません。
羅針盤が必要です。そして、変化は必須です。
にもかかわらず、変化を避け、アルコール、ギャンブル、買い物、セックス、ポルノなどの依存性や共依存に陥る中高年者が、後を断ちません。
18)C. G. ユングによると、それは私たちが中高年期について油断し、変化を先延ばしにするからです。彼は、中年期の開始を35歳と述べ、中年期からエルダーについて、真摯に取り組むことを勧めました。それを怠ると、賞味期限の迫った食べ物のような、残念な後半生になりかねない、と警告します。彼は、クライエントの後半生が、それぞれオンリーワンの、上質な熟成ビンテージワインのようになるよう支援しました。
19)エルダーは、私たちが中高年期の迷いや危機を経過するための、良質な指針です。それは、後半生のあらゆるライフスタイル、ワークスタイル、関係性スタイルに有益です。エルダーシップは、心や関係性の負債を、資産へと変換する「化学反応」を引き起こします。
あなたは、実り、深み、熟成をもたらすエルダーに、ご関心がありますか?
今回のセミナーは、「エルダーへの羅針盤(コンパス) ~他者とつながり直す中高年期の心理学~」について学びます。
内容は、セラピスト、コーチ、ボディワーカー、コンサルタント、医師、看護師、介護士、ケースワーカー、弁護士、税理士、教師、その他の対人支援職、そしてファミリービジネスの専門家と当事者にお勧めです。
このテーマにご関心のある一般の方、初心者の方のご参加も大歓迎です。