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『ファミリービジネス』とファミリーセラピー ~新たな分野の開拓、その支援の特徴と理解〜|2024/12/29(日)

◎ オンライン開催
◎ 配布資料+音声データをご購入いただけます

1)これまで私たちは長く、心理療法、およびご家族のセラピーを行ってきました。そのなかで、個人や家族関係の悩みに、それまでとは別の領域にまつわる視点が欠かせないことに、たびたび直面してきました。そのたびに、各方面へのさまざまな学びを深め、また他専門家との連携をすすめてきました。

今回はその中でも、私たちがもっとも注目し、取り組む必要性を感じている領域のひとつ、「ファミリービジネス」について、初めてセミナーで取り上げます。またその支援に特化した内容について、しっかりとお伝えし、皆様と学んでいきたいと考えています。

2)今回取り扱うのは、「ファミリービジネス(FB)」とそれにまつわる「セラピー」です。セミナーでは、次の2つの観点について、学んでいきます。

(A)対人援助の専門家には、ファミリービジネスにまつわるクライエントやファミリーの訴えに、より適切にサポートできるよう、さまざまな観点・手法を提供します。

(B)FB当事者(経営者や後継者、家族、社員など)は、セラピー、コーチング、コンサルティングの活かし方を、具体的に知ることができます。

3)一般的にセラピーでは、職場での悩みがよく話題になります。しかしその職場が、ファミリー経営(FB)かどうか、ということには、あまり関心が注がれていません。日本の全法人(大企業・中小企業を含めて)の97%が、実はファミリービジネス(同族企業)であることはご存知でしょうか。

クライエントの語る職場も、ファミリービジネスである可能性が多くあります。そこには、これまで語られなかった、あるいは焦点があたらなかったかもしれませんが、ファミリービジネスに関する悩みもあったのではないでしょうか。

4)同様に、家族についてのトラブルや訴えも、もう少し広い視点からとらえると、より有益な支援になる可能性があります。そこには、祖父母やさらに前の世代から持ち越された、家族で経営してきたビジネスにまつわるトラブル、誰が跡継ぎになるか、誰が相続するのか、といった争いごとが、潜在しているケースもよくあるからです。

5)臨床心理学には、職場における心理面に目を向けたものとして、「産業領域」の臨床があります。しかしそこには、ファミリービジネスの家族の心理や、ファミリービジネス職場の悩み、といった、FBへのまなざしはありませんでした。

6)現在、ビジネス界では、後継者の不在に悩むFBの問題が大きな注目を集めています。戦後や高度経済成長期に創業したビジネスにとって、ファミリーに後継者がいなければ、事業の承継に支障をきたし、M&A(売却)や廃業に追い込まれる、といったケースもまれではありません。今回のセミナーで提供するのは、そうしたホットなテーマでもあります。

7)ファミリービジネスというのは、ひらたく言うと家族経営の会社、ということですが、会社の株主(オーナー)も、家族であることが多くなります。つまり、家族は、会社の経営にも関与し、同時に株主として会社を所有する「オーナー」でもあるケースが少なくありません。

このあたりのことが整理して理解できると、クライエントに対する支援がより細やかに行えます。また、クライエントのニーズにもより適切に寄り添うことが可能になります。事例も交え、整理して丁寧にお伝えしていきます。

8)セラピストやコーチの多くは、クライエントの職場の悩みを、単に仕事上のこと、あるいは職場の人間関係の問題、と思いがちです。クライエント自身もそう考えているでしょう。逆に、家族についての悩みが語られると、それは純粋に家族に関することと考えがちです。

9)しかし職場とファミリーを、別々にとらえて解決できるのは、全法人の3%にあたる、「非FB(ノン・ファミリービジネス」についてだけです。非FBとFBとでは、「システム(仕組み)」あるいは「コンテキスト(文脈)」が、『根本的』に異なります。

10)とはいえ、ビジネスとファミリー、という異質なものを包含する家族を、どのように扱うといいのでしょうか。FB支援のセラピーやコーチング、コンサルティングでは、家族経営、同族企業のファミリーの悩みや葛藤を、どのようにとらえて、取り扱うのでしょうか。

セミナーでは、事例を参照しながら、丁寧に理解を深めています。あなたの対人支援の視野や枠を広げるために、また支援の質を高めるために、ぜひ活用してください。

11)具体的には、次の(a)と(b)について学び、また取り組みます。

(a)「ファミリー」と「ビジネス」を、質の異なるシステムととらえること。

(b)ファミリーとビジネスを「1つのより大きなシステム」として把握すること。

そして、より大きなシステムととらえた全体への「ホリスティックなセラピー」についても学びます。

13)そのために有効なツールのひとつが、「ジェノグラム(家族図)」です。ジェノグラムは、何世代にもわたる、ビジネス家族、オーナー家族の理解に大変役立ち、また具体的な支援のためにも欠かせません。なぜならそれは、現在の悩みの背景を「見える化」するからです。悩みの背景が見えると、具体的で適切な働きかけが可能になります。選択肢が増え、工夫の余地が生まれます。

14)さて、「ファミリー」と「ビジネス」を質の異なるシステムとしてとらえる(a)には、2つを適切に切り分ける「境界力」「父性力」が、また、ファミリーとビジネスを「1つのより大きなシステム」として把握する(b)には、2つをまとめる「交流力」「俯瞰力」「統合力」「母性力」が、求められます。この点についても、丁寧に見ていきます。

15)「ビジネス」は、基本的に、金銭、利害、損得のためのシステムです。一方「ファミリー」は、愛、コンパッション、ハートのシステムです。

16)そのため、ビジネスシステムとファミリーシステムは、「構造的」に敵対しています。そのため、放置しておくと、FBは早晩、必ず分裂、衝突し、回避的で冷酷な関係になります。そうかと思うと、一転して、癒着、共依存、共犯、混乱関係に陥ります。ファミリーとビジネスからなるFBには、メンテナンスが必要です。自然のままにしておいて、良くなるということは、基本的にありません。

17)クライエントは、FBに潜む構造的分断、衝突、癒着、共依存の「中で」、悩み、苦しみ、問題を抱いています。しかし、こうした構造上の課題が、クライエントにも、対人援助の専門家にも見えていないため、その本質と理由がわからず、苦悩し続けます。

18)でも大丈夫です。セミナーでは、対処法を、初歩から具体的に学びます。

19)対処法の基本は3つの「外部からの人工的」介入です。その3つは、「ガバナンス(統治)」「マネージメント(管理)」「システムセラピー」です。この3つを活用して、ファミリー、ビジネス、そしてファミリービジネス全体のセラピーを考えます。鍵は、その3つを『習慣化』することです。そのための方法も、学びます。

20)今回、「ファミリービジネス」支援というセラピーの新たな展開について学びます。内容は、セラピスト、コーチ、ボディワーカー、コンサルタント、医師、看護師、介護士、ケースワーカー、弁護士、税理士、教師、その他の対人支援職、そしてファミリービジネスの専門家と当事者にお勧めです。

このテーマにご関心のある一般の方、初心者の方のご参加も大歓迎です。

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日時■ 2024年12月29日(日)10:00~17:00

会場■ zoomオンライン会議(お申し込みいただいた方に詳細をお伝えします)

費用■ メールマガジンにてご案内しております。

講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子