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1)「バウンダリー(境界線)」と聞いて、あなたは何をイメージしますか?
バウンダリーは、セラピーに「潜在する」大変重要な心のテーマです。しかし、「潜在的」であるため、トレーニングを積んでいなければ、セラピストにも見えにくく、セラピーの場でもつい放置されたり、見逃がされたり、遺棄されたりしてしまいます。
一方で、境界線の不全、混乱、欠如、崩壊などで苦しんでいる人は、少なくありません。適切に取り組むとしたら、境界線は、多くの実りをもたらします。
なぜなら、バウンダリーへのまなざしは、「あなたらしいあなた」「素面(しらふ)で健康なあなた」の創造を、可能とするためです。あなたらしいあなた、素面で健康なあなたは、あなたに真の尊厳、誇り、力強さ、確かさ、豊かさ、そして生きる意義や意味を生み出すでしょう。
2)健康な境界線について知らないと、あなたは人に侵害されたり、または、あなたが人の心に侵入したり、しかねません。バウンダリーの不全は、あなたの尊厳、人権、誇りを傷つけたり、ないがしろにしたり、あなたに恥の感覚をもたらしたりします。あるいは、あなたに悪意のないまま、相手を傷つけてしまったりします。
バウンダリーの混乱や混同は、人間関係を不健全なものにします。これを放置すると、気づいたら、共依存、恋愛依存、セックス依存、あるいはSM的、DV的といった病的関係にハマっていた、ということになりかねません。
3)さて、バウンダリーについて、最もコミットして取り組んできた領域の1つに、トランスパーソナル心学
があります。トランスパーソナル心理学の旗手で、統合的心理学の開祖ケン・ウィルバーの初期の本に、『無境界(No Boundary)』があります。
本の中身の大半は、「無境界」についてではなく、「境界」に関するものです。ウィルバーは、発達心理学を参照し、「質」の異なる境界について、丁寧に、簡潔に、また詳細に述べています。いわばトランスパーソナル心理学は、質の違う、多種多様な「境界」を扱う心理学だと言えるでしょう。
セミナーでは、ウィルバーの論も踏まえて、バウンダリーについて取り組みます。
4)時代が令和になり、それまでの時代に比べて「コンプライアンス(法令遵守)」が、強く意識されるようになっています。コンプライアンスが曖昧だったり、困難だったりする背景には、「境界線」のテーマがあります。
心理学的には、『心の内面』で、「適切な境界線」を引くことができなければ、『外的/社会的』法令遵守に、混乱や誤解が生じます。
5)「心の内面」において、境界線の混乱や混同が最も激しく生じるのは、統合失調症や躁うつ病といった「精神病状態」です。この精神病状態が、わかりにくい/見えにくい形で、心に紛れ込んでいるのが、パーソナリティ障害です。
6)パーソナリティ障害には、さまざまなタイプがありますが、どのパーソナリティ障害も、『境界線の混在からなる問題』をはらんでいます。セミナーでは、その「混在」にも着目します。それによって「境界線の本質」が、よく理解できるからです。
7)小児科医の渡辺久子氏は、胎児にとっての「羊水」を母性に、また「子宮の壁」を父性にたとえました。羊水(母性)は、胎児がその中で暴れたり蹴ったりしても、大海のようにすべてを分け隔てなく受け入れながら、胎児を育みます。それを包み込む子宮の壁(父性)は、どれだけ羊水が揺れ動いたとしても、外側からしっかりと封印します。
「封印」は、英語で “contain”(コンテイン)ですが、これは、「包含」の意味でもあります。“contain(コンテイン)” は、封印でもあり、包含でもある。C. G. ユングは “conatiner”(コンテイナー)を「心/魂の子宮」ととらえました。
すなわち深層心理学は、「子宮」に、胎児を包み込む羊水(母性)と、その羊水ごと胎児を外側から包含し、しっかりと封印する「父性の役割」がある、と理解してきました。
8)この封印力あるいは父性が、バウンダリーの原初形態であり、核心です。母性も、父性も、子どもを育成する力や働きです。
父性は、(内と外とを)「切り分け」、「壁」を作り、「封印する」働きを通して、子どもを育てます。
それに対して羊水(母性)は、大海のように分け隔てなく受け入れながら、胎児を育みます。
9)羊水だけでは、胎児(潜在可能性)を育成できません。外に漏らさないように、封印する子宮壁=父性が必要です。境界線に課題のある人は、母性というより、「良質な父性」の欠落/欠如が影響するケースが、少なくありません。
セミナーでは、切り分け(切断)、そして壁と封印とによって、内なる子ども(潜在可能性)を育成する境界線について、取り組みます。この父性力は、ジェンダーに関係なく、誰もが身に着ける必要があります。それをぜひ、育成しましょう。
10)さて、英語で境界線には、バウンダリーだけでなく、“border”(ボーダー、境界線)という言葉もあります。たとえば19世紀のアメリカにおいて、“border” とは語源的に、「開拓地と未開の地域の境界線」を意味しました。つまりこの境界線(ボーダー)があることで、「土地の所有者」が明らかに示されたのです。
また、“boundary”(バウンダリー)も、語源的には「不動産や領土の限界」を意味しました。
11)これら語源的意味を現代の心理学に当てはめると、ボーダーやバウンダリーは、自分の身体や心の「所有の境界線」、あるいは「所有権」となるでしょう。境界線の明確な人は、自分の所有する身体や心が、断りもなく勝手に、あるいはいつの間にか、他人に侵入されたり、犯されたりすることに対して、敏感/繊細で、適切に対応します。
あなたは、あなたの心の土地に、他人が勝手に居座ったり車を停めたりしたら、どのような気持ちになりますか?
どう対応しますか?
12)心の境界線に課題のある人は、他人が土足で入り込み、無断駐車することに対し、異議申し立てしない、あるいはできません。違法駐車に対し、無頓着だったり、鈍感になっていて、心や身体の所有権を長年冒涜され続けていたりします。
バウンダリーが、わからなくなっているためです。
セミナーでは、違法駐車や侵入に「No」を言い、自分の心や身体の所有(権)を取り戻すこと、自らの尊厳、人権、誇り、力強さ、確かさ、豊かさ、生きる意義や意味を回復することを、目的とします。
13)自分の心、身体、人生を自分で所有する感覚や、権利意識が持てないと、あなたは、自分の人生に責任感を持てず、不全感や不自由さに苦しむことになるでしょう。そしてあなたは、自分の心や身体を、いいかげんに扱うかもしれません。なぜなら心や身体は、自分の所有物ではないからです。
それに対し、境界線が明確になると、所有感、権利意識、責任感が真に身につき、自分の心と身体を大切にできるようになります。人生に対するコミットメントの度合いが向上し、クリエイティビティや遊び心が育ちます。この点については、セミナーで詳しくお伝えします。
14)境界線のテーマには、トラウマが絡んでいることも非常によく見られます。このトラウマには、「生育上の(小文字の)トラウマ」と、「明確な(大文字の)トラウマ」の大きく2つがあります。
生育上の(小文字の)トラウマとは、育ちの中で数年にわたって積み重ねられ生み出される、「見えにくいトラウマの集積」です。このトラウマは、「健全な境界線の育成が阻止された」状態を生みます。この場合、境界線が未成熟だったり、脆弱だったりします。境界線が不健全だと、外的には「対人恐怖」「赤面症」「パニック障害」「社会不安障害」などに、内的には「精神病的妄想」などに圧倒される気がして、不安や恐怖に苦しんだりします。
15)一方、明確な(大文字の)トラウマは、自然災害や事故などに起因する「見えやすいトラウマ」です。このトラウマは、「境界線の骨折や崩壊」をもたらします。そして、トラウマの経験者を、精神病に酷似した状態に陥れます。
16)境界線の課題は、境界性、自己愛性、回避性に代表される各種パーソナリティ障害や、各種依存症に悩む人、あるいは共依存やDVといった関係性に問題を抱えた人、またHSPなど知覚・感覚の鋭敏さで苦しむ人などと取り組むうえで、必須のテーマです。
そこには多くの場合、間違いなく「解離(dissociation)」も潜んでいます。
17)境界線の問題は、「肉眼」には見えません。しかし、それは心の、また人間関係上の難題を生み、私たちを苦しめます。肉眼で見えないために、バウンダリーが原因でつらい思いをしている人は、何が起きているのか、なぜ苦しいのかわからず、途方にくれたりします。悩みやしんどさの「かゆいところ」に、手が届きません。
18)セミナーの目的の1つは、見えないバウンダリーの問題を「見える化」することです。問題が明確になることで、そこから心の回復、癒し、成長、変容が可能になるからです。
19)境界線は、適切に取り組むことで、多くの実りをもたらします。「あなたらしいあなた」または「素面(しらふ)で健康なあなた」の創造を、可能にします。あなたらしいあなた、素面で健康なあなたは、あなたに真の尊厳、内発的人権意識、誇り、力強さ、確かさ、豊かさ、生きる意義や意味を生み出すでしょう。
20)今回、「境界線(バウンダリー)のトランスパーソナル心理学 ~見えない『私らしさ』を見える化する~」にご関心のあるセラピスト、カウンセラー、コーチ、ケースワーカー、医師、看護師、保健師、ボディワーカー、コンサルタント、ファミリービジネスの専門家の方、そして一般の方、初心者の方のご参加をお待ちしています。
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日時■ 2024年4月28日(日)10:00~17:00
会場■ zoomオンライン会議(お申込みいただいた方に詳細をお伝えします)
費用■ メールマガジンにてご案内しております。
講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子