「心(ハート)」です。
プロフェッショナルに、「技術」や「アート」は欠かせません。
が、それと同じかそれ以上に大切なのは「心」です。
「ものごとはね、『心』で見ないとよく見えない。大事なことは肉眼には見えないんだよ」
サン・テグジュペリ著『星の王子様』に登場するキツネのセリフです。
シャーマンについて描いたカルロス・カスタネダの一連の著作で、ヤキ・インディアンの呪術師ドン・ファン・マトゥスは、「心(ハート)のある道(path with the heart)」こそ、大切な生き方だと述べました。
元型的心理学提唱者のジェームズ・ヒルマンは、イスラーム神秘主義を参照し、「心(ハート)」からマクロ・コスモス(外の世界)とマイクロ・コスモス(内の世界)を見ることが、「魂作り(soul-making)」になるといいます。
精神分析の開祖、ジンクムント・フロイトは、人生にとって大切なのは、「仕事」と「愛」だと伝えています。
「愛」や「心」を大切に、セラピスト、カウンセラー、コーチを目指してはいかがでしょうか?
良質なセラピストやコーチは、その両方を身に着けています。職人にもアーティストにも “art(アート)” の英単語が絡んでいます。“art” は、「芸術」の他に「技術」を意味します。“art” は、「技芸」です。「技芸」のうちの「技」を「職人」が、「芸」を「アーティスト」が担うと考えてください。
ただし、この2つは明確に分別できるものではありません。腕のいいセラピストは、この2つを同時に持っています。この2つは循環しています。セラピー、カウンセリング、コーチングのトレーニングの初期においては、職人技を身に着けるべく努力することになります。10年あるいは10,000時間(セッション)は、必要でしょう。その後も、剣士が毎日素振りをするように、野球の選手がキャッチボールをするように、生涯にわたって職人技を磨く必要があります。
が、それだけでは足りません。職人として型どおり学んだことを破って、オリジナルな技を身につけなければなりません。アーティストになり必要があります。その過程を「守破離」といいます。さらに、セラピーの現場においては、常々、ジャズの「即興(improvisation)」が求められます。なぜなら、セラピーで生じるプロセスの中には、常に「想定外」が含まれ、それに対応するには、プロのクリエイティブでアーティスティックな「技芸」あるいは「即興」が必要となるからです。
その即興性は、クライエントがそれまで苦悩してきた枠組みをリフレームしたり、リノベートすることにつながるからです。リフレームやリノベートは、心の癒し、回復、成長、変容、成熟にとって最良の介入の1つです。即興、クリエイティビティ、アートは、セラピスト1人で起こせるわけではなく、クライエントとの協働、また人間を超えた共時性の恩寵とがあってこそ可能になります。
このプロセス全体に目配せし、そこに参与するのが、職人でありアーティストである経験を積んだセラピストです。
腕を良くするインスタントなやり方はありません。いいセラピストになるには、植物の成長のように、長期間を必要とします。
腕を身に着けると、そのあと長きにわたって継続可能になる心の仕事が、開業心理療法や開業コーチングです。退職後、健康に気をつければ、20年以上やれる個人事業です。開業に決められた定年はありません。焦らず、慌てず、腰を据えてじっくりとプロとしての力を身に着けていってはいかがでしょうか?
じっくりと歩み始める最初の一歩として、あるいは、腕を磨き続けるために、セラピスト養成コースへのご参加もご検討ください。
ボランティアで経験を積むことが可能です。 ボランティアから進めては、いかがでしょうか?富士見も、ボランティアから始めました。
ただし、開業を目指したい方に、覚えておいていただきたい点があります。それは、開業は、ボランティアとも、スクール・カウンセリング、クリニックでの仕事、学生相談とも違うということです。なぜなら、開業心理療法では、金銭の直接的やり取りが伴うからです。この点を踏まえて、経験を積んでください。
現場での経験とは別に、いまから良質なケース(事例・症例)報告を、たくさん熟読してください。
現場で臨床経験を積むことが1番です。
スーパーヴィジョンや教育分析を受けることも大切です。
事例検討会への継続的に参加も必要です。
そして、良質なケース(事例・症例報告)を熟読してください。
IPPでは、多様な中身の濃い事例を、毎月のセミナーと連続講座でご紹介しています。