《4》職人(artisan)とアーティスト(artist)との違いを教えていただけますか?

良質なセラピストやコーチは、その両方を身に着けています。職人にもアーティストにも “art(アート)” の英単語が絡んでいます。“art” は、「芸術」の他に「技術」を意味します。“art” は、「技芸」です。「技芸」のうちの「技」を「職人」が、「芸」を「アーティスト」が担うと考えてください。

ただし、この2つは明確に分別できるものではありません。腕のいいセラピストは、この2つを同時に持っています。この2つは循環しています。セラピー、カウンセリング、コーチングのトレーニングの初期においては、職人技を身に着けるべく努力することになります。10年あるいは10,000時間(セッション)は、必要でしょう。その後も、剣士が毎日素振りをするように、野球の選手がキャッチボールをするように、生涯にわたって職人技を磨く必要があります。

が、それだけでは足りません。職人として型どおり学んだことを破って、オリジナルな技を身につけなければなりません。アーティストになり必要があります。その過程を「守破離」といいます。さらに、セラピーの現場においては、常々、ジャズの「即興(improvisation)」が求められます。なぜなら、セラピーで生じるプロセスの中には、常に「想定外」が含まれ、それに対応するには、プロのクリエイティブでアーティスティックな「技芸」あるいは「即興」が必要となるからです。

その即興性は、クライエントがそれまで苦悩してきた枠組みをリフレームしたり、リノベートすることにつながるからです。リフレームやリノベートは、心の癒し、回復、成長、変容、成熟にとって最良の介入の1つです。即興、クリエイティビティ、アートは、セラピスト1人で起こせるわけではなく、クライエントとの協働、また人間を超えた共時性の恩寵とがあってこそ可能になります。

このプロセス全体に目配せし、そこに参与するのが、職人でありアーティストである経験を積んだセラピストです。