(文責:岸原 麻衣)
タブーを語る
性(セクシュアリティ)の話って、宗教、死、お金などと並んで、タブーな話題の一つです。タブーと分かっていながら、この記事を書いています。
なぜか?
日常生活ではどうしても話題にしづらいテーマだから。
このことで不安、孤独、葛藤、そして死にたい気持ちを抱えて苦しんでいる人がいるのを知っているから。
そんな誰かと繋がれたら、そして、心理療法や私たちのことを知ってもらえたら良いなと思ったから。
性にまつわる悩みや困りごとは、性教育よりもさらに踏み込んだ話です。家族や友達にもパートナーにも言えない、むしろ、親密な関係にあるからこそ話せない、ということがしばしば生じます。
それはとても苦しいことです。
セクシュアリティの模索
思春期には、自分自身のアイデンティティを模索するという、発達上の大変な仕事が待っています。世界を広げ、いろいろな体験や感情に揺さぶられながら、自分とはどんな人間なのか、どんなものやどんなことが自分らしさを象徴してくれるのかを探していく。
これまでずっと一緒に過ごしてきた人たちと自分との間に線を引いて、自分がどんなふうに人と違い、ユニークであるかを見つけようと、誰もが暗中模索します。
そうして自分を見つめる中で、からだの性と、こころの性の不一致が浮かび上がってくることがあります。周りの多くの人たちは、疑う余地もなく、からだとこころの性が一致している。でも、みんなが当たり前に感じているような一致感が、自分にはどうしても持てない。もしかして、自分のセクシュアリティ(性にまつわるアイデンティティ)は、多くのみんなとは違うのかもしれない…。
そうやって、自分のユニークさと、それによる悩みや困りごとがだんだん輪郭を持ってきます。
少数派の不安
自分がマジョリティ(多数派)ではなく、マイノリティ(少数派)であると気づくのは、恐ろしいことです。
「誰にも分かってもらえないんじゃないか…」
「家族や友達が離れていくかもしれない…」
「私はなんで、普通じゃないんだろう…」
不安が波のように襲ってきて、孤独で、心細くて、死にたくなるかもしれない。あなたが今まさにこのことで苦しんでいるなら、こころの専門家に相談してください。心理療法を、あなたのために活用してください。
「そんなこと言われても…」
あなたは思うかもしれません。こんなこと誰にも話すべきではない、人に話すくらいなら死んだ方がマシ、と思っているかもしれません。
でも、覚えておいてほしいのは、日本では人口の8.9%がLGBTQ+であるということ(2021年電通の記事)。ざっくり計算しても、約11〜12人に1人は性的マイノリティの人がいるのです。
孤独な状況に変わりはないけれど、いつどこで会えるのかわからないけれど、この広い世界には同じような悩みを抱えた仲間がいる。あまり信じられないかもしれないけれど、こころのすみっこで良いので、どうかそのことを覚えていてください。
どんなことで悩むのか
そのような人たちは、どんなことを思って心理療法を始めるのでしょうか。
- 性の好みが人とは違う
- 異性と付き合ってもしっくりこない
- 自分とは違う性別の(男らしい/女らしい)格好がしたい
- 自分の体を好きになれない
- 自分は男でも女でもないような気がする
- こんな悩みを抱えて親に合わせる顔がない
- 人と違う自分について、誰にも話すべきじゃない
- 人に話したら何かを認めることになってしまいそうで怖い
本当はもっと、ここには書ききれないくらいにさまざまな悩みや困りごとを抱えて、心理療法の場にやってきます。
思春期の人だけではありません。社会的にはうまくやってきた。でも、人生の折り返し地点に立ってみて、本当はもっと自由に生きたい、と考える人も、実はたくさんいらっしゃいます。
心理療法でできること
心理療法では、何年も何十年も抱えてきたもやもやを丁寧に見ていきます。生じてくる感情を感じて、気持ちや思考を少しずつ整理していきます。あなたがこれまで誰にも言えずに(言わずに)きたこと、話してみませんか?
あなたの人生がちょっとでも良くなるように、一緒に考えるのが私たちの仕事です。こんなことくらいで相談にいって良いのかな…?大袈裟って思われないかな…?と迷ったら、気軽に連絡してください。