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1) 次の場面を想像してみてください。
子どもが、橋から川に落ちる。
私たちは駆け寄り、必死に引き上げる。
汚れた体を拭き、「もう大丈夫」と保護する。
それから、「次は気をつけよう」と伝える。
けれど──
また落ちる。
私たちは助け、保護する。
しかし、また落ちる。
そしてまた……。
なにが起きているのでしょうか。
子どもが不注意だから?
学習能力がないため?
いいえ、違います。
精神科医の J. ヘイズ = グルードと心理学者の A. J. モリスによると、
『橋に、子どもに見えない穴が空いていた』からです。
問題は「子ども」の不注意ではありません。
子どもたちが、成長の過程で渡っていた “橋” が「危険」だったことです。
小さな子どもには、「橋の穴」が見えていなかったのです。
2) その「橋の穴」の名前は、
ACE(Adverse Childhood Experiences:小児期逆境体験)。
小児期に経験する
- 肉体的&精神的虐待
- ネグレクト
- 家庭内不和
- 親の依存症
- 暴力
- 幼少期の慢性的ストレス
これらは「心」だけでなく、「脳」と「身体」の発達を変えます。
ゆがんだ「関係性」へと、私たちを向かわせます。
数十年後──
- うつ
- 不安
- 依存
だけではなく、
- 自己免疫疾患
- 食物アレルギー
- 心筋梗塞
- 脳卒中
- 肺気腫
- がん
- 胃潰瘍
- 糖尿病
- 肝疾患
- 喘息
- 心臓疾患
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
などの “重大な身体疾患” リスクの上昇 にも関連することが、ACE研究によって示されました。
“ACEスコア” が高いほど、疾患リスクは上昇します。
短命や自殺のリスクが高まります。
ACEによってもたらされる慢性的な恐怖と緊張は、HPA(視床下部‐下垂体‐副腎系)軸、自律神経、免疫反応、炎症レベルを変化させます。
(注:ACEスコアについては、セミナーで学びます)
3)それに対し、 私たちは何をしてきたでしょうか。
私たちは穴に落ちた子どもを、時に責めてきました。
「なに、ボーッとしてるんだ」
「気をつけないとダメだろう」
「何度言ったらわかるんだ」
しかし子どもを責めるのではなく、大人、そして対人援助職が、ACEという「穴の空いた危険な橋」を見つける必要があります。
成長に向けて子どもが進む橋に、穴が空いていないか、「注意深くチェックする」ことが欠かせません。
このセミナーでは「危険な橋」に気づき、それを修繕するためのトレーニングを行います。
また、ACEからの癒しと回復を試みます。
4)ACEは、いたるところに蔓延しています。
高学歴や富裕層の中にも、しばしば潜みます。
社会には、ACEを抱えながらも活躍する”高機能の人”がたくさんいます。
その人たちの心身をむしばむACEは、気づかれにくい。
他人にも、そして自分にも。
ACEは、放置されれば何世代にもわたって継承されます。
にもかかわらず、隠されます。
「家の恥」「自分の恥」だからです。
評判の傷つくのが怖いためです。
セミナーでは、見えにくいACEをはっきりと見えるようにします。
見えないもの、見ようとしないものに、癒しや回復は望めないからです。
ACEの影響やリスクを直視しましょう。
ACEへの的確で有益な対策を身につけるために。
5)小児期トラウマは右脳に保存されます(加えてHPA軸を通して身体に影響を及ぼします)。
言語や認知を獲得する2歳以前の記憶や感覚は、右脳に関係します。
さらに、関係の空気や声の調子、視線、距離感、場の雰囲気も、右脳を通じてやりとりされます。
非言語次元で “何が起きているか” は、左脳ではなく、右脳と右脳の交流を通じて暗黙裡に伝わります。
2歳以前のACE、複雑性&発達性トラウマには、「認知行動療法」ではなく、認知『以前』と取り組む「ソマティック志向の “関係” セラピー」が求められます。
関係にこそ、右脳と右脳のやり取りが、的確に描かれるからです。
6)小児期トラウマは、身体 ~皮膚の下~ に刻印されます。
そのため、ACEとの取り組みには、身体(ソマティック)の視点が不可欠です。
呼吸、姿勢、筋緊張に着目するタイプのソマティック・セラピーの視座を活用していきます。
身体は神経系の表現そのものです。
認知を変えようとする前に、身体から神経系へ働きかけることを試みます。
身体の変化が、安心、安全の感覚を回復させるでしょう。
7)さらに関係療法の観点が不可欠です。
関係療法は、「クライエント-セラピスト関係」に現れる転移、逆転移、投影同一化、エナクトメントに着目します。
それは、クライエントと支援者との間に “自然発生する” 関係的できごと 〜転移、逆転移、投影同一化、エナクトメント〜 を癒しの “素材” にする、精妙なアプローチです。
(注:転移、逆転移、投影同一化、エナクトメントについては、セミナーで学びます)
8)ACEのような困難なケースとの取り組みには、支援者側の神経系も守られなければなりません。
守られた援助者だけが、ACEの人を、サステイナブルにサポートできます。
守りが希薄なために、メンタルや身体がダメージを受けて、援助職を止めてしまう善意の支援者は少なくありません。
9)橋から落ちた子どもを引き上げる、二度と落ちないよう注意する。
その試みは貴重です。
しかし本当に必要なのは、子どもの落ちた「ACEの穴」を見つけ、橋を修繕、修復することです。
穴の空いた危険な状態を、精神分析家 M. バリントは『基底欠損』と呼びました。
セミナーでは、基底欠損を修復すること、また「良質な心の土台の育成」について学びます。
ACEの穴を埋めるには、心、神経系、身体はもちろん、”セラピスト-クライエント関係” に関して、しっかりと理解することが重要です。
10)小児期トラウマは、虐待や親の不和など、 “関係性” の中で作られます。
ですので、そこからの真の回復、癒し、成長も、”関係性” の中で生じます。
セラピスト-クライエント関係には、クライエントの被ったACEが必ず “再演” されます。
それは悪夢の甦りです。
しかしその悪夢と向き合い、悪夢から目覚め、ACEからの回復、癒し、成長、変容を試みようとするのが、関係療法です。
関係は、ACEを生む “卑金属” にもなれば、癒し、幸福、救済、成長、成熟を促す “黄金” にもなります。
11)ACEを適切に理解すれば、
- 自分を責める必要がなくなる
- 他者への見方が変わる
- パートナーや友人の隠された苦しみに共感できる
- 「問題行動」の奥にある意味が見えるようになる
ACEの穴について理解しないまま、トラウマに苦しむクライエントに関わるのと、理解した上で関わるのとでは、対人援助の質が大きく変わります。
あなた自身のACEについて、取り組みましょう。
その上で、クライエントのACEの苦悩を理解するようにします。
そうでないと、あなたは対人援助の過程で、二次受傷を負いかねません。
あなたは、子どもを川から引き上げることだけを続けますか?
あるいは橋の穴を発見することを、試みますか?
12)このセミナーで得られるものは、以下の内容です。
1.ご自身にとってのメリット
- 内なる赤ちゃん(インナー・ベイビー)や内なる子ども(インナー・チャイルド)の苦しみに対する根本的理解
- 感情コントロールのヒント
- 自己否定の軽減
- 恥トラウマからの癒しと回復
- レジリエンス(修復力)の向上
2.家族・パートナー・子育てにおける利点
- 怒りの連鎖を断ち切る視点
- 子どもの問題行動の背景理解
- 大切な人の苦悩理解
- 安心、安全な関係性の築き方
- 世代間連鎖を止める具体策
3.職場・人間関係に関するベネフィット
- 部下育成の新しい視点
- ハラスメント予防
- 離職防止のヒント
- 心理的安全性の向上
4.専門職(医療・教育・福祉・心理・経営・その他対人支援職)に得られること
- 支援困難ケースの理解の深化
- 二次受傷の予防
- ACEや複雑性トラウマ臨床・支援の質の向上
- 「なぜこの人はこうなるのか」から「だからこの人はこうなのか」「この人にはこういった関わりが必要だ」への理解の変化
- ACEを抱える人の苦悩への、コンパッション(共苦)力の向上
13)今回、「ACE(小児期逆境体験)と発達上のトラウマ~身体・脳・心・関係性を通じた回復と癒し~ 」にご関心のあるセラピスト、カウンセラー、コーチ、ケースワーカー、アドバイザー、コンサルタント、ファミリービジネスの専門家、ボディワーカー、福祉や教育、医療関係者などの専門家、および一般の方、初心者の方のご参加を心よりお待ちしています。
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日時■ 2026年3月29日(日)10:00~17:00
会場■ zoomオンライン会議(お申し込みいただいた方に詳細をお伝えします)
費用■ メールマガジンにてご案内しております。
講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子
