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ユング的トランスパーソナル発達心理学入門

◎ 2016年11月25日(金)〜 全15回
◎ 配布資料+音声データをご購入いただけます

1)プロとして心理カウンセリングを実践するならば、発達心理学的視点は絶対に必要です。私たちはこれまで、マーガレット・マーラー、ダニエル・スターン、メラニー・クラインらの新精神分析的発達心理学や、ケン・ウイルバーやマイケル・ウオッシュバーンのトランスパーソナル発達心理学を、ご紹介してきました。

今回、ユング的発達心理学を、トランスパーソナル発達心理学の視座を参照しながら、お伝えします。

2)あなたは、ユング心理学に、発達心理学があるのを知っていましたか?

(質問)「エッ?ないのですか?あるとばかり思っていました」

(答え)「あるのですが、ほとんどなかったことになっていました」

(質問)「どういう意味ですか?」

(答え)「日本にユング心理学を導入した河合隼雄先生や彼の友人で、日本のユング派に大きな影響を与えてきたジェームズ・ヒルマン氏たちが、発達心理学を肯定的にとらえていなかっていたため、ユング的発達心理学が、日本では広がりませんでした」

(質問)「なぜ肯定的でなかったのですか?」

(答え)「心(プシケー)や魂は、発達論では論じることができない、発達論が言うように、心や魂が直線的に成長するとは限らない、と彼らは考えたからです」

(質問)「心の動きや展開に、発達論のような指針・地図はいらないのでしょうか?」

(答え)「河合氏やヒルマンは、いらないと考えます。また彼らは、発達心理学の視点は光が強すぎて、場合によっては、暗闇を好む魂を殺すと述べています。河合先生のトランスパーソナル批判の一つも、発達的視点を取り入れたトランスパーソナル心理学の光の強さに関するものでした(『宗教と科学の接点』を参照してください)」

(質問)「プロセスワークにも、発達心理学はない?」

(答え)「はい、ミンデルも自発的・タオ的プロセスを重んじ、発達心理学的発想を好まない傾向にあります。河合氏やヒルマンに話を戻すと、彼らは、発達派ユング心理学や古典派ユング心理学は『自我ー自己』軸をもとに心(プシケー)をとらえる一方で、自分たちは、発達論ではとらえられない『魂』を軸に心を見ていく、と語っています」

(質問)「ユング心理学には、いろいろな流派があるのですね」

(答え)「そうです。魂派は、元型派ユング心理学と呼ばれます。それは、発達心理学を否定します」

(質問)「だから、日本では、ユング的発達心理学がないことになっていたのですね」

(答え)「それが一因になっていたと思います」

3)しかし、心理療法を実践の場で行うには、発達心理学が不可欠である、と私たちは考えます。臨床の場面で実際に出会う精神病水準やパーソナリティ水準の理解には、発達の視点が必要だからです。また、発達の考え方は、ユングの個性化の過程・自己実現のプロセスの大切な指針になります。

4)今日、世界中のユング派の80%は、発達派ユング心理学を実践しています。理由は、心理セラピーの実践に役立つからです。今回私たちは、そのユング派発達心理学を、トランスパーソナル発達心理学と比較検討しながら、学びます。

5)ユング的発達心理学の古典的名著は、エーリッヒ・ノイマン著『意識の起源史』(紀伊国屋書店)です。
それは、発達派ユンギアンに、今も読み継がれている発達心理学の教科書です。中身は深く、理解が困難な点がありますが、この講座では、かみ砕き、分かりやすい形で、そのエッセンスをお伝えします。

6)ユング的発達心理学、特にノイマンの心理学の特徴の一つは、発達を元型的、目的論的にとらえていることです。元型的、目的論的な発達論とは、何でしょうか? それは、どういう意味でしょう?

7)この講座では、ユング的発達心理学を学びながら、ユングの重要な概念、「元型」、「目的論」、「象徴」、「神話的イメージ」、「コンステレーション」についても、よく理解することが可能です。

8)また、ユング的発達心理学と、新精神分析的発達心理学の違い、および両者の長所や利点と、短所や欠点を知ることができます。それによって、従来の新精神分析的発達心理学に深みを持たすことができます。また、今回学ぶユング的発達心理学を、より有益なものにできます。

9)特徴の二つ目は、自我や意識(化)を、大事にしている点です。これは、私たちのカウンセリング姿勢に共通します。クライアントの人の全体性を応援しようとすれば、魂やプロセスワークのドリーミング、二次プロセスなどと共に、自我を尊重することは不可欠です。

ユング心理学は、無意識や魂を敬う心理学と言われますが、ノイマンは、自我や意識(化)の重要性を繰り返し述べています。彼は、ユングの個性化過程には、自我の発達成長なくしてはありえない、という、後にトランスパーソナル心理学に受け継がれる視点を、早くから強調していました。

10)特徴の三つ目を述べます。それは、ノイマンが、男性性や父性を強調している点です。

ユング心理学は、女性性(アニマ)や母性に着目する心理学と言われています。

が、ノイマン的心理学は、男性性や父性も、重視します。(注:男性性や父性は、男性や父とは異なります)

彼は、ウロボロス(自分の尾を噛み、呑み込んで輪になったヘビ)あるいは混沌(カオス)、または未分化な母子一体から自分と母、自分と対象、自分と世界を分化・分節化、切断する機能、すなわち男性性や父性を、自我に見て、大事にしています。その男性性や父性による切断力・分節化力は、男性の自我だけでなく、女性の自我にも内在していて、意識の発達・成長には不可欠だと、考えています。

11)特徴の四つ目です。ノイマンの発達論のユニークなところは、「自己(Self、セルフ)」だけでなく、自我にも、中心志向を見ている点です。

ユングのセルフが中心志向であることはよく知られていますが、その志向性が、自我にも備わっている、としたところが、ノイマンのオリジナリティです。それは、サイコシンセシスや、インドのアートマン—ブラフマン、また、マイケル・ウオッシュバーンの成熟した自我、そしてハインツ・コフートの(自我的)自己の考え方にに近い。

ノイマンの自我は、東洋的であり、神秘主義的です。それは、ヒルマンたちが批判する西洋的(英雄的)自我とは、随分と異なります。自我が、中心志向~バランスやまとまり・凝集性への志向~を持っていると考えると、それは、癒しにとても貢献する自我と言えます。

中心を志向する良質な自我つくりについても、発達の立場から、考えます。

12)もう1つ特徴を述べます。それは、精神病水準やパーソナリティ障害水準を理解するうえで大変重要な、ウオッシュバーンが命名した「身体自我」の源流を、ノイマンに見ることができる点です。それによって、プロセスワークのドリームボディや各ボディワーク・の身体への理解が進みます。身体に関心がある方にも、有益となる内容をご用意しています。

13)この講座では、あなたの日々の暮らし、人生全般、心理療法、コーチング、ファシリテーション、コンサルティングに役立つ発達心理学について、ユング的発達心理学の立場から考え、取りくむものです。

発達心理学全般、トランスパーソナル心理学に関心のあるあなたのご参加も、お待ちしています。

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日時■ 2016年11月25日(金)〜全10回 毎月第4金曜日 19:00~20:50

会場■ 東京都内

費用■ メールマガジンにてご案内しております。

講師■ 富士見ユキオ・岸原千雅子