健康なスピリチュアリティ

ネガティブ・ケイパビリティ

私たちは、現代で生きられるスピリチュアリティは、成熟した自我を必要としていると考えます。成熟した自我の姿勢は、「無知の知」や「ネガティブ・ケイパビリティ(負の能力)」を内包しています。「無知の知」は哲学者ソクラテスによって、「ネガティブ・ケイパビリティ」はイギリス人詩人ジョン・キーツによって提唱され、セラピーではウィルフレッド・ビオンによって広げられました。その2つは、

(a)人間には限界があって分からないこと(無知)があること
(b)その分からないことと一緒にいること(負の能力)
(c)すると、あるとき恩寵によって世界 / 宇宙が「自ずと分けられ、知が去来すること」

です。「分かる」は「分ける」からきています。私たちは、物事、事象、出来事を「分けない」と「分別」がつきません。「分け」が入らなければ、「分かりません」。

ビオンについて詳しく学びたい方は、こちらの連続講座を参考にしてください。

【この下にも「健康なスピリチュアリティ」の記事が続きます】

無知の姿勢

セラピーでは、クライエントの人の訴え、悩み、問題、症状を「分からない(無知)」姿勢で聴きます。性急に「分かること」をせずに、「分からない」まま居続けます。すると、それまでクライエントとセラピストで水面下で無意識に協創してきた心の内的世界 / 宇宙が、「自ずと分けられ、『分かる』が去来します」。「あーそうだったのか」体験をします。が、「分ける」のは、「自我」ではなく、「協創的無意識」「協創的無意識的身体」です。

「間無意識的感性」や「間身体感覚」を磨き、洗練させる必要があります。「分ける」「分かれる」以前の次元へ意識を向け、そこが「分かれる」極微細で超速の瞬間をとらえる「直覚」「直観」「直感」「インスピレーション」を鍛えることが求められます。すると「分かる」「理解」が進みます。それには、「平等に漂う注意」「マインドフル瞑想」「非二元的瞑想」プロセスワークの「センシエント・ワーク」「ドリーミング・ワーク」が有効です。

しかし、セラピーでは、次の瞬間、「分からない」を肯定する「無知の知」「ネガティブ・ケイパビリティ」の姿勢が、再度必要とされます。

そのためには、「強くて粘りがあってしなやかな成熟自我」が欠かせません。

健康で成熟した自我を創る

成熟自我、健康な自我は、人間を超えた「聖なるもの(the holy)」へ開かれ、畏怖の念をいだきます。宗教学者ルドルフ・オットーは、「聖なるもの」は、言葉にできない身の毛もよだつ恐ろしさと無限の魅了とからなる二律背反的なもの、と述べています。畏怖を抱き、維持する成熟した健康な自我が、スピリチュアリティに必須だと考えます。

「人間を超えた」とは、神聖さだけでなく、想定外、偶然性、理不尽、不条理、悲劇をも指します。IPPでは、神聖、想定外、偶然性、理不尽、不条理、悲劇、運命について、スピリチュアルな姿勢で取り組むことを推奨します。

トランスパーソナル心理学者で、臨床心理学者のラルフ・メツナーは、「人間は、世界 / 宇宙が私たちに提供するさまざまな可能性の母胎から生まれる、未来についての多様なシナリオを、異なるたくさんの蓋然性と共に、常に協創(co-creating)している」と述べています。(注:「可能性」は、英語の”possibility”で、「蓋然性」は、”probability”です。「蓋然性」は、起こりそうなこと、ありそうなこと、見込み、確率を意味します)

「協創」には、他者、想定外、偶然性、理不尽、不条理、悲劇、運命が含まれます。

他者、想定外、偶然性、理不尽、不条理、悲劇、スピリチュアリティ、運命に共通するのは次の3点です。

  • (a)自分を超えていて
  • (b)分からない
  • (c)コントロール(支配)できない

IPPが支援するのは、分からない、支配できない他者、想定外、偶然性、理不尽、不条理、悲劇、スピリチュアリティ、運命を敬い、畏怖し、共存、協創する態度が、スピリチュアリティです。

あなたは、「健康なスピリチュアリティ」にご関心がありますか?

それを宿す「健康で成熟した自我」育成に、ご一緒に、取り組みませんか?

オカルトとの違い

健康なスピリチュアリティは、「無知の知」や「ネガティブ・ケイパビリティ」に基づいたものです。それは、「分からない」「無知」をベースとします。したがって、「分かる」ことを前提としたオカルト、精神世界系、スピ系、ニューエイジ系や、どこかで、誰かの意図で「すでに分けられ、一部の特権的人物だけに知られた」とする終末論や陰謀論に与するものではありません。

「分からない」のは、「未熟な自我」にとっては辛く、苦痛です。私たちは、「分からない」宙づり状態と一緒に居ることの可能な大人の自我を大切にし、そこからスピリチュアリティをとらえます。

IPPでは、「分からない」をベースに、古今東西のスピリチュアリティ、シャーマニズム、錬金術の知見に真摯に耳を傾けます。もしあなたが、スピリチュアリティや魂のことで、苦悩していたなら、ご相談ください。必要に応じて精神科医をご紹介し、精神科医と協働しながら、あなたをサポートします。

あなたは、躁転した覚醒状態、気が上がってコントロールできないチャクラ覚醒、強烈な幻視・・・などで、困っていませんか?

もしそうであれば、ご相談ください。

宗教的な教義との違い

「スピリチュアリティ(霊性)」は「宗教性」と同じく、各宗教の「中核」にあるものです。IPPは、スピリチュアリティや宗教性を支援するものです。霊性や宗教性を包む「外枠」によって成り立つ各種宗教団体の「教義」をサポートするものではありません。

スピリチュアリティ、宗教性、聖なるものを中核に、あなたの「個人神話」「コスモロジー(世界 / 宇宙観)」「ナラティブ」の創造を応援します。

トランスパーソナル心理学やプロセスワークを学ぶために留学に関するご相談も承ります。
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